toorisugari3のブログ

ベターコールソウルの事について、ネタバレ込みでつらつらと

Better Call Saul キムの、ジミーとの化学反応 S5Ep10まで (ネタバレ)

【注意】本エントリには、Better Call Saulのネタバレが含まれる。Better Call SaulのS6Ep09まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。自分で気づきたいという人にも勿論推奨しない。

 

 

S6Ep09でキムはジミーとの関係について、「別々ならいいけど、一緒に居ると毒になる」と言った。これまでの、「キムが『ジミーと一緒』でなければ踏み込まなかっただろう」言動、ジミーとキムとの間におきる「化学反応」イベントについて、S1からS5終了までを、キムの視点からピックアップしてみたい。また、キャラクター解釈の一つの鍵となる、ジミーとの性行為が行われるタイミングについても強調表示しておいた。

まとめていってる間に気が付いたのだが、キムがジミー以外の男と親密にしている場面が全く無い以上、「ジミーと一緒でなければ」という仮定を比較検証する事ができない。各場面でジミー以外でもありだと思うか否か、一般的にはどう思われているのだろうと気になる所ではある。

「余談」部はすこし話題がそれているので、興味が無ければ読み飛ばして頂きたい。

 

キム・チャック・ハワードあたりの縦軸まとめはいつかやりたいなぁと思いつつ出来てなかったが、キムに関しては丁度いいタイミングなのかもしれない。

 

直接は関係無いコールバックへの言及をするのは、本ブログを書く最大の動機なので許してほしい。

 

 

Season1

ハワードへの反抗

ジミーがサンドパイパーの詐欺的な運営に気づき、チャックと一緒に巨額の賠償金が見込める集団訴訟に持ち込んだ。ハワードはジミーに最終和解金の20%を提示するだけで、案件への関与を認めず、それなら案件を潰すというジミーにも取り合わなかった。

 

あまりに理解しがたい態度なので、キムはなぜジミーに部屋を与えないのか、ハワードに聞きに行く。「もう決まったことだ」といわれても「でもなぜ?」と聞き返し、「パートナーで決めた事だから君には関係無い」といわれても「関係あるわ、友達だから」と引き下がらない。「やる事や言い方に問題はあっても、いい弁護士よ」と説得を試みる。そしてハワードに「君が口を出す問題じゃない。次からは黙ってろ、聞く気も無い」(意訳)とまで言われてしまう。直後、思い直したハワードに事実を教えてもらいはするのだが。

 

ジミー以外であれば、最初の「もう決まったことだ」で諦めたか、そもそも理由を聞きに行かなかったかもしれない。同じように親密な相手が居れば、これと全く同じ態度を取ったかもしれない。

 

 

Season2

ケンに高額飲み代を奢らせた事

Ep01。弁護士を辞めると言い出したジミーを心配して、説得のためにホテルに駆け付けるキム。プールからホテルのバーに移動して説得を始めるのだが、ジミーの決意は揺るがず、大声でイキり散らしていたケンを、嘘の遺産の運用を任せるていで飲み代を奢らせる。1ショット$50のサフィロ・アネホを1本あけて、勘定を見たケンを仰天させたやつだ。この時記念にと貰った特徴的なボトルストッパーを、キムはずっと大切にしてきた。

 

ジミーが最初にケンに話しかけた時、キムの表情は固く、テーブル席にうつって名前を聞かれて態度を決め、話に乗る事にしたように描かれている。ジミーが居ないキムならばここで話に乗ってタダ飲みをしようなんて思わなかっただろう。実際、この直前にジミーが偽名でタダ飲みしようとした事をとがめている。そもそもこんな寸借詐欺を実行に移すような人との深い付き合いは、ジミー以外では考えにくいのでは。そもそもキムのプライベートは殆ど描かれず、同僚たちやかろうじてメサ・ヴェルデの法律顧問であるペイジとの関係の良さだけが描かれているだけではあるが。

 

(主に)酒を飲む場所での寸借詐欺はマルコとやっていた事へのコールバック。

また、この夜キムのアパートで恐らく初めての性行為が行われた

 

エンジニア、デイルから小切手をだまし取る

Ep06。Forque Kitchen and Barのカウンターで一人モスコミュールを飲むキム。シュワイカートからの誘いに心揺れていると、バーテンダーから奢りの仲介が。相手はネイビースーツのナイスミドルなエンジニア、デイルだが、キムは直前にこの男が緑の服を着て、左手薬指に指輪をはめた女性と別れ際にキスをしているのを目撃している。

表面上にこやかに対応するキムは電話でサンタフェのオフィスで働いてるジミーに「獲物がかかった、今すぐ来て」と電話をする。ジミーは勿論飛んでくる。

 

サンタフェ アルバカーキ 距離」と入れて検索するとおよそ100kmとでる。この距離を仕事中に呼んでしまうキムのこの行為は、ジミー相手以外では考えられない逸脱ではなかろうか。しかもEp01では、ジミーが逆に同じことをやろうとして留守電にメッセージまで残したが、結局思い直した事をキムがやっているのだ。この事とケンを騙した事との二重のコールバックになっている。この立場の逆転も良く使われるスキームで、一度纏めてみたい。

結局だまし取った小切手は換金せずにとっておく事にしたようで、実害はあったとしても飲み代くらいだろう。いつ換金されるか分からない不安は不貞の代償というわけだ。

 

ジミーはキムのアパートでこの翌朝を迎え、性行為があった事をほのめかしている。

 

HMM退所時のメサ・ヴェルデ案件(added 20220828)

Ep08 A1冒頭で、独立を決めたジミーとキムはホットドッグ屋でお祝いをしている。夜の間にハワードの机の上に辞表を置いて、メサ・ヴェルデやほかのクライアントを引き抜くんだ、というジミーにキムは「助言はありがたいけど、それぞれのやり方でやるはず。私にとって正しいやり方を見つけなきゃ」と断る。明確に否定したわけではないが、これはメサ・ヴェルデをHHMからは奪わないという宣言だとみる事も出来る。

そうだとすると、キムは翌朝ハワードに辞表を渡した直後、メサ・ヴェルデとすぐ連絡を取ろうとしたハワードの様子をみて、慌ててペイジに連絡し、メサ・ヴェルデを確保しようとしている。

もし、最初はメサ・ヴェルデを持ってゆくつもりがなかったとすれば、これもジミーとの化学反応になるだろう。

 

住所書換の証拠隠滅の唆し

Ep09。銀行委員会の聴聞会でジミーが書き換えた住所によりチャックは大失態を晒してしまう。この事でメサ・ヴェルデは業務拡大案件をHHMから引き揚げてキムに依頼する事になる。書類を一緒に取りに来たジミーとキム相手に、チャックは「ジミーが住所を書き換えたのだ」と糾弾するが、ジミーは勿論キムまで「ただ間違えただけなのでは?」と助け船を出す。

これは勿論キムはジミーがやったと確信してそれでも助け船を出したのだ。直後ジミーのEsteemの中でジミーを叩くことからも明らかだ。そして、その晩、ベッドで眠ろうとするジミーに「相手の言い分のわずかな隙すら見逃さない」と、チャックの有能さを強調する事で証拠隠滅を促すのだ。そして自分の隙に気づいたジミーはコピー屋へ走り、そこに一足先に来ていたエルネスト(HHMの従業員、メールルームでの同僚)を目撃する。

証拠隠滅を直接指示するのではなく、ジミーに自分で気づかせる言い方をした事で、「キムはジミーを利用してるだけなのでは?」なんて憶測まで産んだシーンだ。

これもジミーでなければ絶対にしなかった逸脱だろう。

 

また、この直前のエピソードEp08からジミーとキムはキムのアパートで同棲を始めたと思われる。

 

 

Season3

ジミーの弁護

Ep01では、チャックの引退を思いとどまらせた事を聞いたうえで、詳細については「二度と聞きたくない、と言ったことかも」といわれ、「ならいいわ」と知る事を拒否する。

Ep02ではエルネストからジミーの危機を聞いたキムは「1ドル出して」と、ジミーの代理人になる(実際受け取ったのは20ドル紙幣だが)。これはBreaking Badでの初登場エピソードで、荒野に拉致されたソウルがウォルターとジェシーに言った事と同じ、コールバック。

Ep03では、エルネストから事情を聴いて慌てて裁判所に駆け付け、罪状認否でジミーの代理人だと関わろうとするのだが、ジミー本人が拒否して引き下がる。しかし、このエピソードの最後の場面で「どうしてこんな男に?(This guy? Seriously?)」「サンクコストの誤謬ってやつよ(Let's just call it the fallacy of sunk costs.)」、と結局代理人を引き受ける事になる。

このジミーの弁護にしても、嘘だと分かっている事を否定する弁護は、ジミー以外だとキムは引き受けなかったか、そもそもそういう人物とは交流しなかったのではなかろうか。受けたとしても、動揺させるためにレベッカを利用したり、ヒューエルを使ってチャックのポケットにフル充電のバッテリーを忍ばせるという荒業はつかわなかったのでは?

 

余談「やっぱりやる」案件

こういう風に、一度やらない事にしておいてやっぱりやる、となる展開はBreaking BadでもBetter Call Saulでも多用されており(ウォルターの化学療法や、ガスとの仕事、下で触れるガトウッド石油案件や建設図面の差替え案件等)、機会があればまとめてみたい。

 

日本語訳についての余談

この「Let's just call it the fallacy of sunk costs.」というセリフは、日本語字幕では「簡単にはあきらめない」となっている(吹替は「乗り掛かった舟ってやつよ」。上での例は拙訳)。このエピソードの邦題は「乗り掛かった舟」で、原題は「Sunk Costs」。大事なセリフなのに字幕でわざわざこの言葉をはずす意味が分からない。原語ではこのセリフとリンクしているのに。

しかも、この「fallacy of sunk costs」はS2Ep01 ホテルのバーで、ジミーが弁護士を辞める言い訳として使った言葉で、そちらでは吹替字幕共に「埋没費用」で統一されている。わざわざコールバック・リンクを外すような真似はせず、全て「埋没費用」で統一すべきだと思う。個人的に一番許せないエピソード邦題だ。

S6Ep09の「Fun and Games(楽しい駆け引き)」については、批判の向きもあるが、個人的には「駆け引き」をストレートに「ゲーム」にしておけば良かったんじゃないか程度に思っている。ケイリーの玩具のMarble Runは「駆け引き」ではないからだ*1

 

ガトウッド石油案件の受任

Ep09では、ガトウッド案件の(恐らく)書類を会社へ宅配便で送るようにフランチェスカに頼むのだが、腰を痛めてまで折半の約束をした経費をかき集めてきたジミーを見てそれを取りやめる。これはジミーからすれば「ノーサンキュー」な行動ではあったのだろう。しかし、キムからすればジミーが腰が痛いと寝転んでる姿(ギターを弾いてはいるが)を見て少しでも助けになれば、お金の余裕があれば、と思ったのだろう。

これを他の事務所に回さず自分で引き受けた結果、居眠り運転で利き腕を折るはめになってしまう。この件もジミーの弁護士資格停止も、考えてみればジミーとキムが一緒に居る事で産まれる毒によるものだ。この毒は彼ら自身にも危害を与えていたのだ。

 

 

Season4

ハワード断罪

Ep02。キムは前のエピソードでハワードがキム達のアパートを訪れ、チャックの死は自殺ではないかといった事を責め立てる。レベッカには話してないんでしょう?と。

火事のにあった家の残骸から遺品を選べ、ジミーには雀の涙ほどの金額しか残さないのに学生に渡す奨学金基金の委員になれ、死んでまで糞ったれ!と伝えるための手紙を渡せ。そういうのか?とハワードを断罪する。

 

キムの怒りについては十分に共感できるのだが、果たしてこれらは全て断罪されるべきものなのだろうか。「忘れてない事を示すための最低限の金額」の現金相続や、奨学金基金の委員にすること、手紙を渡す事については、悪いのはチャックであり、代理人でしかないハワードは責められる筋合いは薄いのではなかろうか。これまでずっとジミーではなくチャックの肩を持っていた事は確かだ。しかしこれは立場の違いによるもので、相当割合は言いがかりに近く、ジミーへの想いがなければここまでの怒りは見せなかったのではないか。

 

キムは知る機会が無かったが、自殺の可能性を伝えた事については、ハワードも無神経な所があったが、その大本の原因を作ったのは、保険会社に弁護保険の査定に影響するネタをタレこんだジミー自身でもあった。

 

Ep03の最期では、ここで渡された手紙をジミーが読み上げ、聞いていたキムは感極まって嗚咽し、一人寝室に閉じこもってしまう。

 

手紙の解釈についての余談

New York TimesでのS4Ep03のDavid SegalによるRecap*2で、「この手紙は明らかにキムが書いたもので、オリジナルは捨てた」と書いてあってぶっとんだ。

Kim Wexler. She has clearly ditched the letter that Charles left for Jimmy and turned it into a warm and sentimental farewell, filled with the sort of brotherly love so anathema to Chuck. 

他所の媒体でもはこれに触れているのがあって、「あまりあり得ない」*3と評されていた。この後のエピソードでこの事を回収してあれば、見事な洞察だ!となったのだろうが、そうはならなかった。プロのライターでもこういうとんでもないミスをするんだな、と少し面白かったお話。

 

ヒューエルの弁護

Ep07。暴漢だと思い込んで警官に暴行してしまい、塀の中に入る位なら逃げてしまおうとするヒューエル。弁護士資格停止中のジミーは自ら弁護できず、キムを頼る。路上で使い捨て携帯を売っていた事に驚きつつも、ジミーの頼みとあってやる事にしたキム。しかし、最初は汚い方法は使わず、真っ当な方法でやるつもりだった。

 

ところが、担当検事のスザンヌとの会話でジミーを貶されてキムは頭に血が上ってしまう。ジミーを「scumbag(ゲス)」扱いしたのだ。

And our only witness is a scumbag, disbarred lawyer...

...who peddles drop phones to criminals.

Ep07の37分20秒あたり。この「scumbag」でキムの目の色が変わる様子がド迫力なのでぜひ見かえしてみてほしい。

 

ドヤ顔するスザンヌに「知らない癖に」と捨て台詞を吐くキム。直後に会ったジミーは、合法的なやり方では服役は免れそうにないと聞いて「俺のやり方で」と聞いて立ち去るのだが、キムは文具を買い漁り、ジミーに「もっといい手がある」と告げる。Ep08でやった大掛かりなヒューエル厳刑のための「詐欺」だ。これはS2Ep02でジミーがやった証拠捏造について「二度とそんな話は聞きたくない」とキム自身が言った*4、まさに「そんな話」で、ジミーと居なければ起き得なかった話だ。

 

また、この事件完結直後に朝2人が裸でベッドで抱き合うシーンがあり、3度目の性行為の示唆が行われる

 

日本語訳についての余談

この「scumbag」のシーン、字幕のほうはちゃんと「ゲス」という言葉が入っていて良いのだが、吹替のほうでは「唯一の目撃者は 犯罪者にプリペイド携帯を売りさばいている 資格停止中の弁護士よ」となって、「scumbag」の訳が消えてしまっている。しかも、語順を変えたために、キムの目の色が変わる瞬間が「犯罪者にプリペイド」あたりになってしまっていて、完全に翻訳過程のミスとしか言いようがない映像になってしまっている。

さらにさらに、このscumbagの件はS6Ep03で直接的な言及がされていて、「以前彼を ゲスな弁護士と呼んだわね」という吹替がなされている。ゲスって呼んでないのに!

余談についての余談

このキムの蒸し返しの直後に、スザンヌが「確かにソウルとの間にわだかまりはあった。でも、派手に振る舞っていても弁護士や人としての誇りを忘れてないとも信じてる」と言うところが、個人的に本当に大好きで、初見の時も見返す時も涙ぐんでしまう。このセリフには理由があって、最初にゲス呼ばわりした後、S5Ep02でジミー(既に屋号はソウルだが)とスザンヌはエレベーターの故障で2人だけで閉じ込められてしまい、その間にお互いが抱えている案件について交渉して、少し打ち解けるのだ。しかしこの故障はジミーの仕掛けで、管理人を買収したためでもある。ジミーではなくて、スザンヌの人を信じる姿に感動して泣けてしまうのだ。

 

建築図面の差し替え

Ep07。ヒューエルの件が完了した直後、メサ・ヴェルデとの会議で、ケヴィンが建設計画提出済みの支店の建物設計を、派手で上手くいった他の支店と同じものにしたいと言い出す。一度は無理だと結論付けたのに、キムは自室でジミーとケンをハメた思い出の「サフィロ・アネホのボトルストッパー」を取り出して眺める。そしてジミーに会いに行き、「あんないくつもの法を犯すような危険な真似は二度としない」と言うジミーに「もう一度やりましょ」と、違法行為を持ちかけるのだ。

個人的な話だが、この時の唖然としたジミーの表情と、逆に挑発的なキムの表情ほんと大好きでたまらない。

 

弁護士資格停止1年延長の取消工作

Ep09。S&Cの駐車場でジミーと喧嘩した後、アパートで「まだ弁護士で居たい?」と聞くキム。返事は「Yeah.」。S2Ep01で、弁護士を辞めると言った事へのコールバック。

そしてEp10では、再審査(appeal hearing。異議申立?)へ向けて、墓前で悲しんだり、読書室への寄付でチャックへの追悼の意を印象付ける手伝いをする。本件はあまり違法性のあるような逸脱ではないが、わざわざこんな事をするのはジミー以外ではあまり考えにくいのではないか。

またまた個人的な話だが、このS4Ep10 Winnerは、S6Ep09 Fun and Gamesが放映されるまで、一番好きなエピソードだった。特にTeaserでジミーからマイクをぶんどって歌うチャックが好きだった。勿論エルネストやジミーの歌、そしてエピソード最後の「It's all good, man」も含めてだが。

 

 

Season5

おとり警官に冷蔵庫を売りつけた依頼人

裁判になれば確実に懲役2年以上になる依頼人がどうしても懲役5か月という圧倒的に得をする取引を飲もうとしない。少し離れた場所でジミーとキムは会話をし、ジミーは「俺が検察役をやってビビらせて取引をのませよう」というが、キムはきっぱり拒否する。しかし、依頼人のもとにもどると、依頼人がジミーが言った通りの筋書きを信じていて、依頼人の利益になるなら、とこの誘導を受け入れてしまう。

直後、階段で鞄を投げだし、無言で逡巡するキムの様子が描かれる。

これはS6Ep01で、検事と刑事相手にうっかりラロの名前を出してしまい、無人の法廷でうなだれるジミーとのコールバックかもしれない。

 

売り家の内見ではしゃぐ

Ep02。ジミーが強引に内見に連れていき、じゃれるうちにキムはシャワーでジミーを濡らしてしまう。不動産業の女性はそんな2人を冷たい目で見送る。

 

トゥクムカリの立ち退き案件

Ep03。本当は「アラバマ物語」の主人公のように、「弱きを助け、強きをくじく」仕事がしたいキム。メサ・ヴェルデのような強者の代理人となり、アッカーのような弱者を長年住んだ家から追い出そうとしてる現実に気づいてしまう。

そのうっぷんを晴らすためか、アパートのベランダからビールの瓶を投げ捨ててしまうキム。向かいのアパートの電気がいくつかつき、扉が開く音がすると2人は笑い転げながら部屋へ戻る。

 

Ep04。昨日投げ捨てた瓶の破片を律義に掃除するキム。ジミーは勿論そんなことはしない。

 

(added 20220909) Ep03の最後とEp04の最初の間に、ジミーとキムが性行為していた可能性について漏れていた。Ep04 A1冒頭、ジミーが全裸、キムも腰から下は掛布団で見えないが、恐らく全裸で目覚めるシーンから始まる。

ここはしていたとするのが自然な気がする。ジミーとの不道徳行為の後だからだ。

 

 

法廷にいるジミーに会いに行くと、本当の被告は傍聴席に、偽の被告を被告席につけて審理無効を勝ち取る場面を目撃する。そして、ジミーにアッカーの味方をするように依頼する。

 

Ep05。アッカーの代理人となったジミーとの利益相反を自ら申告してケヴィンを操り、メサ・ヴェルデ代理人を続ける事に成功したキム。

その晩通算4度目の性行為の暗示(一緒にシャワーを浴びる提案)

 

ジミーは様々な引き延ばし工作をするが、ケヴィンは「父に逃げるなと教わった」と強行姿勢をくずさず、ジミーを「low-life shyster(下衆野郎の悪徳弁護士)」と呼んでしまう。スザンヌの「Scumbag」の時のような露骨な反応は見せないで、なんとか怒りを抑えこんでいるような様子。

その晩、まだやれる事があると匂わすジミーを問い詰め、「汚い手で個人攻撃、しかも危険な手」がある事を聞き出し、それをやるという。

本件も逸脱のトリガーになったのはジミーへの侮辱だろう。

 

最終的にこの件は、キムが中止しようと言って了解したのに、ジミーが暴走して結局はアッカー有利に事が運んでしまい、クライアントであるメサ・ヴェルデに損害を出す事になってしまった。

 

シュワイカートへの激昂

トゥクムカリ案件に付随する出来事だが、本件から外れた方が良いと提案するシュワイカート相手に、事務所のメンバーたちに見えるところで激昂して怒鳴りつけてしまう。「恋人が偶然相手方の代理人になったのが信じられない」と言った事でキレたように見える。

 

ジミーとの結婚

Ep07。なんと「お互いに不利な証言をしなくて済む」という理由で結婚してしまう二人。ジミーとの出会いが無かった世界があったとして、こんな形でキムが結婚する事がどれくらいあり得るのか……。

 

メサ・ヴェルデへの謝罪の場での反論

Ep07。結果的にジミー(ソウル)に負け、損害が大きかった事をシュワイカートと一緒に謝罪に出向く。キム達の退出間際にケヴィンは「あいつ、マッギルだかグッドマンだかいったが、もっとましな相手を選べ」と捨て台詞を吐き、キムは露骨ではない程度に憮然とする。

退出後、「言いたい事は言う」と思い直してケヴィンのもとにもどり、キム達が提案したのにケヴィンが却下した事を列挙し、もう少し人の意見を聞くべきだと諫言する。

結果は木曜日、と言う事だが、その晩アパートに帰った2人は5度目の性行為をする。事後描写だったこれまでと違い、「おっぱじめる」ところのかなり露骨な描写。

 

代理人だと偽ってのラロとの接見

Ep08。こういう正規ではない手順を正当化するために結婚したわけだ。しかし、ラロには相手にされない。しぶとく生き残る奴だ、とジミーをゴキブリに例えるが、ここではあまり反応が無い。ジミーの生死の話でそれどころではないからだろうか。

 

S&Cを退職

Ep09。休みをキャンセルしてS&Cに出社したキムは、メサ・ヴェルデの仕事を始める。ボイスメモを取りながら、机の後ろに並んだメサ・ヴェルデの記念盾と、額装したプロボノ依頼人から貰った手紙・写真を見る。

ボイスメモが滞りはじめ、何かを決断したように中止して席を立って、シュワイカートに辞職を申し出るキム。勿論シュワイカートはじめ頭の上にクエスチョンマークが出ているかのようだ。

HHMを辞めて独立開業した時は、内部で干されたりいじめのような待遇を受けていたので理解できる部分はあるが、しかしこれもジミーをD&Mに推した事がきっかけだ。

一方でパートナートラックに乗っていたD&Mを辞めようとするのも、恐らくジミーとの交流がなければキムはしなかった事ではなかろうか。ジミーと出会わなかったキムなら、社会的弱者を弁護する事と大企業の顧問をする事を両立していたように思える。

 

ラロの追及への介入

Ep09。ジミーの乗車だったEsteemが、弾痕つきで溝に落とされていた件について、怪しいと思ったラロはジミーに何度も話を繰り返させる。ラロのしつこさに押され、「そんなに疑うなら報酬の金を持って帰れ」と言ってしまう。

報酬の金が入った鞄には、穴の開いたトラベルマグが入っている事を知っているキムは、ここで激昂し「信用できる部下もいない癖に、苦労して仕事をしたジミーを責めるな」と援護する。

ラロはこの後、一人で国境を超える予定だったが、このキムの「信用できる部下も居ない癖に」という言葉が気になったのか、予定を変更してナチョもメキシコへ連れ帰る事にする。そしてナチョは、ガスのラロ邸襲撃計画に足りなかった「内通者」として利用され、結果S6Ep03での死に至る。

ナチョの運命は元々厳しいものではあったが、ジミーとキムは、ナチョを死に導いた一因でもあるとも言えるだろう。

 

また、このラロの嘘追及のしつこさは、形は違うがトゥコのそれ(目を睨んでの「ウソ発見器」S2Ep04)と同根で、サラマンカの手口であり、コールバックなのかもしれない。

 

また、S6Ep09の感想エントリ*5でも触れたが、HHMでの告別式にてシェリルに詰められたジミーに助け舟を出すキムは、これへのコールバックだ。キムはジミーの窮地を見逃せない。ジミーがキムの窮地を見逃せない様に。

 

ハワードの忠告を一笑に付す

Ep10。裁判所でハワードと偶然出会い、S&Cを辞めた事を話すと、ハワードは個人的に話をしたいといい、空き法廷で話をする。ボウリングの球で愛車を破壊された事や、会食中に娼婦を送り込まれて体面を潰された事をハワードが伝えても、キムは笑って相手にしない。

後のジミーとの会話で、ハワードが言った事を嘘だと思ったわけではなく、ハワードはそれくらいやられて当然だと言っている。恐らくこれは本心なのだろう。しかし、いくらハワードからの嫌がらせに我慢がならなかったからといって、これを正当化するキムには違和感があるし、このあたりからキムの言動を不可解だとみなす声がネット上でも増えてきたように記憶している。

これもジミーとの関係のせいだと考えれば納得も行く。

 

ここでジミーの影響の指摘、ジミーをまともじゃない、理性的な行動が出来ないと評するハワードの言は客観的には正しいのだろうが、キムには届かない。これはS6Ep07でキムのアパートを訪れて、ジミーとキムを評したハワードの言とも一致する、コールバックだろう。

 

ホテル滞在を楽しむ事

朝はジミーが今日はホテルでゆっくりしよう、キムは用心しながら普段と同じ暮らしをするしかないといった。しかし、ラロの死をマイクが保証してからは逆に、ジミーが家に帰ろうと、キムがホテルでの滞在を楽しもうと提案する。立場の逆転が見られる。

ちなみに朝も夜もキムの案が通っている。

 

ハワードを嵌める妄想

キムの提案通り、ホテルのルームサービスで贅沢な夕食を取る二人。キムは「ハワードはやり込められて当然」と言い、ハワードを酷い目にあわせる妄想を、仮定の話としていくつも続ける。

ここで6度目の性行為。前回から少し後退して、二人が布団をかぶりながら先ほどの「仮定の話」の続きをしている。

ここでS6前半のキモとなる、ハワードを陥れてサンドパイパーの和解金をすぐに手に入れ、それを元手に無料弁護をするというアイデアが初めて出る。最初は「言ってみただけよ、忘れて」というが、その後もこの妄想が実現したらどうなるか、という仮定の話は続き、ジミーから「余程の悪事」というこのエピソードタイトルが回収される。ジミーですら「人生を破壊する、やりすぎだ」というのに、キムは「1人の弁護士のただのキャリア上のつまづき」とのめりこむ。

そして「ふざけてるだけなんだろ?」と不安げに確認するジミーに両手を銃に見立ててバキュンバキュンと撃つ仕草をするキム。S6Ep09放映まで、自分がS4Ep10の次、2番目に好きだったシーン・エピソードだ。

 

 

まとめ

こうしてキムの、ジミーとの関係についてのイベントを纏めて見ると、S6Ep09で語られた「別々ならいいけど、一緒に居ると毒になる」という発言の説得力が格段に増すのではなかろうか。

 

ジミーとの性行為についても、逸脱との関連が非常に強い事が見て取れる。順番にどのタイミングで起きたのか纏めると、

  1. ケンに高額飲み代を奢らせた事
  2. エンジニア、デイルから小切手をだまし取る
  3. ヒューエルの弁護
  4. 「トゥクムカリの立ち退き案件」での利益相反を回避した直後
  5. メサ・ヴェルデへの謝罪の場での反論。これはトゥクムカリ案件のキム目線での成功後でもある。
  6. 「ハワードを嵌める妄想」の最中
  7. (本記事の範囲外)S6Ep07 サンドパイパー案件の和解が成立した瞬間
  8. (added 20220909, 本当は3と4の間) ベランダからビール瓶を投げた後

となる。本当に楽しかったんだな。

 

法の番人としてのキムの逸脱は、S2の酒場での寸借詐欺から始まる。それは住所書換の証拠隠滅の唆し、S3のジミーの弁護、S4でのヒューエルの弁護や建築図面の差し替え、そしてS5のトゥクムカリの立ち退き案件、S&Cを退職、ハワードを嵌める妄想とどんどんエスカレートしていく。

そしてS5Ep10の二丁指拳銃や、S6Ep02最後、腕組みをしてジミーを待つキムに繋がる。「ジミー・モーガン・マッギル」のBreaking Badストーリーだと思っていたBetter Call Saulだったが、「キム・ウェクスラー」のBreaking Badストーリーとしての色の方が濃いとまで、S5完結時やS6前半では思わされた。

そして「そのBreaking Badがジミーと居る事による"化学反応"である事を自覚したキム」を失った事によって、「ジミー・モーガン・マッギル」のBreaking Badが完成する。

 

なんでこんなストーリーが作れるんだろう。

 

Better Call Saul S6Ep09 感想 (含: ネタバレ)

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep09まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

例によって、また馬鹿長くなってしまった。特に「纏まらないまとめ」以降は読む必要はないだろう。

以前、「Better Call Saul Season6前半における繰り返し演出・自己言及」というタイトルでエントリを書いたのだが、「繰り返し演出・自己言及」について「コールバック(演出)」という言葉を見かけたので、文字数的にも優しいこちらの言葉を使っていくことにする。

一部分書き掛けの所があって、もう一つ書き忘れていたところがあったので、(追加)(追加終わり)で括っておいた。もし21日中に見て追加部をみたければ「(追加)」で検索してみて。

 

Teaser

モンタージュシーンは「It's the perfect way to end a perfect day.」と歌う声だけ(では無いがほぼこれ)が響き、セリフはない。曲はHarry Nilsson「Perfect Day」のカバー。

 

スプリットモールのソウル・グッドマン事務所に看板が取り付けられるシーンから始まる、シーンのつなぎ方が本当に完璧だ。先のエピソードでマイクに指示されたように、ジミーとキムは昨夜起きた悲劇などなかったようにこれまでと変わらぬ日常を過ごし、マイクは部下たちとキムのアパートを「掃除」する様子が、10シーン描かれる。それぞれのシーンの終点と次のシーンの始点が10のモチーフによって接続され、最後にキムとジミーがアパートに帰ってくるところでモンタージュシーンと歌が終わる。

 

二人は「何も起きなかった」かのような部屋の様子を眺めるが、「なかった事にされた」事やその経緯が二人とって重大な意味を持つ事は表情から明らかだ。

 

このモンタージュシーンは脚本家のAnn Cherkisによって12~16ページにわたって書かれていたそうだ*1。この、本エピソードの監督であるMichael Morrisのインタビュー記事、どこからどこまでも面白いので是非読んでいただきたい。

 

コールバック演出

  • 画面分割こそないが、男声・女声のデュエットで、S4Ep07 Something Stupid、S5Ep09 Bad choice road(こちらはハミングだけだが)のTeaserで行われたモンタージュを思い出す。
  • ジミーが事務所で首の固定具を客につけさせるのはBrBaS3Ep04へのコールバック。常識的に考えて弁護士が用意しておくものではないので、むち打ち詐欺のための小道具なのだろうか。S2Ep10での入院直後のチャックもこの固定具を付けている。また、BrBaS1Ep06での、トゥコにやられた入院中のジェシーも。
  • 街の光を見下ろす高台で、処分すべきものを燃やすマイク。ヴェルナー・チーグラーと「おさらば」した場所を思わせる。
  • ホテルのベッドで、ジミーとキムが互いに背を向けてる時にジミーが語った「ある日ふと『忘れていた、記憶が薄まっていた』事に気づく」というエピソードは、S5Ep09でマイクがジミーに語った事である。そしてマイクはその話を義理の娘ステイシーから、愛する人を失った人達の自助グループで聞いた。
  • 上記エピソードのように、「ジミーが他者に言われた事を内面化して別の人に話す」事はこれまでも行われてきた。恐らく最初はS1でキムに言われた「高齢者法を専門にしたら?」という提案を、兄チャックに「高齢者法を専門にしようと思っている」と言ったところだ。S5Ep10では、サンドパイパー案件について「今和解すれば、お年寄りたちは生きている間にお金がもらえる」とキムが言った事についても、ジミーはS6Ep03でヒューエルに言っている。
  • ジミーがマイクから聞いた話を受け売りでキムに話すことは、S5Ep09でキムがS&Cを辞めた時にもやっている。「悪い選択の道」の下りで、これもコールバック。(added 20220724)
  • また、この話はキムに聞かせるためでありながら、自分にも言い聞かせている。人に語り掛けながら、実は自分にも語り掛けているという構図は、S4Ep10で万引き歴がある奨学金候補の少女にした演説もそうだ。

 

Act 1

ドン・エラディオ邸

ガスがネクタイをしていないのは何故なのだろう?

ガスが呼ばれたのは、ヘクターが「最後の足掻き」をするためだった。双子はヘクターから1字ずつ確認し、ガスを追及するための文章を完成させる。双子にはそれだけの知恵があったのかと、少しびっくりした。トゥコよりは頭が使えるのだろう。

 

ガスは様々な状況証拠が偽りの潔白を証明する事を確信していて、余計な言い訳をしない。事はガスの筋書き通り運び、Breaking Badでのカルテルとガスの関係が完成する。揺らめく照明のオレンジの炎に対応して、エラディオのシャツの模様が「青く」発光するようにすら見えるのが終始印象的だった。青は力の色か。

 

話が終わり、エラディオとガスがすれ違う時にガスの眼鏡に揺れる炎が反射し、復讐に燃えるガスが暗示される。エラディオもガスの復讐心は承知だが、少し「なら」許してやると釘を刺す。

 

ガス邸

帰宅し、雨戸を開け、光を入れるガス。ラロを始末し、カルテルを騙しきったのに笑顔は見せない。

地下の洗濯室に繋がる秘密の通路前で、本日の経緯報告するマイク。建設再開はいつになるのか尋ねるガスに一瞬眉をひそめるマイクが印象的だ。「金の事しか頭に無いのか?」とでも思っているのだろうか?

影武者も居ないのに、地下道を通って隣家にいくのか?とおもいきや、ドアをしめ、自宅にとどまるガス。その直前のマイクとのアイコンタクトと、電気を消すマイクの影が物語るものとは?

 

コールバック演出

  • 最後にプールの中から揺らめく水面越しにガスの姿が映る。これはS3Ep04 Teaser最後のコールバックだ。そこで映ったのはガスではなく、今回コケにされたヘクターだが。
  • また、この場所はBrBaS4Ep08のフラッシュバックで、ガスのパートナーだったマックスがヘクターに殺されたプールサイドであり、BrBaS4Ep10でドン・エラディオが殺されて浮かんだプールでもある。ガスとカルテル因縁の場所だ。
  • ヘクターがカズンズに運ばれて退席する時の「ベル乱打」。厳密には少し違うのだが、BrBaS2Ep02のエンディングシーンを皆一番強く思い出すのではないか。トゥコがハンクに殺された直後のことだ。もしくは、ヘクターとガスとの因縁に注目すれば、その最期の瞬間であるS4Ep13かもしれない。

 

 

Act 2

レストラン

ガスに蘊蓄語りまくるソムリエ、いくら何でも出しゃばりすぎじゃない?とは思ったが、それなりの縁・前歴がある模様。

完全にカウボーイの恰好をした野蛮な男が、一口だけで突き返した極上のワイン。それを味わって讃辞を送るガス。

ソムリエの「His loss is definitely your gain.」と言う言葉は、ガスとラロの事そのものだ。

 

ガスが「特別な時に開けたい」といった1978年のコート・ロティ。ソムリエを待たずして帰ったガスは、これを味わいにいったのだろう。サラマンカを根絶やしにした後(BrBaS4Ep13 Face Off)では飲めなかった事を考えると、このソムリエは良い事を思い出させたに違いない。

 

……と書いたが、上記段落は完全に自分の読み間違いで、ガスは寧ろ「浮かれている場合じゃない、まだ復讐の相手はたくさん残っている」という事に気づいたんだろう。他人の感想を読み、映像を見返して確かにそうだと確信した。最後の一口を飲んだ後の右眉の下がり方、グラスをスライドさせる強さ・速さ。表情もとても勝利の美酒を、という様子ではなかった。何故みのがしちゃうかな。

 

勘定のお札を十字に配置したのは何か意味があるのか、あちらでは一般的な慣習なのか?

 

 

Act 3

マイク宅

マイクの帰宅シーンから始まり、銃と一緒にナチョの父親マニュエルの偽造IDを隠す。リラックスしてビールを飲みながら野球を見はじめるが、S6Ep01でケイリーが遊んでいたMarble Runを見て偽造IDをまた引っ張りだす。

Marble Runで遊んでいた時にケイリーに言った言葉「高く作りすぎたからビー玉が飛び出てしまうんだ」を思い出したのだろう。悪さが過ぎて死に至ったナチョを、マイクが想起したのは想像に難くない。このケイリーの遊び道具が、タイトルの「Fun and Games」が指すものの一つだ。

 

Fandom Wikiによれば*2、「Fun and Games」が指すものとして候補は2つあり、片方は「つかの間の、取るに足らない、比較的価値のない活動」、もう一つは 「"It's all fun and games until someone loses an eye." という古いことわざ」だという。

「痛い目を見るまではなんでも楽しいものだ」という意味あいの後者は、まさにジミーとキムのFun and Gamesの果てに目どころか命を失ったハワードや、恐らくはそれほど辞める事の難しさを考えずにギャングの世界に足を踏み入れたナチョの事なのだと考える事ができる。

 

何も知らないナチョの父親を憐れんでか、マイクは彼に会いに行く。

 

A-Z Fine Upholstery (ナチョ父の工場)

ナチョの父親マニュエルの工場で、彼はミシンを回している。目を閉じず見開かずのマニュエルの半眼は仏像のようでもある。

マイクはナチョの父親と金網越しに向かいあい、ナチョがもう帰らない事、苦しまずに死んだ事を伝える。悪党の仲間にはなったが、善良な心を持ち、彼らと同じではなかったとも。

そしてサラマンカについても、正義の裁きが下るだろうと言うが、マニュエルは「それは正義ではなく、復讐だ」「ギャングに正義などない」「あんたらは皆同じだ」と返す。自らの立場を甘く見ていた、もしくは忘れていたマイクは、強烈な冷や水を掛けられ立ちすくむ。これは視聴者にも向けたメッセージかもしれない。

 

マイクとマニュエルの2人は共に息子を失った父親だ。

マイクは息子マットを失い、息子を殺した2人の警官を殺して復讐を果たした。そして同じく復讐を目的とするガスにその事を知られ、ガスの復讐に加担する事になった(S5Ep05)。

一方でマニュエルはギャングに正義などないと、きっぱりと復讐を否定する。

この2人を隔てた金網は、刑務所での面会のメタファーだ。塀の中に居るのは勿論……。また、マニュエルの指摘は、マイクの最期(BrBaS5Ep07)をも思い起こさせる。

 

コールバック演出

  • マイク宅物置の床下Stash
  • Marble Run

 

 

Act 4

HHMでの追悼式

駐車場エレベーター前の、ジミーが蹴ってへこませたゴミ箱は交換されている。

ジミーとキムはHHMで開かれたハワードの追悼式に顔を出す。満面の笑みを浮かべる在りし日のハワードの姿がいくつも飾られて、心が痛む。既視感のある写真だなぁ、と思ったらPatric Fabian個人のInstagramからの借用だったようで……

飲み物を入れながらハワードの写真を見つめるジミーは、最初は悲し気な表情。しかし、それは見せかけだけの演技だったのか、踵を返す際には「知った事か」とでもいいたげな口の歪ませ方をする。ハワードの死への責任と向き合う事を放棄しているように見える・思える。

 

ハワードの妻シェリルにお悔やみを伝えにいくと、シェリルからハワードの死について問い詰められる。ハワードは生前、ジミーの嫌がらせについての話をしていたからだ(S6Ep06 A1)。

ジミーは、嫌がらせについてはこれまでの筋書き通り誤魔化す。が、それでも「ドラッグを使っていたなんて信じられない」と、追及を止めようとしないシェリル。ジミーはことあるごとに立ち去ろうとするが、シェリルはそれを許さない。

そこでキムは1年半ほど前に、ハワードが机にむかって頭を下げ、何かを吸っていたのを目撃した事を告白する。勿論これは作り話だ。

 

そして、それでもまだ信じられないシェリルは、クリフに同意を求める。が、ゴルフクラブでの偽ドラッグや、ウェンディをNAMAST3ナンバーのジャガーから放り出すシーンを見ていた・見せつけられていたクリフは積極的にシェリルを支持できない。


そこで作り話とは逆に、シェリルに「寄り添うそぶり」を見せるキム。むろん、これは態度だけである種の誤認誘導、「ガスライティング」だ。ハワードの死で我に返ったキムの倫理観からすれば、本来行えないレベルの酷い所業である。それでもこれを徹底するのは、ジミーとキム二人の安全の為にしなければいけない事だからだ。

シェリルはいたたまれなくなり、その場を去ってしまう。

 

帰り道、HHMの駐車場で「これで本当に終わった」「回復を始めよう」というジミーに、何も言わず長いキスをするキム。S1Ep01ではじめての煙草をシェアする様子を見せた駐車場で。そしてキムは一人車に乗り込み走り去り、ジミーは立ち尽くしたままそれを見送る。

 

コールバック演出

  • エレベーターホールにあるゴミ箱は新しくなったが、これは以前(S1Ep01)ジミーがボコボコに蹴り飛ばしたものだ。ホール自体には、キムが一度失った顧客であるケトルマン夫妻を、ジミーの助力でまたキムのもとへ送り届けた(S1Ep07)場所でもある。
  • HHMエントランスホールに飾られる花とPicture。本エピソードではハワードの写真が、S4Ep02では、チャックのPicture(絵か写真か良く分からない)が。
  • シェリルにハワードへの嫌がらせを問い詰めらているジミーに助け舟を出すキムは、S5Ep09でラロに問い詰められたジミーに割って入った事を強く想起させる。
  • 二人が長いキスを交わしたHHM駐車場は、S1Ep01でジミーとキムが初めて煙草をシェアした場所。

 

 

Act 5

裁判所

キム自身による証拠排除申し立ての場で突然の辞任を告げるキム。当然判事も混乱し、問い詰める。なかなか答えないキムだが、最後には「弁護士を辞めた」と。唖然とする裁判官・検事。

キムが弁護士を辞めるのは、あり得べきシナリオの一つだと思っていたが、それは悪事の発露によるやむを得ないもので、本人の罪悪感からけじめをつけるものになるとは想像が及ばなかった。後任のペイジ(メサ・ヴェルデの法律顧問)との関係性の深さ・良好さもうかがえる。キムは結構傍目には理解しがたい行動を続けており、普通ここまではしてくれない。

 

キムのアパート

弁護士を辞めた事を知ったジミーがこれ以上ないほど動転して帰ってくる。
「何て事をしたんだ!取り消すんだ!そのために引っ越しもしよう」と言ったジミーは寝室に行くが、そこでキムが荷造りに並べた荷物を目にする。キムの別れの決意を見せつけられたジミーは呆然と立ち尽くす。

キムは、「君にとって害悪か?」(S5Ep10)というジミーの言葉を持ち出し、そしてそれを否定する。「お互いにとってお互い自身が害悪なのだ」と。

ここへきてはじめて交わされる「I love you.」「I love you, too.」の会話も切なすぎる。もうずっと明らかだったのに、別れる事を決めてからはじめて交わされるこの会話。

ここでのジミーの表情はとてもとても印象的だ。子供が大人を試す時のような、挑戦的な、これを言えばキムの決意も覆るのでは?という打算が滲み出た表情に自分には思える。

しかし、キムの「I love you too.」に続く言葉は「But so what?」。ここで初めて見せるキムの強い強い悲哀の表情。

 

ラロが生きていた事を黙っていた事も、キムはここで打ち明ける。黙っていた本当の理由は、ジミーを守るためではなく、それを言えばジミーが別れると言い出すことが分かっていたから。ジミーと離れたくなかったからだと。「Because I was having too much fun.」あまりにも楽しかったから。

 

おそらく、Teaserの何もなかったかのように元通りにされた部屋を見ていた時には、キムの別れの決意は固まっていたのだろう。HHM駐車場での無言のキスも納得がいく。

そして寝室でキムが荷造りする音を聞きながら呆然と立ち尽くすジミーの後ろ姿でシーンが終わる。

 

「Death Is Not the Only Tragic End」という、思わせぶりな表現があちこちの記事で語られていたが、これがそうなのか、と。

 

コールバック演出

  • キムの「楽しかったから」は、Breaking Bad最終回での、ウォルターからスカイラーへの電話での会話と似ている。「これまでした事全ては自分のためにやった。好きだったし、得意だった」というセリフだ。メス作りと(法律の裏側としての)詐欺という2つの悪事の違いは、そのままBreaking BadとBetter Call Saulの主題の差でもある。
  • カップルの女性が男性のもとを去っていく、というのはS6Ep01 Teaserで流れたBGMや、タイトルにもなった「Wine and Roses」、酒とバラの日々という映画のストーリーを思い出させる。この映画ではアルコール依存症を認められない女性が男性のもとを去るが、キムが去る理由は逆に、ジミーと居る事によって誘発される詐欺(Scum)への依存を認めたためだ。

 

 

ソウル・グッドマン邸

回転ベッドで回ってくる薄毛の頭。そして見知らぬ女性が隣に。

 

Breaking Bad時代だ。

 

S6Ep01Teaserでのフラッシュフォワードで見せられたド派手なソウル邸。紛れもないBreaking Bad時代のソウル・グッドマンが生きている。

あの、人を世の中を舐め切った態度を、フランチェスカ相手の電話や娼婦相手に存分に見せつけてくる。「キャデラック ドゥビル」に乗り、ソウル・グッドマンのラジオコマーシャルがモノラルな事に文句をつけながら事務所に到着。

 

屋上には勿論自由の女神の風船像。手に持つ本には「JULY IV MDCCLXXVI」(1776 7月4日)の文字が。本物もその手に持っている独立宣言書。

シャツは淡い黄色、ネクタイ・チーフはオレンジでレップタイ。机の中にはBreaking Badではおなじみの黄色のマッチブック。かつての愛車Suzuki Esteemのくすんだ黄色とは違い、はっきりした黄色。黄色が表すのは「楽観」「快楽」「臆病」「恐怖」「誤りの希望や不注意な快楽」「疑惑やパラノイアによる不幸」。

 

オフィスの待合室は、フランチェスカが苦労して作り上げた最初の居心地の良さなど欠片も無い。執務室前でフランチェスカから手渡される「WORLD'S GREATEST LAWYER」のマグカップ。かつてジミーが「WORLD'S GREATEST LAWYER」と認めたキムはもう弁護士ではないのだ。

 

ソウルは机の前で伸びをして気合をいれ、「Let justice be done, though the heavens fall.」。

 

コールバック演出

  • ソウル・グッドマン邸。S6Ep01 Teaserのフラッシュフォワードで見せつけられた、回転ベッドや浴室、クローゼットなどの過剰に派手な屋敷の様子が、LIVEで見せつけられている。
  • ジミーの、キム以外との性行為はS1Ep10で、マルコと遊びまわっていた時に「ケヴィン・コスナー」だと偽って寝た女性以来だ。キム以外の女性との交際が描かれるのは、この2つの性行為と、S1Ep02での、バーでのデートだけである。
  • 着替えながら電話するシーンで出てくる「Another public masturbator」は、BrBaS2Ep08でのバッジャーとのシーンを思い出させる。ソウルはバッジャーを「Public masturbation」で捕まったと勘違いしているのだ。
  • ソウル・グッドマン事務所。屋根上のバルーンの自由の女神、待合室、フランチェスカも完全にBreaking Bad時代だ。
  • 「WORLD'S GREATEST LAWYER」のマグカップ。BrBaS3Ep06ではじめて画面にチラ見えする。以降、ソウルのデスクにはつきものになったマグカップ。Better Call Saulでは、キムがジミーにプレゼントした「WORLD'S 2nd GREATEST LAWYER」「WORLD'S 2nd GREATEST LAWYER Again」のトラベルマグを思い出す。「2nd」と「Again」はキムが追加した文字だ。
  • ソウル・グッドマンの黄色いマッチブックは、ジミーマッギルの青いマッチブックとの対比。青はBetter Call Saulでは法律の色とされる。
  • 「Yankee Doodle Dandy」と自称するジミー。これは1942年のミュージカル映画で、戦意高揚映画の一つだ。このタイトルの元になった「Yankee Doodle」は独立戦争時代の愛国歌で、日本ではアルプス一万尺のメロディとしておなじみだ。同時代の愛国歌として、「The Battle Hymn of the Republic」という曲があるが、この曲のワールドミュージック風アレンジジャズが、ジミーがケトルマン夫妻からもらった賄賂の処理をするシーン(S1Ep04)で使われている。
  • 「Let justice be done, though the heavens fall.」これはS3Ep05でチャックがハワードに、ジミーを罰しようとして弁護士資格の剥奪を狙った証言の直前に言ったセリフと完全に同じものだ。勿論ジミーはこのセリフは聞いていない。チャックはジミーの前でこのセリフを使ったことがあったのか、偶然の一致なのか、それとも必然の一致か。しかし、英語ではIdenticallyに、一言一句同じセリフなのに、吹替や字幕では違いが出ている事が残念でならない。アルバカーキサーガに無駄なセリフなんて無いのだが、その中でも大見得を切って放った決め台詞くらいは……とは思うのだが、文脈上いたしかたないのか。以下に該当箇所の吹替・字幕のセリフを引用しておく。

吹替

チャック「天国が落ちても 正義を果たさねば」

ジミー「天が落ちようとも正義を貫こう」

字幕

チャック「何があろうと 正義を果たす」

ジミー「正義を行おう 天が落ちようとも」

 

 

エピソード演出

本エピソードでは、最初のセリフと最後のセリフは、共にジミーが発話するが、両方とも他人のセリフだ。冒頭のマイクの引用については場に合わせたアレンジがしてあるが。

 

また、本エピソードは「ソウル・グッドマン事務所」の看板が掛けられる所から始まり、すべてが「完成」した「ソウル・グッドマン事務所」で終わる。

 

 

全然まとまらないまとめ

ジミーとキムのすれ違い

キムはジミーとのおふざけが本当に楽しくて我を忘れていた。根本的には「Fight good fight, change the world」、弱きを助け正義を果たすアラバマ物語の主人公に憧れる人なのだ。

キムには弁護士を辞める以外の責任の取り方がなかった。そして、ジミーと別れない限り、「また」周りの人を傷つけてしまう事を確信していた。

 

 

ジミーはキムと居ると、汚い手を使ってでもキムを助けようとしてしまう。キムは本当はそれを許したくないのに、結局は頼ってしまう。

S5Ep01の最期、おとり警官にミニ冷蔵庫を売りつけようとして逮捕されたボビー。司法取引を拒み、長期囚役が目に見えた裁判を避けるために、キムは正攻法を選びたいのに、ジミーが検察官のふりをして、司法取引を決断させようとするが、キムは拒む。拒んだのだが、依頼人ボビーとのやり取りの流れの中で、結果上の依頼人の利益を考えて結局はジミーの汚い手に乗ってしまう。

メサ・ヴェルデコールセンター予定地で立ち退き拒否していたアッカーの件もそうだ。ケヴィンをハメようとするが思い直し、ブレーキを掛けるのだが、結局は暴走したジミーを許して、配偶者特権を言い訳に結婚までしてしまう。

 

 

チャックもハワードも、キムとジミーが一緒にいる事によって死に至った。ジミーとキムの、「一緒にいると毒になって周りを傷つけてしまう」因果なChemistryによるものだ。そしてチャックの元妻レベッカや、ハワードの妻シェリルまで不幸にしてしまう。他にもエルネストや縮小が決まったHHMの職員、メサ・ヴェルデやガトリン石油、D&Mにかかった迷惑も、「ジミーとキム」が発端だ。

 

思い起こせば、チャックの死の発端は、独立したキムにメサ・ヴェルデ案件を取り戻すため、ジミーが書類の住所を書き換えた事だ。

これはキムが居なければ起こり得なかったことであり、しかもキムはその事実を知りながら、ジミーに証拠隠滅を唆してすらいる。S2Ep09 39分頃だ。ジミーはこれを聞いてすぐコピー屋に走り、証拠隠滅を謀る。直後、チャックが店を訪れ、(S6Ep07のハワードのように)頭を打って入院する。

 

後にこの工作が原因となり、ジミーは弁護士資格を停止されてしまう。この事でチャックを恨み、弁護士保険会社にチャックの病気・失態を漏らし、ハワードとチャックの仲を裂く。ハワードは身銭まで切ってチャックの持ち分を払い、HMMからチャックを追い出してしまう。これがチャックを絶望させ、自殺に追い込むのだ。

 

まさに「ジミーとキムの化学反応」が毒をうみだし、チャックとハワードを死に追いやった。直接的な死因となったわけではないが、それでもだ。

ジミーはそれを見なかった事にしてキムとの生活を、幸せを望む。ジミーとキムは愛し合っている。お互いにそれは承知だ。しかし、キムは「But so what?」だから何?と。二人が一緒に居る事によって生み出される不幸にキムは耐えられない。

 

そしてそれを受け入れられないジミー。キムに勧められても精神科医にもかからず、チャックの死に対しても、ハワードのそれともまともに向き合おうとしなかった、向き合えなかったジミーは変わらない。

 

ここのすれ違いがジミーとキムの離別の原因だ。

 

キムがBrBaで姿を見せない理由について、「お互いへの愛情が無くなったから/無かった」「死んだ」「刑務所で服役している」「人消し屋で消えて、新しい人になりすましている」「カルテルのために働いている」「全てをジミーの責任にして、ジミーを裏切る」他、とんでもないものまでいくつもの仮説があった。

後出しで言うな、とはいわれそうだが、「死んだ」は個人的には一番遠いルートだと思っていた。「人消し屋で消える」というのも相当遠いのでは?とも。理不尽な死はキムには似つかわしくないし、ハワードで使ってしまってもいる。アルバカーキサーガが特に道徳的な業と報いを厳密に演出しているかと言えばそうでもないが、ジェシー・ピンクマンは生き残り、アラスカで第二の人生を送っている。ジェシーは5人の死に直接関与したにもかかわらずだ。エル・カミーノでは、いくらかの金さえ渡してくれれば死なずに済んだはずの悪党2人を殺し、その前には自分を地獄に追い込み、「飼って」いたトッドを。その前にはヘクター・サラマンカの甥、ホアキンを銃撃戦で殺している。最初の殺人はゲイル・ベティカーだ。ここまでの5人はみな、マイクが言う所の「in the game」

しかし、「一緒に居る事のシナジーで、他人を不幸に追いやってしまう」事が理由で別れることになるという予想は見た記憶が無い。こんなすれ違いが離別の原因になるなんて、自分には想像不可能だった。想像不可能だけど、提示されてみるとこれ以上ない、これしかないシナリオに思える。

 

ジミーとチャック

その一方で、変わらないジミーを作り上げたのはチャックでもあるのだ。チャックの2度の大きな裏切りと、その後の1度の大きな攻撃。

前者はHHMへの弁護士としてのジミーの参加を許さなかった事で、1度目は弁護士資格取得直後(S1Ep08 Teaser)、2度目はサンドパイパー案件をモノにした時(S1Ep09)。

後者はサンドパイパー案件でのジミーの逸脱を監視した事で、結局それが先に示したようにチャックの死にまで至ってしまう。

 

チャックはBetter Call Saul開始時点では、電磁波過敏症を患っていると思い込み、自宅に引きこもってジミーの助けによって暮らしている。チャックの孤独の要塞、外壁はベージュ色で窓枠は緑色だが、これはアルバカーキサーガのカラーコード*3による必然だ。ベージュが表すのは「イノセンスとは言えない」「少しだけ汚れた」、緑が表すのは「強欲」「嫉妬」だ。

 

チャックはいくつかのタイミングでこの緑の服を身につけもする。

S3Ep02最後とEp03 A1 ジミーを罠にはめ、ハワードと探偵を目撃者にし、警官を呼ぶまでのシーンがその1つだ。Ep02では屋内で暗いからあまり目立たないが、Ep02 A1では屋外に出てきて日光の下、セーターの緑を強く意識させる。

S3Ep09 HHMを訴え、払えない金額の持ち分を払うか、自分を引退させた事を撤回させるかの二択をハワードに迫る時には緑のエプロンを身につけて料理している。

 

チャックが弟への嫉妬をここまでこじらせた原因はなんなのか。

母の愛情を独り占めし(S2Ep10 Teaser) 、(元)妻からの好感も自分には得られないユーモア感覚により獲得する。一方で、チャックは寸借詐欺にふける弟とは違い、弁護士として社会的名声や地位を築いた。しかし、その高みから弟の更生を手助けしていたつもりが、その聖域にまで弟が登り追いつき侵食してきた。この事によるある種自己防衛的な反射運動でもあるのだろう。

 

ジミーの方からすれば、チャックは年がそれほど近くない、尊敬し愛する兄だった。少なくともS1Ep09で、兄の裏切りが発覚するまでは。

マルコと寸借詐欺で面白おかしく暮らしていたジミーは、「シカゴ・サンルーフ」により、意図せぬ性犯罪に問われ、更生を条件にチャックの助けを得る。

S1でのジミーは本当にチャックに献身的だった。S1Ep09で、ジミーが1年以上行ってきた毎日のチャックの世話リストをハワードに渡したシーンでも、ハワードが驚く程だ。

 

そして、2度の裏切りが発覚した後でも、「兄が俺をクズだと思っている。それは俺にはどうしようもない」(S1Ep10 A1)と、チャックを許す姿勢を見せている。その後チャックがジミーの粗探しをしなければ、弁護士資格の剥奪を目論まなければどうなっていたのだろうか?キムはHHMでメサ・ヴェルデを担当し、ジミーがD&Mで真っ当に働き、穏やかに暮らしていける道があったのか。それでもキムとの個人的な関係が続けば、結局は破滅の道を歩くことになったのか。無かったのが2度目の裏切りなら?1度目の裏切りなら?考え始めると止まらない。ずっと妄想している。

 

 

Better Call Saulでのジミーの「悪事」はS1Ep01のひき逃げ偽装計画から始まっている。これは経済的な困窮から、犯罪者であるケトルマン夫妻から金を巻き上げようとしたのが発端だ。ジミーがHHMで弁護士として働けていたなら恐らく経済的な困窮は無かったのではないか?そうすればトゥコとの邂逅も、ナチョとの関係も無かったはずだ。それでもキムとの関係が続いていれば破局に至ったのだろうか?

 

ケトルマン夫妻からは結局、実質的な口止め料として金を受け取ってしまったが、最終的には全て返してしまった。S1での悪事は、あとはハワードへの嫌がらせ看板の件と、あとはEp10でのマルコとの寸借詐欺だけだ。

 

チャックへの態度も、S3Ep02でチャックの罠にハマるまでは、兄弟としての忠誠心・思いやりは失っていない。S2Ep09ではコピー屋で電磁波過敏症の発作を起こして頭を強打したチャックを覗き見していて、自分に不利になる事もかえりみず駆け付けている。S3Ep10ではもう一度チャックに歩み寄ろうとまでしたが、拒絶され、その数日後チャックの自死に至る。

S3Ep01でチャックの家の「電磁波防護」のシート類をはがす時のテープの巻き取り方も、ジミーは無意識に取り入れ、S3Ep02で共同事務所の壁のマスキングテープをはがす時に同じやり方で巻き取っている。チャックとのこれからの裁判での戦いについて、キムが話している時だ。この後、すこしテープの巻き取りにつまづいて一瞬止まり、怒りがこみあげてきて一気にはがしてしまう。それまで綺麗にWMのラインが現れていたのに、一気にはがしたところでは線が歪んでしまっている。このシーン本当に印象的で大好きなシーンだ。ジミーのチャックへの愛情と恨みが入り混じり相反したシーンだから。

また、S1Ep04やS1Ep10でマルコとやる酔いつぶれた馬鹿の偽時計で金を巻き上げる詐欺。酔いつぶれたマルコへ送るサインになるのが「狼の遠吠え」だ。これは酔いつぶれたマルコが歌うDeep Purpleの「Smoke on the Water」にちなみ、おなじDeep Purpleの「Hush」からきているとされている。勿論これはそうなんだろう。しかし、これにはもう一つ、チャックへつながるリンクがある。直前に言及したS3Ep01でチャックの家の「電磁波防護」のシート類をはがす時にでた、「The Adventure of Mabel」だ。このシーズンの最終話S3Ep10のTeaser フラッシュバックで、子どもの頃に夜、テントで、「ランタン」の灯りの下で、この「The Adventure of Mabel」をチャックが読み聞かせるシーンで、「狼の遠吠え」をしているのだ。

更に、まとめの前に書いたが、本エピソード(S6Ep09)を締めくくる「Let justice be done, though the heavens fall.」という言葉は、S3Ep05でチャックが一言一句同じ言葉をジミーを罰しようとする場面で使っている。チャックの口癖の1つだったのかもしれないし、偶然の一致なのかもしれない。どちらにせよ、制作陣からのジミーとチャックとの繋がりを強調する演出であることは明らかだが。

 

 

ジミー・モーガン・マッギルをソウル・グッドマンに変貌させた最大の要因はキムなのだろうが、2番目に大きな要因がチャックなのは疑う余地が無いと思う。

 

 

ソウル・グッドマン

初めて「Saul Goodman」という言葉がでてくるのはS1Ep04 Teaserフラッシュバック、シセロでマルコと悪さをしているSlippin' Jimmy時代のエピソードだ。単なる偽名に過ぎなかったこの名前は、「Saul Goodman Productions」や使い捨て携帯売りとしての名前を経て、S4Ep10でついに弁護士としての屋号にまでなる。

 

しかし、S5でラロの弁護や、その保釈金の運び屋をする事によって、ジミーからソウル・グッドマンへの変身は加速しはじはしたが、まだまだBreaking Bad時代のソウル・グッドマンとはまだ大きな隔たりがあった。

S6に入り、ラロとの関係が事実上バレた事で検事や裁判所職員達からの軽蔑を得、また同じことがきっかけで「Salamanca's guy」としての名声とそれに引きつけられた新たな顧客たちを得た。スプリットモールの事務所もついに手に入れ、フランチェスカへの傲慢な態度も見られるようになった。キムとのScumを進める中で、ジミーの良心が描写されることは全く無くなり、キムとの別れで遂にソウル・グッドマンに至る最後の崖を飛び降りたのだ。

 

 

S6Ep01 Teaserでは、キムの持ち物だったものがソウルの屋敷にあった事が描写されている。豪華な棚から零れ落ちたサフィロ・アネホのボトルストッパーと、キムのアパートのソファの後ろにかかっていた風景画だ。

どうしてこの2つがソウルの屋敷にあったのか。それが本エピソードS6Ep09で明らかになったといえよう。「キムが手放した」のだ。

 

サフィロ・アネホのボトルストッパーは、S2Ep01で手に入れてから、ずっとジミーとの関係の思い出の品としてキムが大切にしてきたものだ。S5Ep09でS&Cを辞めた時も、オフィスの私物は送るように言っておいたが、これだけは自分の手で持って帰った。この思い出の品を、キムは持っている事ができなくなった。

自分がジミーとまき散らした毒のせいで、ハワードの死を招き、関係者の不幸をへと誘った象徴になってしまったからだ。ジミーとの関係を後悔する気持ちがあるかは分からないが、キムはもう思い出したくないという事なのだろう。

 

一方で、ソファの後ろにあった風景画。これはS6では、ハワードをハメるための作戦ボードとなり、裏にたくさんの付箋が張り付けられていた。こちらもキムにとっては忌まわしい思い出で、手放したくなるのは当然だ。しかも、S6Ep07ではハワードの頭から飛び散った血が掛かっている。実際にその血を拭きとったのはジミーやキムではなく、マイクの部下だから、その部分の心理的抵抗はすくないとはしても、これがソウル・グッドマン邸にあったのは何故か。

 

 

ジミーはキムとの思い出を捨てられないからだ。

 

 

Breaking Bad S3Ep02で、ソウルがウォルターに会ったあと、車で悩むシーンがある。
ウォルターはS2Ep13でスカイラーに、手術代を自分で工面したのにシュバルツ夫妻に出してもらったと嘘を付いた事、メスを作る間の言い訳として母親に会いにいったという嘘がバレ、別居・離婚を迫られる。

ウォルターが一人で住んでいる家にソウルが様子をみにきて、スカイラーは警察に垂れ込んだりはしないと励ますのだが、ウォルターは家族を失う事が絶えられないと弱音を吐く。その後もブラブラと軽口をたたき励ますのだが、アパートを出て自分のキャデラックの運転席に座り、深いため息を吐くのだ。これがキムを想っての嘆息であることは今となっては自明である。

Breaking BadではS2Ep08で初登場して、ソウルの登場は5エピソード目だが、こんなシーンを「置いて」おく制作陣に戦慄する。Breaking Bad内では回収されない場面なのだ。また、Better Call Saulのオンエア開始は2015年「2月8日」である。

Better Call Saulは、ただでさえ名作中の名作であるBreaking Badを更なる高みへと押し上げる圧力であり、それ自身もまた何に劣る事の無い傑作中の傑作でもある。

 

 

S6Ep01エル・カミーノダイナーでキムが語った「ソウル・グッドマン像」。Flair(洒落た)でShowy(派手)な国産車。Good Location(良い立地)にあるSomething eye-catchingな(目を引く)事務所。A cathedral of justice(正義の大聖堂)。

これらはソウルの愛車キャデラック ドゥビルや、事務所の上のバルーンの自由の女神、執務室の大仰な柱や壁に描かれた合衆国憲法前文として実現されている。

 

これらが示すのは、ソウル・グッドマンはキムとの思い出を糧として生きているという事だ。直接は語られなかったが、悪趣味なほどに派手なソウル・グッドマン邸も、ジミーが思う「キムの理想のソウル・グッドマン像」を実現したのではないか?

 

本エピソード(S6Ep09)最後の5分で描かれたBreaking Bad時代のソウル・グッドマンは、障碍者用スペースに駐車し、偽の障碍者マークを掲げる。それでいて自由の女神を屋上にかざり、自らを「アメリカ精神を体現する男だ」(I'm a Yankee Doodle Dandy.)とうそぶき、誰にも憚らず「WORLD'S GREATEST LAWYER」のマグカップでコーヒーを飲む。

 

S6Ep01 Teaserでは、ソウルの薬の一つにバイアグラがあった。ジミーはキムとの関係が始まって(S2Ep01)からは、他の女性とは一度もデートすらしていないし、色目を使う程度の事すらしていない。娼婦との性行為はキムを忘れるための代償行為なのか、それともこれまでもがキムの理想のソウル像なのか……?キムはソウルとの未来も思い描いていたはずだから、流石に後者では無さそうではあるか。

 

結局のところ、全てはゼロか1かではないのだな。自分は単純なので、「全てはキムの理想のソウル・グッドマン像を演じているだけなのだ」という説を唱えてきたが、S6Ep06ソウルの事務所の裏口に、「あのトイレはそのままにしておいて」と言われたトイレが捨てられていた時に薄々感付いていたことではあるが。

 

(追加)

このドラマが始まった時、ジミーは視聴者の共感を非常に強く呼び起こす存在だった。弁護士でこそあるが、ネイルサロンのボイラー室を事務所兼寝床とし、無料弁護で勝ち目のない犯罪者達の弁護をする。仕事以外にも、病気で家から出られない兄の面倒をみている。仕事の営業にも苦労し、詐欺師一家を探しに山にまで入る。ヒーローになる小細工で少し有名になれたと思っても、自分の国を作り自分の発行した通貨で支払いをしようとするイカレ野郎や、子どもに卑猥な喋る便器を売り込もうとするクライアントたちに苦労し、やっと見つけた高齢者相手の商売。そして偶然も味方して巨額報酬が確実な集団訴訟案件を見つけるも、兄の裏切りにあい外される。

こんなキャラクターに共感するなって言う方が無理というものだ。Breaking Badでのソウル・グッドマンも楽しい、面白いキャラクターではあるが、恐らく共感できるのはジミーだという人の方が相当多いだろう。そんな愛すべきキャラクターが、兄に認められる事を諦め、兄を殺す原因を作り、最愛の人を失ってソウル・グッドマンになってしまった。

少しズルはするけども、基本的には「良い人」でシンパシーを抱きやすいジミーから、世の中を舐め切った態度で、口八丁で立ち回る金回りのよい悪党が雇う弁護士ソウルへの変身を喜ぶ人がいるだろうか。ジミー役のボブ・オデンカークですら、ジミーは好きだけどソウルは好きじゃないとインタビューで答えてるのを見た記憶がある。

こんな苦痛を視聴者に与えちゃうの?なんで?と問わずにはいられない。

(追加終わり)

 

ソウル・グッドマンを最後に産み落としたのはキム・ウェクスラーだ。そこまで導いたのがチャック・マッギル、チャックへと導いたのがマルコという流れになるのだろうか。

「ソウル・グッドマン」は、キムが居なければ現れなかったし、逆にキムが居たままでも現れなかったのだろう。キムというSoulmate、Better Halfを失った空虚さが、バッジャーやジェシー、マイクらを殺す提案をした事まである、人の死すら弄んでしまう「ソウル・グッドマン」を生んだのだ。

 

 

残りの4話で描かれる事

これから回収されるべきネタ*4で、残っている重要なものは以下の4つ。

  1. タクシードライバーのジェフ
  2. S4Ep05Teaserで語られた11月12日の午後3時にフランチェスカに掛かってくる電話
  3. S6のシーズンアートの赤いジャケットを羽織るジー
  4. ジェシーとウォルターの再登場

2と3は繋がってる可能性が高く、1と4は独立してる可能性が高いように思える。

基本的には最終的なゴールに繋がるのは3で、付随して2も、ということになるのだろう。4についてはまだ想像がつかない。

 

これからのドラマのタイムラインがどうなるのかもまだ定かではない。本エピソード最後の5分は明らかにBreaking Bad時代だが、これがただのフラッシュフォワードでまた戻るのか、戻らずにまだソウル・グッドマンが人消し屋を使わない時代の話が続くのか、人消し屋以降つまりジーン・タカヴィクになってからの時代が描かれるのか。

 

ただ、これまでこのドラマにおいて、各エピソードのTeaser(Better Call Saulのタイトル画面よりも前の部分)以外での幅の大きなフラッシュバック/フォワードが使われたのはマイクの過去が描かれたS1Ep05 Five-Oだけで*5、それもフラッシュバックのみだった。これを考慮すれば、最後の5分がただのフラッシュフォワードでまた戻るという蓋然性は極めて低いのではなかろうか。

 

(追加)

一つだけ確かな事があるのを忘れていた。フランチェスカに頼んだ電話のネタは、あきらかにBreaking Badタイムラインで仕込まれなければならない。わざわざジーン時代に行ってフラッシュバックするのも不自然なので、最低限このネタの仕込みだけは本エピソードから近い時制で続けてやってしまうのではなかろうか。

(追加終わり)

 

 

11月12日午後3時の電話については、個人的にはS4Ep05放映直後から、これはもうキムからの電話しか無いだろう、と思っているのだがどうだろうか。同様に、ジーン・タカヴィクが赤いジャケットを羽織るのも、キムのため以外の選択肢が思い浮かばない。こういう予想を軽々と上回って別の方向性を出してくるのが、アルバカーキ・サーガの制作陣なので、この予想が外れても不思議は全く無い。

 

 

ここまで、何とか少しでも形になるように整形しながら吐き出した文章を纏めてきた(否、全くもって纏まっていない)が、いくら吐き出してもまだ足りない、まだ吐ける。書き忘れている事もきっといくつもあるだろう。しかし、ここで立ち止まりすぎないために、あえてここで区切りを付けよう。

 

 

これほどまでに完璧に、「ソウル・グッドマンの誕生」、そして「ジミー・モーガン・マッギルのブレイキング・バッド」を描いてくれた制作陣には本当に感謝しかない。

このドラマを(Season4からではあるが)リアルタイム視聴出来た事にも感謝しかない。

特にSeason5以降の、週1エピソードずつ進むリアルタイム視聴は至福の限りだった。一気見も嫌いでは無いのだが、ここまで考える事が多い作品だと、1エピソードにつき1週間考える時間が貰えるのが本当に嬉しかった。

「最高級の酒」をダイエットコークで割ったり、一気飲みしたりしないのと同じように、大切に味わえた事に感謝したい。

残りのトピックスを回収するのに4話というのは多いようで実は多くは無いのかもしれない。ここまでの完成度を見せつけてくれた制作陣がクロージングに出してくる4話にはこれまで最大の期待をしている。

 

Better Call Saul S6Ep08 感想 (含: ネタバレ) (last updated 20220717)

本エントリは、ベターコールソウルS6Ep08や、Breaking Badへのネタバレ記述がふんだんに含まれる。未視聴の方は読まない事を強く推奨する。

 

 

振り返り

どこかの砂浜

波の音と砂浜でもう察してしまえる。Ep03と同じ、フラッシュフォワードでのちらつかせ。勿論靴やNAMAST3ジャガーでこちらの方が明示的ではある。
 本エピソードの脚本家であるゴードンスミスによれば、このシーンがシリーズ全体で一番最後に撮影されたシーンであるらしい*1

該当記事では今回のハワード陥れる件について、キムの中でどう認識されているかの記述もあり、なかなか興味深い。絶対的真実と言うわけでもないが、脚本家の言う事でもある。また、放送前の本人のインタビューでも、キムを演じるレイによる、キムへの想いが一部明かされているので興味があれば是非見てほしい*2

 

 

キムのアパート

ろうそくの炎から入るのが流石。ラロは腹案も無しにキムのアパートに押し入ってハワードを殺したわけではなかった。ガスの暗殺代理をさせる……?しかもキムに?まだここでは納得がかない。

 

ラロが話をするシーンでのジミーとキムの態度が印象的。Ep04でマイクが言ったように、キムの方が肝が据わっているかと思っていたら、ここでは逆にキムが強くおびえ、ずっと過呼吸みたいな感じになっている。一方、ジミーが腹を決めて落ち着いてラロと交渉している。

ジミーはキムに殺人をやらせようとしたのではなく、自己犠牲の上で逃がそうとしているように思える。

 

キムが出かけた後で、ラロは「自分を殺す手引きをしたナチョがお前を紹介したのだ」といい、ジミーはそれには関わっていないと激しく抗弁する。これがBrBaS2Ep08での
「No, it wasn't me. It was Ignacio. He's the one.」「Lalo didn't send you? No Lalo?」というセリフの理由、「ラロへの恐怖の大きさ」を回収する。

 

また、金魚の水槽のエアポンプが前のエピソード時よりも間隔が少し遅くなっている(3秒→4秒強)。エアポンプについてはまたいつになるか分からないが、別エントリで纏めたい。

 

 

ガス邸

ガス邸の前で車を止め、銃とカメラを手に玄関に近寄るキム。しかし、S6Ep04で示されたようにガス邸は監視下にあり、しかも中に居るのは影武者だ。ここまで思い出せたらラロの意図もほぼ判明する。陽動だ。

 

案の定、キムは後ろからきたマイクに拘束され、家の中に連れ込まれる。

BrBaS4Ep02 A3で、ガスを殺すために訪れたウォルターが、気配も無いのに「帰れ」と電話を受けるシーンを思い出させる。

 

キムは、ラロに銃なんて触った事もないと言ったが、扉が開くときには銃を構える。ジミーもキムも、お互いの為なら自分の命も殺人という罪も厭わない事が示される。キムもジミーの逃げろという意図には恐らく気づいていたはずだ。

お互いへの忠誠心の強さについては、ケトルマン夫妻を思い出させる。

また、この玄関越しに銃を構える構図はBreaking Badでジェシーがゲイル・ベティカーを射殺したシーンを思い起させる。もっともジェシーは遂行し、キムは未遂に終わるわけではあるが。これが本エピソードのタイトル、「Point and Shoot」と最も結びつく既発表エピソードではなかろうか。※前半のエピソードタイトルについての解説*3

 

見かけたネタだが、「Point and Shoot」は寧ろ先のBrBaS4Ep02で、ウォルターが「出来なかった事」の方が正解なのかも。

BrBaS4Ep02のタイトル「Thirty-Eight snub」snubは拳銃の事で、ウォルターがガス暗殺の為にこのエピソードTeaserで武器密売人から購入し、このシーンでも懐に忍ばせているものだ。

ウォルターがガスに「できなかった」「Point and Shoot」を、過去ガスは強敵ラロ相手に成し遂げていた。

 

キムの話の内容に違和感を覚えたガスは、キムと電話越しに話す。そこで「ラロが説得されて夫の変わりに自分を寄越した」と聞いて全てを察する。これは陽動で、スーパーラボの証拠をつかみに行ったのだと。そしてガスはそこへ向かう。

 

 

ベターコールソウル公式Twitterが、このシーンで「キムは撃てたと思う?」と題し、動画をツイートした。

もしマイクに阻止されなければ撃っていたか?という問いに対して、レイは「その問いに答えるつもりはないが、自分の中ではこうだという考えは持っている」とだけ答える。ここで答えさせてしまうと興醒めする人も多いだろうし、この答えが100点満点だと自分は思っている。そのうえで、キムなら撃っただろう、とも。

 

これを書いている時点で20件ほどの引用RTがあるが、その中で判断を書いている人は皆「撃っただろう」と答えていた。リプの方を数十件見ても、一様にYESだ。多分レイの答えもそうなんだと妄想している。

 

 

洗濯工場

スーパーラボ上の洗濯工場で、ラロはガスの護衛を皆殺しにする。護衛が防弾ベストを付けてないのは少し気になる……

 

 

キムのアパート

マイクの手下の一人が狙撃銃でキムの部屋を覗く。S5Ep09ではマイクがしていた事だ。この手下はS6Ep02のA4で、養鶏場のオフィスを襲撃者に備えて監視していた狙撃手でもある。


キムのアパートの階段を駆け上がるマイク達を追うカメラは極端なローアングルと激しい揺れで後を追う。このカメラの揺れはBetter Call Saulではあまり使用されないが、Breaking Badではおなじみだったもので、S5Ep08 Bagmanでも銃撃戦シーンの一部で使われた。このエピソードもヴィンスギリガン監督ゴードンスミス脚本の回である。


キムのアパートでは、ジミーから「ラロはキムが出発してすぐ出ていった」と聞いたマイクも全てを察する。

 

 

洗濯工場/スーパーラボ、ロスポヨスエルマノス

防弾ベストの上からガスの胸を撃つラロ。階段からガスを蹴落とすのといい、いたぶりかたがラロらしい。

そして最期の演説を求めるガスと、応じてビデオに収めるラロ。カメラはS6Ep05で描かれた、緩めた電源ケーブルコネクタと重機のキャタピラに隠した「チェーホフの銃」を映しながらガスの演説を追う。

そしてヘクターを喋れない状態にして生かしたのは自分だとも告白する。これはEp03のナチョの演説を強く想起させる。

 

そしてコネクタを蹴って明かりを落とし、隠した銃へ走る。銃撃戦で勝つのは勿論、100%proofのプロットアーマーで守られたガスだ。ゴボゴボと口から血を吐き、事切れるラロ。ガスも腹に手傷を負い流血している。

 

この究極の緊張シーンからの場面転換で、ポヨスエルマノスに出勤するライル君。お気楽な勤務先のCMソングを歌ってる。緊張の緩和。ドンキやソフマップのアレと同じ。

 

ガスの傷は浅く、貫通銃創で大事には至らなさそうなことも描写される。

ガスはマイクに文句を言われるが、ガスの反応は嘘くさい。ラロがスーパーラボに行った事は確信していたはずだ。マイクは「知っていればもっとうまく対処できたはずだ」というが、それに首肯するガスを見ても本心とは思えない。

Breaking Badでも、マイクはガスへの「絶対的な」忠誠があったようには見えない。

BrBaS3Ep12では、ソウルの部下であることは一種の隠れ蓑で、ガスの部下であることをウォルターに打ち明け、そのボスにも言わずに「同業者としての忠告(professional courtesy)」に出向いている。また、BrBaS4Ep01でのヴィクター処刑時(場所は同じスーパーラボだ!)、マイクはガスにとっさに銃を向けている。

 

 

キムのアパート

ジミーの水槽横にマッカランのラベルが映り、18年物である事が明らかに!「今」日本で買うと7万円前後だ。2004年当時なら数割は安かったのではなかろうか。90年代の値段を思うと日本では(日本に限らないか)わりと値上げ幅の大きいブランドだとおもう。

殺人現場で直前に飲まれた酒が映るのはS6Ep01でもあった。ラロ邸で映ったルイ13世デカンタだ。

 

ジミーが待つキムのアパートに、キムやマイクが帰ってくる。
マイクはラロが帰ってくることを心配するジミーに「He is not coming back」という。これは2度目のラロ死亡通知だが、1度目が事実でなかった事もあり、ジミーが疑う余地となり、BrBaS2Ep08での「Lalo didn't send You?」となる。

マイクが2人に「座れ」と言うのは冒頭でラロが言っていたのと同じだ。

何もなかったように、ハワードの死とは一切関係がないように振る舞えと言われ、同意するジミーとキム。ハワードは、直接2人が殺したわけではないが、死ぬ原因の1つを作ったのは間違いなく彼らだ。キムは最初の、そしてジミーはチャックに次いで2つ目の十字架を背負う事になる。

 

そしてハワードの死はジミーとキムが作ったお話の延長線上で「処理」される。夫婦仲をこじらせ、コカイン中毒で失敗した弁護士として入水自殺。ハワードの社会的名誉は回復されない。この様子では、クリフ・メインももう2人を追及することはないのだろうか?

 

 

スーパーラボ

ショベルカーで穴を掘るタイラス。彼はBreaking Badでもフォークリフトを自在に操っており、そちらの方面の経験があるのだろう。

そして並べられたラロとハワードの死体。マイクはTeaserで示された財布・結婚指輪・靴を回収して、穴に入れる際には「Easy」と声をかける。ハワードを悼む様子はうかがえるが、ラロと同じ穴に埋めてしまうことについては個人的に激しい憤りを隠せない。

 

とか言っていると、ハワードの中の人がこんなツイートを。

メタ的には笑ってしまうんだけど、ドラマにのめりこんでるとうわあああああってなってしまう。

 

 

予想との乖離

個人的には、可能性としては小さいことは承知で、ラロはBrBa後まで秘して生き残り、シーズンアートで赤いジャケットを羽織るジーン=ジミーは、ラロによる窮地からキムを救うためではないか、という万馬券的大穴の説を唱えてきた。

 

これはあっさり裏切られ、ラロの死がはっきり描かれてしまった。これを何らかのトリックで錯誤とするような制作チームではないので、ラロの死亡は揺るがない。

 

となると、残りの5話で何が描かれるのか。これが想像力不足の自分にはほとんど想像がつかない。自由の女神関係でケトルマン夫妻、黒い手帳関係で獣医カルデラの再登場はそれなりに濃厚ではあるだろうが。ウォルターとジェシーの登場の仕方も全く未知数である。

一つ回収すべきネタの方でも忘れていた事がある。ジミーとキムが共同事務所から退去する時に、ジミーが捨てようとした老人たちの名刺ホルダーだ。これが出てくるかどうかはフィフティ・フィフティよりも分が悪いとは思っているが、残りの5話でもしかしたら出てくるかもしれない。どういう形になるかなんて想像もつかないが。

(以下20220717追記)

もう一つ忘れていたが、裏をハワードを陥れるための作戦ボードにしたソファの上の風景画、殺された時に血しぶきがかかってる。血は恐らくマイクの手下たちが綺麗にしたんだろうが、あの絵がS6Ep01Teaserのソウル逃亡後の屋敷で運ばれているのがまだしっくりこない。いわばジミーとキムにとってはハワードを殺した准凶器、とまでは言わないが、ハワードの死への責任を思い起こさせるアイテムであるはずなのに。

 

一方、ガスとカルテルとの因縁で回収すべきイベントは全て済んでるように思う。基本的には弁護士サイドと、ジーン後で残り5話費やされるのだろうか?ジーンとなった後の話に使われる尺が1~4話と仮定すれば、Better Call Saulタイムラインで使えるのは4~1話と言う事になる。どういったバランスになるんだろうか。自分はジーン後は2話位じゃないかと思っているのだが。Rollingstoneの記事*4では、「at least one, if not more」と書かれている。

 

 

ヴィクター役のジェレミア・ベツイが、「シーズンはいつも通り素晴らしく、予測不可能な方法で締めくくられる」と語ったそうだ*5

 

今の段階では殆どの人にそんなわけないだろう、と一笑に付されるような筋書きを、説得力のある形で描いてくれるのではないか。そして、それは放送直後には混乱を生むが、やがて幾通りかの説得力のある解釈が得られ、「やっぱりこいつら(制作陣)にはかなわねえな!」と言わせてくれることを期待、そして確信している。

 

 

ベターコールソウル 最終シーズン後半開始にあたって これから回収されるべきネタ

7/12にBetter Call Saul最終シーズン後半がスタートする。それに向けて、未回収のトピック(漏れも必ずあると思う)と、それについてのちょっとしたコメントを。

 

ジミーとキム関係

ソウルが所有する事になるもの

  1. キムの持ち物 アパートのソファの上の絵(ハワードが殺された時に血しぶきがかかってるのに)
  2. キムの持ち物 サフィロ・アネホのボトルストッパー
  3. 王国への鍵 獣医カルデラの黒い手帳
  4. ケトルマン夫妻所有 バルーンの自由の女神

 

キムの行く末

BrBaにおけるキムの不在の理由は?

 

収監説・死亡説・人消し屋利用説などあるが、Breaking Bad時点での死亡説はそれなりにオッズが高い(可能性は低い)と思われる。

BrBaS3Ep02、ウォルターから離婚の話を聞いてソウルは「通報の心配は無いからメスを作れ」と言うがアパートを出てから車で意味深な溜息をつくシーンがある。2回目までの結婚を思い出してるのか、3回目の結婚を思い出しているのか。

 

S4Ep05Teaserでは、S5までのEp01Teaser以外で初めてBrBaタイムライン以降のフラッシュフォワードが描かれる。その中でソウルが言及した11月12日の午後3時フランチェスカに掛かってくる電話とは?

 

フランチェスカを性的に見るBrBaソウル

ファンの間でどういう事だ?とよく話題に上がる、BrBaS2Ep08で事務所を閉めてフランチェスカの後ろ姿を見ながらソウルが言うセリフ。

God, you are killing me with that booty. (字幕: あのケツがたまらん)

ジミーの女性遍歴で描かれたものは、S1Ep03、トゥコから解放された直後のデートと、S1Ep10でマルコと一緒に引っ掛けた女性、そして過去2回の結婚相手と、現在の結婚相手キムの5人だけだ。過去2回の結婚相手の容姿は分からないが、その他3人の容姿はフランチェスカとは相当傾向が違う。

 

脚本家・監督の一人、Tom Shcnauzはこんなツイートをしている。

 

ソウル自身がBrBaで再登場したり、自分自身のスピンオフ番組を持ったりする前のセリフに注目されている。制作陣はパズルのピースを繋げるために全力を尽くします、みたいな意味だろう。
    
これ以外にもソウルは、BrBaS4Ep12で、「H.T. /Honey Tits(巨乳ちゃん)」呼びして、フランチェスカに「次言ったらネクタイで絞殺してやる」と言われてる。フランチェスカへの高圧的な態度はだんだん強まってきてはいるが、性的に見ている描写は一切ないので、ここをどうつなげるのか。

 

ハワードの死体の処理

失踪・行方不明という事にして死体を隠すのか、自殺に見せかけるのか、それ以外か。

ラロの人脈は使えないが、ジミーとキムだけで処理するのか、マイクかその他の獣医人脈を使うのか。

 

昼食会ドタキャンの影響は

キムなりに勝算があって車をUターンさせたのか、ノープランだったのか……

 

クリフ・メインの動向は?

「ジミーを良く知るもの」としてのクリフが、ハワードの死後、Ep07でのハワード失態についての主張について何もしない事がありうるか?

 

「ラロの手下だろ?違うのか?」

BrBaS2Ep08で、目出し帽姿のウォルターとジェシーに荒野に連れていかれた時にソウルが発した言葉。BcSに繋がる発言は2つあり、この前に「私じゃない、あれはイグナシオだ」というセリフもある。

No, it wasn't me. It was Ignacio. He's the one.

 

Lalo didn't send you? No Lalo?

この事から、ジミーはBreaking Badタイムラインまでに、ラロにとって何か不利な事をするのか、したと誤解されるようなイベントが起きる必要がある。また、それをイグナシオ=ナチョのせいにしているが、この2つの発言のどこまでが本当の事で、どこまでが口から出まかせなのかも不明だ。何せナチョはS6Ep03の時点でもう死亡済みだから。

 

Post Breaking Bad

タクシードライバーのジェフ

逃がし屋に「自分で何とかする」と電話したシーンで終わってる。

I'm gonna fix it myself.

直接Jeffに危害加えるのか(オッズはかなり高い)、口先でなんとかするのか、自分で逃げるのか、開き直るのか。

 

シーズンアートの赤いジャケット

ジミーは誰のために、何のためにあの赤いジャケットを着るのか?

個人的にはキムのため以外にあるのか?と考えているのだが。

 

裏社会(カルテル)関係

カルテルとガスとの関係

BrBaでは、特にカルテルサラマンカとガスとの関係の悪さは最初は見られない。カズンズがウォルターを殺しに家に(気づかれなかったが)押し入った時も、マイク→ガス→ボルサ経由でガスの話を聞く姿勢がある。ヘクターの命を救った事、ラロ殺害の主犯ナチョ(勿論実際は違う)を引き渡した事等によるものか。

こういう状況を踏まえると、S6Ep07で撮影されたラロのビデオレターはドン・エラディオには渡らないのだろう。

    
スーパーラボの「チェーホフの銃」

ガスとラロの対決が予想通り行われるのか、イレギュラーがおきるのか。

 

ラロの運命

BrBaで明らかになっている事は「ガスがラロの死を確信している」事、「ソウルがラロの死を知らない」事。そして、サラマンカはラロが姿を消したことについてガスの責任だとは思っていないだろうことだ。

 

Redditでは、Breaking Bad S3Ep10でウォルターを悩ませた蠅が、スーパーラボの地下に埋められたラロの死体からわいたものだ、なんて予想がミーム化してもいるが果たして。

 

 

その他

ジェシーとウォルターの再登場

「くだらないカメオ出演にはしない」という制作陣の言葉は信じていいと思う。

 

HHMはどうなる?

解散するのか、それとも……

 

 

 

 

 

Better Call Saul S6 Ep08は、日本では7/12にNetflixで配信される。

Better Call Saul Season6前半における繰り返し演出・自己言及 (LastUpdated 20220714)

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep07まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

本ブログ最初のエントリでも言及したが、Better Call Saul/Breaking Badにおいては、繰り返し描かれる出来事や、自己言及が作品世界・ストーリーに深みを与える大きな役割を果たしていると考える。繰り返しは印象を深め、またその際の差異を強調する効果もある。そのため、最終シーズン前半における繰り返しや自己言及を纏めるエントリを作る事にした。

基本的には同一カテゴリのイベントで、最後におきたエピソードのセクションで言及する事にした。

なるべく意図がはっきりしたものばかりを選んだつもりだが、中には単なるストーリー上の流れでそうでないのもある。

 

 

引用について、法で認められた要件を満たすためには、引用部と非引用部では後者の比重が大きい必要があるそうだ。字幕入りのキャプチャ画像だけで纏めようとしていたが、それでは要件を満たすとはとても思えないため、直接引用しないでいい部分についてはなるべく引用しないで記述する事にした。

 

Twitter上で、同じような事をやっておられる、「kat! (@gilliverse)」というアカウントがあり、先にこちらのツイートで気づいたものに関しては、該当ツイートをリンクする事にした。Reddit等のネットで気づいた情報もあるが、細かく覚えていないのでそちらについては言及しない。

 

本記事においては、「本エピソード」という場合、属するセクションのエピソードを指し、「このエピソード」という時は、直近に示したエピソードの事を指す。

また、S○Ep○○という形でエピソードを指定する時はBetter Call Saulのエピソード、前にBrBaと付けた時はBreaking Badのエピソードを指す。Teaser A1~4はそのエピソードの中でさらに位置を指定する際に用いる。

 

また、Season6のタイトルがBetter Call Saul/Breaking Badとの関連を示すことについては別エントリ*1で示しているので割愛する。

 

あまりに膨大になったので、目次をざっと眺めて気になった部分だけチェックするのが良いかもしれない。

 

 

Episode 1

サフィロ・アネホのボトルストッパー

Teaserの最後、大きな棚の扉からこぼれ落ちるサフィロ・アネホの薔薇の蕾のようなボトルストッパー。

 

これは勿論S2Ep01で、ジミーとキムがヴィクターとジゼルという名前でケンに奢らせた時の記念品だ。

S5Ep09で、S&Cを辞める時に、わざわざ自室へ戻って取りに行った思い出の品でもある。

 

その他、本エピソードのTeaserが示すイースターエッグについては、別エントリでもしめした動画*2を参照されたし。S6ではじめてでてくるが、本Teaserで先に出てくる、逆イースターエッグについてはまた別エントリで。

 

 

World's 2nd Best Lawyerトラベルマグ (updated 20220625)

本エピソードで、World's 2nd Best Lawyer Againのトラベルマグはキムがゴミ箱に放り投げる。

 

S5Ep08で、ジミーは愛車Esteemを窪みに落とす前に、このトラベルマグを車から持ち帰る。 (updated 20220625)

車から穴の開いたトラベルマグを回収するジミー

 

S5Ep01で、キムはジミーに「World's 2nd Best Lawyer Again」のトラベルマグをプレゼントする。

 

S2Ep02で、キムはジミーに「World's 2nd Best Lawyer」のトラベルマグをプレゼントする。

 

 

依頼人を陥れる犯罪者 (updated 20220625)

エル・カミーノダイナーで、キムがジミーにお金持ちの子が、キムのクライアントに強盗の罪を擦り付ける話をする。

 

S5Ep02 A1で、ジミーがアイロンをかけながらクライアントと電話している。その内容も、Bモーという人間が「依頼人に薬物を買うように迫られた」と言っているが、「実際はBモーが依頼人に売りに来たのだ」という話をしている。(真偽不明)

 

S5Ep10 避難先のホテルのベッドで、キムはジミーに「富裕層の弁護を 普通の人に提供するの」と言っている。 (updated 20220625)

 

 

蟻のアップ

A2 ラロ邸襲撃犯の指の上にいる蟻のどアップシーンから始まる。

 

蟻のどアップと言えば、S5Ep03 Teaserだ。前エピソードで落としたアイスにたかる蟻のどアップから始まる。

 

 

カズンズの行進

カズンズが2人並んで歩くだけで絵になる。本エピソードではラロ邸へ入っていくシーン。

 

S5Ep08 Teaserでは、フロント企業的な車の修理工場の入り口から、ラロの保釈金を取りに行くシーンで並んで歩いている。また、A1ではその金の入ったバッグをジミーに渡すシーンで並んで歩いている。

S4Ep03 A1では、襲撃されたナチョの車へ2人並んで歩いている。

 

BrBaS3Ep07 モグリの武器商人から防弾チョッキを買うシーン。特に帰り。

 

BrBaS3Ep02 A2では、カーサ・トランキーラの広間に入り、ヘクターの元へ並んで歩いている。また、A4では、ウォルターの家の中に入っていくシーン、家の中をウォルターの方へ向かうシーンで並んで歩いている。

 

BrBaS3Ep01 Teaserでは、歩いてはいないが、ならんで這いだすという「一体何がはじまるのか?」と思わずにはいられない初登場シーンを飾っている。また、このエピソードの最後では、密入国業者のトラックをガソリンで燃やし、それをバックに行進している。

 

もうここまでくると、この2人はもはや「人物」ではなく、「現象」のような印象すら受ける。

 

 

血で血を洗う

A2 ガスとボルサの電話通話の中で、サラマンカの流儀としてガスが発話するスペイン語

Gus: "Sangre por sangre."

 

BrBaS4Ep08 Teaser カーサ・トランキーラで、ガスがヘクターに言う。

Gus: This is what comes of blood for blood, Hector.

 

 

忠誠心

A2 鶏舎のオフィスで、マイクがガスに。いかにもマイクらしい規律。ここでのbothは勿論、ガスとナチョの事だ。

Mike: Loyalty goes both ways.

吹替・字幕では「忠誠心(吹替のみ: てのは)双方向だ」

 

BrBaS4Ep02 A4 マイクいきつけのバーで、ウォルターがマイクに。ちなみにこの会話の後、ウォルターはマイクに殴られる。ここでいうpartnerはジェシーの事。

Walter: Everything I did, I did out of loyalty to my partner.

吹替は「すべては、わたしとパートナーとの信頼感からやった事だ」。

字幕は「自分の相棒を 守りたかっただけだ」。

 

BrBaS4Ep07 A3 車の中で、ジェシーがマイクに「何故銃の撃ち方なんておしえてくれるんだ?」「俺を見極めるってなにを?」と聞いた時のセリフ。

Mike: I'd guess loyalty.
Jesse: Loyalty.

吹替・字幕ともに「忠誠心」。

「見極める」は、この前のエピソードで、ガスがジェシーに言ったセリフ。

 

 

お互いに (added 20220625)

A2 鶏舎のオフィスで、マイクがガスに。

Mike: Loyalty goes both ways.

吹替・字幕では「忠誠心(吹替のみ: てのは)双方向だ」

 

S5Ep07 Teaser 裁判所の外のテーブルで、「結婚」についての最終確認をするジミーとキム。ジミー「隠したい事こそ打ち明ける」キム「何もかもね」に続く会話。

Jimmy:  And it works both ways.

Kim: works both ways.

字幕・吹替ともに「お互いに」

 

 

マルコのピンキーリング

A2 検事と刑事の2人と喋る直前にピンキーリングを握り込む描写。

 

S1Ep10 で、死亡した詐欺仲間マルコの母から形見分けで貰った、「ソウル・グッドマン」最初の証と言っても良いモチーフ。

S1Ep10やS2Ep01で、D&Mの面々と裁判所で会う前に握りしめた。

S2Ep01のA4では、D&Mに初出社する直前にも握りしめた。

S2Ep08 A3では、共同事務所予定地の前で、チャックにメサ・ヴェルデ案件を取り戻されて落ち込むキムの話を聞くジミーの左手小指、そこにあるピンキーリングが強調される。

S2Ep10 A4では、チャックに住所の細工をした事をばらすシーンで、ピンキーリングを映すアングル・仕草がある。

S3Ep01 A1では、S2Ep10 A4での曝露の直後、ハワードにチャックが復帰する事を電話するシーンで、ジミーは左手をポストにかけてピンキーリングが長々と強調される。

 

話は戻るが、ここで会った検事・刑事のうち、刑事の方はティム・ロバーツという名で、Breaking Badでもマイクの友達として出てきている*3

 

 

大失敗して佇むジミー (20220625 added)

検事と刑事との会話の中で、「ラロ」の名前を漏らしてしまう大失態を犯すジミー。近くの開き部屋に入り、佇むジミー。

 

S5Ep09 A3 クライアントに緊急で呼び出されたジミーは法廷で大失敗を犯し、地方検事補のビルに大いにからかわれる。非常階段で佇むジミー。

 

S3Ep03 A1 チャックの罠にかかり、ハワードや探偵という証人の前でチャックの家へ押し入り、机の引き出しをこじ開けて、証言テープを破壊してしまったジミー。警察の車を待つ間、路傍に座り込み佇むジミー。

大失敗して佇むジミー S6Ep01/S5Ep09/S3Ep03

 

また、ジミーではなくキムだが、S5Ep09のジミーと同じく階段で逡巡するキムも類似の繰り返し演出だ。正規の手段として許されていないが、顧客を騙して結果顧客にとって最良の結果である5か月の懲役を受け入れさせてしまった直前の行動について思い悩んでいるシーンだ。

階段で逡巡するキム S5Ep01



エル・カミーノ

A3 キムとジミーが落ちあうダイナーの名前。

 

言うまでもなく、この名前はBreaking Badの続編である映画のタイトルでもある。

また、Breaking Badの最後での白人至上主義者達の所から逃げ出すジェシーが乗っていった、トッドが所有していた車の名前でもある。

 

 

ソウル・グッドマンの乗る車

A3 エル・カミーノダイナーで、キムがジミーに。「シャレたやつ」「絶対アメリカ車。何か派手なやつ」と。

Breaking Badでは、本エピソードのTeaserでも登場したキャデラックドゥビルに乗っている。

 

 

正義の大聖堂

キムがソウル・グッドマンの想像上のオフィスを称して言った言葉。

Breaking Badでは、イオニア式の柱頭を持つ柱を配置したデザインになっている。

正義の大聖堂 BrBaS2Ep08

 

 

ライオンは雌が狩りをする

S2Ep01で、ジミーがキムの留守電に残した話。

本エピソードでは、ハワードを「狩る」事をキムが促している。(少しこじつけ気味?)

 

 

消化器系の病気を偽る

A4 ゴルフクラブのラウンジで、ジミーはトイレを借りるために大腸憩室症だと偽る。

 

S2Ep05

D&Mのオフィスで、ジミーはエリンにその場を抜け出すために胃食道逆流症だと偽る。

 

S1Ep08

サンドパイパーの事務所で、ジミーはトイレを借りるために過敏性腸症候群だと偽る。

 

 

トイレットペーパーの目的外使用

ゴルフクラブの更衣室のトイレを詰まらせるためにトイレットペーパーを使うジミー。

S1Ep08 A2では、書類をシュレッダーにかけ、証拠隠滅を図るサンドパイパーに対抗するための"demand letter"をトイレットペーパーに書いている。

 

 

証拠の捏造

ハワードのロッカーにしこんだフェイクコカイン(ベビーパウダー)。ハワードを陥れる事についてはキムの発案。

 

S2Ep02

キムのアパートで、キムがジミーに「証拠の捏造なんて捕まるわよ?」と言っている。

 


密入国業者

ラロが利用しようとした密入国業者は、荷台の出口部分の形から、BrBaS3Ep01でカズンズが使ったのと同じ業者だと思われる。

密入国業者のトラック S6Ep01 / BrBaS3Ep01

比べると、Better Call SaulS6ではメキシコイエローと呼ばれるフィルタが弱い事もわかる。

 

 

 

Episode 2

偽造免許証・金庫の金

Teaser 金庫の中からナチョとその父親の分2枚を見つけるが、マイクは父親の分は元に戻さず、手元に置いておく。

 

S4Ep08 A1で、この2枚の免許証を、ナチョが金庫の中から取り出して見つめていた。

金庫の金もこの2シーンで共通するオブジェクトである。

 

 

中皮腫

A1 ハワードの悪評を立てるために、クリフ・メインに相談に行かせる口実をあれこれ考えている時にジミーが出したアイデア

 

S2Ep03 A2で、オマールとジミーはD&Mが昔中皮腫集団訴訟で流したCMを見る。

 

 

バルーンの自由の女神

A1 ケトルマン夫妻のオフィスに向かったジミーが見上げる自由の女神バルーン。

 

言うまでもなくBreaking Badでソウル・グッドマンの事務所の上にあるシンボルマークだ。

 

 

ケトルマン夫妻

A1 ケトルマン夫妻自体がS1への強烈な対比を匂わせる。Better Call Saulはケトルマン夫妻の案件で始まったようなものだ。

 

ベッツィーはS1でもそうだったが、犯罪者であることは自覚していておかしくないはずなのに、ジミーによる被害者だと自分達を思い込んだままである。一方のクレイグはそうでもないようで、久しぶりにあったジミーと笑顔で握手までしている。

 

 

全てを失って子供は公立学校 (added 20220704)

A1 ケトルマン夫妻の事務所の外。ベッツィーのセリフ「あなたのせいですべてを失った」「子供は公立学校よ」。勿論ジミーのせいではなくてこいつらの自業自得である。

Because of you, we lost everything.
Our kids are in public school.

 

BrBaS4Ep11 テッド・ベネキーの家で、テッドがスカイラーに言うセリフ「僕は破産して、仕事も家も失う」「娘たちも転校させないといけない」。テッドがスカイラーにソウル経由で納めないといけない税金を突き返すシーン。

I'm still going to go bankrupt and lose my business and my home.
I still have to pull my girls out of school.

ケトルマン夫妻もテッドも自らが企てた不正による結果を受け入れられていない。

 

 

コーヒーを飲みたいクレイグ

コーヒーを飲めないクレイグ@S6Ep02 A2

S1Ep01 A1

コーヒーを飲めないクレイグ@S1Ep01 A1

American Greed*4

コーヒーを飲めたクレイグ@AmericanGreed

 

S1Ep07 A2 HHM会議室でキムとケトルマン夫妻が話し合いをしている最中、クレイグはずっとHHMのロゴ入りのマグカップに手を掛けているが、飲む描写はない。

 

 

車椅子のヘクターと会うガス

A2 ボルサの仲介で、ヘクターと面会するガス。ヘクターの表情でラロの生存を悟るシーン。

 

BrBaS3Ep03 A2で、ガスの鶏舎にカズンズに連れられてきたヘクターは、ボルサを代理としてガスと話し合いをする。

 

BrBaS4Ep08 Teaser フラッシュバックシーン。生き残った方のカズンズが死んだあとなので、BrBaS3Ep08以降のタイミング。ガスは夜のカーサ・トランキーラでヘクターと面会し、カズンズとボルサの死亡を告げる。このエピソードの最後でもガスはヘクターと面会する。そして、目を合わせようとしないヘクターに「私を見ろ」と2回言うガス。ヘクターは目を合わせない。ガスが復讐を果たしていると、このエピソードのTeaserで気づいたのだろう。

 

金庫の開け方

A3ではボルサの部下が部屋の真ん中に倒した金庫をグラインダーで、Teaserではもとあった場所のまま、金庫をドリルと固定具(ゲームのPAYDAYで使われていたような)を使って開けている。マイクのスマートさ、ボルサの乱暴さが対比される。

 

バックする車とカズンズ

 

 

食器を落として割る (added 20220625)

A4 鶏舎の事務所。カルテルがナチョを殺す事を確信していたガスは、サラマンカがナチョを生け捕りにして口を割らせるだろうと聞いて動揺して、グラスを落として割ってしまう。

グラスを落として割ったガス

S5Ep09 A1 キムのアパート。キムが36時間の荒野を歩いてボロボロのジミーのために、ジューサーでオレンジジュースを作っている。その音がトラウマとなった銃撃戦を思い出すのだろう、動揺してジミーはシリアルの入ったボウルを落として割ってしまう。

ジミーが落として割ったシリアル入りのボウル

ジミーの暴力行為への嫌悪はS1Ep02でも描かれている。トゥコに足を折られたスケートボーダーを病院に送った後、バーで女性とデートするシーン。グリッシーニを折る音に顔をゆがめる描写がある。

グリッシーニを折る音で、足を折ったトゥコを思い出すジミー

 

 

コミックリリーフ クレイグ君

A5 ケトルマン夫妻の事務所へ、キムを連れて音連れたジミー。「結婚した」と聞くと、笑顔で「おめでとう」をイディッシュ語で言うクレイグ君。かわいい。

その後、自分勝手な言い訳・要望を続けるベッツィーに業を煮やしたキム、IRS(内国歳入庁)へ電話をかけようとするのだが、そこへまたクレイグ君「外線するなら9を押して」とわざわざ教えてしまう。

また、次のエピソードで出てくる作戦ボードのケトルマン夫妻の列には、「J. Stangel」という名前があるが、これはここで電話したIRSのジャスティンの名前だ。

 

本エピソードのA1では、先ほども少し触れたが、ジミーとの久しぶりの再会に、笑顔で握手してしまうクレイグ君。さらに、ジミーに「刑務所にいたのに元気そうだ」と言われて、後ろに客がいるにもかかわらず、笑顔で「素晴らしい運動プログラムのおかげだ」と答えてしまう。ついたての後ろから顔をのぞかせる客も面白い。

 

S1Ep07 A4 ケトルマン邸を尋ねたジミーを笑顔で出迎えてしまうクレイグ君。

 

少し上で言及した、「コーヒーを飲めないクレイグ」も本項と共通する事案である。

 

 

横向きに座る (added 20220705)

ケトルマン夫妻の事務所、電話横のカウチに横向きに座るキム。単にジミーやケトルマン夫妻の居る方向を向いているだけかもしれないが、横柄さ・威圧感を出す演出でもあると思われる。

 

S5Ep05では、メサ・ヴェルデの頭取ケヴィンが、キムとペイジ相手にゴルフ場の屋外で横向きに座っていて、その夜ジミーにその様子をコミカルに語るシーンもある。他にもケヴィンは横向きに座っているシーンが多い。

 

BrBaS4Ep08 ゲイルの殺害現場である彼のアパートから指紋が見つかった件で、事情聴取をした際のハンクも横向きに座っている。南部的男らしさの象徴の一つなのかもしれない。

横向きに座るキムS6Ep02/ケヴィンS5Ep05/ハンクBrBaS4Ep08

 

 

非暴力犯罪への共感 (added 20220626)

キムが「ムチ」をもってケトルマン夫妻を黙らせる結果になったが、事務所に残ったジミーは、ケトルマン夫妻を気の毒に思ったのか、昨晩準備しておいた「アメ」すなわち現金を渡してしまう。

 

S1Ep03 A1 駐車場の係員ブースで、ジミーはマイクに「犯罪者はもう少し賢いものだと思っていた」「少し気の毒になったよ(字幕)」(吹替は「少しがっかりしたよ」、英語では「I don't know, it kind of breaks my heart a little.」) 「break somebody's heart」は、oxfordlearnersdictionariesをみると「to make someone feel very unhappy」ということで、字幕の「気の毒になった」というよりは、吹替の「がっかりした」の方が近い気がする。言葉の意味的には落胆・失望の方向だが、その裏にあるのは自分もSlippin' Jimmyとしてそちら側だったという共感があるように思う。

 

 

オオカミと羊 (added 20220626)

ケトルマン夫妻の事務所から遅れて出てきたジミーに、車にもたれかかり、「お金わたしたんでしょ」と確認するキム。語尾のイントネーション、英語では下がっているのに吹替では上げている。疑問や確認ではなく、なじるようなニュアンスに聞こえるが、英語だとただの確認のようにしか自分には思えなかった。

このシーンのキム、黒に近いジャケット、赤ピンクオレンジ黒のまだら模様シャツ、車にもたれかかり腕組み、と完全に黒幕・ボスポジションの描写だ。

お金を渡したんでしょ、と確認するキム

この後、車に乗り込んでジミーが発したセリフ。「オオカミと羊か」

Wolves and sheep. Huh?

 

S2Ep07 Teaser フラッシュバックでジミーがまだ子供の頃、両親が経営する雑貨屋。「お人好し」が過ぎる父親から金を巻き上げた客の睨むジミーに、その客が言った言葉。「世の中にはオオカミと羊がいる」「オオカミと羊、どっちになりたいか考えてみろ」

There are wolves and sheep in this world, kid.
Wolves and sheep. Figure out which one you're gonna be.

ジミーはオオカミになろうとしていたはずだが、このシーンではオオカミであるのはキムで、ジミーは羊に同情してしまっている。

 

 

 

Episode 3

警察へ行け(ない)

S1Ep02 S5Ep03

 

また、BrBaS3Ep13 A4では、ジェシーの「Please. Go to the cops.」頼むから警察へ行ってくれ、というセリフがある。ゲイル・ベティカーの住所をジェシーが調べ、ウォルターが殺そうとしているシーンだ。

 

 

ゲス

検事の部屋で、キムがスザンヌ

Kim: Although I distinctly remember you referring to him as a scumbag.

 

S4Ep07

スザンヌがキムに

Suzanne: And our only witness is a scumbag, disbarred lawyer...

 

 

ジミーが弁護したサラマンカ

スザンヌが話す通り

S1Ep03で、ナチョがケトルマン一家の失踪に関わっていない事を示した

S2Ep07 A1で、トゥコ逮捕時に落ちていた拳銃がトゥコの物ではないとマイクが証言する際に付き添った

S5ではホルヘ・デグズマンことラロ・サラマンカの保釈・逃亡に手を貸した

 

 

ロスポヨスの配送トラックによる密輸

A2 ロスポヨスのトラックの二重底で密入国するナチョ

S3Ep06 A3 ロスポヨスのトラックの二重底で密輸されるドラッグ

ちなみに、英語では密入国も密輸も同じ、Smugglingだ。

1. トラックの積み荷を降ろし S6Ep03 A2/ S3Ep06 A3

2. ネジを外し S6Ep03 A2/ S3Ep06 A3

3. 床を外し S6Ep03 A2/ S3Ep06 A3

4. 中身を取り出す S6Ep03 A2/ S3Ep06 A3

対になるように完全に意図して描かれている。

 

 

First things first (added 20220625)

A2 同じく鶏舎のオフィスで。ヴィクターにナチョの顔が綺麗すぎると言われたマイク。サラマンカに、「ナチョを手荒く扱った痕」を見せるために殴れ、と言う意味だ。ナチョも承知で、「早く済まそう」というが、マイクは

First things first

と、グラス2つにウィスキーを注ぐ。

日本語では吹替・字幕ともに「まずはこれだ」。

 

S5Ep06 A1 廃工場でナチョがガス達と会った後、ガスとヴィクターは帰り、マイクと2人のシーン。ガスがどんな奴か知っててあいつのために働いているのか?と詰るナチョ。マイクは「警告はした、選んだのはお前だ」と。そしてナチョは「親父は違う」。マイクもそこには同情してるんだろう。ここで言ったセリフ。

Look, first things first

吹替は「いいか、まず大事な事からだ」、字幕は「いいか やるべきことをやれ」。ラロの始末をつける事のことだ。

 

 

Forque Kitchen and Bar

これまでも3つのエピソードで出てきた高級レストラン。ここに愛車のジャガーで訪れ、駐車係と会話するハワード。

 

S2Ep06 A2 価値が見込めない申し立て審問に、一人で送られたキムの奮闘を見たシュワイカートが、昼食に誘ったレストラン。銅マグのモスコミュールが名物だそうだ。シュワイカートとの食事ではお酒は断るキム。

このエピソードのA3では、ハワードに無茶な量の仕事を押し付けられたキムがうんざりしてこのレストランを再訪する。今回は気兼ねせずに銅マグのモスコミュールを頼んでいる。妻がいる事を隠してナンパしてきたエンジニアの男をカモるために、サンタフェにいるジミーを電話で呼ぶキム。偽の投資話でまんまと小切手を手に入れる。換金はしないと言ってるので、それなら恐らく犯罪にはならないのだろう。ジゼルとヴィクターによる2つ目の戦利品だ。

 

S3Ep08 A2 キムはメサ・ヴェルデのケヴィン・ペイジと食事中。ハワードがケヴィン・ペイジの前でやたらと偉そうな口をきいた事に腹を立てたキムは、以前払わなくて良いと言われた学費の残り分の小切手を書き、ハワードの客の前で同じことをやり返す。

店の前でハワードは何のつもりだ?と怒り、先ほどの小切手を破り捨ててしまう。

 

S4Ep06 A2 キムがジミーを呼び出し、S&Cの銀行部門に誘われ、参加を決めたと語るシーン。実はこれはキムの嘘で、銀行部門の設立を提案したのはキムからだった。キムは以前からやりたかった公選弁護の仕事をしながら、メサ・ヴェルデ案件もこなすにはこれが一番だと語り、ジミーも葛藤はみせつつ、納得し祝福する。

 

思い出の場所だ。ちなみに、日本語字幕では「フォーク」という名前は出てこない。吹替では出てくる。入口から車止めを越えてみえる景色も印象的だ。

 

 

ヒューエル

言わずと知れた、Breaking Badにおけるソウル・グッドマンのボディガードで、盗みの達人。

 

S3Ep05の、ジミーのチャックへの暴行が争われた裁判で、チャックのポケットにフル充電のバッテリーを忍ばせる仕事をした。

 

また、S4ではジミーのボディガードとして誤って警官を殴ってしまい、裁判沙汰になる。

 

Breaking Badでは登場シーンを挙げきれないが、ソウルの手足として動いたり、ボディガードとして存在感を示したり、神業的手技を用いてジェシーの煙草からリシンを奪ったりした。

 

 

サンドパイパー案件の早期和解

ハワードのジャガーの鍵の偽造の報酬を渡す際、ヒューエルに「何故弁護士なのにこんな事を?」と尋ねられ、「数か月後生活が楽になる人が居る」と答えるジミー。

 

S5Ep10ではベッドでキムがジミーに「生きているうちに貰える」と。

S3では、結局自分の仕業だと曝露してご破算にしたが、弁護士資格停止による収入減を補おうと、アイリーンを孤立させて早期和解をたくらんだ。

 

 

密告

キムのアパートで、キムがジミーに

Kim: Do you wanna be a friend of the cartel, or do you wanna be a rat?

 

S1Ep02

ジミーのネイルサロンのオフィスで、ナチョがジミーに

You rat, you die.

 

 

狙撃銃のマイク

本エピソードと、S2Ep10での同じ場所、同じような構図が対比となっている。左が本エピソード、右がS2Ep10での画面だ。

構えるマイク

スコープの中のナチョ もう一人は、左はボルサで右はヘクター

Do it / Don't

「やめろ」と言われたS2Ep10に対して、「やれ」と言ったS6Ep03の対比が鮮やか。色合いが変わっているのも印象的。

 

 

グラスの破片 (updated 20220714)

A4 ナチョがバンの中で手を縛られる時に握り込み、ボルサの足を刺したグラスの破片。ボルサを刺した直後に放棄され、ガス達も回収しないまま立ち去った。

 

本エピソードのA3で、マイクと酒を飲み、「丁寧には扱われなかった」証拠として殴られ、鶏舎の事務所でガスと最後の打ち合わせをした後に、ゴミ箱を覗き込んだシーンでその入手先がわかる。

ゴミ箱の中のグラスの下からナチョを映す構図

ナチョの顔がいくつも見えるような形になっており、いくつもの破片の入ったゴミ箱の底からの上向きショットだという事が分かる。この破片は前のエピソードS6Ep02でガスが割ったものだろう。

 

本エピソード Teaserでは、その数年後(Podcastか脚本家のインタビュー記事で言及があったのだが、どれだか忘れてしまった)、青い花の前で、土まみれだったこの破片が雨に洗われるシーンだ。

 

(以降 updated 20220714)

また、BrBaS3Ep11 A1 スーパーラボで、ブルーメスを流したバットの底から、そのメスを砕くシーンで、割れたメス越しにジェシーの顔が映るシーンとの対比。

グラスの破片越しのナチョS6Ep03 / 割ったブルーメス越しのジェシー

 

 

「誰の意のままにもならない」ナチョ (added 20220625)

S5Ep10 ナチョはドン・エラディオとの「面接」で、「お前の望みは?」と問われて「自分で決めて、自分のやり方でやりたい」「誰の意のままにも なりたくない」と答えている。

これは、本エピソードでおきた事と符合する。サラマンカはナチョに「黒幕はガスだ」と言わせたかった。ガスは尋問・処刑から逃げようとするナチョを撃ち殺すつもりだった。

しかし、ナチョはこのどちらの思惑にものらず、グラスの破片という鍵を使って、ボルサを人質に取り、自殺する事によって父親を守ったのだ。自分で決めて、自分のやり方で遂行した。

 

ナチョは、ドン・エラディオとの面接で、続いて「ビクビクせずに暮らしたい」と言っているが、こちらは叶わぬ願いだった。

 

 

ガス「恐怖で働かせてもダメだ」 (added 20220709)

BrBaS3Ep04 ガスの車の中で、マイクに言ったセリフ。上記は日本語字幕の表示で、次いで「仕事にならない」と言っており、原文では以下。

I don't believe fear to be an effective motivator. I want investment.

また、吹替では「恐怖では人のやる気は引き出せない、自発的でなければ」。

 

ガスはS6Ep02では、ナチョをコントロールするためにナチョの父親を利用しようとして、マイクに制止されている。結局その直後にナチョ本人と電話がつながり、ナチョは自分の命を犠牲に父親を守った。この事がガスの意識を変え、標題のセリフに繋がったのだろう。

 

 

ガスが犯した間違い (added 20220714)

まず先にBreaking Badでの話をする。BrBaS3Ep11 A4 ガス邸にウォルターを招き、2人で食事をした際にガスがした昔話と助言。「私も始めた頃は何度も間違えた、みとめたくはないがね」そして、「間違いを繰り返すな(Never make the same mistake twice.)」。

 

ガスは恐らく、一つ前の項目で言及した「恐怖で働かせてもダメだ」という事「も」「間違い」だと認識しているのだろう。だからこそBreaking Badではウォルターを「恐怖で働かせる」選択はせずに、「誠意をもって」働かせようとした。ところが人が変われば対応も変わる。「Breaking Bad(悪に染まる)」の権化であるウォルターと、「Breaking Good」をキメたナチョ*5とでは勿論同じ入力に対して違う結果が出力される。ガスはまた一つ新しい間違いをBrBaS3Ep11でしたのだった。

 

 

 

Episode 4

精神科医

カウンセリングを受けるハワード。

 

S4Ep06では、ジミーがキムに「やっぱり行かない事にした」と。

S4Ep05では、ハワードが「もう通っている」と。

S4Ep04では、キムがジミーに勧めるが、ジミーはあまり乗り気ではない。

 

ハワードに変装するジミー

ハワードに変装するジミーは2度目。1度目はS1Ep04だ。

ハワードに変装するジミー S6Ep04/S1Ep04

 

ウェンディ (updated 20220625)

本エピソードで登場するウェンディはBreaking Badでも登場する(S1Ep03 S2Ep03 S3Ep12)。BrBaS3Ep12はエピソードタイトルも「Wendy(憎しみの連鎖)」だ。本エピソードでは買えなかったが、BrBaS3Ep12ではルートビアを買っているシーンもある(Teaser)。Crossroad MotelもBrBaS3Ep12で登場。

 

S5Ep06 A2 高級レストランフォークで、ハワードとクリフが会食中にジミーが送り込んだクライアントの売春婦2人。ウェンディも売春婦だ。

ジミーがハワードへの嫌がらせに送り込んだ売春婦

 

 

裁判所の人々の態度 (updated 20220625)

A2で、ジミーは裁判所で働く人達からの態度が急変した事に気づく。

入口の金属探知機では靴とベルトを外すように言われ、ちょっとしたギフトで便宜を図ってもらっていた窓口の事務員にも、ハンナーバナナと呼ぶ事務員にも、憎まれ口をたたき合いながらもそれなりに上手くやってきた地方検事補のビルにも邪険にされてしまう。

 

窓口の事務員 S1Ep02では「飢え死にはごめんだ」とぬいぐるみを提示、S2Ep05ではエリンに同様のギフトを見咎められている。

 

ハンナーバナナはS5Ep02でジミーと仲良さげに挨拶を交わしたり、事務作業の融通をうけいれている。

 

ビルともS1Ep02以降たびたび絡みがある。立場上対立はするし、嫌味を言う事もあるが、それなりに信頼関係もある仲だった。ビルはAmerican Greedにも登場している。

ポテトチップスの自動販売機を揺すって、落ちるはずだった商品を落とす仕草、本エピソードではジミーがやっているが、S5Ep01 A4ではビル自身がやっている。殆ど同じ仕草だ。(updated 20220625)

 

 

カルテルの友人/サラマンカの弁護士 (updated 20220705)

ネイルサロンで、集まったクライアントの一人スプージとジミー。サラマンカの弁護士である事を認める。

Spooge: Then you're the guy, right?
Jimmy: What guy's that?
Spooge: Salamanca's guy.

 

S6Ep03

キムのアパートで、キムがジミーに

Kim: Do you wanna be a friend of the cartel, or do you wanna be a rat?

 

S5Ep09

拘置所(/裁判所?)の外で、ラロとジミー。ラロの圧力下でのカルテルの友人の確認。

Lalo: Friend of the cartel, right?
Jimmy: Right.
Lalo: Right.

 

S5Ep08

キムのアパートで、キムとジミー。正確には違う、と。

Kim: You're a friend of the cartel? Is that it?
Jimmy: Not exactly.

 

S5Ep07

キムのアパートでジミーとキム。カルテルの友人ではない、と否定。

Jimmy:  He said I'd be a friend of the cartel.

 

Kim: But do you want to be a friend of the cartel?
Jimmy: No. No.

 

(以下 updated 20220705)

BrBaS4Ep10 では、メキシコのカルテルのメスラボで、ジェシーが「カルテルの一員」だと言われている。

You belong to the cartel now.

 

 

スプージ

「Salamanca guy」として有名になったジミーの事務所に来たスプージという男。

彼はBrBaS2Ep05で、その妻と2人でスキニーピートを襲い、1オンスのメスを強奪される。その次のエピソードで、ジェシーは舐められないようにと復讐に行った。そのジェシーの目の前で、スプージはクリスタルをねだる妻に「糞女」(skank)という言葉を連呼し、ぶっとんだ妻はスプージの頭を強奪したATMの下敷きにして殺してしまう。

 

スプージ(左右とも、左側の男) S6Ep04/BrBaS2Ep05

麻薬中毒になる前は身なりも汚くは無かったのに、この2つのエピソードの間4年間に大きく変わってしまった。

 

 

キュウリ水

外に並ばせた"サラマンカの弁護士"を頼ってきたクライアントたちにキュウリ水をふるまうジミー。グエンさんは「お金を払う客専用」と言い、ジミーは黙らせるために金をつかませる。

 

S2Ep01では、「お客様専用」とグエンさんに言われても、ネクタイを後ろに回し、タンクから直飲みするジミー。

S1Ep01では、「お客様専用」とグエンさんに言われて、諦めるジミー。

 

 

イカーファッションを褒める

外に並ばせたクライアントの一人に、「いい革ジャケットだ」と。

 

S4Ep05では、ホットドッグ屋の前で、「いいバイクだ」と。

 

 

見張り (added 20220704)

A3 エル・カミーノダイナーで。マイクは「君たち夫婦を見張らせている」とキムに明かす。

 

BrBaS3Ep04 A1 ウォルターの家の前でマイクがウォルターに。「監視されていたほうが良い場合もある」と。家の前の道路に「死神の鎌」のマークがあるのを見て色々悟ったマイクの忠告。具体的な忠告をしない所が、BcSでナチョにヘクター殺害に潜む危険、ガスの事をはっきり言わなかった事を思い出させる。

 

 

キムを評価するマイク (added 20220625)

A3 エル・カミーノダイナーで、マイクはキムと接触し、ラロが生きている事(可能性)を伝える。ジミーと荒野で一緒だった事を察したキムは「何故ジミーではなく私に話すのか?」と問う。それへの答えが、「君の方が肝が据わっている」(吹替は腹)。

 

S5Ep10 Teaser キムのアパート。突如訪れたラロがキムの機転で何事もなく帰って行った前エピソードラストの続き。携帯を繋げたままにしておき、全てを聞いていたマイクがジミーに「奥さんに窮地を救われたな」(吹替は「彼女のおかげで窮地を救われたな」)。この時点ではキムはまだこの男がマイクだという事を知らない。

 

「肝が据わっている」といえば、S5Ep10で、ジミーから「ラロが殺される」と聞いたキムは、落ち着かなくなってキムのアパートへ帰ろうというジミーに、スパやルームサービスで楽しもうと提案。スパは描写されないが、ルームサービスで豪勢にやるシーンはこの直後に描かれる。

 

 

ベッドに腰かけるガス (added 20220625)

ここまでのアルバカーキサーガで、一番情けない顔をするガス。自宅のベッドに腰かけて、足首に巻いておいた隠し銃を見つめて思い悩む。

ベッドに腰かけて着替えるシーンはS5Ep07にも登場する。ヒューストンでのマドリガル社のミーティングに出席した後、ホテルの部屋に案内された後、ピーター(マドリガル社の重役)の部屋へ行く前に、上着を脱いで襟元を緩め、靴を脱ぐシーンだ。

ベッドに腰かけるガス S6Ep04 / S5Ep07

この2つのシーンでかかるBGMは割と似ている所があるのだが、寂しげではあるが落ち着いた感じのS5Ep07に対して、S6Ep04の方では明らかに不安げな感じを出している。エコーをかけた打楽器のような音で不安げなハートビートを模しているのかな?是非聞き比べてみてほしい。

 

このシーンで、ガスはコネクティングルームとして繋がっているピーターの部屋に、靴を脱いで靴下のまま訪れる。何かのメタファーなのかと少し検索してみると、RollingstoneのRecapで、ミスターロジャースを思わせる、との記述があった*6。大部分の日本語話者には馴染みは無いだろうが(勿論筆者も)、Wikipediaによれば*7彼が制作・司会・楽曲政策をした、「Mister Rogers' Neighborhood」という番組のことだと推測できる。この番組の冒頭で、フレッド・ロジャースはテーマソングを歌いながら帰宅し、靴をスニーカーに履き替え、ジャケットをカーディガンセーターに着替えるそうだ。

何故、子供が居る設定ではあるが実際に子供は出てこない、そして子供向けでもないガスというキャラクターにこのモチーフを取り入れたのかは少し調べた程度では分からなかった。Podcastでも聞けばわかるのだろうか……?

 

 

基準

マイクがガスのチキン屋に「護衛として」送り込んだ、大学時代にマクドナルドで2年働いた経験のある男、ロイについて

Gus: He's not up to Pollo standards.

 

BrBa S5Ep10 デクランのメスラボで、デクランがリディアに

Declan: Heisenberg's standards don't matter anymore.

 

 

事務所探し

本エピソードで、Breaking Badで実際にSaul Goodmanのオフィスとなる事務所がタイムライン的には初登場。

事務所候補の内見にはS4Ep08ではジミー一人で(後からキムがジミーに会いに来る)、S4Ep07でヒューエルと、S2Ep08(ジミーとキムの2in1事務所になる)・S1Ep07でキムと行った事がある。

 

また、S4Ep06では、ジミーがキムに、2人の共同事務所について、「クライアントが来やすいよう、裁判所近くの平屋に構える」と。本エピソードでは、キムがこの物件の利点として、「裁判所に近い」と言っている。

 

 

人生最悪/最高の日

グエンさんに追い出された件について

Kim: Bad day, huh?
Jimmy: No. It was a great day.

 

S6Ep01 

金持ちの子にクライアントが罪を擦り付けられた件と、ホームレス女性を釈放させたキムに

Jimmy: Sounds like the day from hell.
Kim: It was one of the best days of my life.

 

 

タコ・カベサ

事務所の近くにタコ・カベサの店舗がある事をメリットとして挙げるキム。

 

BrBaS1Ep07 A1 スクラップヤードでトゥコを待っているウォルターとジェシーの会話。

「何故こんな人気の無い所を選んだんだ?」という流れで、「Taco Cabezaで発砲する奴は居ない」というジェシーのセリフがある。日本語では、吹替ではファミレスと変換され、字幕では対応する訳語は無い。

 

 

Episode 5

デジタル時計の数字を逆さにすると

A1 キムが起きる前、3:17を示すデジタル時計。逆さにするとアルファベットでLIE、嘘だ。前のエピソードでマイクからラロは死んでいない事を知らされ(匂わされ)るが、それをジミーに言わない事を指しているのだろう。

3:17 / LIE

S2Ep06 Teaser あてがわれた社宅の居心地が悪く寝付けないジミー。テレビでD&Mが流したサンドパイパー案件のクライアントを募集するCMを見てしまう。自分が作って流して大目玉をくらい、キムを窓際へ追いやったCMと殆ど変わらないのに何故?と憤懣やるかたない様子のジミー。

1:43 / Eh!

ベッドに入った時に1:42から1:43へと表示が変わる。逆さに読めば「Eh!」だ。日本語でいえば「え?」に当たる単語でいいのだろうか。検索するとカナダで使われる「huh」だと出てくるが、Peaky Blineders(舞台は1920~30年代のイギリスバーミンガム)でもよくつかわれている単語である。

一度起きて冷蔵庫を漁ったりした後またベッドに入った時には、2:27から2:28へと表示が変わる。逆さに読めばBSS

BSSurban dictionaryを引くと、2番目にBull Shit Syndromeと出る。シンドロームはともかく、Bull Shitと言いたい気持ちを時計が代弁していると思ってよさそうだ。

 

 

スパイスカール

ラロの影におびえながら仕事をするガス。レジで接客中に何かに気づいたようだ。客に「スパイスカール」を勧めた瞬間だ。

 

S5Ep07 A2 マドリガルの会議で、ガスは新商品としてスパイスカールを発表している。マドリガルはドイツの企業であり、自分が雇ったヴェルナーもドイツ人。この繋がりを思い出して、ラロが姿を見せないのはドイツに証拠を探しに行ったからだと判断する。

 

 

MVD

A2 まだ何もない新事務所で、職場であるMVDに帰ろうとするフランチェスカに「以前の給料の2倍払うから」と引き留めるジミー。以前の賃金とMVDのどっちの2倍なのか問うフランチェスカ。「less」と言った瞬間溜息をついて出ていこうとする彼女に慌てて言い間違えた、「more」だと追いすがるジミー。この辺り、かなりBreaking Badでのソウルに近い印象だ。シャツの色も緑が強い青でカラフルだ。

 

S3Ep02 A1 Better Call Saulで初めてフランチェスカが登場する面接シーンで、何故ニューメキシコ州では自動車局の事をMVDとよんで、アメリカで一般的なDMVと呼ばないのかという会話がある。

 

BrBaS5Ep09 A2 ソウルの事務所で、待合室でなかなか呼ばれない事に腹を立てたジェシーマリファナを吸い始め、慌ててオフィスに入れるソウル。出張マッサージをしてたから入れなかったのは明白なシーンだが、フランチェスカのせいにして「次やったら元の職場に戻すぞ」と言っている。吹替・字幕双方とも「元の職場」と言っているが、原語では「DMV」(MVDではない)と言っている。

 

また、先ほどのmore/lessの話に戻るが、フランチェスカが金に汚い所を見せるのも、Breaking Bad時代の特徴だ。

一番今回の件と近いのは、BrBaS3Ep06で、ジャンクヤードに駐車中の移動メスラボのキャンピングカーの中にいるジェシーとウォルターが、ハンクに追い詰められたシーン。ここでウォルターがソウルに電話し、フランチェスカに病院関係者のふりをさせ、ハンクの妻マリーが交通事故に遭ったという偽電話を掛けるシーンだ。この偽電話を切った直後に、ソウルに「これで昇給してもらわなくちゃね」と発言している。

また、S4Ep05 Teaserのフラッシュフォワードシーンではシュレッダーにかけた後のゴミを別々のゴミ箱に捨てる事の報酬として札束1つを渡したソウルに、「足りない」という顔をしてもう一つ札束を受け取った。

そして、BrBaS4Ep13でウォルターが事務所に押し入った際は、割ったガラスの修理代として、10倍以上の2万ドルを、ウォルターが口答えしたために最終的には2万5千ドルを要求した。

 

ヴィオラ

A2 エル・カミーノ ダイナーで、ヴィオラと会うキム。サンドパイパー訴訟の調停人の名前を聞き出すためだ。純粋にキムが弱者のための弁護をしている事を称賛するヴィオラに、調停人の名前を聞き出すために利用しているキムは少し居心地が悪そうだ。

 

ヴィオラはS4で、自動車事故から復帰したキムが雇ったパラリーガル。S&Cに入ってからも彼女を使っている。また、S5Ep10 A4 ホテルの部屋で、和解金が入ったら何に使う?という話題で、雇いたい人3人のうちの1人として名前を挙げている(あとはステフとブルース)。

 

また、ジミーとキムのハワードを陥れるための作戦ボードに張られた付箋にも、ヴィオラの絵が。

 

Fandom Wikiによれば*8、フルネームはViola Goto、俳優はKeiko Agena。キャラクターも俳優も日系人のようだ。俳優はハワイ出身。

 

ジミーの痣を見たキムの反応 (updated 20220704)

ハワードとのボクシングでできた痣を隠そうとするジミーに、「そのままでいいじゃない」、というキム。

 

S4Ep05では、暴行の上使い捨て携帯の売上を取られたジミーを心配して、氷嚢を渡すキム。

(以下、updated 20220704)

氷嚢と言えば、BrBaS4Ep03で、マイクに殴られて顔に痣を作ったウォルターを見たスカイラーが、冷凍の豆を氷嚢がわりに傷を冷やそうとするシーンがある。

 

 

君のために闘う

キムが痣を隠そうとするジミーに

Kim: "I'm Saul Goodman. Pow. I fight for you."

 

S1Ep01

フラッシュフォワードで、ジーンとなったジミーがソウルのCMを見るシーン

Saul: Hi, I'm Saul Goodman, and I will do the fighting for you.

 

BrBa S2Ep08

5分過ぎで流れるCMでソウルが。ちなみにこれがソウル・グッドマンの初登場で、本エピソードのタイトルも「Better Call Saul」

Saul: And that's why I fight for you, Albuquerque.

 

 

ガス邸の監視体制

ガス邸を監視するマイクの部下

本エピソードで明らかになったガス邸の監視体制と、自宅での安全対策。隣家への地下通路ですれ違った男は、表向きガスの家とされてる家でガスのふりをして暮らすDouble(影武者)なのだろう、身長体格が同じくらいだ。

 

BrBaS4Ep02 A3 ガスの家に車でやってきたウォルターは、このエピソードTeaserで購入した拳銃を隠し持ち、ガスを訪ねようとする。しかし、ドアの前にたどり着く前に携帯が鳴り、タイラスに「家に帰れ、ウォルター」とだけ言われる。周りを見渡してもなにも見つからず、監視されていることを悟り諦めるウォルター。本エピソードで明らかになった監視体制はこの電話がどうしてかけられたのかを説明している。

 

 

チーグラー夫人 (added 20220625)

本エピソードではじめて画面上に登場するチーグラー夫人。

S5Ep01 A1 ミチョワカン(サラマンカが売人からの集金をするレストラン)で、ラロはドイツにいる「ヴェルナー チーグラー」について、「チーグラー夫人によれば 26人になった」というセリフを発している。「よれば(according to)」が示すように、ラロはチーグラー夫人と実際にコンタクトをとって夫のヴェルナーの死亡を確認したのだろう。連絡先はこの前のエピソードトラベルワイヤーで入手した書類で知ったと思われる。

ラロがドイツへ飛んだのはチーグラー夫人をあてにしてだったのだ。

 

 

温泉

ドイツのバーで、ラロ(ベンと自称)とマルガレーテの会話で、ニューメキシコのヘメスという町にある温泉の話をする。カルロヴィ・ヴァリ(ドイツに近いチェコ)の話も。

 

S4Ep09では、監視員がマイクに、ヴェルナーとマルガレーテの会話として、「奥さんの腰痛治療のために温泉に行きたい」と話してた事を報告する。これをもとにこの次のS4Ep10でヴェルナーの行き先がバレる。

 

 

スーパーラボ

S4でヴェルナーと「子供たち」を雇い、建設中のスーパーラボ。本エピソードでガスは重機に銃を隠す。

 

Breaking Badでは完成したスーパーラボでの様子、そしてガス暗殺後にスーパーラボを焼き払う様子が描かれる。

 

 

子供たち

ドイツのバーで、マルガレーテがラロに

Margarethe: Werner loved seine Jungs, his boys.

作業員達が葬式で贈った計算尺をオブジェにしたものにも「Jungs」英語でBoysの刻印が。このオブジェの底に張られた社名のシールをみて、次エピソードでラロはキャスパーにたどり着く。

 

S4Ep06

作業員らの宿泊施設で、ヴェルナーがマイクに

Werner: They all are good boys.

 

小熊

マルガレーテの家の前で、マルガレーテはラロに、「小熊」を意味する名前の仔犬を飼っている事を話す。

 

S4Ep09では、ヴェルナーとマルガレーテの電話での、「飼い始めた仔犬がどこでもおしっこする」という会話を、監視員がマイクに報告している。

 

 

エピソードの始まりと終わり (added 20220625)

薬棚を開けるシーンで始まり、窓を閉めるシーンで終わる対比。

S6Ep05の始まりと終わりの対比

 

Episode 6

キムの貧乏ゆすり (updated 20220625)

ショッピングモールの事務所で、店長と母親を待つキム。

貧乏ゆすりする幼い頃のキム

S6Ep04 A1 カフェの野外席で。ハワードに扮したジミーがWendyを車から追い出すところを見せつけるためにクリフを待つキム。

貧乏ゆすりするキム S6Ep04

S5Ep07 A1 裁判所の外のテーブルについたジミーとキムが、「結婚」について最終確認をしているシーン。 (updated 20220625)

貧乏ゆすりするキム S5Ep07

 

 

キムの母親

本エピソードでのキムの母親は、まるでジミーがするような「演説」をぶちかます

万引きが見つかり、オフィスで座っているキム。店長が母親を連れて入ってくる。母親は店長の前では「厳しい母親」を演じてキムを叱責し、壊してしまった商品の代金すら支払おうとする(店長は固辞)。しかし、店を出て角を曲がり、店長のいた入口が見えない所へくるととたんに笑いだす。車に乗ってからは、キムが盗ろうとした商品を盗んできたことさえ明らかになる。

これはキムがジミーに対して愛着を抱く理由の大きな要因となっている事を示すシーンだろう。また、次に示すが、キムは初登場時から仕事モードの時の殆どでこの母が盗んだピアスを付けている。この事をどういう風に解釈すべきなのか。

 

S5Ep06 Teaser フラッシュバックシーンでは、酒を飲んでいて迎えに来るのが遅れた母親に反抗して、チェロを背負って車に乗らずに歩いて帰ろうとするキム。

キム役のRhea Seehornは、Varietyの記事*9の中で、「パイロットの時からキムにはアルコール依存症の親が居ると考えていた」と語っている。それを口に出した事は無いのに、このフラッシュバックシーンがでてきて驚いたそうだ。

 

 

キムのピアス

S6Ep06 TeaserのReview*10でも触れたが、このイヤリングはキムが殆どの場面で付けているものだ。Starlight collectionの1つという話。

 

これとは別のを付けているシーンも。

S1Ep04 A2 夜のネイルサロンで初めてStarligh Collection以外のピアスをしているキム。その直前、ハワードとジミーのHMMに似せた看板を見に行った時、A4のHMM会議室でニュース番組のジミーを見るシーンはStarligh Collectionのピアス。

S1Ep05 A2 再び夜のネイルサロンで別のピアス。その流れで、A3の病院のシーンも。他の出番が無いため、このエピソードではStarligh Collectionのピアスは付けていない。

S1Ep07 A1 事務所候補の内見時にEp05と同じにみえるピアス。A2 HHM会議室でケトルマン夫妻の相手をしているシーン、A3 HHMの駐車場でジミーと不貞腐れるシーン、A4 ケトルマン夫妻を出迎えるシーンはStarligh Collectionのピアス。

S1Ep08 Teaser フラッシュバックで、ジミーが司法試験に合格するシーンで別のピアス。判例の出力を頼む電話をした時はまた別のピアス。

S2Ep01 A3 キムとのおそらく初めてのベッドインの翌朝。このエピソードのA1 裁判所のシーン、A2,A3のホテルのシーン(ケンを騙すシーン含む)ではStarligh Collectionのピアスを付けている。

S2Ep07 A1シュワイカートからの引き抜きをジミーと話す時、A3 HHMへ出す辞表を書いているところから、ジミーから共同事務所のオファーを受け、断るシーン。A4 シュワイカートの面接、その後屋上でW&Mの名刺をちぎる時、そして1つのオフィス2つの事務所をジミーに提案する時。このエピソードではStarligh Collectionのピアスは付けていない。

S2Ep08 A1 ホットドッグ屋で辞表を出す話をしている時、ハワードのオフィスで辞表を出す時、HHMからメサ・ヴェルデ案件を奪おうとしている時、新しい事務所の前でメサヴェルデをHHMにとられたことをジミーに話す時。このエピソードではStarligh Collectionのピアスは付けていない。

S3Ep09 A1 ガトウッド石油の現地へ赴いたとき、A4 キムが車で事故を起こす時。このエピソードではStarligh Collectionのピアスは付けていない。

S4Ep06 Teaser フラッシュバックシーン、キムもジミーもまだ弁護士でない、郵便室勤めの頃。

S4Ep09 Teaser 建物の設計図を取り換える詐欺をしているシーンと、A1でその直後ダイナーで食事をしているシーン。このエピソードのA4、ジミーから聴聞会が失敗したと電話を受けるシーン、その後屋上で喧嘩するシーン、その後キムのアパートで会話するシーンでは、Starligh Collectionのピアスをしている。

S5、S6前半ではStarligh Collection以外のピアスをしているシーンは見つからなかった。

 

別のピアスをする事の意味付けがあるような無いような。最初はあまり固定化しないで、仕事の時だけStarligh Collectionのピアスを付けている印象だが、S2Ep07、Ep08では重大な転機に別のをしているようにも見える。しかし、S5やS6ではStarligh Collectionのピアスしかしておらず、これで一貫しているわけでもなさそう。本エピソードのフラッシュバックシーンで入手の瞬間が描かれたが、他のフラッシュバックシーンでは付けているシーンが無い。

 

何せ小さいものだし、カメラに近い時は影になっている事が圧倒的に多く、なるべく丁寧に見たつもりだが、見逃している場面もあるかもしれない。

 

 

若い頃から

S2Ep07 21分あたり、メサ・ヴェルデの支店の住所を細工した事について、高校時代に偽造IDを作っていた事を指し、「モーツァルトと同じで2人共若い頃からはじめたんだな」と皮肉を言うチャック。

S2Ep09 Teaserのフラッシュバックシーンで、レジから金を抜く幼い頃のジミー。

そして、本エピソードではキムも幼い頃、店の人に万引きを見咎められた事が明らかになる。以下のセリフは本来モーツァルトとジミーの事を指すが、後から見ればジミーとキムの2人にも当てはまることが分かる。

Chuck: You both started young.

 

また、「モーツァルト」といえば、S1Ep08で、サンドパイパーの証拠をつかむためにゴミ箱を漁っている最中、従業員にみつかりそうになり、ゴミ箱の中に隠れたジミー。そこへ掛かってきたシュワイカートからの電話で、ささやき声なのを「オペラを観てるから」と嘘を付いた。そのオペラは「魔笛」で、勿論これはモーツァルトの作品だ。

 

 

プレス

タイトルコール直後にうつるハワードのズボンプレッサー。

 

S5Ep02ではジミーがアイロンをかけるシーン。

S1Ep09ではチャックがアイロンをかけるシーン。

 

 

ハワードのワイフ

直接言及される事はS5までは無かったが、ハワードはずっと結婚指輪をしていた。最初に確認できるのは、S1Ep05のはじめてチャックが病院に担ぎ込まれたシーンだろうか。

 

S6Ep04 A1 精神科医との会話ではじめて直接言及され、夫婦仲が上手くいっていない事が明らかにされた。

 

 

獣医カルデラと、ガスの歩くシーンのシンクロ

自分は全く気付かなくて、redditの投稿を見てびっくりした件。是非リンク先の動画を見てほしい。ちなみに本エピソードの監督はガス役のジャンカルロ・エスポジートである。

"Directed by Giancarlo Esposito" felt too perfect to me... where have we seen this shot before? : betterCallSaul

こんなの、気づく人がいる事にびっくりである。

 

獣医カルデラは動物愛護家

「動物たちは俺の人生そのものだ」というカルデラ

 

S3Ep05では、ビニール袋に入れた金魚を獣医に持ってきたジミーに「窒息させる気か?」と怒っている。

S1Ep08では、出産させすぎたダックスフントがヘルニアを患った事に憤慨してる。

 

 

カルデラの黒い手帳 Best Quality Vacuumの名刺

アルバカーキの裏の仕事の仲介人である獣医カルデラ。仲介業をする上での「王国の鍵」とカルデラが称するアドレス帳。逆イースターエッグとして、S6Ep01 Teaserのフラッシュバックシーンにも「NO VALUE」と書かれた箱に放り込まれている所が映っている。暗号で書かれているからだろう。

 

Breaking Badでソウルが紹介する人物には、バッジャーが逮捕された時にハイゼンベルグの身代わりとして捕まる役の「出戻りジミー」、レーザータグの運営者「ダニー」、Vamonos Pestの「アイラ」(S4で出てくる)、人消し屋「エド」 、ウォルター達のブルーメスを裁くために必要になったガスに繋がる男「Guy who knows a guy」、ウォルターJr.が作った寄付サイトSaveWalterWhite.comへマネーロンダリングするベラルーシ在住のハッカークラッカー等がいる。

 

また、Better Call Saulにおいて、この手帳で紹介された人物としては、神業スリ師の「ヒューエル」、プライスが獣医に紹介を頼んだ男で、S5Ep05ではメサ・ヴェルデのケヴィンの粗探しを頼まれ、自宅に侵入したMr. Xこと「Sobchak」(作品上では名前は出ず、脚本に乗っているだけ)が居る。本来ケヴィンの粗探しをするのは、Breaking Badでヒューエルと同じくソウルの下で働くパトリック・クービーの予定だったが、スケジュールの都合でSobchakになったそうだ*11。このクービーも黒い手帳に載っていたのかもしれない。

 

 

ジミーの瞳孔を確認するキム

獣医の所で、薬の効き目を見るために。

 

S4Ep05では、暴行されたジミーが大丈夫か、左右の瞳孔が同じ大きさか確認するキム。

 

 

アルバカーキアイソトープスの芳香剤

A2 公選弁護人として、不当逮捕を訴えるキムが提示した証拠、アルバカーキアイソトープスの芳香剤。

ネットで検索するとcar/air freshnenerと言われている。日本ではボトル入りの芳香剤が殆どだが、アメリカではこういうタイプも多いのかな?

 

これはS4Ep01 Teaser フラッシュフォワードジーンとしてのジミーが病院帰りに乗ったJeffという運転手のタクシーにつけられていたものと同じもののようだ。

アルバカーキアイソトープスの芳香剤 S6Ep06/S4Ep01

このJeffにはS5Ep01 Teaser フラッシュフォワードで、「アレをやってくれよ」としつこくせがまれて、ジーンは仕方なく小声で「Better Call Saul」とやってしまう。

 

 

事務所を覗き込む

日が暮れてから、ソウル・グッドマンの事務所を訪れるキム。鍵がかかっていて、左手で光を遮り中を覗き込む様子が、事務所の中から影で描写される。

 

一つ前のエピソードS6Ep05 A2 では、フランチェスカが同じようなポーズを取っているシーンがある。こちらは右手で光を遮り、影ではなく直接見えているが。

事務所を覗き込むキム/フランチェスカ S6Ep06/S6Ep05

 

「正式には会っていない」 (added 20220625)

A2 ドイツの森で。ラロがキャスパーに言うセリフ。

非公式に会った、というか見かけた事はある。S5Ep01で、ガスの新しい食肉冷却システムの建設(勿論これはスーパーラボを秘密にしておくためのフェイク)を見せた際だ。この前のエピソードで名前を聞いた「マイク」と話したいと言ったラロに、マイクを呼んだのがキャスパーだった。

フェイク工場でマイクを呼ぶキャスパー S5Ep01

S4Ep10で、ラロはヴェルナーとの電話通話の中で「カイ」という名前を聞いている。このことから、ラロに狙われるのはカイかと思っていたが違ったようだ。

 

 

フランチェスカが決めた事務所の内装・客層 (updated 20220714)

フランチェスカの言を借りれば、「洗練されているのと同時に居心地のいい雰囲気」の内装。キムは「凄く上品よ」と返すのだが、表情は硬く不満気にも見える。キムの「ソウル・グッドマンのオフィス」像と違うのかもしれない。

 

一方で、Breaking Bad時代のソウルのオフィスはもうこの「Inviting」な雰囲気は微塵もなく、お役所のような簡素な壁と椅子、客とフランチェスカを隔てるガラスまで。

 

これだけ内装は違うが、上品な事務所に訪れる客(A3)はもはやBreaking Bad時代と同じ。刺青だらけだったりだらしない服装だったり、新調した椅子のひじ掛けで煙草を消すような人まで居り、この内装とはそぐわない雰囲気だ。

このミスマッチがBreaking Bad時代をかえって強く想起させる。

 

フランチェスカがこの客層を歓迎していなさそうな事は表情から明らかだ。

ソウル・グッドマンのオフィス S6Ep06/BrBaS5Ep09

(以降 updated 20220714)

このソウルのオフィスを見渡すカットが本エピソードを含めて(恐らく)3回ある。初めてがソウル初登場のBrBaS2Ep08、(恐らく)2回目がスカイラーをソウルに紹介するBrBaS3Ep11。

ソウルのオフィスを見回すシーン S6Ep04/BrBaS3Ep11/BrBaS2Ep08

 

 

フランチェスカとのハグ

再会を祝してハグするフランチェスカとキム。

 

この2人はS3Ep10で、ジミーとの共同事務所を閉める時にもハグをしている。

 

一方で、Breaking Bad時代、人消し屋に電話して逃亡する準備をするシーンでは、ハグを求めるソウルを鼻で笑っている。

フランチェスカとハグするキム ソウルが求めても応じない S6Ep06/S3Ep10/S4Ep05

どうやらフランチェスカは、キムには強い好印象をもっている一方で、ジミー単体には悪印象を抱いているようだ。

しかし、キムはフランチェスカにそこまで良い印象を持っているようには「個人的には」思えない(本エピソードソウルの事務所での様子は好意の非対称性が見える気がする)。一方でジミーはフランチェスカに好印象を持っている。S3Ep02で面接をした際にも、キムは他にも面接しようとしていたのに、ジミーが強引に採用を決めている。このあたりのすれ違いも面白い。

 

 

成りすまし電話をかけるフランチェスカ (added 20220703)

フランチェスカは違法性を気にしつつも、クライアントに成りすまして電話会議への参加に必要な手順を聞き出す。この際、「こう言う事当たり前にしないで」と言われて、勿論今回だけだとジミーは答えている。

 

MVDの項*12でも言及したが、BrBaS3Ep06 ジャンクヤードでウォルターとジェシーを追い詰めたハンクをその場から去らせるために、フランチェスカは病院スタッフに成りすましてハンクの携帯に偽電話を掛けている。

 

 

捨てられた便器

オフィスの裏口を出た所、会議をリモートで聞くための手順を聞くためにフランチェスカが電話するシーン。S6Ep04でキムが「そのままにしておいて」と言っていた便器が大きなゴミ箱に突っ込まれている。

 

 

ガスにとって問題なら (added 20220704)

タイラスに洗濯工場の事務所に呼び出されたマイク。マイクの家の監視を解いて、義娘・孫の家の監視に当てている事に文句を匂わされるが、「ボスが問題だと思ってるなら直接言えばいい、お前が問題だと思っているならはっきり言え」と答えるマイク。

The boss has a problem, he knows how to reach me.

 

BrBaS4Ep12 入院したブロック(恋人の子供・ウォルターに毒を盛られた)が心配で病院を離れようとしないジェシーに、タイラスがメスを作れと命令する。ジェシーは「問題があるなら、ボスが自分で言えばよい」と返す。実際タイラスはガスに連絡し、直後に体面で会話する。

If my employer has a problem with that, he can tell me himself.

両方とも問題を「匂わせる」事で行動を強要しようしている(はっきりとボスの命令だとは言っていない)こと、強要するのがタイラスであることが共通している。

 

 

マイクと孫娘ケイリー

義理の娘の家の向かいにある、監視所として使っている家から双眼鏡で孫娘が天体観測をするのを見守るマイク。出張中と嘘を付いて電話で天体観測の話をする。

 

この孫娘ケイリーはマイクが一番大事にしている人物としてよく遊びに付き合っているシーンが描写される。

Fandom Wikiによれば*13、Better Call SaulではS6Ep07までに15エピソードで登場しており、Breaking Badでは5エピソードで登場している。

 

ちなみに、このケイリーの年齢はBetter Call SaulとBreaking Badでの年の違い程違うようには見えず、この2作における矛盾としてよく挙げられる。

ケイリーの母ステイシーは、Breaking Badでの登場はS3Ep13のみであり、クレジットもされていない上、俳優もBetter Call Saulで演じているKerry Condonとは別人である。

 

 

ケイリーとの会話でわざと間違えるマイク (added 20220714)

ケイリーは天体観測の話の中で、「木星が一番好き」「巨大ガス惑星って呼ばれてる」という発言をし、マイクは「臭そうだな(That's not very nice.)」と、ガスをおならと勘違いしてみせて、ケイリーのツッコミを誘う。

 

BrBaS3Ep13 A2 マイクの車の中 マイクはケイリーに「サイは大きな鼻で全部蹴散らす」といい、ケイリーの「あれは鼻じゃなくて角よ」というツッコミを誘う。そもそもペットにサイはどうだ?という事からしてツッコミ待ちなのだが。

 

 

Bad Choice Road

急なアクシデント(元判事の骨折・ギプス)で、ジミーが中止を提案するにも関わらず、「今日決行よ」サンタフェへ向かっていた車をUターンさせるキム。

 

S5Ep09「Bad Choice Road(悪い選択がもたらす道)」のタイトルは直球でこれだし、その中で、キムのアパートで、ジミーがキムに言うセリフもまさにこの暗示だ。

Jimmy: I'm saying that bad choices lead to bad roads that lead to bad places.

勿論、この話はマイクの受け売りである。

 

 

Episode 7

シャワーシーン

Teaserでシャワーを浴びるラロと、Breaking Badでシャワーを浴びるウォルターのポーズが似ているという話があった。一般的にこういうポーズをとりやすい心理・状態というのがあるのだろうか?自分はこういうポーズをとった事は無いが、疲れている時にするイメージがなんとなくある。

シャワーを浴びるラロ/ウォルター S6Ep07/BrBaS4Ep06

ウォルターのこのカットはBrBaS4Ep06のものだが、BrBaS5Ep08でも一瞬同じ場面が映る。時間経過を表すモンタージュシーンの中で再利用されている。

 

 

タイマーをセットし、車内で寝るラロとキム

S6Ep07 タイマーをセットして寝るラロ

S3Ep07

S3Ep07 タイマーをセットして寝るキム

 

双眼鏡を覗きながら食べるラロとキム

S6Ep01

ラロとキムが同じ仕草を2回もしているのは気になる所である。

 

 

下水道から出てきた目撃者 (added 20220625)

下水からガス所有の洗濯工場を監視するラロ。

 

S5Ep02 A4 ソウルとビル(地方検事補)との会話。突然ソウルのクライアントに有利な目撃者が現れた事について、「何をしたんだ?」と食い下がるビル。「名乗り出てくれたんだ」とうそぶくジミーにビルは「下水道から?」と茶化す。これは正規の目撃者ではなく、ジミーがでっち上げた「目撃者」なんだろう。「ソウル・グッドマン」モードのジミーだ。

 

 

カメラに触るな

トランブル公園で、UNMの眼鏡のカメラマン(Joey Dixon)が、音声担当に。

Joey: Wait. You touched my stuff?

 

S5Ep06

ネイルサロンで、ジミーがキムに

Jimmy: All right. Just don't touch the camera. He claims it's an extension of his body.

 

S1Ep04

ハワードコスプレ看板の下で、Joeyがカメラを触ろうとしたジミーに

I signed the form. Only I can touch the camera.

 

 

アイリーン

アイリーンも久しぶりの登場だ。S3でジミーのサンドパイパー案件和解策で除け者となっていた彼女を、自分が悪かったのだと露悪的に曝露する事で解決して以来。

そもそもサンドパイパー案件が始まったのも彼女がきっかけ(S1Ep07)だ。

 

それにしても、ハメられたハワードの大騒ぎで不発に終わった調停シーンの最後「調停はいつもこうなの?」というセリフは本エピソード一番のコミックリリーフだった(2番目はUNMカメラクルーメイク担当のコスプレ)。

 

 

最高の法律家

HHM会議室で、ハワードがケイリー(Cary)に、チャックの事を称して

Howard: Greatest legal mind I ever knew.

 

S3Ep09

HHM会議室で、ハワードがチャックに、引退を促すシーンで

Howard: Chuck, you are the best legal mind I've ever known. Hands down.

 

 

ギプスをした人に問い詰められるハワード

本エピソードでは左手にギプスをしたカシミーロにハワードが問い詰められる。無論、ジミーとキムによって操作された情報によって、だが。

 

S4Ep02 A3では、右てにギプスをしたキムにハワードが問い詰められる。チャックの自殺をジミーに示した事等を非難される。自殺のきっかけになったのはジミーが保険会社にチャックの病気や法廷での取り乱しを密告したからなのだが、キムはそれを知らない。操作されてはいないが、事実に基づかない情報に操られているのは共通点かもしれない。

 

 

作戦成功 (updated 20220625)

ここまでの6エピソードかけて仕込んできた作戦が見事にハマり、ハワードをドツボに陥れる。そこで取り乱したハワードは、S3Ep05での証人尋問中に取り乱したチャックと相似形だ。公式Twitterが動画をTweetしているのでリンクを張る。

 

 

(以下 updated 20220625)

また、個人攻撃をして、対象が関わる案件を思う方向に動かすという意味では、S5Ep05で行ったケヴィン・ワクテル(メサ・ヴェルデの頭取)相手の事件もあった。「汚い手で、個人攻撃で、危険だ」とジミーは言うが、キムはゴーサインを出してしまい、思い直して止めさせたつもりがジミーは暴走。キムがハワードをハメる元になった事件の1つなのは間違いなさそうだ。こちらも「汚い手で、個人攻撃で、危険」でもある。

 

 

cucaracha

A3 下水でとある生物(cucaracha)を眺めるラロ。

 

S508 拘置所の面会室で、ラロが接見しにきたキムに、「あんたの旦那はcucarachaみたいなやつだ」と。

 

 

カーサ・トランキーラへの電話

ラロはS6Ep01でも、カーサ・トランキーラへ電話をしているが、2回とも最初はスペイン語で話をしている。これは施設の名前がスペイン語である事が示唆しているように、メキシコ系の利用者が多い施設だから、従業員も話せる人が一般の場よりは多い事を警戒してのことだ。ラロの徹底した慎重さがうかがえる。

 

 

マッカラン

ハワードはジミーとキムに、2人の企みだったことを証明する復讐を宣言するためにキムのアパートにやってくる。そのときに持ってきたのが、いつもチャックと祝う時に飲んだマッカランだ。

シングルモルトスコッチの中でも知名度の高いこのブランド。シェリー樽で熟成させるために甘みが強いのが特徴で、勝利の美酒にはもってこいなのだろう。

 

最初にハワードがチャックと勝利の美酒を味わう様子が描かれるのはS2Ep05。キムがメサ・ヴェルデという大口クライアントを獲得した時だ。ここでは銘柄への言及もなく、木箱にも入っていない。ラベルも良く見えなくて、何年ものかの特定も困難だ。ジミーとキムへ持ってきたのもこれと同じもののようにも見えるが、同じくアップのシーンも無く良く見えないので何年ものかは分からない。

 

一方、S3Ep06では、1966年の表示がある木箱入りの、35年もののマッカランで祝杯をあげている。この時何を祝ったのかというと、ジミーの弁護士資格12か月の停止だ。馬鹿な身内に欠かされた恥なんて忘れて、前を向いて生きようと、これは勝利だと。

この時が一番の高級品なのは、一見皮肉にも見えるが、それだけチャックへのシンパシーにあふれているという事でもあるのだろう。実際これを機に、チャックはクルーズ医師と連絡をとり、電磁波過敏症を患っているという妄想を正そうとするのだ。

 

 

You won.

キムのアパートにて、ハワードがジミーとキムに。

Howard: You won.

 

S3Ep10

HHM会議室にて、ハワードがチャックに。

Howard: You won.

 

 

soulless (updated 20220625)

ジミーとキムを指して言ったハワードの言葉。

 

S6Ep03で、ナチョがヘクターに言ったセリフにも同じ単語が使われている。

 

「soulless pig」は吹替字幕共に「卑劣なブタ野郎」、「You two are soulless」は吹替では「余りに無慈悲」字幕では「心が無い」となっている。

 

(以降updated 20220625)

S5Ep03 A3 アッカー(メサ・ヴェルデのコールセンター用地から立ち退かない老人)が、「あんたらは皆 血も涙もない金の亡者だ」と言っている。

You people are all the same. You're soulless money grubbers.

 

S1Ep10 A1 老人が集まるビンゴ大会会場で。ジミーはあまりにBが連続していてイライラが溜まる。「シカゴサンルーフ」の話をする前に、(恐らく)アルバカーキという「不毛の地から、あなた達も私も出られない」「玩具のオーブンの中で暮らしてるみたい」「窓の外を見れば ジョージアオキーフの風景画みたいな、soullessで放射能汚染されたような世界だ」と、ビンゴに集まった老人たちをドン引きさせる発言をしてしまう。吹替では「まるで魂の抜けた毒々しいオキーフの世界だ」で、字幕では「まるで ジョージア・オキーフの世界だ」と、soullessの訳は省かれている。radioactiveをボカして(字幕ではオミットされているが)訳しているのは洋ドラの翻訳でよくある事だ。

It's like a soulless, radioactive Georgia O'Keeffe hellscape out there...

ジョージアオキーフ 風景画」での検索結果

余談だが、上記画像のGoogleDoodleの女性の顔はアンネ・フランク。20220625はアンネの日記出版75周年だそうだ。

 

そこまでの事をしたか?

キムのアパートにて、ハワードがジミーとキムに。「何のために?どう正当化する?」と。

 

S1Ep09 チャックの家で、ジミーがチャックに。「そこまで許せない事をしたか?」と。

 

 

Burn to the ground (updated 20220625)

(以降 updated 20220625)

A5 キムのアパートでハワードがジミーとキムに。陥れられた事について。日本語訳は「叩きのめす」となっている。

Howard: Why go through this elaborate plot just to burn me to the ground?

S1Ep09 ジミーがハワードに。サンドパイパー案件で外された腹いせに。日本語訳は「全部燃やしてやる」

Jimmy: I will burn the whole thing to the ground before I give it to you.

S3Ep02 チャックの家で、ジミーがチャックに。書類の住所を書き換えた事を自白したテープを壊した直後に、他のコピーはないのか?との問いに続けて。日本語訳は「家ごと燃やすぞ」

Jimmy:  You tell me, or I'll burn this whole goddamn house to the ground.

 

また、「burn ~~ to the ground」という表現ではないが、S5Ep10 A4 避難先のホテルのベッドの上で、ジミーが言ったセリフ。scorched earthは焦土で、燃やし尽くすというニュアンスが共通している。日本語訳は「相手のすべてを奪うんだ」

We're not talking about a bar trick here.
We're talking about scorched earth.

 

 

ジミーとキムについて

キムのアパートで、ハワードがジミーとキムに「完璧にお似合いの2人」だと。

 

S5Ep10 裁判所の一室で、ハワードがキムに。メサヴェルデを手放した事について「こんな事するなんてジミーの影響なんだろ?」と。

 

S1Ep09 HHMのハワードのオフィスにて、キムが「何故メサ・ヴェルデ案件にジミーを入れないのか」と聞き、答えないハワードに「友達だから」と言う。

 

S1Ep04 HHMのロゴやハワードの恰好に似たJMMロゴやジミーの写真の看板の前で、ハワードに「まだ友達なんだろ?」と聞かれるも、この時は「そうでもない」と言う。

 

 

筒を回す (updated 20220703)

炭酸飲料の缶を回すハワード

サイレンサーを回すラロ

 

このエピソードのライターで監督のTomSchnauzはTwitterで、「これは指摘されるまで気づかなかったのが悔しい」というような事を呟いている。

正直この人の言う事を鵜呑みにするのも危ないと個人的には思っている。どう思うかは受け取る人次第。

 

 

サラマンカへの恐怖

ジミーが抱くサラマンカ一族への恐れ。まさに幽霊を見たかの如き恐れの表情を見せたジミー。

 

最初はS1のトゥコだ。口八丁で自分とスケートボーダー2人の命を助け、ナチョとの付き合いが始まる。

 

次はS2でマイクがトゥコの減刑のための偽証に付き合った時。「サラマンカとの因縁があり、危険なサラマンカ一族に脅されたのならしょうがない」とマイクを慰めている。マイクは邪険にするが。

 

S6Ep05では、「シセロのシスターに聞かれたら怒られるが、ラロが死んで良かった」と、偽の死亡情報に心底安堵している。

でも、S5では金を釣り上げて運び屋を買って出ている。

 

 

弁護士・居合わせた人を殺す

ラロは理由もなく(敢えて言えば悪いタイミングでその場にいた、というだけで)ハワードを殺した。

 

S1Ep02 で、ソウルとスケートボーダー2人を拉致した荒地で、ナチョがトゥコに「理由もなく弁護士を殺すのは得策じゃない」と言っている。

 

BrBaS5Ep05 では、列車から海のような(量の)メチルアミンを盗むという大強盗を成し遂げたそのシーンに、オフロードバイクに乗ったドリュー・シャープ少年が居合わせ、サイコパストッドが射殺する。

理由もなく殺される、と言う事でアンドレア(BrBaS5Ep15)を例に挙げる人がredditではそこそこ居たのだが、居合わせただけという点ではやはりドリュー少年の方が対比対象としては適当だろう。原因となる人物と付き合いがあったという点では、ハワードとアンドレアにも共通点はあるが。

 

倒れる時に頭を打つ

ハワードは撃たれて倒れる際に、テーブルで頭を打つ。

 

S2Ep09 A4で、コピーショップで発作を起こしたチャックも、倒れる際に机で頭を打つ。

痛ましい……

 

 

Better Call Saul S6Ep01 Wine and Roses(青き春は過ぎ) A4

ゴルフクラブ

車の中からハワードとクリフがプレイするのを監視するジミーとキム。プレイが終わるまで45分、というキムに、「ゴルフを教えてくれ、弁護士にゴルフは必須だ」と頼むジミー。キムは快諾。

ドアを開けて少し固まるジミーだが、piece of cakeと言って騙しに向かうジミー。ハワードの車の前で少したたずむ。

ゴルフクラブの駐車場 ハワードのジャガーの前で佇むジミー

 

クラブの玄関を入り、見学に来たと伝え、案内されるジミー。珍しくも黒のジャケットに、殆ど黒の茶色のシャツ。ソウル・グッドマンを名乗る。

ラウンジを案内されている最中に、メサ・ヴェルデのケヴィンが現れ、案内人のノームを呼ぶ。離れたところで目を見開いてノームに何かを言うケヴィン。

ジミーの元に戻ったノームは、「現在 入会待ちが2年で」と、見学をキャンセルする。見学だけでも何とかならないか?と聞いても答えはノー。一度はジミーも引き下がりかけるのだが、「急に新規入会停止を思い出したのか?」と問い詰め始める。

 

ここからユダヤ人差別(勿論ジミーはアイルランド系で、Goodman姓は勝手に名乗ってるだけ)をネタに、ラウンジ中を相手に大演説をする。ケヴィンを徴発する事にもまんまと成功し、本来の目的のために、更衣室のトイレを借りる事を了承させる。

借りたトイレを紙で詰まらせ、従業員をカウンターから引き離し、ハワードのロッカー番号を得た所で、キムからハワードが戻ってくる、中止のメールを受け取る。しかし、ジミーは強硬。ハワードのロッカーにコカインを模した袋を忍ばせ、自らは全裸で頭からタオルを被るという、場に似つかわしい機転の利いた変装でハワードの目を誤魔化す。

 

ハワードがロッカーを開けた時に落ちた物を見て、クリフ・メインはコカインのパッケージだと認識するが、その場は従業員のものだろうという事になる。その会話を近くで盗み聞きするジミー。

ハワードがロッカーを開けたら落ちた、偽ドラッグの袋

車で待っているキムと合流したジミーは、クラブハウスから出てきたハワードとクリフを双眼鏡で覗く。「ベビーパウダーだとバレたら?」「私たち、策に溺れたかも?」「何もかも微妙過ぎたんじゃない?」と心配するキムに、「そんな事ない、完璧だ」と自信気に返すジミー。

 

 

メキシコの荒野

TOYOTAピックアップトラックの荷台に、バンダナをマスクにして揺られているラロ。

 

荷台のラロ

密入国業者のトラックで、アメリカに舞い戻るつもりだ。代金を払った後?暫く待っててくれ「Be Nnice.(良い子)」、と更に金を渡し、携帯で電話した先はカーサ・トランキーラ。電話をとった従業員がスペイン語を話せない事を確認する抜け目のなさ。

襲撃されたが生きている、ガスをぶっ殺してやるというラロの言葉を聞いてのヘクターの顔芸が凄い。ヘクターが何か言いたげなのを感じ取ると、アルファベットを順に読んでいき、ベルで文字を指定する方法を始めるラロ。Breaking BadでトゥコもこれをやっていればS2で終わっていただろう、身も蓋も無いが。

出来た単語は「PRUEBA」、証拠。証拠は無い、と一度は言うラロだが何かを思い出して、「見つけられる」と。

 

ラロは密入国業者の元へ戻り、「行かない事にしたから金を返せ」と言うが、アウトロー共があっさり従うわけもなく、「いい子」ではない2人はラロの餌食になってしまう。一方で、他の参加者にも金を返し、すまないが別の方法でいってくれ、と。

そして国境を背にしてピックアップトラックで走り出す。

 

 

 

 

 

Better Call Saul S6Ep01 Wine and Roses(青き春は過ぎ) A3

エル・カミーノ 食堂

夜、ジミーがブラウンのフォードトーラスで乗り付ける。ジミーが貸した服を着た少年とその母がキムと、食堂の中で話をしているのを見つめるジミー。食堂入口で二人とすれ違い、「良いスーツだ」と声をかける。

ジミーはキムのテーブルに座り、本日の成果について尋ねる。先ほどのキムのクライアントの少年は、勤勉な高校生だが、新車を乗り回す金持ちの子が犯した強盗の罪をかぶせられてしまった。金にあかせて最高の弁護士を準備した真犯人に対抗するキム。キムが本来したいと思っている「弱い者のための弁護」だ。

他に、ホームレスの女性を釈放させたというキムに、「地獄の1日だな」というジミー。しかしキムは「(弁護士として)人生最高の日よ」と返す。

 

話はジミーの事に。フォードトーラスを借りたジミーに、「ソウル・グッドマンが茶色のトーラスに?」とキム。ソウル・グッドマンが乗る車はもっとシャレた、派手なアメリカ車だと。

事務所についても、「人目を引く」「立地の良い(裁判所の近く)」「正義の大聖堂」というイメージを語り、物件を探し始めましょうと提案するキム。

 

そして話はハワードを陥れる件へ。「ハワードを痛めつけ 潰さずに勝つ(Bruised, maybe, but still standing.)」乗り気のキムだが、ジミーはまだ決断しきれない。とりあえず話を聞く、というと計画を語り始めるキム。詳細はまだ明かされない。

 

 

メキシコのどこか

夜。何かのパイプにたまった水を飲むナチョ。警察の車を見て隠れる。

虫が鳴く中、目的地のモーテルを見つけ、人目が無い事を確認しながら受付へ。テレビを見ていたおばさんは、一言も交わさないまま、1つの部屋のキーを出す。それを受け取って部屋へ入るナチョ。

一息つき、ベッドの上に封筒を見つける。中には現金と拳銃。

用意されていた携帯電話でタイラスに電話をかける。「2,3日かかるが 越境手配が済んだら電話する」と言うタイラス。その間は隠れておけ、人が来たら撃て、と。

 

 

ステイシーの家

ケイリーと遊ぶマイク。ケイリーはMarble Runという、玉を転がすタワーを作る玩具で遊んでいる。ケイリーが走らせた玉は飛び出してマイクの手に。

マイク「高くし過ぎたからビー玉が飛び出るんだ」

ケイリー「まだ途中なの 完成したらうまくいく」

と何とも意味深な会話。

 

ジュースをねだられ、冷蔵庫に向かったマイクに、ナチョから電話が掛かってくるが、思案し溜息をつき、電話には出ない。メキシコのナチョも携帯を見つめて思案する。