toorisugari3のブログ

ベターコールソウルの事について、ネタバレ込みでつらつらと

Better Call Saul S6Ep11 感想・予想 (ネタバレ) 追記アリ

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep11まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

「今後の予想」以降も、自分で予想したい人は読まない方が良いかもしれない。

 

 

【目次】

 

 

Teaser

色がある。縛られ、頭に袋をかぶせられた状態で床に転がされたソウル。間違いなく、BrBaS2Ep08「Better Call Saul」、ウォルターとジェシーに拉致され、荒野に連れていかれているシーンだ。

ECU*1される「Metylamine(メチルアミン)」の瓶や「(RE)D PHOSPHORUS(赤リン)」のボトル、フラスコにRVのキー。どれもがBreaking Badを象徴するモチーフ。

 

RVは止まり、車から降ろされるソウル。目隠しをされていても足元は見えるのか、ステップを降りるソウルの足取りに迷いはない。扉が閉められると、BrBaS1Ep02であけられた弾痕に張られた、5片のダクトテープ。

 

目隠し袋を取られ、「穴」を見せつけられたソウルの悲鳴と「It was Ignacio!」の叫びが記憶をBreaking Badに揺り戻す。続けて「He's the o(ne)...」でブツっときれてタイトルへ。

 

コールバック

  • 「アボガド(弁護士)」「ディネロ(金)」はS5Ep08 bagmanで、カズンズからラロの保釈金を受け取る際に話している。

 

 

タイトルコール

ビデオ再生直後特有の砂嵐類似から完全な青一色。そしてそこに早送りノイズ的なものが乗りだして左上に「PLAY」。2秒ほど椅子ひじ掛けの上で揺られるグラスの映像が、早送り中のビデオのような効果をかけられて映される。これはジーンの家にある椅子と、何時も飲んでるラスティネイルだろう。早送りのようにみえ、タイトルBGMもいつもより音程が若干上がっている。PLAYと表示されているので、これは早送りではなく機械の不具合で早く再生されているととるべきだろう。

 

くっきりとした青背景に戻り、「BETTER CALL SAUL」のタイトルと、Vince&Peterのクレジット。前回はここでテレビを切るエフェクトだったのが、今回はモノクロの十字路が一瞬映る。

 

 

Act1

画面はモノクロに戻り、フランチェスカ宅。ウォルターとジェシー、ソウルが居なくなったアルバカーキで、定職にもつかずに昼過ぎまで寝てるような若者2人に部屋を貸すような、肩身の狭い暮らしを余儀なくされている。

2:05と表示された時計を見て家を出るフランチェスカ。11月12日午後3時に取るべき電話に向かうのだ。尾行を警戒しながら車を走らせる。

廃業したか、それに近いレベルでさびれたガソリンスタンドの公衆電話。3:01になるのを見て立ち去ろうとするが、電話が鳴り、取りに行くフランチェスカ。あまり乗り気には見えない。

 

電話の相手はジミー/ソウル/ジーンだ。報酬前払いでないとと約束をたがえるフランチェスカに仕方なく隠し場所を教えるジーン。

状況は最悪で、フランチェスカが一応は自由の身である事、ジェシーが逃げおおせた事、ヒューエルも取り調べ後に「故郷に帰ったらしい」で済んでいる事くらいが明るいニュースで、ソウルが残してきたものは全て明るみに出て没収された。

そう報告を受けたジーンは「It's gone. It's all gone.(吹:消えた 全部無くなった 字:つまり 何もかも消えたのか)」。この、It's all gone.は最終エピソードタイトルの「Saul Gone」にもつながる。

 

切ろうとしたフランチェスカに、追加のコインを入れたんだからもっと話をしてくれとせがむジーン。検事から弁護士に立場を変えたビルや、自身の近況を皮肉るフランチェスカ。これで終わりか?と聞かれ、暫く間をあけてキムから電話があった事を告げる。生きているか?と聞かれても「何も答えなかった」とフランチェスカ、「でも聞かれた」と再確認するジーン。

 

ジーンが電話していたDiner横の公衆電話からの帰り道、タイトルコールの最後に一瞬映った十字路へ、車で差し掛かるジーン。見渡しのいい十字路の手前で停止し、暫く考え込む。

この十字路は非常に示唆的だ。

 

直後、シーンが変わり、また公衆電話。番号案内に聞くのはフロリダの「パームコースト・スプリンクラー」。これはキムの勤務先で、ジーンはどうにかしてこれを知っていたようだ。

番号案内が繋いだ後の会話は聞こえない。映像上で30秒弱話した後、激昂して受話器を滅茶苦茶に叩きつけるジーン。電話ボックスから出てくると、ボックス下部のガラスを蹴り割ってしまう。

誰と話したかすら定かではないが、余程悪い、もしくは気分を害する話をきかされたのだろう。

 

コールバック

  • フランチェスカが店子の「dude」を使ってやり返すのは、BrBaS1Ep02でスカイラーがジェシーに対してやった事。「But it's still clogged, dude.」「You do it, dude.」。なお、日本語翻訳では吹替・字幕共にこのニュアンスは抜け落ちている。
  • 「First things first.」*2S5Ep06と、S6Ep03でマイクがナチョに言うセリフ。
  • ジーンの「This is goodbye(これでお別れかな)」直後にガチャンと電話を切るフランチェスカフランチェスカはソウルと馴れ合う気がない。S4Ep05Teaserのフラッシュフォワードで、いざ逃げ出そうとするときにハグを求めるソウルに「Yup」とだけ言って立ち去るフランチェスカ
  • 「Tigerfish Corporation」は「Ice Station Zebra」に登場するの架空の原子力潜水艦「USS(US Navy Submarine) Tigerfish」から。Better Call Saulでは、S2Ep03で「Ice Station Zebra」そのものを観ていて、S2Ep06ではフォークダイニング&バーでキムに酒を奢ったエンジニアのデイルから受け取った小切手の宛先に「Ice Station Zebra Associates」が使われている。
  • 十字路を目の前に思案するジーンは、BrBaS4Ep06 フォーコーナーズ(4つの州の州境が交わるところ)でコイントスするスカイラーを思い出させる。
  • 怒りのあまり受話器を叩きつけるのは、S1Ep01 HHM駐車場エレベーターホールのゴミ箱を蹴りまくっていた事を思い出させる。また、BrBaS2Ep09最後、癌の寛解を知らされた後、トイレでペーパータオルディスペンサーをボコボコに殴るウォルターをも思い出させる。

 

 

Act2/Act3

シナボンで生地こね機のスイッチを入れた後、ずっと思案にふけるジーン。

すぐに場面が変わり、ジェフが帰宅するとジーンはまたマリオンと談笑している。強引にジェフとガレージで二人になろうとするジーンに、マリオンもなにかを感じ取ったようだ。

そして、「これっきりだ」との自らの言を翻して、ジェフ達との悪事を再開してしまう。

 

悪事は、酒場で仲良くなった相手に酒を飲ませ、帰りのタクシーでジェフに、睡眠薬入りの水を飲ませて玄関まで送らせて鍵がかからないようにテープで細工。ジェフ友が犬を連れて侵入し、家主の昏睡中に免許証やクレジットカード、小切手帳や銀行関係の書類、ネットのアカウント情報等をデジカメで撮影し、その内容を売るというもの。

 

コールバック

  • 「我々は別々の道をゆき二度と会わない」(BrBaS1Ep02)と言ったのに「Wanna cook?」(BrBaS1Ep04)とメス作りの継続を持ちかけたウォルターと、「俺を見かけたら道の反対側へ渡れ」と命令し「We're done.」と無理矢理言わせたジェフに、もう一度悪事を持ちかけるジーンは相似形だ。
  • ジミーのカラオケはS4Ep10 Winnerを思い出させる。チャックは居ないが。
  • ジーンの偽名「Viktor」は、S2Ep01で初登場した「Viktor with K」。S2Ep06でも。
  • 最初にジーン達の餌食になった男は、S1Ep04やS1Ep10でのマルコとジミーを思い出させる。立場の逆転。しかし、そこまであくどい奴ではなさそうでもある。
  • ジミーの悪事のパートナーは、最初にオマハでのマルコ。それからBetter Call Saulでキムやヒューエル、アイラ、Breaking Badではクービーも追加。そして最終的にはジェフとその友達となる。最後の落ちぶれっぷりはBreaking Badのウォルターを強く想起させる。BIGBOSSガス・フリングをヘクターの助けで殺した後、ネオナチのチンピラみたいなのと刺し違えて終わってしまうウォルターを。個人的にはこのプロット、最強ボスを倒してエンディング、というクリシェの破壊で、大好きなプロットだ。

 

 

Act4

再びカラー。BrBaS2Ep08の時間だ。RVに乗り込んだジミー達。ソウルは中の「調理」用具に驚く。エピソードポスターの、「丸底フラスコに入った金魚」も回収。

ジェシーイゴールと呼んでいるのは(日本語ではただ助手となっている)、ヴィクター・フランケンシュタインの助手の事か。

 バッジャーを助ける手段としての「Jimmy In-and-Out(出戻りジミー)」についての会話や、いつもの超自分勝手で高圧的なウォルターのジェシーへの態度等、Breaking Badの濃厚な匂いが立ち込める描写。

RVのエンジンがかかり、立ち去る様子をソウルへの脅しのために掘った「墓穴」の手前から映し、カメラは次第に上昇し、「墓穴」を上から映す。そしてそこに横たわるジミーが合成され、自宅のベッドで横になっているシーンへ移行する。

ジミーはChi Swing Master*3を受け取り、自宅で使い始める。余談だが、日本では「金魚運動器」という名前で売られていた記憶があるが、英語圏では「Chi machine」で検索するとたくさんヒットする。

そして、ジェフ達との2回目以降の個人情報を盗む「悪事」のモンタージュシーンへ。免許証の数は合計で21枚。

 

シナボンで、生地捏ね機のスイッチを切り、モンタージュシーンが終わる。スイッチを入れたのはAct2の最初だ。

 

そして最後のカモ。酒を飲んでる最中に癌の薬を飲み始めるのは死の覚悟が出来ている証拠か?ジーンは思わずウォルターを思い出してか少しだけ気遅れする。

 

 

コールバック

  • RVの助手席に座るぞ、というソウルの「I'm calling shotgun」。BrBaS4Ep05 「Shotgun(ハンクの推理)」で、自暴自棄になったジェシーを立ち直らせるために、マイクがガスの指示のもと助手席に乗せてデッドドロップ(ドラッグ売上金の、人と人との手渡しではない非直接の回収)につき合わせるエピソードを思い出させる。
  • ジェシーの「Who's Lalo?」に対する「It's nobody.」。S6Ep07での、ハワードの「Who are you?」、ラロの「Me? Nobody.」ジミーが「無かった事」にしたい男No.1ラロ。

  • ある一連のシーケンスを1度丁寧に描いておいて、2回目以降をBGMに乗せてモンタージュシーンとして描くのは前エピソードS6Ep10でも、フランクにシナボンを何度も食べさせる所で行った演出。
  • 娼婦を呼んでいる描写。S6Ep09で、Breaking Bad時代*4のソウルも呼んでいた。おそらくBreaking Badタイムラインでも呼んでいたのだろう。
  • ジェフ達に渡した使い捨て携帯。弁護士資格剥奪中のジミーが売っていたもので、屋号を「ソウル・グッドマン」へ変えてからの顧客獲得策にもなった。
  • 最後のカモでもある癌患者が飲むたくさんの薬は、ウォルターが服用していたたくさんの薬や、S6Ep01 Teaserのソウル・グッドマン邸に残されていたいくつもの薬瓶を思い出させる。

 

 

Act5

色が付き、Breaking Bad時代に戻る。本エピソードでの色付きシーンは全て時間的にはBrBaS2Ep08 「Better Call Saul(ソウルに電話しよう!)」と重なる。

ソウルは自分のオフィスの床に横になり、「Swing Master」に足をのせて動かしながらフランチェスカと会話する。約束の時間にマイクが訪れ、ソウルは報告を要求するが、「Swing Master」を止めなければ立ち去るだけだと、冷たいマイク。彼なりのプロ意識の表れか。

3件ほど、あまり関係無いと思われる調査について報告したのち、「ハイゼンベルグ」の件へ。勿論それは元教え子のジェシーと組む、高校の化学教師であるウォルター・ホワイト。ステージ3Aの肺癌であることまでマイクは把握している。

ブルー・メスの品質の良さを買おうとするソウルに、ベータマックスの件を持ち出して「そいつの事は忘れろ」というマイク。「ああいうひげの男は ろくな選択をしてきてないだろうな」と、ソウルはその助言を受け入れる。

しかし、Breaking Badでの3つ先のエピソード、BrBaS2Ep11で、ガス(とソウルは知らないが)にウォルターを紹介してしまうのだ。

 

コールバック

  • Act4でも飲んでいたんだと言っていた、大量のサプリをフランチェスカに確認させている。
  • Swing master使用中にマイクがオフィスに入ってくるのは、BrBaS3Ep13でマイクが逃亡中のジェシーを探しに来た時も。ジェシーがゲイル・ベティカーを殺す回だ。この時は「You are good right there.」「Now, let's both get comfortable.」と今回の逆でソウルを寝かせたままにする。しかし、フレンドリーなわけではなく、寝転んでるソウルを上から威圧し、暴力の示唆までしてジェシーの居場所を聞き出そうとしている。

  • ハイゼンベルグについて、「警察に捕まるか、頭を撃たれる」との評は「Is that your appraisal, or is that what "He Who Shall Not Be Named" says about him?(マイクの評価か、それとも"名前を言ってはいけないあの人"の評価か)」とソウルが聞く。BrBaS2Ep11で、ソウルはウォルター達に、ドラッグを大量にさばける人について、「I know a guy, who knows a guy... who knows another guy. Who knows another guy.(知り合いの知り合いなら知っている)」と言う。マイクはガス直属の部下なので、「知り合いの知り合い」を知っているという事なら1クッション余計になってしまう。ここの理解・つじつま合わせができない。タイラス・ヘクター達のラインとマイクは別系統に思えるので。

 

 

Act6

家でくつろぐジーンに電話が掛かってくる。恐らくジェフが「ジェフ友がやらないと言っている」と報告したのだろう。マリオン宅のガレージに集まる3人だが、ジェフ友の犬が吠えて、マリオンに何かやっているのを見られてしまう。そこそこ遅い時間にこそこそと集まっているのだから、怪しまれない方がおかしいだろう。

ジェフ友は「ポケットの癌の薬を見てしまった。病人をカモには出来ない」と拒否するのだが、ソウルは激昂し、クビを言い渡す。高圧的・独善的な態度がウォルターそっくりだ。

一応はジーンの肩を持つジェフの運転で、最後のカモの家へ向かう2人。「睡眠薬がきれてるかも」との危惧も怒鳴って黙らせる。車を降りて、ドアを開けるとシーンチェンジ。

BrBaS2Ep08で、高校の化学室にウォルターを訪ねていく直前。学校の駐車場でキャデラックの扉を閉めるところへの切り替わり。障害者用駐車スペースのポンティアックアズテック(勿論ウォルターの車)の横を通り、校舎のドアへ向かうところでシーンチェンジ。

カモの家の中からのカメラで、ドアに近づくジーンを映す。手袋をしたジーンは、肘で玄関ドアのガラスを割り、手を入れて鍵を開け、ドアを開く。

 

コールバック

  • ここでのジーンはほとんどウォルターと言っていい。高圧的・独善的な態度もそうだし、Act5でBreaking Bad時代のソウルがウォルターについて言った「ああいうひげの男は ろくな選択をしてきてないだろうな」にも当てはまってしまう。
  • ポケットの癌治療薬を見て、カモにはできなくなってしまうジェフ友。父親も癌を患っていたとのセリフもあり、叔母の癌闘病に付き添っていたジェシーを思い出させる。悪事ははたらけど、踏み越えられないラインがそこにあるのだ。
  • どうしてもできない、というジェフ友を説得するためのジーンの言葉、「気持ちはわかるが乗り越えられる。信じてくれ、知らぬ間に忘れられるから」というのは、S5Ep09で、ステイシーから聞いた話をマイクがジミーに言った事、それをアレンジしてS6Ep09でジミーがキムと自分自身に語った言葉の超簡略版だ。
  • アルバカーキアイソトープのエアフレッシュナー。なんて事のない小物のはずだが、ECU(本体はフレームに入ってるし、この程度ならEは要らない普通のクローズアップか?)される回数が余りに多い気がする。
  • BrBaS2Ep11 ガスとの取引が急に成立し、ウォルターがブツをジェシーが借りた家に取りに行く時。この時はガラスではなく、ドア板をぶち破って手を入れ、鍵を開けた。同Ep13では、破れドアを補修していた段ボールを開けて同じく鍵を開けた。ジェーンを見殺しにした回。

 

 

感想

Teaser

Breaking BadのS2Ep08と、穴の前で目隠し袋を取られたソウルの叫び声を比べてみると、今回の方が少し怖がり方が強い印象。ここまでラロへの恐怖を存分に刷り込まれてきた様子を見せつけられた身としては今回位の方が納得感が出る。

移動メスラボRVのドアに内側から貼られたダクトテープ、Breaking Badでは外から貼られているのは記憶にあるのだが、内から貼られていたシーンに全く記憶が無い。一番分かりやすいのがS3Ep06で、ハンクに追い詰められ、外からテープをはがされ、車の中に光が差し込むシーン。正直これ(内側のテープ)はミスか、それを承知での演出だと思う、珍しいことだが。

……と思っていたら、BrBaS2Ep09、つまりこのシーンのBreaking Badでの次のエピソードでは、内側からダクトテープが貼られている。大変失礼いたしました。制作チームに敵うわけないよな。

 

RVの中は少しBreaking Badの時とは様子が違う気がする。スッキリしすぎというか、でも確証もない。

ウォルターとジェシーが目出し帽を完全には脱がなかったのは髪型を隠すためなのだろうか?といぶかしむなど。

 

タイトルコール

やはりEp01用の「自由の女神」には戻らずに、新しいモチーフを使ってきた。5秒くらい息が止まった。「ジーンの椅子で揺れるラスティネイル」、しかも再生速度が速くなっている。ストーリー展開の加速の暗示でもしているのか?

 

Act1

ジミー・マッギルの誕生日(生年は1960年)でもある11月12日の午後3時の電話に、個人的にもの凄く期待を掛けていたので、逃亡半年後のアルバカーキの状況を聞くために、事前に約束をしておいたってだけだったのか!と肩すかしを食わされた気分。決定的なイベントをそんな前にチラつかせてくれるような制作陣ではないようだ。誕生日なのも自分が忘れにくいだけの理由なのか?

たかだか1分遅れただけで車を出そうとするフランチェスカ。暮らし向きも悪そうで、それなりの大金が入るのに、そこまでソウルを嫌っているのか。ソウルはフランチェスカに、フランチェスカはキムに、割と一方向の好意を持っている様に見えていたのだが、ついに後者については明らかにならなかった。キムがフランチェスカに電話したのは、繋がりがそこしかなかったからという可能性もあり、フランチェスカがソウルの生死を答えなかったのは、おそらくソウルとの事前の取り決めだろう。

事前に隠しておいた電話の報酬を探し出すところは、最近はじめて観た「ショーシャンクの空に」を思い出す。

 

キムの勤務先、パームコースト・スプリンクラーへの電話シーン。会話を聞かせない演出がなかなかニクい。

会話を聞かせない演出は「会話内容が明白だから聞かせない」場合と、「会話内容をヒキにし、後で明確にする」場合がある。

前者の一例は、S1Ep08 Teaserのフラッシュバックシーン。ジミーが司法試験に合格し、チャックにHHMで雇ってくれと頼みに行った後、郵便室でハワードがジミーと話す場面だ。視聴者は既にジミーがHHMで働いておらず、ハワードを憎んでいる事を知っている。ハワードが告げた内容は「HHMでは雇えない」という事なのは明らかだ。呆然とするジミーに胸が痛む。

後者の一例を挙げると、S5Ep09で、キムがS&Cを辞めると告げにシュワイカートの部屋へ行った時だ。ただし、この時はその直後で会話内容が察せるし、遅くても同エピソード内の少し後で明らかにされる。

今回の「聞けなかった会話内容」は、今エピソードでは明らかにならなかった。

 

Act2/Act3

おお、ジーンよ、汝はまた「Breaking Bad」してしまうのか……。

ジェフ友のお供の犬が賢くてかわいい。

 

Act4

Act2の冒頭で入れたシナボンの生地捏ね機のスイッチを切るのは、ジェフ達と再び悪事に手を染め、金を稼ぎ、娼婦を買ったりストリップを見に行ったりした事が示された後だ。間にフラッシュバックとしてウォルターとジェシーから手付金を受け取り、守秘義務が発生した所、つまり「この2人のGameにInした所」も含む。

 

モンタージュシーンで流れる、Nesmith Michaelによる「Tapioca Tundra」も非常に示唆的だ。はじめの方の「Lose themselves in other times」、2回繰り返される「And one more time the faded dream is saddened by the news.」、そしてリフレインの「It cannot be a part of me for now it's part of you.」

 

情報屋に売ったと思われる免許証は合計で21枚映される。1日1件だとしても、2010年12月になっているのは間違いないし、恐らくそこまでのハイペースでカモの準備はできないだろうから、年が明けている可能性も。

 

ジミーにとって、オマハ時代をカウントしなければ、ジェフ達との悪事は「Breaking Bad Again」である。1度目はS6Ep09ラストまでに描かれた。

そして、このフラッシュバックで描かれたのは、「ウォルターとジェシーのBreaking Bad」に関与し始めた瞬間だ。

 

ジェシーがラロという名前を聞いた事が無いというので、Fandom WikiのTimelineページ*5でタイムテーブルを確認してみた。

ラロがアルバカーキにやってきたのは2004年に入ってからで、退場するS6Ep09は同年6/24。1984年生まれのジェシーは、2004年時点では高校卒業して2年経ってる時期。

 

最後の癌を患ったカモ、どこかで見た事あるのに思い出せなくてもどかしかったが、「ビッグバンセオリー」のコミックブック店の店長、スチュワートだ。あちらではスーツを着たシーンは殆ど無いし、ヒゲも眼鏡も無いので気づけなかった。白黒なのもあるか?BGVがわりに流しまくっていたシリーズなのに。役者ってすごい。

彼の「巨悪に関わった奴らには特別な地獄が待っている」「人生一度きり」等のセリフがメタ的に思わせぶりだ。

 

Act5

Better Call Saulでの(より具体的にはS6Ep09で時間が飛ぶ前の)ジミーより、Breaking Badでのソウル・グッドマンはマイクへの態度が雑になったように思える。図太くなったからなのか、金銭的余裕が出来たからなのか。

Season6におけるマイクはラロに対して全て後手後手にまわらされた。フラッシュバックシーンでは、ブルーメスについては過小評価、ウォルターについての評価は「結果的に」正しい。その後、Breaking Badではマイクはウォルターの危険性を過小評価した挙句、BOSSであり信頼できるパートナーだったガスを殺され、最後には自分自身まで殺されてしまう。

規格外の化物には弱いのかな、マイクは。いや、誰だってそうか。ラロをかわせたガスが凄かったのか。

 

Act6

Teaserの椅子のひじ掛けの上にラスティネイルが置いてあって揺れていたのは、電話連絡を受けて立ち上がった直後なのかもしれない。

これまで全然吠える様子が無かったジェフ友の犬が吠えたのは、ジーンの不穏な変化を察知したからなのかも?

マリオンはジーンの不審さに気づいたようだが、また出番はありそう。しかし前回感想では「もう出番は無さそう」と書いて外したのでさほど自信はない。

 

全体

Season6において、Ep09まではエピソードタイトルにおいてBetter Call SaulとBreaking Badのタイムラインを撚り合わせてBreaking Badの「ソウル・グッドマン」の誕生を描いた。

一方、このEp11では、ジーンとBrBaソウル・グッドマンを強烈に撚り合わせている。特に後半だ。

  • 荒野に掘った穴と、自宅ベッドで寝ているジーンを利用したトランジション
  • 電話のワイヤレスヘッドセットは、ソウルの机の上でも、ジーンの机の上でも同じように光る。
  • Swing Masterも、ジーンの家、ソウルのオフィス双方で使われる。
  • ジェフの車から降りるとウォルターの高校なのも、校舎に近づくと、最後のカモの家に近づくのもそうだ。

 

 

これから描かれて欲しい事

  • マイクがトゥコにボクシンググローブのネックレスを返すところ。直接描写ではなくとも、トゥコの登場やマイクとサラマンカ関係の誰かとの接近描写が欲しい。
  • オープニングテーマ曲のフル版を流す事。Breaking Badでのpenultimate(最後から2番目)の最後のような、テーマ曲を使った印象的な演出をして欲しい。最終回でもいいし、その前でもいい。

 

 

今後の予想

次回タイトル「Waterworks」

一般的には上水道システムやその設備を指す言葉だそうだ。また、インフォーマルには尿排出に関わる器官。そして、「turn on the watermarks」となると、目的の(同情や注意を引く)ために涙を流すという意味になる。

所謂「嘘泣き」を示唆するタイトルなのかな、と。

S6Ep11で「Waterworks」に関連しそうな出来事はいくつかある

  1. フランチェスカの台所の詰まり
  2. フランチェスカへの報酬の隠し場所のパイプ(これはかなり薄い)
  3. キムの勤め先「Palm Coast Sprinklers」(これは割と有望なのでは?)
  4. ジーンが酒を飲んだふりをするための吸引システムと、その排出。

そして、本エピソード以外では、マルコの最後の職が「Lake Michigan Standpipe」だ。消火栓関係の仕事。ここでマルコの仕事を引っ張り出してきそうな気はしている。マルコ自体はなかなか難しそうなので、消火栓が。割と穴狙いの説ではあるが、そこまで大穴というわけでもない気がしている。

これらと「turn on the watermarks」とのダブルミーニングだろうか。当たればいいな。

 

それ以外の予想の材料

「It's gone. It's all gone.」

フランチェスカとの電話で。「Saul Gone」へのリンク。

十字路

分かれ道、決断の暗示。

キムの勤務先との電話の内容

電話の相手はキムかそれ以外か?キムは出なかったのか出られなかったのか?電話の内容は?キムは癌などの重病なのか、既に死亡とかいう最悪中の最悪なのか?それとも徹底的に拒絶されただけなのか?とにかくジミー/ソウル/ジーンにとって受け入れがたい話があった事だけは間違いない。

詐欺再開の理由

単なる金目当てか、切迫した理由によって金が必要なのか?

墓穴に入るジーンの意味は

Act4で強烈な印象を残したトランジション(シーンチェンジ)。ジーンの死の暗示なのか、煙幕なのか?

『Breaking Bad』というエピソードタイトルの意味

ただの「悪堕ち」という意味なのか、Breaking Badでのウォルターの癌についても暗示しているのか。もしそうならば、キムの勤務先との電話と繋がり、キムが癌になってしまったことを示唆している可能性。

ストリップ(ポールダンス?)や娼婦

ストリップにはジェフやジェフ友も席は別だが一緒に行っているので、カモ漁りではなく、楽しみに行っているのだろう。娼婦を呼んだ事は、キムへの想いが無い事を示唆するのか、ソウル・グッドマンからの惰性が止まらないだけなのか。

「巨悪に関わった奴らには特別な地獄が待っている」

最後の癌を患ったカモの言葉(拙訳)だが、これもエンディングの強烈な示唆だ。もしくは煙幕。

Alberqurque Isotopes

しつこいほど繰り返されるこのモチーフ。このチーム名は、元々アニメのシンプソンズのエピソードが由来だったそうだが、ニューメキシコには「ロスアラモス国立研究所」「サンディア国立研究所」「廃棄物隔離パイロットプロジェクト」等の、核兵器や核廃棄物に関する施設がある事も理由になっている。Isotopeは放射性同位体という意味だが、これは不安定なため放射線を出す物質の呼称である。これらは癌の原因にもなりうるし、その癌の放射線治療にも有効利用される。

あまりにしつこい繰り返しは癌の暗示なのでは?というのは分が悪い賭けでは無いように思える。

ウォルター化するジー

ここまでジーンが高圧的・独善的になり、ウォルターとのオーバーラップを意識させ、しかもMustacheまで。ウォルターの二の轍を踏む暗示である可能性は極めて高いと思われる。

ジーンとBrBaソウル・グッドマンの強烈な撚り合わせ

このBrBaソウル・グッドマンとの撚り合わせは、「Breaking Bad Again」の暗示か?ウォルター・ホワイトとの撚り合わせにも通じる気がする。

 

 

結論

最初に断っておくが、最終的な話の落としどころの予想は10000%当たらないと思っている。制作陣が終わり方の予想外さをアピールしてるからというのもある。それでもこんな文章を書いて予想するのは、予想する事自体が楽しいからであって、どう外れたかも後で楽しむことができるからだ。書き残しておかないと自分が考えた事をすぐ忘れてしまうからでもある。

 

で、現時点での結論としてはこうだ。

  • キムはやはり癌を患ってしまい、ジーンはその事を勤務先への電話で知る。
  • ジーンの心変わり(ジェフ達との再犯)は、キムの治療費のためでもあり、金を稼ぐという事で自分の力を再証明するためでもある。
  • やはりジーンは最終的には死ぬ。

 

再犯の理由について、「キムのため」だけでないのは、ストリップや娼婦の描写があったため。「ジミー・マッギル」だったら恐らくこんな遊びはしなかったのではないか。しかし、「ソウル・グッドマン」ならしてもおかしくない、というのが自分の印象。キムに一途だったジミーには戻れないのだ。

ストリップ・娼婦描写が無ければなぁ……。

 

ジーンは未だにキムの事も大切には思っているのだが、Shortcutをしての金儲けやスリルからも逃れられない。

ジェフ友をクビにしてまで金に拘った理由もまだよく見えない。

一方で、本エピソード最後では、ガラスを割って侵入するという、予定外で安易すぎる行動を取ってしまっているが、これが命とりになるのではなかろうか。

 

ジーン死亡ENDとするならば、ウォルターの最後のようなある種のカタルシスが無ければ不釣り合いになってしまうが、これについては全く想像がつかない。ここにシーズンアートの「赤いジャケット」がでてくるのだろうか。

 

 

キムは既に死亡、の方が筋を通しやすい気がするのだが、それだけは個人的に受け入れがたい、余りに辛すぎる、耐えられない……。ジミーについては、ここまで死の暗示をされてしまっては……もう諦めた。

ジェシーは無抵抗なゲイルを含めて最終的に5人も殺したが、最終的にはアラスカへ旅立てた。キムは間接的にだが、チャック・ハワードを殺し、その周辺の人を不幸にした。

アルバカーキ・サーガの創造主ヴィンス・ギリガンは「因果応報、行動には責任が伴う」と言ってはいるが、制作チームの別の人は、因果のつじつまを合わせる事が優先されるわけでもない、と言っていた(Thomas SchnauzかGordon Smithだった気がするが、該当Tweetを見つけられない。英語検索が下手過ぎる)。ジェシーが生き延びる事を許されたのなら、キムが許されてはいけない訳も無いと思う。

 

 

追記 今後の展開の確度が高そうな推測

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キムの運命

ここまでAlberqurque IsotopesのAirfreshnerの強調をかいておいて、投稿前に気づかなかったのが信じられないが、S6Ep06でこのAlberqurque IsotopesのAirfreshnerをキムに法廷で持たせている。ここまで紐解けば、もはやキムが癌になったのは99%間違いないのではなかろうか。

キムが提示するAlberqurque IsotopesのAirfreshner S6Ep06

 

ここが確定となれば、キムの職場への電話も見えてくる気がする。

ジーン/ジミーは、キムに癌罹患を知らされ、金銭的援助を申し入れるが、キムは断ってしまうのではなかろうか。そうすればその後のジミーの行動も自分的には納得できるものになる。