toorisugari3のブログ

ベターコールソウルの事について、ネタバレ込みでつらつらと

Better Call Saul S6Ep13 感想 (ネタバレ)

【注意】本エントリには、Better Call Saul/Breaking Badのネタバレが含まれる。両作最後まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

 

 

Better Call Saul 全63話を締めくくる最後のエピソード。個人的に注目したいのは、法廷でのシーンと、タイムマシン絡みのフラッシュバック、そして最終話を通しての人格の変遷だ。

 

クライマックスまでのあらすじ

マリオンに通報されたジーンは慌てて逃げ出す。車の色やナンバーをきっちりと報告するマリオン。自宅に戻り、Stashから持ち出し用の箱と使い捨て携帯を1つを準備する。既に警察が表にやってきていて、裏の窓から逃げ出すも簡単に追い詰められ、ゴミ箱に逃げ込んだ所を発見される。

 

ジーンは「This is how they get you?」と繰り返し、留置房を歩き回る。そして壁に掘られた「MY LAWYER WILL REAM UR ASS」の文字を見て、かつての仕事相手で、今はアルバカーキで検事を辞め、独立開業を果たしたビル・オークリーに電話し、「advisory counsel」に指名する。

 

検察との交渉の場。ジーンは髭をそっている。「終身刑プラス190年」の刑期。RICO法違反、薬物製造販売の共謀、資金洗浄、複数の殺人の事後共犯。これが検察が算出した「ソウル・グッドマン」の刑期だ。それを前提に、1回限りのオファー、30年。30年真面目に勤め上げ、まだ健康であれば出してやろう、と。

 

話を聞き流しているようなソウルは、余所見をしている。マジックミラーの後ろに、部屋に入る前にみかけたマリー・シュレイダーが居る事を確信していて、ここへ呼べと提案し、マリーも同席する。ハンクやゴメス、そしてその家族の悲しみを訴えるマリーに、ソウルは「私もあなた達と同じ被害者だ」と言ってのける。金の為ではなく、命の危険があったからウォルター・ホワイトのために働かざるを得なかったのだ、と。

その傍証として、3つの拘置所で、2分間の間に関係者10人が殺された事件の事を挙げる。これをネタに検察を揺さぶり、7年半の刑期を勝ち取るソウル。

しかし、彼の傲慢はここで終わらず、ハワードの事件の詳細をネタに、週1回のチョコミントアイスの差入れまで要求する。

 

勿論これは一笑に付される。既にキムがその件の詳細な供述書を提出し、当局の知る所となっているからだ。ここではじめてソウルの表情に変化が訪れる。

 

 

ネブラスカからニューメキシコへの移送中。飛行機からは曲がりくねった川が見える。トイレに行こうとしたビルを引き留め、キムの自白が訴追に繋がるかどうかを確認するソウル。裁判で使える証人・物的証拠共に何もない以上、検察も動けないだろう、というビルに安堵するソウル。

しかし、ビルは続ける。「しかし、キムにとって検察は問題じゃない」。キムがシェリルに宣誓供述書を手渡し、民事訴訟への道を自ら開いた事、シェリルが弁護士を探している事を聞いて溜息をつくソウル。

 

「一体何故そんなことをしたんだ、キム?」とでも言いたげな表情で暫く悩むが、ハッと何かに気づいたかのような表情を見せ、トイレ帰りのビルをもう一度呼び止める。

ハワードに関する「皆が不愉快になる出来事」を検察に教えるというのだ。ビルはキムを追い込む事になるぞ、と警告するがソウルは「It's really good ice cream.」と不敵に笑う。

 

フロリダのキムは、無料法律相談の事務所でのボランティアをはじめ、再起をはかろうとする。そこに検事のスザンヌから、ソウルが捕まったこと、そして自分に関する供述をすると言っている事を知らされる。

 

法廷シーン

The Harmonizing Fourの「All Things Are Possible」をBGMに、手錠を掛けられたソウル・グッドマンが法廷へと連行される。ソウルは光沢生地のスーツに、色の濃いカラーシャツ、けばけばしい模様のネクタイで、完全な「ソウルモード」だ。飛行機事故追悼のリボンまで付けている。

法廷のドアから入ってきたソウルは、まず一番後ろに座るキムに挑発的な視線を送り、次に険しい顔でマリーの方を見る。となりにはスティーブ・ゴメスの妻と子供(そっくり!)も。

手錠を外され、ソウルは被告人席に座る。そしてBGMの歌も「If you only believe」と締めくくられる。

 

ここまでのシーンが0.5倍速程度のスロー演出で映される。Better Call Saulにおいて、スロー演出は貴重だ。機会があればカウントしたいが、恐らくFワードよりも相当使われる頻度が少ないはず。とくにここまで尺が長いのは記憶に無い(訂: S2Ep01 D&M初出社のシーンが1:18。このシーンが1:10無いので、これは誤りだった)。6シーズン63話のシリーズクライマックス。

 

最後にキムを先ほどとは違い、気弱げに振り替えり、「It's showtime.」と独り言ちる。S1Ep02 トイレの鏡に向かって言ったセリフ(folks付き)*1

 

7年という量刑(半年はどこいった?)を検討するこの場で、ソウルは先日マリーの前でしたウォルターとの最初の出会いの話をする。バッジャーを取引無しで釈放させろという無理を断った結果、頭から袋を被せられ、荒野に掘られた墓穴の前にひざまづかされるというものだ。

結果命の危険を感じ、ウォルターに従ったのだ、という嘘をまたつくのか、この馬鹿野郎は!と思わせた瞬間、「But not for long.」と続ける。金儲けのチャンスを逃さず掴み、16か月間にわたりウォルターが麻薬帝国を築く手助けをしたと。

事前の宣誓供述と真逆の事を言い始めたソウルに、それでいいのかと判事は確認をするが、「I believe the court deserves the whole truth.(法廷は真実を知るべきです)」と、宣誓をする。

 

判事は「宣誓下での偽証は偽証罪司法妨害に問われる事になる」と警告するが、ソウルは確信に満ち、そんなことは百も承知だという顔だ。

 

ウォルターとともに何百万ドルを稼いだ。殺人やメス製造の事も知っていたし、資金洗浄もした。自分が居なければウォルターは1か月以内に死ぬか逮捕されるかしていただろう、とまくし立てる。自分が居なければハンクやゴメスをはじめ、多くの人が生きていただろう、とも。

 

ここまで話すと、負け知らずの検察官に「聞いたか?」と挑発し、ビルはソウルの発言の削除を求めて検察と言いあう。

その間にソウルは法廷の一番うしろにポツンと座っているキムを見やる。「どうだ、やってやったぞ!」とでも言いたげな顔のソウルに対して、キムは表情を変えない。それを見たソウルは表情を曇らせて少し悩み、「もう一つだけ話させてください」と話を始める。

 

まずはキムの事。ハワードの死に直接の関係があるわけではないが、キムは少なくともそれを二度と起こさない様にという事でアルバカーキを離れた。逃げたのは私の方だ、と。

そして兄、チャックの事。S3Ep05 チャックが証人席でBreakdownするラストと同じく、非常口のEXITサインとそれが発する「ジー」というノイズを見聞かせる。

 

頭の固い兄だったが、それでもその眼鏡にかなうようにもっと頑張るべきだった。「I tried.  I could have tried harder.  I should have.」。S4Ep10とはちがう、本気の告白にキムも息をのむ。小さくうなずいているようにも見える。

そして、弁護士賠償保険を解除させるようにしむけ、唯一の生きがいである法を奪ったと、それが原因でチャックが自殺した事を初めて告白する。この事を知らなかったキムは思わず天井を仰ぎ見る。

 

「And I'll live with that.(それを背負って生きる)」。

 

被告席に戻ったソウル。ビルは「兄さんの件は犯罪ですらないだろ」というが、ソウルは「Yeah, it was(いや、そうだ)」。

判事は私語を咎め、「黙って席につきなさい」というが、「The name's McGill.  I'm James McGill.」と、誇りに満ちた顔つきで自分の本名を名乗る。

 

再び後ろのキムを振り返り、無言のやりとりをする二人。どこが違うのか言葉にできないほどの変化だが、キムは満足げで、一度うなづくようなそぶりもみせる。

 

感想

チャックの「People don't change. 」(S1Ep09、ジミーへ)「He'll never change.」(S3Ep05、ハワードへ)に対しての解答で、このBetter Call Saulシリーズ全体のテーマでもある。

「All things are possible. If you'll only believe.」という歌詞で勘のいい人なら何が起こるか気づいたのだろうが、自分は全くダメだった。

ヒントはもう一つある。「It's showtime.」だ。S6にあたってS1から見返した人なら覚えているだろうが、これはS1Ep02でジミーが鏡に向かって言うセリフだ。由来は「オール・ザット・ジャズ*2。ジミーが公選弁護人として真面目に働く様子を描くモンタージュシーンにおいてのみ、合計4回この「It's showtime(, folks).」が使われている。このセリフは真っ当な事をする時のセリフなのだ。こちらは後でまたS1から見直している時に気が付いた。

 

自分は、「ソウル・グッドマン」としてベラベラと喋りまくる間に交わしたキムとの目線だけでのやり取りにもしばらく気づけなかった。数度目の視聴で自分で気づけたのが不幸中の幸いではあった。「自ら獲得した短い刑期を捨てて長い刑期を勝ち取り、ジミー・マッギルに戻る」という大きなプロットのショックがあまりに大きすぎて、2,3度の視聴では冷静に見られなかったんだと思う。

 

いざ気づいてみると、キムの反応はほとんど表に出ていないのに、何故かこれ以上無いほど明確でもある。宣誓直後、「証言を聞かせるためにウソをついて呼び出した」と言った時の少し怪訝そうな顔。一通り証言が終わった後の「それだけ?それで終わりなの?」と少し挑発気味な顔。「私はジェームズ・マッギルだ」と宣言した後は、軽くうなづくような動作も見える。

プライベート以外では感情をほとんど表にださないキムだが、ここでの演技も最小限だ。それなのに完全に伝わってくるキムの気持ち。どこまで視聴者を信用して、どこまで計算した上での演技なのか。もはや想像など及びもつかない次元に達している。

 

キムはS1で、ジミーをHHMで雇う事を止めた真犯人がチャックである事を黙っていた。

S4Ep10 弁護士資格復帰の公聴会で、ジミーがチャックについて語った事にも涙した。ジミー自身が直後、「委員の一人が涙まで流してやがったぜ」というやつだ。

キムはジミーとチャックにいがみ合ってほしくなかったし、その死後もチャックの死をジミーに悲しんで欲しかった。公聴会では委員と同じくジミーのチャックへの想いを聞いて涙したが、これは弁護士資格を取り戻すための方便でしかなかった。

 

この証言で、「ジミーがチャックを自殺に追いやった」というこれまで知らなかった新たな十字架についてもキムは知る事になったが、その重さを加えてさえも、ジミーがチャックとの事に逃げずに向き合う事を決意したことが、キムにとってどれだけ嬉しかっただろうか。

 

 

Better Call Saul 全63話は全てこの法廷シーンを描くためにあったようなものだ。「All Things Are Possible」をBGMに、スローモーションで法廷入りするシーンから、「私はジェームズ・マッギルだ」と宣言し、キムと視線のやりとりを交わすまで。一分の隙もない。

ビルの動揺もシリアスなコミックリリーフとしてアクセントになっている。

 

S6Ep11 "Breaking Bad"で、ウォルターとジェシーにRVで砂漠に連れていかれ、そして帰ろうとするシーン、個人的には事前に言われていたような「必須さ」が感じられなくて、あまり重要ではないカメオ的な要素じゃないか?と思っていた。しかし、この法廷シーンでその「必須さ」を見せつけられる。

ソウルの「I was terrified. But not for long.(怖かった。しかし、一瞬です。)」の根拠として絶対に外せなかったのだ。

 

 

タイムマシン

最終話のフルカラーパートは3回で、これらは全てタイムマシン関係のフラッシュバック。ジミーが問う「タイムマシンがあったらやり直したい事」は、ウォルターが看破した通り、「後悔」の事だ。

タイムマシン1ーマイク

1回目はTeaserのマイク。風車くみ上げの井戸にたどり着いたのは、S5Ep09冒頭で携帯がつながった後から人里に出るまでの間。「ボトルの尿」が鍵となり、そこ以外はありえない。マイクは初めて賄賂を受け取った日に戻りたいと、自らをさらけ出す。

一方ジミーは金の話でとぼける。チャックの事に向き合えていないから。S5Ep08ラストでチャックの象徴であるSpace Blancketを捨て去り、頭の中から追いやってしまった後だから。

 

タイムマシン2ーウォルター

2回目はウォルター。時間的にはBreaking Bad S5Ep15 "Granite State" TeaserとA1の間、Best Quality Vacuumの地下室に居た時。エゴの塊ウォルターはグレイマターに残っていたら、というもの。

しかし、この話をする直前、ジェシーから誕生日プレゼントに貰ったタグ・ホイヤーの「モナコ」に目線をやり、ウォルターの顔から時計へとフォーカスがうつる。この表現から、「グレイマターに残っていたら」というウォルターの後悔は嘘だと強く推測できる。少なくとも、本当はジェシーを切り捨ててしまった後悔の方が、グレイマターの件よりも強い事は明らかだ。

さらに、ウォルターは2人に追いやられたというのも嘘で、自分がグレッチェンの家の裕福さに気後れして逃げた事を誤魔化してもいる。

 

ここでジミー/ソウルが挙げたのは、若い頃の詐欺で実際に膝を痛めてしまった事。BrBaS2Ep08やS1Ep03で膝が悪いと訴えている。

勿論こんなのが最大の後悔であるはずもないが、この時点ではキムとの別れの反動でソウル・グッドマンになっていた時期。キムの事もチャックの事も、まだ向き合う準備が出来ていないから、適当に誤魔化してしまうのだ。

ウォルターに「So you are always like this.」などと言われてしまうが、これは他人に言いながら、じつは自分にも向けられているセリフでもある。

 

タイムマシン3ーチャック

3回目は法廷シーン直後、チャック。Better Call Saul第1話よりも前の時点。第1話ではここで入荷するようになるかもと言ったフィナンシャルタイムスを届けている。1回目2回目のフラッシュバックと同じく、このシーンがタイムマシン、いや後悔についてのシーンなのは明白だ。

 

この「後悔」だが、ジミーはいつから持っていたのだろうか。個人的にはチャックのを死を知った瞬間からずっとだろうと思っている。責任をハワードになすりつけ、決して向き合いはしなかったが、ずっと後悔の気持ちはあったはずだ。

それが歪んだ形で表出した件として現れたのが、S4Ep02のコピー機メーカーの面接で即採用を勝ち取ったのに逆に正気か?と罵倒するあのシーン*3ではなかろうか。

そして、「後悔」のメタファーであるウェルズのタイムマシンが画面に映るのは2か所。S6Ep02 ケトルマンからの電話を受けた時のベッドサイド、そしてS6Ep01Teaserだ(時系列順)。つまり、ジミーはキムと別れる前から別れた後も、ソウル・グッドマンとして逃亡するその時まで「後悔」を所有し続けていた事になる。

 

チャックはいつも本心ではない建前を発話するのだが、このシーンではすべてのセリフが一応は本心から出てるように見える。
「配達は事務所に頼める。なんでお前がやるんだ?」は実はあまり顔をあわせたくないのだろう。
それでも、事務所を構えようとしている時にまで「自分がやる」というジミー。何故か?「Because you're my brother, duh.」。これはS2Ep08のチャックのセリフ「But if things were reversed......I hope you know that I would do the same for you.」と対になる。自分の解釈では、ジミーのセリフは義務感だけではなく、家族・兄弟としての愛情・忠誠心からもきており、チャックのは義務感や社会的な体裁を気にしてというのが最大の動機となっており、すれ違いが見られる。

それでも。「Well, you could stay for a while. We could talk.(少し話をしていくか?)」とチャックは譲歩してる。ジミーの愛情・忠誠心を感じたからだ。しかし、ジミーは忙しさにかまけてこれに付き合うことができなかった。「Talk.  What about?(話って、なんの?」との問いに、「Your cases, your clinets?」と返してしまう、法律・仕事のことしか返せないチャックも、その不器用さがよく表れていてとても良い。

 

ジミーの「後悔」はこれ、「You know, I'm gonna take a pass on the heart-to-heart, Chuck.(腹を割って話し合うのはまたにするよ)」なんだろう。ここで腹を割って、もうすこし話をする事が出来ていたら、分かり合う道がひらけていたかもしれない。そこまでいかなくても、少しは今が変わっていたかもしれない。

「今の道(弁護士)が嫌なら、道をもどってやり直してもいいんだぞ」。このチャックのセリフも、同じ弁護士という職業についていてほしくないというチャックの本音・願望が漏れたものだろう。

それに対してジミーは「兄さんは道を変えた事があるかい?」。あくまでチャックを尊敬し、ロールモデルとして近づきたい一心のジミー。

そして最期に、チャックはペーパーバックのタイムマシンとランタンを手に取り、家の奥へと消えていく。

これはジミーがずっと後悔を抱えていたというのと同じで、チャックも後悔を抱えていたという事だ。しかも、このシーンで「後悔」を手にさせたのだから、その対象は兄弟関係に限定されるとみるべきだろう。チャックはチャックなりに、弟を信用しきれなかった事に後悔があったのかもしれない。

 

それに、もし今チャックが「裁判で86年の刑期を勝ち取ったジミー」を見れば、ジミーが司法試験に合格した時に、ハワードにHHMでは雇うなと言った事も「後悔」になるのだろう。

 

3つ目のフラッシュバックシーンの矛盾とその解釈

ところで、このチャックとのフラッシュバックシーンには明確な矛盾が1つある。それはジミーがしているピンキーリングだ。細かく見られる場面はないものの、ジミーがつけるピンキーリングといえばマルコの遺品としてもらったものだ。

S1Ep10での「I'm not a big ring guy」や、S2Ep01でピンキーリングを見咎められて「そんな変なピンキーリングまでしちゃって、マフィアにでもなったつもり?」と言われている事から、これ以前にピンキーリングはしていなかっただろうことはほぼ明らかだ。

一方で、この場面はBetter Call Saulの第一話よりも前の時系列となる。基本的には前へ進んでいくだけの話で、マルコの形見分けでピンキーリングをジミーが得たのはS1Ep10での事。これは明確な矛盾だ。

 

もう一つ、カウンターにおいてあったウェルズの「タイムマシン」のペーパーバック、チャックが動かした素振りは無いのに、最後にチャックが手に取る場面とそれ以前では起き場所が変わっている。

これは普通なら明確なミスとするのだろうが、この場合一つのヒントになるのではないか?と考える。ウェルズのタイムマシンは本当は無かったのではないか。チャックにタイムマシンを持たせたのは、チャックにも後悔があったという事を示すためだという事だ。

 

明確な証拠のある話ではないが、このチャックとの会話自体は実際にあったものなんだと思う。そこに、マルコのピンキーリングと、後悔のメタファーとしてのタイムマシンを置いたのは、このシーンのファンタジー・幻想性の制作陣からの示唆だ、というのが持論だ。

 

チャックが「ペーパーバック」の、古典的SFの中編である「タイムマシン」を読むようなタイプの人間か、という疑問もある。チャックがまだ若い頃なら違和感はない。しかし、あの年のチャックが読むにはあまりにふさわしくない。S1Ep01時点ではチャックは58歳だ。

あまり似合わないが実は愛読書でした、という可能性よりも、幻想であると取る方が、少なくとも自分には説得力のある、納得できる話である。

もし今チャックが「裁判で86年の刑期を勝ち取ったジミー」を見れば、ジミーが司法試験に合格した時に、ハワードにHHMでは雇うなと言った事も「後悔」になる

上記のように前節で示した事を、制作陣は伝えようとしたのではないか、と考えている。

一方で、指輪については「Slippin' Jimmy」や「Saul Goodman」もまた間違いなく、「James Morgan "Jimmy" McGill」の一部であるとの制作陣からの主張だととらえている。

 

 

最終話での人格の変遷・シーズンポスターについて

この1エピソードの中で、ジミーはソウル・ジーンという別の名前を逆順に辿る。

マリオンに通報されて捕まるまでがジーン・タカヴィク

留置場の中の「MY LAWYER WILL REAM UR ASS」の落書きを見てソウル・グッドマンになる。髭もそり落とす。

ソウル・グッドマンとして7年半まで刑期を縮小する。しかし、アイス要求でキムがハワードの事を告白した事を知り、ソウル人格は揺らぎ始め、飛行機の中で、キムがすべてを奪われる民事訴訟シェリルからおこされそうになっている事を知った後、ソウル・グッドマンの人格は消え、ジェームズ・マッギルに戻る

しかし、ジェームズ・マッギルとして胸を張って生きていくために、キムにふさわしいジミーであるためには、やらなければいけない事がある。

そこで法廷シーンに登場するのが中身はジミーなソウル・グッドマンなのだ。

 

シーズンポスターは髭と眼鏡でジーン・タカヴィクだと判断できるジミーが、ソウル・グッドマンの証と取れる派手な赤いジャケットを着ようとしている/脱ごうとしている場面。

留置場の落書きをみて、赤いジャケットを羽織ったジーンは、ソウルの役割が終わり、自分を「ジミー・マッギル」だと宣言した瞬間にこれを脱いだわけだ。

 

シーズンポスターを見た時に、このポスターの意味を考えたのだが、「キムの窮地を救うためにもう一度ソウル・グッドマンに戻る」のだと、ヒロイックで単純な予想をしていた。

ただ、普通に考えて、Breaking Bad後の、(弁護士資格を失ったソウル・グッドマンが一体何ができるの?弁護はできないから口八丁の「魔法」で助けるのだろうか?と思っていた。

 

だが、ソウル・グッドマンが再び現れるのは法廷だった。弁護士資格を失ったソウルにできる唯一の法廷での弁護、それは自分自身の弁護だ。何故これに思い至らなかったのだ?と今となっては後悔しきりである。「キムを助けるため」という想像があまりに魅力的に思えたためにそこから出られなかったのだろうか。

アメリカのドラマでは、刑事ものや法廷もので「自己弁護」が取り上げられる事はそれなりにある。物語として意外性があり面白いからだろう。頭の回る小悪党だったり、IQだけはやたら高いソシオパスだったりするが、自分が見た中では本人弁護が功を奏して罪を免れる事の方が多かった気がする。

 

今回ソウルがしたのは弁護ではなく、罪の告白だ。事前の合意とは真逆の告白。贖罪の為に自罰的な行動をするのはアーキタイプの1つではあるが、ここまでの語り口でジミーがこの道を行くとはなかなか思えなかった。

 

Breaking Badは「化学という魔法」がブルー・メスを生み出し、話が転がる構造だったが、Better Call Saulは「法律という魔法」の物語だ。magicという単語が本シリーズで初めて出てくるのがS1Ep03Teaserフラッシュバック、ジミーがシカゴ・サンルーフで拘留されている時に、チャックに対して言った軽口。チャックの死後、ジミーはヒューエルに服役は回避できるといい、でも「弁護士じゃないんだろ?」と言い返され、「なぁ、俺は弁護士じゃなくてもやれる」「I'm a magic man」*4

魔法を法を越えたものとして再定義したのだ。これらはメサ・ヴェルデの書類の書換やメサ・ヴェルデの設計図差替え、酒場での寸借詐欺も含む。この魔法にのめり込んだジミーとキムは最終的に一線を越え、ハワードを陥れる計画を実行に移し、結果ハワードハムリンを死に至らしめてしまう。

キムとの別離を経て、「ソウル・グッドマン」としてウォルターの補佐をして逃亡後、キムが自分がした事に向き合った事を聞いて目が覚めるジミー。最終的にはチャックが神聖な物だとした法に則り、最も居心地の良い刑務所での7年にまで減らした刑期を、自ら最も厳しい刑務所での86年にまで延ばす。罪に向き合うためには、そう決意を決めたジミーには、これは勝利以外の何物でもないのだ。

 

疑問点

  • 大きな事件なのに、傍聴人が少ない。著名人が絡むのにこんなに少ないという事は、一般公開はされていないという事だろう。マリーとゴメスの家族は関係者だが、判事からみて左奥に座っていた2人は誰?キムは何故入れたのか?スザンヌのはからいか?
  • シェリルが来てもおかしくないはずだが来なかったのは何故だろうか?

 

Shared Smoke

自分がBetter Call Saulを見始めて、いきなり度肝を抜かれたシーンが、ジミーとキムがHHM駐車場でタバコをシェアするシーンだ。セリフは一切なく、エレベーターで降りてきたジミーが怒りに任せてゴミ箱を蹴りまくり、その横で煙草を吸っていたキムと煙草をシェアして、キムがゴミ箱を直す。

キムの顔が影に隠れていたのは、この時点では制作陣もキムというキャラクターがどういうキャラクターなのか分からなかったからだそうだ。

第一話と最終話の対比

最終話でもジミーとキムはタバコをシェアする。火をつけようと、ライターを差し出す手が震えているキム。そしてその震えを止めようとするかの如く包み込み、火をつけるジミー。この時から、キムの頭部とジミーの左胸には窓格子が十字の影を落とし続けている。2人共もう隠すものは何もなく、2人共ただ十字架を背負っている。

そして、ほの赤く光るタバコの灯り。「Eighty-six years.」「Eighty-six years.  But with good behavior, who knows?」

 

 

Better Call Saul 最終回を前に少しだけ

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep12まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

Starringのこと

S6Ep10から順に、「Bob Odenkirk」「Bob Odenkirk, Jonathan Banks」「Bob Odenkirk, Rhea Seehorn」ときた。Ep11時点で1人ずつ増えていくのかな、と思ったんだけどEp12でも2人だった。最後もRheaとの2人の可能性が一番高いとは思われるが、フラッシュバックで登場する他のキャラクターも居るのか?マイクが持っているトゥコのネックレスはまだサラマンカの手に戻っていないが、描かれずにおわるんだろうか?

 

Waltのこと

ジェシーとキムに新しいイベントがあったのだから、バランス的にはソウルとウォルターにも無いとおかしい。どういうシーンになるんだろうか。

Better Call Saul S6Ep09 感想 (含: ネタバレ) - toorisugari3のブログ で取り上げた、「Breaking Bad S3Ep02で、ソウルがウォルターに会ったあと、車で悩むシーン」に関連するような、家族・愛する人との関係についての会話だろうか。

 

テーマ曲の事

Breaking Badの最後から二番目のエピソードラストみたいに、テーマ曲を効果的につかって欲しかった。タイトルコールで流れるのは曲の頭だから、いつも通りに切らず、BGMとしてそのまま続けて最後まで流すような演出をするんじゃないか、と先月あたりは思っていたが、Ep11以降のシーケンスを見るとその方向はなさそうだ。

最後の最後でフルを流す可能性はまだ残っていそう。

 

Old People love him

公式Twitterのこれを見て思い出したのが、S3Ep10でジミーとキムの共同オフィスをたたむ時に、ジミーが一度捨てはしたが、キムがゴミ箱から取り出した高齢者顧客達の名刺入れだ。アイリーンの孤立を解消するために高齢者達間での評判を台無しにしてしまったから。

前々からこれが再び出てくる事があればいいなぁと思っていたのだが、ありえるのだろうか?

サフィロ・アネホのボトルストッパーまで置いていってしまったキムが名刺入れを持ってるはずがないし、ソウルもまさか非常用持ち出しスタッシュにあれを置いておいたなんて事は無い、と考えるのが自然だろう。

個人的にはこの公式のTweetで可能性は寧ろ下がってしまったかなぁと思っている。

 

ジーンはマリオンをどうする気だったのか。ジミーと高齢者たち

Better Call Saul's Vince Gilligan: What's Happened to Kim? | AMC Talk | AMC

Better Call Saul's Carol Burnett on Marion's Big Moment | AMC Talk | AMC

上記はEp12後に出たAMCのVinceとCarolへのインタビューだが、ジーンが電話線を手に巻いてマリオンに迫った時に、ジーンがマリオンをどうする気だったかについて意見が割れてるのが面白い。Vinceは殺すつもりだった(明言はしてないが、文脈上そう読むのが妥当だと思う)、Carolは殺すつもりは無かったと言っている。

感想の方でも書いたが、自分には「I trusted you」後のジーンの表情が、「俺は一体何をするところだったんだ?」と正気に返ったようにしか見えなかったので、Vince側の意見。

この「I trusted you」がジミーに効くのはやはりS3Ep10でのアイリーンじゃないかと思う。全てがバレた事を悟った(演技の)直後のアイリーンの仕草。セリフは無いのだが、その表情は「I trusted you」と言っているようにも見える。

S3Ep10 アイリーン

この時はジミー自身が仕組んだ事でもあり、覚悟も十分していただろうが、マリオンに対しては違う。先の公式Tweetの件もそうだが、名刺入れは出てこないにしても、なんらかのポイントになるのでは?という予感がある。

 

また、S3Ep10では、ジミーはこのシーンの直前にチャック宅を訪れて、和解の提案をする。キムの交通事故というアクシデントに遭ったのが理由だ。しかしチャックは受け入れず、「お前の事は昔からどうでもよかった」とまで言ってしまう。そしてこれが兄弟間の最後の会話となる。15歳年下の弟をどうでもよかった(you've never mattered all that much to me)、というのは本当なのだろうか。

母の愛を奪われた恨みがあったとしても、15の頃にできた弟をどうでもよかったと思ってしまうような人間だったんだろうか。個人的には違うと思う。

 

シェリルにソウルの生存を隠したキム

これの解釈が未だに出来なくて悩んでる。自己保身で言ったのではないとは思うのだが、どういう理由なのだろうか。甘えや迷いが残っていたのか?ジミーの身を案じてなのか?

自分の贖罪にまだその準備が出来ていないジミーを巻き込むことができなかったのか?ジミーが自首すれば、ただ捕まるよりは検察の心情は良くなるが、最後の電話ではそれは望めそうになかった。

「明らかな嘘」をついている事についてはどう考えればよいのか。シンプルに考えれば保身のための逃げだ。しかし、そもそも6年間逃避し続けてきた事への贖罪でもあるアルバカーキ再訪でもあるし、帰りのバス車内での慟哭は偽物ではないだろう。メタ的にも、ここに及んでそういう小細工を仕込んでくる制作陣だとはとても思えない。

シェリルに民事裁判をおこさせ、「全てを償いにささげる」ためにしむけるための嘘?サンドパイパー和解金の分与も受け取らなかったキムに、ハワードの死や汚名をかぶせ続けてきた事の償いに値するほどの資産があるとも思えない。そもそも金でも、民事裁判で償える類のものでもない。究極的には刑務所で償うしかないものではないのか。

 

Ep12のラストでソウル・グッドマンの生存は世に知られる事となるが、これとキムが生存を隠した事はどうつながっていくのか。

 

ハワードの名誉回復・弔い

クリフやシュワイカートにも、キムの供述書の内容は伝わるだろうし、なんならキム自身が郵送しているかもしれない。ハワードの名誉回復については、一応はこれでカタがつく。

ハワードの死体については、最終話で見つかる可能性があるのではないか、と思っている。メタ的なものだが、Breaking Badでもハンクの死体の行方についてはPenultimate(最後から2番目の) Episodeでは相当望みが薄く、Ultimate(最後の) Episodeではウォルターによってその情報がもたらされる。

しかし、ハワードの埋められた場所を知る者はもはや皆死亡し(ガスやマイクの手下には生き残りがいるかもしれないが、出てくる必然性はない)、ソウルはその場所を知らない。マイクとガスの繋がりについては警察・DEAは把握しているから、ガスのスーパーラボ跡地で強力な金属探知機でも使えば、ラロとハワードと一緒に埋められた銃によって見つかる可能性がある。ベルトのバックルくらいではみつからなさそうな深さなので。それとも見つからない事でBreaking Badとは逆だという事が強調されるのか。

 

シーズンポスター

Season6 Poster

モノクロの世界の「ジーン・タカヴィク」は、赤いジャケットを羽織ろうとしているのか、脱ごうとしているのか。判明するまで48時間を切ってしまった。

 

Better Call Saul S6Ep12 感想 (ネタバレ)

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep11まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

 

「心を折りに来る」なんて表現があるが、そんなもんじゃすまない。ダイレクトに殺しに来てるエピソード。S6Ep09はショッキングではあったが、それはどれだけ語っても語りつくせないショックだった。本エピソードは未だに消化が追い付かない。何度となく見返しても未だに消化しきれない。言葉が出せない。

時系列順につらつらと箇条書き、最後に簡単にまとめだけ。

 

時系列について

  • カラーシーンは全て2004年。時系列は本エピソード登場順。
  • 2004年である根拠は、ジーン/ジミーが電話で言った「It's been six years.」
  • モノクロシーンは2010年11月11日(Veteran's Dayという退役軍人の祝日、木曜日)からその翌日、電話を受ける日。そしてその少し後にキムがアルバカーキへ。さらに暫く後に前回ラストの続き。時系列も本エピソードでの登場順だと考えてよさそう。

 

タイトルコール

Lingk(最後のカモ、膵臓癌の男)の家の前に止まるジェフのタクシーが少し映るのみ。ブルースクリーンのタイトル後には一瞬、広々とした場所に立ちすくむ女性の後ろ姿。奥に見える屋根は、マイクがBrBaS5Ep07で、金を隠していた駐車場のだ。Google Street Viewで見ると、レンタカーバスがとまっているのまでみえる。

Google Street View 2008年のアルバカーキ国際空港

 

2004年

  • Teaserで合衆国憲法にボールを投げつけるソウル。法の精神とかWho cares?という感じなのだろう。ボールを壁に投げつけるのはS4で店長をやっていた「CCモバイル」でもやっていた。(updated 20220905)
  • ハリボテの柱を倒して、「正義の聖堂」もまたまやかしであると。
  • Teaser終わり間際の目の光、白い光源を一瞬付けたのかな?
  • 客もキムも1時間も待たせてるあたり、ソウルの深い葛藤がうかがえる。
  • しかし、キムと相対すると、精一杯の強がりを。好きな子に意地悪する小中学生レベルの素振り。キムがS&Cに入る事を決断した時とは大違いだ。キムの持ち物だった絵やサフィロ・アネホのボトルストッパーを捨てていない事からもキムへの気持ちが残っている事は間違いなさそう。
  • エミリオ・コヤマ!エミリオ・コヤマ!
  • 最後のフランチェスカとキムとの視線のやり取り。フランチェスカもHHMに偽電話をした以上、起きた事全ては知らずとも、その原因があの件だという事を感付いているのだろう。
  • 事務所の内装・外観はオープン直後のフランチェスカプロデュース「上品だけど居心地の良い」コンセプトは微塵もなく、Breaking Bad時代のそれに極めて近い。
  • 雨のシーンはS6Ep03Teaserとここ以外にあったか?要確認。
  • キムとジェシーとの会話は、「柱のに隠れていた男と会話する」のは、Breaking Bad最終話のスカイラーとウォルターとの対比*1
  • ジェシーは20歳になる年。前回、ラロの名前も知らないと言っていたので、Captain Cookしはじめるかはじめないか、というタイミングなのかも。
  • BrBaS2Ep08で、ジェシーがウォルターをソウルの事務所へ連れて行った最大要因のは、キムと話をしたから(そもそもキムの言葉は否定的な意味合いだ)ではなくて、エミリオを2回もscot-free(無罪放免)にしたからだろう。前回の話題だが同様に、ガスにブルーメスへの興味を抱かせた最大要因はソウルではなくゲイル。ソウルの影響度は低いはずだ。マイクは逆にガスを理解しきれていない。
  • コンボがコロンブス騎士団教会のキリスト降誕シーンの人形を盗んだのが、コンボらしくてほっこりする。バッジャーやスキニーピートも含めてジェシーとその友達連中はちょっとヤンチャしてはいるけど、「大悪」とはわりあい距離がある感じ。
  • 「When I knew him, he was.」これをどうとらえるかが非常に悩ましい……。今はどうか分からないという意味なのか、もう見限ってしまったのか。エミリオの「I don't do no paperworks」に「Who cares?」と答えるソウルの様子を見ていた事をおもえば後者要素が強いのだろうか。

 

2010年11月12日まで

  • キムがさえない男グレンと親密そうにしているだけで泣けてくる。髪も染めたのか濃い色で、スタイルも垢ぬけない印象。声もジミーと話してた時よりもピッチが全体的に高めに聞こえる。作り声、演技の日常。
  • 4組のカップルが集まってパーティーをしているが、キムは適当に話を合わせているだけで自分を全く出せていない。「色の無い」生活。
  • 自分史上最悪のセックスシーン。拷問に耐えてるかのようなキムの息遣いがときおり聞こえて死にたくなる。「Yep! Yep!」を繰り返すだけのつまらない男グレン。メサ・ヴェルデのケヴィンを個人攻撃するために作ったビデオで、彼の父親が繰り返すのもこの「Yup!」。字幕での綴りは違うが発音も意味も全く同じ、「くだけたYes」。
  • グレンが見るのは映画ではなく、バラエティー番組の類。一色ジグソーパズルをしながら、適当に相槌を打つだけのキム。顔だけは笑顔だが心からの笑顔には到底見えない。
  • Homepage Builder!
  • コピー取りはHHMの郵便室を思い出す。
  • バニラかストロベリーか、アイスの好みも出せない。アイスといえば、S5Ep10では、ジミーがホテルで「チョコミントは抜いて」と。ラロに会うために半ば拉致のような形でナチョの車に乗せられた時のアイス。
  • ヌルい職場の描写。ここでもキムはひっそりと息を殺してただ生きているという感じ。弁護士時代の職場とは大違いだ。

 

ジーンとの電話

  • 相変わらずベラベラと喋りまくるジーン。キムと別れてから精神的に子供になってしまった。
  • キムの「You shouldn't be calling me.」。関係がバレるといけない(どちらに?)からか、思い出したくないからか。全部な気がする。
  • 「Feds couldn't find their own ass with both hands and a proctologist.」はFBIは簡単な仕事もできない、という事を最大限の侮辱を込めて言っている。賢いのは自分で、後はバカだとでも言いたげな青さ。「can't find one's butt with both hands」に、肛門科医までオマケにつけた言い回し。
  • キムの「逃げ続ける生活は続かない」は、「いずれは捕まる」とヒューエルの時にソウル自身も言った(S4Ep07)。キムの「You should turn yourself in.」に対してBrBaS5Ep15で、ソウルは「Stay. Face the music.(逃げずに現実を受け入れろ)」とウォルターに言っている。癌による余命の事もあるので完全に同じ状況ではないが。
  • 「Said the pot to the kettle!(自分を棚に挙げてよく言えたもんだ!)」は「The pot calling the kettle black」、五十歩百歩とか目糞鼻糞を笑うといった意味の言い回しの応用。何故お前は自首しないんだ?罪の意識があるならやってみろ!と当てこするジーン。
  • 「I'm glad you're alive.」……。別れの際の「I love you. But, so what?」の延長線。ジミー/ソウル/ジーンとキムの距離は縮まらない。一方的にこれで電話を切るキム。憎んでいるわけではなく、gladも本心ではあるのだろう。
  • 受付職員へのHappy Birthdayを歌い終わっての拍手中、キムの(作り?)笑顔の口角がどんどん下がる。S1Ep04 Hero HHM会議室でジミーが高所作業員を助けたニュースを観た時の逆。
  • キムはこれまでのフロリダでの生活を「贖罪」だとおもっていたのかもしれない。しかし、実際はただ「逃げているだけ」に過ぎなかったことに、ジミーからの電話で気づかされたのではないか?

 

アルバカーキに戻るキム

  • 時系列的には恐らく11月12日の少し後で、前回ラストよりは前。
  • アルバカーキ空港に降り立つキム。タイトルコールラストに一瞬映るのはこのシーン。
  • 裁判所の駐車場受付は機械化・無人化されている。新しい機械や、ブースのガラスに残る「CASH ONLY」のレタリングが、失ったものへの悲しさを増幅させる。
  • 裁判所中庭の金網デスク&ベンチ。S5Ep07で、結婚前最後の話し合いをした場所だ。
  • エレベーター前で、老人にネクタイを付けてあげる若い女性の弁護士。ご丁寧に髪型は以前のキムと同じ、巻いたポニーテールだ。制作陣はどこまで心をえぐってくれば気が済むのか。この弁護士が、S4Ep10でジミーが演説した万引き歴のある少女だという言う噂があるようだが、演者は別だし(Abby QuinnとMichelle Campbell)、恐らくは別。制作陣の発言があれば教えてほしい。
  • 故ハワードの妻シェリルは、あの家に住み続けている。ハワードの写真も飾ってあり、当時不仲ではあったが相応の愛情もあった事が示されている。
  • 警察はハワードの遺体の捜索をするそうだが、キムは恐らく見つからないだろうと。BrBaS5Ep15(本エピソードと同じく、penultimate、最後から2番目のエピソード)A1冒頭で、マリーが(恐らく)DEAエージェントから、ハンクとゴメスの遺体は必ず見つけると約束している。
  • 「He was in the wrong place at the wrong time.」と、ラロと邂逅してしまったハワードについて言っているが、これはS4Ep05でチンピラに暴行されて使い捨て携帯の売上を奪われた時に言ったセリフ「you were just in the wrong place at the wrong time.」と対になる。(added 20220905)
  • キムはシェリルに「一瞬で苦しまずに死んだ」事を伝えるが、6年経っても汚名を雪げないハワードに、一体その言葉が何の意味を成すのだろう。S6Ep09で、ナチョの父と会話した際のマイクを思い出させる。キムは自分が貶めたハワードの名誉を回復したいという意思をも示す。
  • 検察にも同様の供述書を提出したが、キムが起訴されるかどうかは証拠不存在で怪しいと。「生きていれば元夫が証言できる」とも。
  • レンタカーを返し、アルバカーキ空港へ向かうバスで抑えきれずに感情をあらわにするキム。隣から差し出される手がただ腕を撫でる。シェリルの最後のセリフ「Why are you doing this?」。やってはいけない事をやってしまった、魔が差してしまった後悔。間接的にでも、それが引き起こしたハワードの死。保身のためにハワードの死を更に穢したこと。それによってシェリルやその他関係者を苦しめたこと。それを6年間も放置して逃げ続けてきたこと。ひとまず、自分がやるべき事はやったこと。これから自分の身に起きうることへの覚悟。そういうもの達が一気に押し寄せてきて耐えられなくなったのだろう。
  • それでもなんとか、キムは贖罪を始め、明るい道への歩みをはじめた。本エピソードで唯一喜べるところ。

 

前回ラスト以降

  • グランドピアノを1音ならして、床でいびきをかいている膵臓癌男Lingkが起きないか試すジーン。ピアノはチャックへのコールバック。
  • 前回、20分経ったら戻って来いと言ったジェフのタクシーが戻ってくるのを確認したのに、玄関の鍵まであけておいて、引き揚げずにさらに欲をかくジーン。ここで引き揚げていれば……。
  • (恐らく)自動巻きの機械式腕時計3つをポケットに入れるジーン。葉巻だけならジェフは捕まらなかったかもしれない。
  • よりにもよってペットの遺灰壺でLingkを殴るそぶりを見せるジーン。幸い彼は再び寝落ちして2人とも事なきを得る。ここまで落ちぶれるのか。
  • ドランブイもレモンも入れない、デュワーズロックを飲むジーン。はじめて。
  • 携帯に魔法をかけるそぶりは、S1ネイルサロンの奥の事務所で留守電にやっていた仕草。
  • ジェフから連絡をうけて、マリオンに電話するジーン。アルバカーキ時代のジェフを思い出して動揺するマリオン。ジーンは「ソウル・グッドマン」時代のようにマリオンを言いくるめるが、保釈手続き等の詳しさから疑念を抱き、PCをネットにつなぐ。
  • 電話線をPCに繋ぎ変えてるようにみえるが、2010年ではアメリカはまだダイヤルアップ時代だったのだろうか?56kbpsでは猫動画はおろか、普通のウェブページ閲覧すら辛そうだが、もっと速いモデムが出てたんだろうか?それとも自分の知らない別の方式なんだろうか?SD画質なら56kbpsでも見れる?
  • マリオン宅へ向かうジーンが一瞬歌を止めた理由が分からない。何故??
  • 裏口から入ってきたジーンにやっと気づいたマリオン。見ていた動画は丁度BrBaS2Ep08 タイトル直後でやっていたあのソウルのコマーシャルだ(S1Ep01 TeaserではこのCMは見ていない)。モノクロシーンなのに、眼鏡に映る在りし日の「ソウル・グッドマン」のCMがカラーなのはS1Ep01 Teaserラストも。1st to penultimateで、7年越し60エピソードを挟んでの超ロングパス。
  • ジーンの正体に気づいたマリオンに迫りながら、電話線を手に巻き付けたのはただの脅しだったのか、本当にやってしまうつもりだったのか。犬の骨壺は脅したり得ない以上、こちらもそうなのだろう。

  • 眼鏡に髭で、外見すらWalter Whiteと化してしまったジーン。ジーンにとってのマリオンはウォルターにとってのスカイラーとジュニアなのだ。ウォルターは自分を警察に通報するジュニアを見て我に返り包丁を手放し、ジーンは「I trusted you.(信じていたのに)」というマリオンの言葉を聞いて我に返り取り上げようとしていたコールスイッチを手放す。「信じていたのに」と直接リンクするイベントはこれまで無かったが、S3Ep10で孤立したアイリーンを元に戻すために、エリンと小芝居をする際、エリンが「These people trusted you, Jimmy.」と言っている。アイリーンとの出会いはまともな仕事のためだったが、マリオンとの出会いはそもそも利用するために近づいた事だ。ここで踏みとどまれたことが、ジーンにとって良い結末へと繋がればよいのだが……。

 

まとめ

贖罪の為にアルバカーキ空港に降り立ったキムと、良からぬ考えを加速させるジーン、それぞれの後ろ姿の対比。贖罪の道を歩み始めたキムと、既に落ちているのに、さらに転げ落ちてしまったジーン。バスの対比は気づいてたけど、後ろ姿の方はこのTweetをみてあっとなった。

 

Waterworksは2つの単語にもわけることができ、そうすると略語はWW。本エピソードの脚本・監督はシリーズの生みの親Vince Gilliganで、勿論Walter Whiteを連想させる。前エピソードでジーンがBreaking BadしてWalter Whiteに。最終エピソードの「Saul Gone」はSGで、勿論Saul Goodman。脚本・監督はPeter Gould。Vince Gilliganばかりが持ち上げられる事が多いけども、Better Call SaulはPeterの物だというイメージがある自分には(勿論Vinceを軽視するつもりなど無いが)、これまでと同じくPeterが締めてくれるのはうれしい差配。

 

頻発する需要/欲望・トラブル・ハプニングを、ウォルターが場当たり的に切り抜けていき、意図しないコラテラル・ダメージを周りに及ぼし続けていくという、有る意味分かりやすいドラマだったBreaking Bad。そこで無造作に散らされた破片に意味を与え、ただでさえこれ以上無いほど高かったBreaking Badの完成度を更に強化する前日譚としてのBetter Call Saul。

努力で弁護士資格を手に入れたジミーやキム、そしてエスタブリッシュメントとしてのハワードと、そこへ上り詰めたチャック。悪い世界に軽い気持ちで足を踏み入れたナチョに、フィラデルフィアで息子の敵討ちを果たして義理の娘と孫を追いかけてきたマイク、カルテルに大きな恨みを抱きながらもその一員として動きながらも、復讐を謀るガス。

弁護士サイドと裏社会サイド、ゆっくりと小さく、しかし丁寧に始まった2本の流れが勢いを増しながら、S5で接触してS6で大激突。そしてスピンオフ元の後の世界で、Better Call Saulの主人公ジミーとその相棒キムはどういう結末を迎えるのか。

 

ウォルターは最後にはSchwartz夫妻に家族への金を託し、ジェシーを助け、ジャック達ネオナチ一味を一掃して復讐を遂げ、自らも散った。実際に家族に金が渡るかどうかは分からないが、本懐を遂げた「つもり」で逝けた。視聴者的にもカタルシスがあった。

一方、今度こそ人消し屋に頼る以外無いほど追い詰められたジーンに待っているのはどういう未来・結末なのか。前エピソードの「墓穴に埋まるジーン」の暗示は現実となるのか。かつてウォルターに助言したように、そして今回キムに言われたように観念するのか。

キムの贖罪の行く末も気になる。

 

ここまで、Breaking Badのようなカタルシスを得られるエンディングへの道は全く見えない。そこをこじ開けてくるのか、開けないのか。

最終話、Fandom Wikiにはrun time 65分と出た。

前回のStarringはBob OdenkirkとJonathan Banks、今回はBob OdenkirkとRhea Seehorn。前々回はBob一人。最終回ははたして……?

 

2008年にBreaking Bad第一話が始まったアルバカーキ・サーガ。14年続いたシリーズのUltimate Episodeがもうすぐそこだ(自分はリアルタイム視聴はBCS S4からの途中参加組だけど)。

Better Call Saul S6Ep11 感想・予想 (ネタバレ) 追記アリ

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep11まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

「今後の予想」以降も、自分で予想したい人は読まない方が良いかもしれない。

 

 

【目次】

 

 

Teaser

色がある。縛られ、頭に袋をかぶせられた状態で床に転がされたソウル。間違いなく、BrBaS2Ep08「Better Call Saul」、ウォルターとジェシーに拉致され、荒野に連れていかれているシーンだ。

ECU*1される「Metylamine(メチルアミン)」の瓶や「(RE)D PHOSPHORUS(赤リン)」のボトル、フラスコにRVのキー。どれもがBreaking Badを象徴するモチーフ。

 

RVは止まり、車から降ろされるソウル。目隠しをされていても足元は見えるのか、ステップを降りるソウルの足取りに迷いはない。扉が閉められると、BrBaS1Ep02であけられた弾痕に張られた、5片のダクトテープ。

 

目隠し袋を取られ、「穴」を見せつけられたソウルの悲鳴と「It was Ignacio!」の叫びが記憶をBreaking Badに揺り戻す。続けて「He's the o(ne)...」でブツっときれてタイトルへ。

 

コールバック

  • 「アボガド(弁護士)」「ディネロ(金)」はS5Ep08 bagmanで、カズンズからラロの保釈金を受け取る際に話している。

 

 

タイトルコール

ビデオ再生直後特有の砂嵐類似から完全な青一色。そしてそこに早送りノイズ的なものが乗りだして左上に「PLAY」。2秒ほど椅子ひじ掛けの上で揺られるグラスの映像が、早送り中のビデオのような効果をかけられて映される。これはジーンの家にある椅子と、何時も飲んでるラスティネイルだろう。早送りのようにみえ、タイトルBGMもいつもより音程が若干上がっている。PLAYと表示されているので、これは早送りではなく機械の不具合で早く再生されているととるべきだろう。

 

くっきりとした青背景に戻り、「BETTER CALL SAUL」のタイトルと、Vince&Peterのクレジット。前回はここでテレビを切るエフェクトだったのが、今回はモノクロの十字路が一瞬映る。

 

 

Act1

画面はモノクロに戻り、フランチェスカ宅。ウォルターとジェシー、ソウルが居なくなったアルバカーキで、定職にもつかずに昼過ぎまで寝てるような若者2人に部屋を貸すような、肩身の狭い暮らしを余儀なくされている。

2:05と表示された時計を見て家を出るフランチェスカ。11月12日午後3時に取るべき電話に向かうのだ。尾行を警戒しながら車を走らせる。

廃業したか、それに近いレベルでさびれたガソリンスタンドの公衆電話。3:01になるのを見て立ち去ろうとするが、電話が鳴り、取りに行くフランチェスカ。あまり乗り気には見えない。

 

電話の相手はジミー/ソウル/ジーンだ。報酬前払いでないとと約束をたがえるフランチェスカに仕方なく隠し場所を教えるジーン。

状況は最悪で、フランチェスカが一応は自由の身である事、ジェシーが逃げおおせた事、ヒューエルも取り調べ後に「故郷に帰ったらしい」で済んでいる事くらいが明るいニュースで、ソウルが残してきたものは全て明るみに出て没収された。

そう報告を受けたジーンは「It's gone. It's all gone.(吹:消えた 全部無くなった 字:つまり 何もかも消えたのか)」。この、It's all gone.は最終エピソードタイトルの「Saul Gone」にもつながる。

 

切ろうとしたフランチェスカに、追加のコインを入れたんだからもっと話をしてくれとせがむジーン。検事から弁護士に立場を変えたビルや、自身の近況を皮肉るフランチェスカ。これで終わりか?と聞かれ、暫く間をあけてキムから電話があった事を告げる。生きているか?と聞かれても「何も答えなかった」とフランチェスカ、「でも聞かれた」と再確認するジーン。

 

ジーンが電話していたDiner横の公衆電話からの帰り道、タイトルコールの最後に一瞬映った十字路へ、車で差し掛かるジーン。見渡しのいい十字路の手前で停止し、暫く考え込む。

この十字路は非常に示唆的だ。

 

直後、シーンが変わり、また公衆電話。番号案内に聞くのはフロリダの「パームコースト・スプリンクラー」。これはキムの勤務先で、ジーンはどうにかしてこれを知っていたようだ。

番号案内が繋いだ後の会話は聞こえない。映像上で30秒弱話した後、激昂して受話器を滅茶苦茶に叩きつけるジーン。電話ボックスから出てくると、ボックス下部のガラスを蹴り割ってしまう。

誰と話したかすら定かではないが、余程悪い、もしくは気分を害する話をきかされたのだろう。

 

コールバック

  • フランチェスカが店子の「dude」を使ってやり返すのは、BrBaS1Ep02でスカイラーがジェシーに対してやった事。「But it's still clogged, dude.」「You do it, dude.」。なお、日本語翻訳では吹替・字幕共にこのニュアンスは抜け落ちている。
  • 「First things first.」*2S5Ep06と、S6Ep03でマイクがナチョに言うセリフ。
  • ジーンの「This is goodbye(これでお別れかな)」直後にガチャンと電話を切るフランチェスカフランチェスカはソウルと馴れ合う気がない。S4Ep05Teaserのフラッシュフォワードで、いざ逃げ出そうとするときにハグを求めるソウルに「Yup」とだけ言って立ち去るフランチェスカ
  • 「Tigerfish Corporation」は「Ice Station Zebra」に登場するの架空の原子力潜水艦「USS(US Navy Submarine) Tigerfish」から。Better Call Saulでは、S2Ep03で「Ice Station Zebra」そのものを観ていて、S2Ep06ではフォークダイニング&バーでキムに酒を奢ったエンジニアのデイルから受け取った小切手の宛先に「Ice Station Zebra Associates」が使われている。
  • 十字路を目の前に思案するジーンは、BrBaS4Ep06 フォーコーナーズ(4つの州の州境が交わるところ)でコイントスするスカイラーを思い出させる。
  • 怒りのあまり受話器を叩きつけるのは、S1Ep01 HHM駐車場エレベーターホールのゴミ箱を蹴りまくっていた事を思い出させる。また、BrBaS2Ep09最後、癌の寛解を知らされた後、トイレでペーパータオルディスペンサーをボコボコに殴るウォルターをも思い出させる。

 

 

Act2/Act3

シナボンで生地こね機のスイッチを入れた後、ずっと思案にふけるジーン。

すぐに場面が変わり、ジェフが帰宅するとジーンはまたマリオンと談笑している。強引にジェフとガレージで二人になろうとするジーンに、マリオンもなにかを感じ取ったようだ。

そして、「これっきりだ」との自らの言を翻して、ジェフ達との悪事を再開してしまう。

 

悪事は、酒場で仲良くなった相手に酒を飲ませ、帰りのタクシーでジェフに、睡眠薬入りの水を飲ませて玄関まで送らせて鍵がかからないようにテープで細工。ジェフ友が犬を連れて侵入し、家主の昏睡中に免許証やクレジットカード、小切手帳や銀行関係の書類、ネットのアカウント情報等をデジカメで撮影し、その内容を売るというもの。

 

コールバック

  • 「我々は別々の道をゆき二度と会わない」(BrBaS1Ep02)と言ったのに「Wanna cook?」(BrBaS1Ep04)とメス作りの継続を持ちかけたウォルターと、「俺を見かけたら道の反対側へ渡れ」と命令し「We're done.」と無理矢理言わせたジェフに、もう一度悪事を持ちかけるジーンは相似形だ。
  • ジミーのカラオケはS4Ep10 Winnerを思い出させる。チャックは居ないが。
  • ジーンの偽名「Viktor」は、S2Ep01で初登場した「Viktor with K」。S2Ep06でも。
  • 最初にジーン達の餌食になった男は、S1Ep04やS1Ep10でのマルコとジミーを思い出させる。立場の逆転。しかし、そこまであくどい奴ではなさそうでもある。
  • ジミーの悪事のパートナーは、最初にオマハでのマルコ。それからBetter Call Saulでキムやヒューエル、アイラ、Breaking Badではクービーも追加。そして最終的にはジェフとその友達となる。最後の落ちぶれっぷりはBreaking Badのウォルターを強く想起させる。BIGBOSSガス・フリングをヘクターの助けで殺した後、ネオナチのチンピラみたいなのと刺し違えて終わってしまうウォルターを。個人的にはこのプロット、最強ボスを倒してエンディング、というクリシェの破壊で、大好きなプロットだ。

 

 

Act4

再びカラー。BrBaS2Ep08の時間だ。RVに乗り込んだジミー達。ソウルは中の「調理」用具に驚く。エピソードポスターの、「丸底フラスコに入った金魚」も回収。

ジェシーイゴールと呼んでいるのは(日本語ではただ助手となっている)、ヴィクター・フランケンシュタインの助手の事か。

 バッジャーを助ける手段としての「Jimmy In-and-Out(出戻りジミー)」についての会話や、いつもの超自分勝手で高圧的なウォルターのジェシーへの態度等、Breaking Badの濃厚な匂いが立ち込める描写。

RVのエンジンがかかり、立ち去る様子をソウルへの脅しのために掘った「墓穴」の手前から映し、カメラは次第に上昇し、「墓穴」を上から映す。そしてそこに横たわるジミーが合成され、自宅のベッドで横になっているシーンへ移行する。

ジミーはChi Swing Master*3を受け取り、自宅で使い始める。余談だが、日本では「金魚運動器」という名前で売られていた記憶があるが、英語圏では「Chi machine」で検索するとたくさんヒットする。

そして、ジェフ達との2回目以降の個人情報を盗む「悪事」のモンタージュシーンへ。免許証の数は合計で21枚。

 

シナボンで、生地捏ね機のスイッチを切り、モンタージュシーンが終わる。スイッチを入れたのはAct2の最初だ。

 

そして最後のカモ。酒を飲んでる最中に癌の薬を飲み始めるのは死の覚悟が出来ている証拠か?ジーンは思わずウォルターを思い出してか少しだけ気遅れする。

 

 

コールバック

  • RVの助手席に座るぞ、というソウルの「I'm calling shotgun」。BrBaS4Ep05 「Shotgun(ハンクの推理)」で、自暴自棄になったジェシーを立ち直らせるために、マイクがガスの指示のもと助手席に乗せてデッドドロップ(ドラッグ売上金の、人と人との手渡しではない非直接の回収)につき合わせるエピソードを思い出させる。
  • ジェシーの「Who's Lalo?」に対する「It's nobody.」。S6Ep07での、ハワードの「Who are you?」、ラロの「Me? Nobody.」ジミーが「無かった事」にしたい男No.1ラロ。

  • ある一連のシーケンスを1度丁寧に描いておいて、2回目以降をBGMに乗せてモンタージュシーンとして描くのは前エピソードS6Ep10でも、フランクにシナボンを何度も食べさせる所で行った演出。
  • 娼婦を呼んでいる描写。S6Ep09で、Breaking Bad時代*4のソウルも呼んでいた。おそらくBreaking Badタイムラインでも呼んでいたのだろう。
  • ジェフ達に渡した使い捨て携帯。弁護士資格剥奪中のジミーが売っていたもので、屋号を「ソウル・グッドマン」へ変えてからの顧客獲得策にもなった。
  • 最後のカモでもある癌患者が飲むたくさんの薬は、ウォルターが服用していたたくさんの薬や、S6Ep01 Teaserのソウル・グッドマン邸に残されていたいくつもの薬瓶を思い出させる。

 

 

Act5

色が付き、Breaking Bad時代に戻る。本エピソードでの色付きシーンは全て時間的にはBrBaS2Ep08 「Better Call Saul(ソウルに電話しよう!)」と重なる。

ソウルは自分のオフィスの床に横になり、「Swing Master」に足をのせて動かしながらフランチェスカと会話する。約束の時間にマイクが訪れ、ソウルは報告を要求するが、「Swing Master」を止めなければ立ち去るだけだと、冷たいマイク。彼なりのプロ意識の表れか。

3件ほど、あまり関係無いと思われる調査について報告したのち、「ハイゼンベルグ」の件へ。勿論それは元教え子のジェシーと組む、高校の化学教師であるウォルター・ホワイト。ステージ3Aの肺癌であることまでマイクは把握している。

ブルー・メスの品質の良さを買おうとするソウルに、ベータマックスの件を持ち出して「そいつの事は忘れろ」というマイク。「ああいうひげの男は ろくな選択をしてきてないだろうな」と、ソウルはその助言を受け入れる。

しかし、Breaking Badでの3つ先のエピソード、BrBaS2Ep11で、ガス(とソウルは知らないが)にウォルターを紹介してしまうのだ。

 

コールバック

  • Act4でも飲んでいたんだと言っていた、大量のサプリをフランチェスカに確認させている。
  • Swing master使用中にマイクがオフィスに入ってくるのは、BrBaS3Ep13でマイクが逃亡中のジェシーを探しに来た時も。ジェシーがゲイル・ベティカーを殺す回だ。この時は「You are good right there.」「Now, let's both get comfortable.」と今回の逆でソウルを寝かせたままにする。しかし、フレンドリーなわけではなく、寝転んでるソウルを上から威圧し、暴力の示唆までしてジェシーの居場所を聞き出そうとしている。

  • ハイゼンベルグについて、「警察に捕まるか、頭を撃たれる」との評は「Is that your appraisal, or is that what "He Who Shall Not Be Named" says about him?(マイクの評価か、それとも"名前を言ってはいけないあの人"の評価か)」とソウルが聞く。BrBaS2Ep11で、ソウルはウォルター達に、ドラッグを大量にさばける人について、「I know a guy, who knows a guy... who knows another guy. Who knows another guy.(知り合いの知り合いなら知っている)」と言う。マイクはガス直属の部下なので、「知り合いの知り合い」を知っているという事なら1クッション余計になってしまう。ここの理解・つじつま合わせができない。タイラス・ヘクター達のラインとマイクは別系統に思えるので。

 

 

Act6

家でくつろぐジーンに電話が掛かってくる。恐らくジェフが「ジェフ友がやらないと言っている」と報告したのだろう。マリオン宅のガレージに集まる3人だが、ジェフ友の犬が吠えて、マリオンに何かやっているのを見られてしまう。そこそこ遅い時間にこそこそと集まっているのだから、怪しまれない方がおかしいだろう。

ジェフ友は「ポケットの癌の薬を見てしまった。病人をカモには出来ない」と拒否するのだが、ソウルは激昂し、クビを言い渡す。高圧的・独善的な態度がウォルターそっくりだ。

一応はジーンの肩を持つジェフの運転で、最後のカモの家へ向かう2人。「睡眠薬がきれてるかも」との危惧も怒鳴って黙らせる。車を降りて、ドアを開けるとシーンチェンジ。

BrBaS2Ep08で、高校の化学室にウォルターを訪ねていく直前。学校の駐車場でキャデラックの扉を閉めるところへの切り替わり。障害者用駐車スペースのポンティアックアズテック(勿論ウォルターの車)の横を通り、校舎のドアへ向かうところでシーンチェンジ。

カモの家の中からのカメラで、ドアに近づくジーンを映す。手袋をしたジーンは、肘で玄関ドアのガラスを割り、手を入れて鍵を開け、ドアを開く。

 

コールバック

  • ここでのジーンはほとんどウォルターと言っていい。高圧的・独善的な態度もそうだし、Act5でBreaking Bad時代のソウルがウォルターについて言った「ああいうひげの男は ろくな選択をしてきてないだろうな」にも当てはまってしまう。
  • ポケットの癌治療薬を見て、カモにはできなくなってしまうジェフ友。父親も癌を患っていたとのセリフもあり、叔母の癌闘病に付き添っていたジェシーを思い出させる。悪事ははたらけど、踏み越えられないラインがそこにあるのだ。
  • どうしてもできない、というジェフ友を説得するためのジーンの言葉、「気持ちはわかるが乗り越えられる。信じてくれ、知らぬ間に忘れられるから」というのは、S5Ep09で、ステイシーから聞いた話をマイクがジミーに言った事、それをアレンジしてS6Ep09でジミーがキムと自分自身に語った言葉の超簡略版だ。
  • アルバカーキアイソトープのエアフレッシュナー。なんて事のない小物のはずだが、ECU(本体はフレームに入ってるし、この程度ならEは要らない普通のクローズアップか?)される回数が余りに多い気がする。
  • BrBaS2Ep11 ガスとの取引が急に成立し、ウォルターがブツをジェシーが借りた家に取りに行く時。この時はガラスではなく、ドア板をぶち破って手を入れ、鍵を開けた。同Ep13では、破れドアを補修していた段ボールを開けて同じく鍵を開けた。ジェーンを見殺しにした回。

 

 

感想

Teaser

Breaking BadのS2Ep08と、穴の前で目隠し袋を取られたソウルの叫び声を比べてみると、今回の方が少し怖がり方が強い印象。ここまでラロへの恐怖を存分に刷り込まれてきた様子を見せつけられた身としては今回位の方が納得感が出る。

移動メスラボRVのドアに内側から貼られたダクトテープ、Breaking Badでは外から貼られているのは記憶にあるのだが、内から貼られていたシーンに全く記憶が無い。一番分かりやすいのがS3Ep06で、ハンクに追い詰められ、外からテープをはがされ、車の中に光が差し込むシーン。正直これ(内側のテープ)はミスか、それを承知での演出だと思う、珍しいことだが。

……と思っていたら、BrBaS2Ep09、つまりこのシーンのBreaking Badでの次のエピソードでは、内側からダクトテープが貼られている。大変失礼いたしました。制作チームに敵うわけないよな。

 

RVの中は少しBreaking Badの時とは様子が違う気がする。スッキリしすぎというか、でも確証もない。

ウォルターとジェシーが目出し帽を完全には脱がなかったのは髪型を隠すためなのだろうか?といぶかしむなど。

 

タイトルコール

やはりEp01用の「自由の女神」には戻らずに、新しいモチーフを使ってきた。5秒くらい息が止まった。「ジーンの椅子で揺れるラスティネイル」、しかも再生速度が速くなっている。ストーリー展開の加速の暗示でもしているのか?

 

Act1

ジミー・マッギルの誕生日(生年は1960年)でもある11月12日の午後3時の電話に、個人的にもの凄く期待を掛けていたので、逃亡半年後のアルバカーキの状況を聞くために、事前に約束をしておいたってだけだったのか!と肩すかしを食わされた気分。決定的なイベントをそんな前にチラつかせてくれるような制作陣ではないようだ。誕生日なのも自分が忘れにくいだけの理由なのか?

たかだか1分遅れただけで車を出そうとするフランチェスカ。暮らし向きも悪そうで、それなりの大金が入るのに、そこまでソウルを嫌っているのか。ソウルはフランチェスカに、フランチェスカはキムに、割と一方向の好意を持っている様に見えていたのだが、ついに後者については明らかにならなかった。キムがフランチェスカに電話したのは、繋がりがそこしかなかったからという可能性もあり、フランチェスカがソウルの生死を答えなかったのは、おそらくソウルとの事前の取り決めだろう。

事前に隠しておいた電話の報酬を探し出すところは、最近はじめて観た「ショーシャンクの空に」を思い出す。

 

キムの勤務先、パームコースト・スプリンクラーへの電話シーン。会話を聞かせない演出がなかなかニクい。

会話を聞かせない演出は「会話内容が明白だから聞かせない」場合と、「会話内容をヒキにし、後で明確にする」場合がある。

前者の一例は、S1Ep08 Teaserのフラッシュバックシーン。ジミーが司法試験に合格し、チャックにHHMで雇ってくれと頼みに行った後、郵便室でハワードがジミーと話す場面だ。視聴者は既にジミーがHHMで働いておらず、ハワードを憎んでいる事を知っている。ハワードが告げた内容は「HHMでは雇えない」という事なのは明らかだ。呆然とするジミーに胸が痛む。

後者の一例を挙げると、S5Ep09で、キムがS&Cを辞めると告げにシュワイカートの部屋へ行った時だ。ただし、この時はその直後で会話内容が察せるし、遅くても同エピソード内の少し後で明らかにされる。

今回の「聞けなかった会話内容」は、今エピソードでは明らかにならなかった。

 

Act2/Act3

おお、ジーンよ、汝はまた「Breaking Bad」してしまうのか……。

ジェフ友のお供の犬が賢くてかわいい。

 

Act4

Act2の冒頭で入れたシナボンの生地捏ね機のスイッチを切るのは、ジェフ達と再び悪事に手を染め、金を稼ぎ、娼婦を買ったりストリップを見に行ったりした事が示された後だ。間にフラッシュバックとしてウォルターとジェシーから手付金を受け取り、守秘義務が発生した所、つまり「この2人のGameにInした所」も含む。

 

モンタージュシーンで流れる、Nesmith Michaelによる「Tapioca Tundra」も非常に示唆的だ。はじめの方の「Lose themselves in other times」、2回繰り返される「And one more time the faded dream is saddened by the news.」、そしてリフレインの「It cannot be a part of me for now it's part of you.」

 

情報屋に売ったと思われる免許証は合計で21枚映される。1日1件だとしても、2010年12月になっているのは間違いないし、恐らくそこまでのハイペースでカモの準備はできないだろうから、年が明けている可能性も。

 

ジミーにとって、オマハ時代をカウントしなければ、ジェフ達との悪事は「Breaking Bad Again」である。1度目はS6Ep09ラストまでに描かれた。

そして、このフラッシュバックで描かれたのは、「ウォルターとジェシーのBreaking Bad」に関与し始めた瞬間だ。

 

ジェシーがラロという名前を聞いた事が無いというので、Fandom WikiのTimelineページ*5でタイムテーブルを確認してみた。

ラロがアルバカーキにやってきたのは2004年に入ってからで、退場するS6Ep09は同年6/24。1984年生まれのジェシーは、2004年時点では高校卒業して2年経ってる時期。

 

最後の癌を患ったカモ、どこかで見た事あるのに思い出せなくてもどかしかったが、「ビッグバンセオリー」のコミックブック店の店長、スチュワートだ。あちらではスーツを着たシーンは殆ど無いし、ヒゲも眼鏡も無いので気づけなかった。白黒なのもあるか?BGVがわりに流しまくっていたシリーズなのに。役者ってすごい。

彼の「巨悪に関わった奴らには特別な地獄が待っている」「人生一度きり」等のセリフがメタ的に思わせぶりだ。

 

Act5

Better Call Saulでの(より具体的にはS6Ep09で時間が飛ぶ前の)ジミーより、Breaking Badでのソウル・グッドマンはマイクへの態度が雑になったように思える。図太くなったからなのか、金銭的余裕が出来たからなのか。

Season6におけるマイクはラロに対して全て後手後手にまわらされた。フラッシュバックシーンでは、ブルーメスについては過小評価、ウォルターについての評価は「結果的に」正しい。その後、Breaking Badではマイクはウォルターの危険性を過小評価した挙句、BOSSであり信頼できるパートナーだったガスを殺され、最後には自分自身まで殺されてしまう。

規格外の化物には弱いのかな、マイクは。いや、誰だってそうか。ラロをかわせたガスが凄かったのか。

 

Act6

Teaserの椅子のひじ掛けの上にラスティネイルが置いてあって揺れていたのは、電話連絡を受けて立ち上がった直後なのかもしれない。

これまで全然吠える様子が無かったジェフ友の犬が吠えたのは、ジーンの不穏な変化を察知したからなのかも?

マリオンはジーンの不審さに気づいたようだが、また出番はありそう。しかし前回感想では「もう出番は無さそう」と書いて外したのでさほど自信はない。

 

全体

Season6において、Ep09まではエピソードタイトルにおいてBetter Call SaulとBreaking Badのタイムラインを撚り合わせてBreaking Badの「ソウル・グッドマン」の誕生を描いた。

一方、このEp11では、ジーンとBrBaソウル・グッドマンを強烈に撚り合わせている。特に後半だ。

  • 荒野に掘った穴と、自宅ベッドで寝ているジーンを利用したトランジション
  • 電話のワイヤレスヘッドセットは、ソウルの机の上でも、ジーンの机の上でも同じように光る。
  • Swing Masterも、ジーンの家、ソウルのオフィス双方で使われる。
  • ジェフの車から降りるとウォルターの高校なのも、校舎に近づくと、最後のカモの家に近づくのもそうだ。

 

 

これから描かれて欲しい事

  • マイクがトゥコにボクシンググローブのネックレスを返すところ。直接描写ではなくとも、トゥコの登場やマイクとサラマンカ関係の誰かとの接近描写が欲しい。
  • オープニングテーマ曲のフル版を流す事。Breaking Badでのpenultimate(最後から2番目)の最後のような、テーマ曲を使った印象的な演出をして欲しい。最終回でもいいし、その前でもいい。

 

 

今後の予想

次回タイトル「Waterworks」

一般的には上水道システムやその設備を指す言葉だそうだ。また、インフォーマルには尿排出に関わる器官。そして、「turn on the watermarks」となると、目的の(同情や注意を引く)ために涙を流すという意味になる。

所謂「嘘泣き」を示唆するタイトルなのかな、と。

S6Ep11で「Waterworks」に関連しそうな出来事はいくつかある

  1. フランチェスカの台所の詰まり
  2. フランチェスカへの報酬の隠し場所のパイプ(これはかなり薄い)
  3. キムの勤め先「Palm Coast Sprinklers」(これは割と有望なのでは?)
  4. ジーンが酒を飲んだふりをするための吸引システムと、その排出。

そして、本エピソード以外では、マルコの最後の職が「Lake Michigan Standpipe」だ。消火栓関係の仕事。ここでマルコの仕事を引っ張り出してきそうな気はしている。マルコ自体はなかなか難しそうなので、消火栓が。割と穴狙いの説ではあるが、そこまで大穴というわけでもない気がしている。

これらと「turn on the watermarks」とのダブルミーニングだろうか。当たればいいな。

 

それ以外の予想の材料

「It's gone. It's all gone.」

フランチェスカとの電話で。「Saul Gone」へのリンク。

十字路

分かれ道、決断の暗示。

キムの勤務先との電話の内容

電話の相手はキムかそれ以外か?キムは出なかったのか出られなかったのか?電話の内容は?キムは癌などの重病なのか、既に死亡とかいう最悪中の最悪なのか?それとも徹底的に拒絶されただけなのか?とにかくジミー/ソウル/ジーンにとって受け入れがたい話があった事だけは間違いない。

詐欺再開の理由

単なる金目当てか、切迫した理由によって金が必要なのか?

墓穴に入るジーンの意味は

Act4で強烈な印象を残したトランジション(シーンチェンジ)。ジーンの死の暗示なのか、煙幕なのか?

『Breaking Bad』というエピソードタイトルの意味

ただの「悪堕ち」という意味なのか、Breaking Badでのウォルターの癌についても暗示しているのか。もしそうならば、キムの勤務先との電話と繋がり、キムが癌になってしまったことを示唆している可能性。

ストリップ(ポールダンス?)や娼婦

ストリップにはジェフやジェフ友も席は別だが一緒に行っているので、カモ漁りではなく、楽しみに行っているのだろう。娼婦を呼んだ事は、キムへの想いが無い事を示唆するのか、ソウル・グッドマンからの惰性が止まらないだけなのか。

「巨悪に関わった奴らには特別な地獄が待っている」

最後の癌を患ったカモの言葉(拙訳)だが、これもエンディングの強烈な示唆だ。もしくは煙幕。

Alberqurque Isotopes

しつこいほど繰り返されるこのモチーフ。このチーム名は、元々アニメのシンプソンズのエピソードが由来だったそうだが、ニューメキシコには「ロスアラモス国立研究所」「サンディア国立研究所」「廃棄物隔離パイロットプロジェクト」等の、核兵器や核廃棄物に関する施設がある事も理由になっている。Isotopeは放射性同位体という意味だが、これは不安定なため放射線を出す物質の呼称である。これらは癌の原因にもなりうるし、その癌の放射線治療にも有効利用される。

あまりにしつこい繰り返しは癌の暗示なのでは?というのは分が悪い賭けでは無いように思える。

ウォルター化するジー

ここまでジーンが高圧的・独善的になり、ウォルターとのオーバーラップを意識させ、しかもMustacheまで。ウォルターの二の轍を踏む暗示である可能性は極めて高いと思われる。

ジーンとBrBaソウル・グッドマンの強烈な撚り合わせ

このBrBaソウル・グッドマンとの撚り合わせは、「Breaking Bad Again」の暗示か?ウォルター・ホワイトとの撚り合わせにも通じる気がする。

 

 

結論

最初に断っておくが、最終的な話の落としどころの予想は10000%当たらないと思っている。制作陣が終わり方の予想外さをアピールしてるからというのもある。それでもこんな文章を書いて予想するのは、予想する事自体が楽しいからであって、どう外れたかも後で楽しむことができるからだ。書き残しておかないと自分が考えた事をすぐ忘れてしまうからでもある。

 

で、現時点での結論としてはこうだ。

  • キムはやはり癌を患ってしまい、ジーンはその事を勤務先への電話で知る。
  • ジーンの心変わり(ジェフ達との再犯)は、キムの治療費のためでもあり、金を稼ぐという事で自分の力を再証明するためでもある。
  • やはりジーンは最終的には死ぬ。

 

再犯の理由について、「キムのため」だけでないのは、ストリップや娼婦の描写があったため。「ジミー・マッギル」だったら恐らくこんな遊びはしなかったのではないか。しかし、「ソウル・グッドマン」ならしてもおかしくない、というのが自分の印象。キムに一途だったジミーには戻れないのだ。

ストリップ・娼婦描写が無ければなぁ……。

 

ジーンは未だにキムの事も大切には思っているのだが、Shortcutをしての金儲けやスリルからも逃れられない。

ジェフ友をクビにしてまで金に拘った理由もまだよく見えない。

一方で、本エピソード最後では、ガラスを割って侵入するという、予定外で安易すぎる行動を取ってしまっているが、これが命とりになるのではなかろうか。

 

ジーン死亡ENDとするならば、ウォルターの最後のようなある種のカタルシスが無ければ不釣り合いになってしまうが、これについては全く想像がつかない。ここにシーズンアートの「赤いジャケット」がでてくるのだろうか。

 

 

キムは既に死亡、の方が筋を通しやすい気がするのだが、それだけは個人的に受け入れがたい、余りに辛すぎる、耐えられない……。ジミーについては、ここまで死の暗示をされてしまっては……もう諦めた。

ジェシーは無抵抗なゲイルを含めて最終的に5人も殺したが、最終的にはアラスカへ旅立てた。キムは間接的にだが、チャック・ハワードを殺し、その周辺の人を不幸にした。

アルバカーキ・サーガの創造主ヴィンス・ギリガンは「因果応報、行動には責任が伴う」と言ってはいるが、制作チームの別の人は、因果のつじつまを合わせる事が優先されるわけでもない、と言っていた(Thomas SchnauzかGordon Smithだった気がするが、該当Tweetを見つけられない。英語検索が下手過ぎる)。ジェシーが生き延びる事を許されたのなら、キムが許されてはいけない訳も無いと思う。

 

 

追記 今後の展開の確度が高そうな推測

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キムの運命

ここまでAlberqurque IsotopesのAirfreshnerの強調をかいておいて、投稿前に気づかなかったのが信じられないが、S6Ep06でこのAlberqurque IsotopesのAirfreshnerをキムに法廷で持たせている。ここまで紐解けば、もはやキムが癌になったのは99%間違いないのではなかろうか。

キムが提示するAlberqurque IsotopesのAirfreshner S6Ep06

 

ここが確定となれば、キムの職場への電話も見えてくる気がする。

ジーン/ジミーは、キムに癌罹患を知らされ、金銭的援助を申し入れるが、キムは断ってしまうのではなかろうか。そうすればその後のジミーの行動も自分的には納得できるものになる。

 

Better Call Saul S6Ep10 感想 (ネタバレ) 追記有

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep10まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

20220729 追記章と目次を追加

 

 

前回までと少しスタイルを変えて。

 

TEASER

 

予想との一致・乖離

チェンジ・オブ・ペースでスローな回になると思っていたが予想通り。前回の続きが残り2話ならここまでのスロー展開は考えにくいとは思っただろうが、4話もあるんだから寧ろ必然だと(言っておけばよかった)。

破壊的なショックの無いスロー展開ではあるが、勿論退屈とは無縁でむしろ終始ゾクゾクしっぱなし。ここへきてSlow Burnerを貫く姿勢にしびれてしまう。

 

本エピソードのタイトルは「Nippy(迷子犬)」だが、「X and Y」スタイルをやめてきたことで、時系列の飛躍があるのではないか、とEp09放送前に予想していた。

 

タイトルそのものでいっても、nippyて単語が、気候・寒さが厳しい様子を指す形容詞なので、S5Ep01Teaserのネブラスカの冬を指すのでは

この予想がBINGO(まぁあまり予想難度が高いものではないだろうが)。犬の名前ではあるが、元にしたのは間違いなくこのことだろう。

Ep09放映後の感想では、「Ep09ラストから大きなジャンプはしないで、電話の理由やウォルター・ジェシーの出演を回収するのでは?」と言っていた事も一応書いておく。こちらは結果間違いだった。情報が増えて、かえって大きなタイムジャンプをしないのでは?という憶測が勝ってしまった。


一方で、まだ回収されていないS4Ep05のフレンチェスカに頼んだ電話の理由や、今はまだマイクが持っているはずのトゥコのグローブ型ネックレスの返却が描かれる蓋然性は相当高い。

Ep08の感想では、自由の女神や王国への鍵の受け渡しで、ケトルマン夫妻や獣医カルデラの再登場がありそう、と言ってしまった。しかしこれらは放映された通り、省略された方が寧ろ味わいがあった。一方で電話の件やネックレス返却は描かれねばならない種類のものだ。

 

本エピソードが全編モノクロだった事は、ジーンタイムラインにおけるこれまでの演出の踏襲であり、フラッシュフォワードの明示でもある。なので、次のエピソードでは時代が戻る(そして勿論カラーになる)蓋然性が高いのではないか?と予想している。このタイムラインのままではジェシーはともかく、ウォルターが出せなくもなってしまうので。

 

 

タイトルコール

ここで仕掛けてきたタイトルコール演出のルーチンワーク崩し。威力は絶大だ。

 

知ってた人は知ってただろうが、Better Call Saulのタイトルコール映像は1~6までのシーズンを通して第何話はこれ、というのが決まっている。シーズンを重ねるごとに映像が白黒になったりノイズが増えたりしていくのも非公式ファンサイトの人が指摘していた*1

  1. 自由の女神
  2. キャデラック
  3. 天秤を灰皿に
  4. 引出の使い捨て携帯
  5. ベンチの広告
  6. 荒野の公衆電話
  7. 金魚運動器
  8. ネクタイとタランチュラ
  9. 小便器のマッチブック
  10. 落ちるマグカップ

今回はEp10なので落ちるマグカップなのだが、最後を変えてきた。床に落ちてマグカップが割れる直前に映像が中断され、アナログ時代に映像を止める感じのなんていうんだろう?ゴニョニョニョという感じの音。カセットテープをゆっくり止めた時のような?

そして青いバックにドットの荒いフォントで「BETTER CALL SAUL」のタイトル。黎明期のコンピュータゲームを思わせる。少し小さなフォントで「CREATED BY VINCE GILLIGAN & PETER GOULD」。左上のSTOP(ルーチンオープニングのSTOP)と切り替わってのREC。そしてブラウン管を消すエフェクト。

青の背景が完全に一様な青で乱れがないのがあまりVHS等のアナログビデオ的ではないのだがこれは計算なのだろうか?

 

このタイトルコールだけで、30秒程過呼吸になってしまうレベルで興奮させてくれた。ほんとやってくれる。

 

「WORLD'S GREATEST LAWYER」のマグカップが割れるオープニング映像に、あの自由の女神が映り込むのはS5からで、S4まではなかった。単なるアナログテープの劣化だけで関係無い画像が映り込む事は考えにくいので、やはり何かバグというか不具合が起きている事を示唆する演出でもあるだろう。

残り3エピソードのタイトルコールがどうなるか非常に楽しみである。手続き的には今回の「TVを消す」演出で「終わって」しまったので、また1の自由の女神から、とはならずに、別のシークエンスが開始されると予想している。


関連した話で、個人的に愛してやまない演出の1つに、Breaking Bad最終話手前のクロージングで、タイトルコールで流れるBGMのロング版を合わせるというものがある。Better Call Saulでもそれをやってくれないかとずっと思っていたのだが、Breaking Badのテーマはタイトルコールで流れる部分が曲の最後。

 

一方でBetter Call Saulのテーマソング(!!!)は曲の頭なのだ。ロング版を知らない人も一聴の価値はあるので是非聴いてみてほしい。S1のInsider podcastのいずれかで、この曲を確かUKのなんとかいうバンドに頼んだ話もしていた。

www.youtube.com

 

歌詞も、最初から意味深ではあっただろうが、ここまで来てみるとうわあ、うわあという部分が余りに多い。

genius.com

 

自分は歌詞のように曖昧な文章を解釈するのが苦手なのでそこには踏み込めないが。

 

と言うような事もいってきたのだが、ここでプツンと切れる演出をされてしまっては、最終話でフルを流す位では済まないのはもはや明白だ。

ただ、残りの3話を使ってこのテーマソング(歌なのは自分もS6開始後知った)を、これ以上ない効果的な形で使ってくるのは間違いないと確信している。間違っていたらどうぞ嘲笑って頂きたい。

 

 

Act 1

ジェフが帰宅した直後、シニアカーの切れた(ジーンが切った)コードがダクトテープで応急処置されていたり、だんだん会話が聞こえてくるあたりはホラー物のノリだ。ジェフの不安さ・不穏さの予感が凄い。


Stashからピンキーリングを取り出してはめる。サイズ調整用の赤い糸が見えなかったきがするが、白黒なのでさだかではない。このシーンのジーンだけが、他のジーンよりもかなり痩せて見えるのは気のせいだろうか?下からアングルのせい?

 

マリオン

高齢者の懐に飛び込んで仲良くなるのはジミーの十八番。S1Ep05で最初の遺言依頼を受けたミセス・ストラウスや、サンドパイパーで集団訴訟のきっかけとなったアイリーン。

ミセス・ストラウスはこの依頼の後、D&MのTVCMに役者として出演したり、チャックとの裁判を傍聴しにきた後、S4Ep06心不全で亡くなった事をジミーはCCMobileで店長やっている時に知らされる。

一方、アイリーンは集団訴訟の代表となり、一時ジミーが和解を早めようとした工作のためで孤立して相当な孤独感・不幸を味わった。S6Ep07では再登場し、車椅子の必要がない位には壮健である事が示される。

 

アイリーンの不幸に、キムが間接的にではあるが関与している事が、今思うと味わい深い。ジミーが弁護士資格を停止され、金銭的困窮した事が直接の原因で、その直接原因の原因はキムにメサ・ヴェルデ案件を渡す事だったのだ。

 

その後、庭でジェフと2人きりになり、今エピソードでやる事を持ちかけるシーンで、ハッピーエンドもキムの再登場が無さそうだなぁと感じてしまった(初見時)。

 

 

ジェフ

今のジェフは気弱な感じだが、S5までのジェフが母親と暮らしていて、母親からあんな風に言われるような性格には思えなくて、そこの断絶が少し残念。

ジェフの演者が変わったのは調べて分かった。初見時も「こんな顔だったか?」という違和感は強かったが、タクシーにアルバカーキアイソトープAir Refreshnerで露骨にジェフだし、名前もそうだから自分の記憶の方を信じなかった。自分の記憶力の頼りなさには自信がある。

個人的な印象だと前置きはするが、前の演者の方が何をしでかすか分からないサイコパス味というか不気味さが強かった。今の人は少し気弱過ぎるように見えて、キャラが変わってしまった感覚が。個人的には前の役者の人が今回のエピソードやったほうが面白くなりそうだな、とは思った。

ここでいう「ゲーム」をオープニングの青画面タイトルを暗示しているのだろうか?

 

お酒の話 余談

帰宅後のジーン。冷蔵庫から氷をグラスに入れる。持ってきたグラスにはそれに加えて半分程液体が入っている。そこにデュワーズとレモン果汁。

S1Ep01では氷・スコッチ・ドランブイ・レモン果汁の順番で作った濃い目のラスティネイルだった。

あらかじめ入っていた液体はやはりドランブイなのだろう。ドランブイはスコッチをベースに作るリキュールで、蜂蜜が原料の一つである事もあり、非常に甘い。自分の記憶していたレシピではレモンジュースは使わなかったが、ドランブイの割合を増やして甘くした場合は使われることもあるそうだ。

 

今自分は節酒中で、今月分のボトル(月2本)は飲んでしまったので、8月最終話直前に、ドランブイデュワーズを買ってこようとおもう。

 

 

Act 2 / Act 3

何をしているのか分からないが、何かをしている事が延々と提示される、おなじみのやつ。ジミーやソウルよりも、マイクやナチョのシーンでよく使われた演出ではなかろうか。

大量のコールバックがあって嬉しい。纏まらないので、感想・気づいた点も含めて箇条書きで。

 

  • 時計が映り込むようにゴミ捨て場への通路を映すのはコールバック(S2Ep01)。また閉じ込められるの!?と思ったが改善されたのか、閉じ込めを気にする様子すらない。
  • 警備室へのノックが2回なのは意味があるのか?洋ドラで2回ノックは結構珍しい気がする*2
  • ニック(駐車場を見回る普通の体型の方)はS3Ep01 Teaser フラッシュバックで登場。この時の片割れはフランクではない。S4Ep01でジーンが倒れた時は、ニックは映り込んではいないようだ。ざっとしかみてないので見落としかもしれない。
  • コーヒーをいれながら様子をうかがうのは、S3Ep02マイクに頼まれてロスポヨスエルマノスを偵察に行った時へのコールバック。
  • 1回目はBGM無しで、2回目からはBGMを入れるのが好き。この辺りで全編モノクロで行く気だな、と気づく。
  • 最初は紙コップなのに次からはもうマグを使っている。
  • ジャジーなBGMが盛り上がるにつれ、画面も分割されたりと演出が派手になるのが最高にかっこいい。
  • ニックとの仲も、最初「弁護士を呼べ!」の件で白眼視されてたとは思えないほど打ち解けてるのが面白い。
  • ちゃんとフットボールの話題についていけるように勉強しているのも「いかにも」ジミー。S1Ep01で、死体の首を犯した少年たちの弁護をする際にも、トイレで練習をしていた。コールバック。
  • モールでジャケットを見てるシーン、シーズンアートの赤いジャケットはこれ?と思ったが、見返してみるとアルマーニのタグや値札を確認してたのかな。
  • 歩いて距離を測るのはS4Ep07へのコールバック。ヒューエルと見た事務所候補とS&Cのキムの個室。
  • 数のカウントと、その後の盗む商品のブランドや種類とその解説。英語では数字の語尾と、その後のセリフの語尾で脚韻を踏んでいる。翻訳家泣かせだろうが、吹替は頑張ったと思う。字幕はもうしょうがない。
  • 50歳の化学教師がフォルクスワーゲン並の札束の山を築いた話は勿論ウォルターへのコールバック。
  • 電話での成りすましはS4Ep08で、スザンヌ相手に牧師に成りすました事へのコールバック。
  • キャシー(モールのマネージャー)へのlifesaverはS1Ep08、HHMでの判例出力を頼んだキムにも言った言葉でコールバック。キムは図面差替えの時に役所の女の人に、ステイシーもマイクに1度使っている。
  • キャシーへの電話を切ったあとの無音のpoof。無音である必要性も見当たらないし、記憶に無いので印象に残る。
  • 記憶力良すぎる事を誤魔化すアドリブが凄い。
  • 計画中の予定外アクシデントは、カシミーロ元判事の骨折ギプスへのコールバック。今回の芝居はゴルフクラブでの演説が近いか。今回はトラブルが起きても助けてくれるキムやヒューエルらは居ない。
  • 有音のPoof。久しぶり。字幕に残っているのはS1で2回、S4で1回、S5で4回。早いシーズンではもう少し使っているイメージがあったが……。機会があれば確認したい。
  • 「What's the point」、比較的使われるイディオムだが、S3Ep10でチャックがジミーに1シーンで3回も使うのが強烈に印象に残っている。ジーンはここでは2回言って、その間に1回、Wha...で止まったのがある。コールバック。

 

ケチをつけるようでなんだが、フランクが「監視モニター群に背を向けて」シナボンを食べる必然性が無かったので、そこの誘導描写はして欲しかった気がする。

 

 

Act 4

計画成功に喜ぶジェフとその友達に、今回の犯罪が「相互確証破壊」となる事をバラすジミー。別件で何かあった時にも取引材料になりそうで、危うい感じはする。

「I am not a friend.」はなかなか沁みるセリフ。もはやジミーにはマルコも、キムも、ヒューエル・パトリックも居ないのだ。

「Say it.」 はS5Ep01でのジェフのセリフのコールバック。立場の逆転も。

マリオンがアルバカーキに居た頃のジェフについて言うセリフは、そのままジミー/ソウルにも当てはまる。

 

最後、モールで派手な柄のシャツとネクタイを合わせてみるのは「ソウル・グッドマン」への憧憬だろう。それをそのまま店にかけっぱなしで出てくるのは、「ソウル・グッドマン」への訣別なのか否か?初見時はただ面倒だっただけだろうと思っていたが、見返してみると訣別と取れる表情にしか見えない気もする。前回のレストランでのガスの件といい、表情から勘定を汲み取るのが下手だなぁと泣けてくる。

 

 

今後について

ジェフに知らないふりをしろ(Gene Takavic. You never heard of him.)と言ったのに、マリオンには口止めできない。ニッピーを忘れていたのも油断の暗示。この辺りが伏線になるのかならないのか。流石にもうジェフ出す尺は無いのでは?というメタな予想もできるがさて。

 

今後について重要な手がかりとなるタイムラインの整理をしておこう。
Breaking Badでソウル・グッドマンが人消し屋で消えたのがBrBaS5Ep15で、2010年3月下旬。

フランチェスカに頼んだ電話の件は「11月12日午後3時」。年指定をしていないので、これは2010年を指すのだろうというのが定説。そしてBreaking Badの最終回は2010年の9/4~7だ*3

一方、聞くところによれば本エピソードは2010年10月半ばの出来事だそうだ。

 

 

ジーン・タカヴィクが懐かしむのは「ソウル・グッドマン」で、それもBreakingBad時代のソウル・グッドマン色が強い。S1Ep01で見ているのはソウル・グッドマンのTVCMだし、今回のラストのシャツ・ネクタイもそちら側。

キムと過ごした時間ではっきりと自ら望んで「ソウル・グッドマン」になったのはS5以降。事務所の非常用持ち出し箱にサフィロ・アネホのボトルストッパーを入れておかなかった理由は?キムの持ち物だった風景画を持っていたのは惰性だったのかそれともキムへの未練か?

タイトルコールで流れる映像が全て「Breaking Bad」時代である*4事は何かを暗示するのか?暗示ではないのか?

 

そして、ジーン・タカヴィクの皮を被ったジミーの中にキムを想う気持ちは残っているのか?

 

個人的にはキムと再会して、背負うものはあれど二人でなんとか暮らしていくENDであってほしい。しかし、自分がやってしまった事と向き合う気が無いと、その方向には進まない気がする。マリオンのアルバカーキ時代のジェフへのセリフと、最後のシャツとネクタイがその方向の描写であれば、と願わざるを得ない。

 

 

書いてみて思ったが、やはり前回までのスタイルの方がまとまりが良い気がする。次からは戻そう。

 

 

追記

フランクがモニタから背を向けてシナボンを食べる誘導は後ろのテーブルにシナモンロールを置いた事でやっているのかな?

 

ジェフと友人は、S4Ep6 piñataで脅したチンピラを思い出させる。直接的な危害はないが、リスク対策。

 

フランクへの演説だが、「My parents are dead. My Brother...」の後の長い間、そして「My brother is dead. I have no wife... no kids... no friends.」これが単なるごまかしの為の時間稼ぎだけではなく、自分への語り掛けになっているのはS4Ep10の、奨学金の対象とならなかった万引き歴のある少女への演説へのコールバックである事は既に書いたが……書いたよな?と確認したら書いてない。何故?誤って消したのか?とにかく、このセリフと、その後のチャックを思わせる「What's the point」。これが部屋を出てから監視カメラの死角で安堵した後に、何か考えていた内容なのではないか?

そしてそれを強化するのがマリオンが語った、ジミーにも当てはまるアルバカーキ時代のジェフの話。

派手なシャツとネクタイを合わせてみて、「ソウル・グッドマン」への憧憬を募らせた後、それをラックに掛けて立ち去るまでの間に思い出した内容なのでは?

 

放送当日、ふせったーに書いた最初の感想*5では「自分がやってしまった事と向き合う気が無いと、ハッピーエンド方向に進むことはなさそうだ」とかき、「向き合う気はなさそうだ」と思っていたのだが、見返すうちに「向き合う気になったんだ」と真逆になってしまった。

多分、裏庭でジェフに窃盗持ちかけたところで決めつけてしまってたのが固定観念になってたんだなぁ。

 

それから迷子犬ニッピーについて聞かれて答えた「So, after all that, a happy ending.」。この、本シリーズBetter Call Saulの終わり方の示唆「かもしれない」セリフを何の気なしに聞き流してしまってた自分が本当に恥ずかしい……

 

エピソードをまたぐ繋がりに夢中になりすぎて、エピソード内の繋がりに気づけなかった気がする。ここまではっきり描かれてたんだなぁ、と。ジェフやマリオンの再登場も無い気がする。

 

さらに最後ランチに出かけた後のシーンを最後まで見てみると、盗みがバレなかった事への安堵、だからなだってんだ(What's the point)?、からシャツ・ネクタイを見てソウル・グッドマンを懐かしんで、鏡の前でキョロキョロと他人の目をうかがう「逃亡者」、そしてそれをラックに掛ける前の溜息と思案。一言のセリフも無いのに全てがつながった気がしてぞっとした。Bob Odenkirk凄いわ。

 

 

こういうみかえす事による解釈の変化は週一配信でじっくり味わえるからこそで、一挙配信・ビンジウォッチだと変化する暇もなく答えを知ってしまう。

ビンジウォッチも嫌いではないし、サブスクで配信されている過去作ならしない理由も無い。

でも、こんな得難い経験をさせてくれるBetter Call Saulを、本国からわずかの遅れで週一配信してくれる事に、本当にありがたさを感じてしまう。

Better Call Saul キムの、ジミーとの化学反応 S5Ep10まで (ネタバレ)

【注意】本エントリには、Better Call Saulのネタバレが含まれる。Better Call SaulのS6Ep09まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。自分で気づきたいという人にも勿論推奨しない。

 

 

S6Ep09でキムはジミーとの関係について、「別々ならいいけど、一緒に居ると毒になる」と言った。これまでの、「キムが『ジミーと一緒』でなければ踏み込まなかっただろう」言動、ジミーとキムとの間におきる「化学反応」イベントについて、S1からS5終了までを、キムの視点からピックアップしてみたい。また、キャラクター解釈の一つの鍵となる、ジミーとの性行為が行われるタイミングについても強調表示しておいた。

まとめていってる間に気が付いたのだが、キムがジミー以外の男と親密にしている場面が全く無い以上、「ジミーと一緒でなければ」という仮定を比較検証する事ができない。各場面でジミー以外でもありだと思うか否か、一般的にはどう思われているのだろうと気になる所ではある。

「余談」部はすこし話題がそれているので、興味が無ければ読み飛ばして頂きたい。

 

キム・チャック・ハワードあたりの縦軸まとめはいつかやりたいなぁと思いつつ出来てなかったが、キムに関しては丁度いいタイミングなのかもしれない。

 

直接は関係無いコールバックへの言及をするのは、本ブログを書く最大の動機なので許してほしい。

 

 

Season1

ハワードへの反抗

ジミーがサンドパイパーの詐欺的な運営に気づき、チャックと一緒に巨額の賠償金が見込める集団訴訟に持ち込んだ。ハワードはジミーに最終和解金の20%を提示するだけで、案件への関与を認めず、それなら案件を潰すというジミーにも取り合わなかった。

 

あまりに理解しがたい態度なので、キムはなぜジミーに部屋を与えないのか、ハワードに聞きに行く。「もう決まったことだ」といわれても「でもなぜ?」と聞き返し、「パートナーで決めた事だから君には関係無い」といわれても「関係あるわ、友達だから」と引き下がらない。「やる事や言い方に問題はあっても、いい弁護士よ」と説得を試みる。そしてハワードに「君が口を出す問題じゃない。次からは黙ってろ、聞く気も無い」(意訳)とまで言われてしまう。直後、思い直したハワードに事実を教えてもらいはするのだが。

 

ジミー以外であれば、最初の「もう決まったことだ」で諦めたか、そもそも理由を聞きに行かなかったかもしれない。同じように親密な相手が居れば、これと全く同じ態度を取ったかもしれない。

 

 

Season2

ケンに高額飲み代を奢らせた事

Ep01。弁護士を辞めると言い出したジミーを心配して、説得のためにホテルに駆け付けるキム。プールからホテルのバーに移動して説得を始めるのだが、ジミーの決意は揺るがず、大声でイキり散らしていたケンを、嘘の遺産の運用を任せるていで飲み代を奢らせる。1ショット$50のサフィロ・アネホを1本あけて、勘定を見たケンを仰天させたやつだ。この時記念にと貰った特徴的なボトルストッパーを、キムはずっと大切にしてきた。

 

ジミーが最初にケンに話しかけた時、キムの表情は固く、テーブル席にうつって名前を聞かれて態度を決め、話に乗る事にしたように描かれている。ジミーが居ないキムならばここで話に乗ってタダ飲みをしようなんて思わなかっただろう。実際、この直前にジミーが偽名でタダ飲みしようとした事をとがめている。そもそもこんな寸借詐欺を実行に移すような人との深い付き合いは、ジミー以外では考えにくいのでは。そもそもキムのプライベートは殆ど描かれず、同僚たちやかろうじてメサ・ヴェルデの法律顧問であるペイジとの関係の良さだけが描かれているだけではあるが。

 

(主に)酒を飲む場所での寸借詐欺はマルコとやっていた事へのコールバック。

また、この夜キムのアパートで恐らく初めての性行為が行われた

 

エンジニア、デイルから小切手をだまし取る

Ep06。Forque Kitchen and Barのカウンターで一人モスコミュールを飲むキム。シュワイカートからの誘いに心揺れていると、バーテンダーから奢りの仲介が。相手はネイビースーツのナイスミドルなエンジニア、デイルだが、キムは直前にこの男が緑の服を着て、左手薬指に指輪をはめた女性と別れ際にキスをしているのを目撃している。

表面上にこやかに対応するキムは電話でサンタフェのオフィスで働いてるジミーに「獲物がかかった、今すぐ来て」と電話をする。ジミーは勿論飛んでくる。

 

サンタフェ アルバカーキ 距離」と入れて検索するとおよそ100kmとでる。この距離を仕事中に呼んでしまうキムのこの行為は、ジミー相手以外では考えられない逸脱ではなかろうか。しかもEp01では、ジミーが逆に同じことをやろうとして留守電にメッセージまで残したが、結局思い直した事をキムがやっているのだ。この事とケンを騙した事との二重のコールバックになっている。この立場の逆転も良く使われるスキームで、一度纏めてみたい。

結局だまし取った小切手は換金せずにとっておく事にしたようで、実害はあったとしても飲み代くらいだろう。いつ換金されるか分からない不安は不貞の代償というわけだ。

 

ジミーはキムのアパートでこの翌朝を迎え、性行為があった事をほのめかしている。

 

HMM退所時のメサ・ヴェルデ案件(added 20220828)

Ep08 A1冒頭で、独立を決めたジミーとキムはホットドッグ屋でお祝いをしている。夜の間にハワードの机の上に辞表を置いて、メサ・ヴェルデやほかのクライアントを引き抜くんだ、というジミーにキムは「助言はありがたいけど、それぞれのやり方でやるはず。私にとって正しいやり方を見つけなきゃ」と断る。明確に否定したわけではないが、これはメサ・ヴェルデをHHMからは奪わないという宣言だとみる事も出来る。

そうだとすると、キムは翌朝ハワードに辞表を渡した直後、メサ・ヴェルデとすぐ連絡を取ろうとしたハワードの様子をみて、慌ててペイジに連絡し、メサ・ヴェルデを確保しようとしている。

もし、最初はメサ・ヴェルデを持ってゆくつもりがなかったとすれば、これもジミーとの化学反応になるだろう。

 

住所書換の証拠隠滅の唆し

Ep09。銀行委員会の聴聞会でジミーが書き換えた住所によりチャックは大失態を晒してしまう。この事でメサ・ヴェルデは業務拡大案件をHHMから引き揚げてキムに依頼する事になる。書類を一緒に取りに来たジミーとキム相手に、チャックは「ジミーが住所を書き換えたのだ」と糾弾するが、ジミーは勿論キムまで「ただ間違えただけなのでは?」と助け船を出す。

これは勿論キムはジミーがやったと確信してそれでも助け船を出したのだ。直後ジミーのEsteemの中でジミーを叩くことからも明らかだ。そして、その晩、ベッドで眠ろうとするジミーに「相手の言い分のわずかな隙すら見逃さない」と、チャックの有能さを強調する事で証拠隠滅を促すのだ。そして自分の隙に気づいたジミーはコピー屋へ走り、そこに一足先に来ていたエルネスト(HHMの従業員、メールルームでの同僚)を目撃する。

証拠隠滅を直接指示するのではなく、ジミーに自分で気づかせる言い方をした事で、「キムはジミーを利用してるだけなのでは?」なんて憶測まで産んだシーンだ。

これもジミーでなければ絶対にしなかった逸脱だろう。

 

また、この直前のエピソードEp08からジミーとキムはキムのアパートで同棲を始めたと思われる。

 

 

Season3

ジミーの弁護

Ep01では、チャックの引退を思いとどまらせた事を聞いたうえで、詳細については「二度と聞きたくない、と言ったことかも」といわれ、「ならいいわ」と知る事を拒否する。

Ep02ではエルネストからジミーの危機を聞いたキムは「1ドル出して」と、ジミーの代理人になる(実際受け取ったのは20ドル紙幣だが)。これはBreaking Badでの初登場エピソードで、荒野に拉致されたソウルがウォルターとジェシーに言った事と同じ、コールバック。

Ep03では、エルネストから事情を聴いて慌てて裁判所に駆け付け、罪状認否でジミーの代理人だと関わろうとするのだが、ジミー本人が拒否して引き下がる。しかし、このエピソードの最後の場面で「どうしてこんな男に?(This guy? Seriously?)」「サンクコストの誤謬ってやつよ(Let's just call it the fallacy of sunk costs.)」、と結局代理人を引き受ける事になる。

このジミーの弁護にしても、嘘だと分かっている事を否定する弁護は、ジミー以外だとキムは引き受けなかったか、そもそもそういう人物とは交流しなかったのではなかろうか。受けたとしても、動揺させるためにレベッカを利用したり、ヒューエルを使ってチャックのポケットにフル充電のバッテリーを忍ばせるという荒業はつかわなかったのでは?

 

余談「やっぱりやる」案件

こういう風に、一度やらない事にしておいてやっぱりやる、となる展開はBreaking BadでもBetter Call Saulでも多用されており(ウォルターの化学療法や、ガスとの仕事、下で触れるガトウッド石油案件や建設図面の差替え案件等)、機会があればまとめてみたい。

 

日本語訳についての余談

この「Let's just call it the fallacy of sunk costs.」というセリフは、日本語字幕では「簡単にはあきらめない」となっている(吹替は「乗り掛かった舟ってやつよ」。上での例は拙訳)。このエピソードの邦題は「乗り掛かった舟」で、原題は「Sunk Costs」。大事なセリフなのに字幕でわざわざこの言葉をはずす意味が分からない。原語ではこのセリフとリンクしているのに。

しかも、この「fallacy of sunk costs」はS2Ep01 ホテルのバーで、ジミーが弁護士を辞める言い訳として使った言葉で、そちらでは吹替字幕共に「埋没費用」で統一されている。わざわざコールバック・リンクを外すような真似はせず、全て「埋没費用」で統一すべきだと思う。個人的に一番許せないエピソード邦題だ。

S6Ep09の「Fun and Games(楽しい駆け引き)」については、批判の向きもあるが、個人的には「駆け引き」をストレートに「ゲーム」にしておけば良かったんじゃないか程度に思っている。ケイリーの玩具のMarble Runは「駆け引き」ではないからだ*1

 

ガトウッド石油案件の受任

Ep09では、ガトウッド案件の(恐らく)書類を会社へ宅配便で送るようにフランチェスカに頼むのだが、腰を痛めてまで折半の約束をした経費をかき集めてきたジミーを見てそれを取りやめる。これはジミーからすれば「ノーサンキュー」な行動ではあったのだろう。しかし、キムからすればジミーが腰が痛いと寝転んでる姿(ギターを弾いてはいるが)を見て少しでも助けになれば、お金の余裕があれば、と思ったのだろう。

これを他の事務所に回さず自分で引き受けた結果、居眠り運転で利き腕を折るはめになってしまう。この件もジミーの弁護士資格停止も、考えてみればジミーとキムが一緒に居る事で産まれる毒によるものだ。この毒は彼ら自身にも危害を与えていたのだ。

 

 

Season4

ハワード断罪

Ep02。キムは前のエピソードでハワードがキム達のアパートを訪れ、チャックの死は自殺ではないかといった事を責め立てる。レベッカには話してないんでしょう?と。

火事のにあった家の残骸から遺品を選べ、ジミーには雀の涙ほどの金額しか残さないのに学生に渡す奨学金基金の委員になれ、死んでまで糞ったれ!と伝えるための手紙を渡せ。そういうのか?とハワードを断罪する。

 

キムの怒りについては十分に共感できるのだが、果たしてこれらは全て断罪されるべきものなのだろうか。「忘れてない事を示すための最低限の金額」の現金相続や、奨学金基金の委員にすること、手紙を渡す事については、悪いのはチャックであり、代理人でしかないハワードは責められる筋合いは薄いのではなかろうか。これまでずっとジミーではなくチャックの肩を持っていた事は確かだ。しかしこれは立場の違いによるもので、相当割合は言いがかりに近く、ジミーへの想いがなければここまでの怒りは見せなかったのではないか。

 

キムは知る機会が無かったが、自殺の可能性を伝えた事については、ハワードも無神経な所があったが、その大本の原因を作ったのは、保険会社に弁護保険の査定に影響するネタをタレこんだジミー自身でもあった。

 

Ep03の最期では、ここで渡された手紙をジミーが読み上げ、聞いていたキムは感極まって嗚咽し、一人寝室に閉じこもってしまう。

 

手紙の解釈についての余談

New York TimesでのS4Ep03のDavid SegalによるRecap*2で、「この手紙は明らかにキムが書いたもので、オリジナルは捨てた」と書いてあってぶっとんだ。

Kim Wexler. She has clearly ditched the letter that Charles left for Jimmy and turned it into a warm and sentimental farewell, filled with the sort of brotherly love so anathema to Chuck. 

他所の媒体でもはこれに触れているのがあって、「あまりあり得ない」*3と評されていた。この後のエピソードでこの事を回収してあれば、見事な洞察だ!となったのだろうが、そうはならなかった。プロのライターでもこういうとんでもないミスをするんだな、と少し面白かったお話。

 

ヒューエルの弁護

Ep07。暴漢だと思い込んで警官に暴行してしまい、塀の中に入る位なら逃げてしまおうとするヒューエル。弁護士資格停止中のジミーは自ら弁護できず、キムを頼る。路上で使い捨て携帯を売っていた事に驚きつつも、ジミーの頼みとあってやる事にしたキム。しかし、最初は汚い方法は使わず、真っ当な方法でやるつもりだった。

 

ところが、担当検事のスザンヌとの会話でジミーを貶されてキムは頭に血が上ってしまう。ジミーを「scumbag(ゲス)」扱いしたのだ。

And our only witness is a scumbag, disbarred lawyer...

...who peddles drop phones to criminals.

Ep07の37分20秒あたり。この「scumbag」でキムの目の色が変わる様子がド迫力なのでぜひ見かえしてみてほしい。

 

ドヤ顔するスザンヌに「知らない癖に」と捨て台詞を吐くキム。直後に会ったジミーは、合法的なやり方では服役は免れそうにないと聞いて「俺のやり方で」と聞いて立ち去るのだが、キムは文具を買い漁り、ジミーに「もっといい手がある」と告げる。Ep08でやった大掛かりなヒューエル厳刑のための「詐欺」だ。これはS2Ep02でジミーがやった証拠捏造について「二度とそんな話は聞きたくない」とキム自身が言った*4、まさに「そんな話」で、ジミーと居なければ起き得なかった話だ。

 

また、この事件完結直後に朝2人が裸でベッドで抱き合うシーンがあり、3度目の性行為の示唆が行われる

 

日本語訳についての余談

この「scumbag」のシーン、字幕のほうはちゃんと「ゲス」という言葉が入っていて良いのだが、吹替のほうでは「唯一の目撃者は 犯罪者にプリペイド携帯を売りさばいている 資格停止中の弁護士よ」となって、「scumbag」の訳が消えてしまっている。しかも、語順を変えたために、キムの目の色が変わる瞬間が「犯罪者にプリペイド」あたりになってしまっていて、完全に翻訳過程のミスとしか言いようがない映像になってしまっている。

さらにさらに、このscumbagの件はS6Ep03で直接的な言及がされていて、「以前彼を ゲスな弁護士と呼んだわね」という吹替がなされている。ゲスって呼んでないのに!

余談についての余談

このキムの蒸し返しの直後に、スザンヌが「確かにソウルとの間にわだかまりはあった。でも、派手に振る舞っていても弁護士や人としての誇りを忘れてないとも信じてる」と言うところが、個人的に本当に大好きで、初見の時も見返す時も涙ぐんでしまう。このセリフには理由があって、最初にゲス呼ばわりした後、S5Ep02でジミー(既に屋号はソウルだが)とスザンヌはエレベーターの故障で2人だけで閉じ込められてしまい、その間にお互いが抱えている案件について交渉して、少し打ち解けるのだ。しかしこの故障はジミーの仕掛けで、管理人を買収したためでもある。ジミーではなくて、スザンヌの人を信じる姿に感動して泣けてしまうのだ。

 

建築図面の差し替え

Ep07。ヒューエルの件が完了した直後、メサ・ヴェルデとの会議で、ケヴィンが建設計画提出済みの支店の建物設計を、派手で上手くいった他の支店と同じものにしたいと言い出す。一度は無理だと結論付けたのに、キムは自室でジミーとケンをハメた思い出の「サフィロ・アネホのボトルストッパー」を取り出して眺める。そしてジミーに会いに行き、「あんないくつもの法を犯すような危険な真似は二度としない」と言うジミーに「もう一度やりましょ」と、違法行為を持ちかけるのだ。

個人的な話だが、この時の唖然としたジミーの表情と、逆に挑発的なキムの表情ほんと大好きでたまらない。

 

弁護士資格停止1年延長の取消工作

Ep09。S&Cの駐車場でジミーと喧嘩した後、アパートで「まだ弁護士で居たい?」と聞くキム。返事は「Yeah.」。S2Ep01で、弁護士を辞めると言った事へのコールバック。

そしてEp10では、再審査(appeal hearing。異議申立?)へ向けて、墓前で悲しんだり、読書室への寄付でチャックへの追悼の意を印象付ける手伝いをする。本件はあまり違法性のあるような逸脱ではないが、わざわざこんな事をするのはジミー以外ではあまり考えにくいのではないか。

またまた個人的な話だが、このS4Ep10 Winnerは、S6Ep09 Fun and Gamesが放映されるまで、一番好きなエピソードだった。特にTeaserでジミーからマイクをぶんどって歌うチャックが好きだった。勿論エルネストやジミーの歌、そしてエピソード最後の「It's all good, man」も含めてだが。

 

 

Season5

おとり警官に冷蔵庫を売りつけた依頼人

裁判になれば確実に懲役2年以上になる依頼人がどうしても懲役5か月という圧倒的に得をする取引を飲もうとしない。少し離れた場所でジミーとキムは会話をし、ジミーは「俺が検察役をやってビビらせて取引をのませよう」というが、キムはきっぱり拒否する。しかし、依頼人のもとにもどると、依頼人がジミーが言った通りの筋書きを信じていて、依頼人の利益になるなら、とこの誘導を受け入れてしまう。

直後、階段で鞄を投げだし、無言で逡巡するキムの様子が描かれる。

これはS6Ep01で、検事と刑事相手にうっかりラロの名前を出してしまい、無人の法廷でうなだれるジミーとのコールバックかもしれない。

 

売り家の内見ではしゃぐ

Ep02。ジミーが強引に内見に連れていき、じゃれるうちにキムはシャワーでジミーを濡らしてしまう。不動産業の女性はそんな2人を冷たい目で見送る。

 

トゥクムカリの立ち退き案件

Ep03。本当は「アラバマ物語」の主人公のように、「弱きを助け、強きをくじく」仕事がしたいキム。メサ・ヴェルデのような強者の代理人となり、アッカーのような弱者を長年住んだ家から追い出そうとしてる現実に気づいてしまう。

そのうっぷんを晴らすためか、アパートのベランダからビールの瓶を投げ捨ててしまうキム。向かいのアパートの電気がいくつかつき、扉が開く音がすると2人は笑い転げながら部屋へ戻る。

 

Ep04。昨日投げ捨てた瓶の破片を律義に掃除するキム。ジミーは勿論そんなことはしない。

 

(added 20220909) Ep03の最後とEp04の最初の間に、ジミーとキムが性行為していた可能性について漏れていた。Ep04 A1冒頭、ジミーが全裸、キムも腰から下は掛布団で見えないが、恐らく全裸で目覚めるシーンから始まる。

ここはしていたとするのが自然な気がする。ジミーとの不道徳行為の後だからだ。

 

 

法廷にいるジミーに会いに行くと、本当の被告は傍聴席に、偽の被告を被告席につけて審理無効を勝ち取る場面を目撃する。そして、ジミーにアッカーの味方をするように依頼する。

 

Ep05。アッカーの代理人となったジミーとの利益相反を自ら申告してケヴィンを操り、メサ・ヴェルデ代理人を続ける事に成功したキム。

その晩通算4度目の性行為の暗示(一緒にシャワーを浴びる提案)

 

ジミーは様々な引き延ばし工作をするが、ケヴィンは「父に逃げるなと教わった」と強行姿勢をくずさず、ジミーを「low-life shyster(下衆野郎の悪徳弁護士)」と呼んでしまう。スザンヌの「Scumbag」の時のような露骨な反応は見せないで、なんとか怒りを抑えこんでいるような様子。

その晩、まだやれる事があると匂わすジミーを問い詰め、「汚い手で個人攻撃、しかも危険な手」がある事を聞き出し、それをやるという。

本件も逸脱のトリガーになったのはジミーへの侮辱だろう。

 

最終的にこの件は、キムが中止しようと言って了解したのに、ジミーが暴走して結局はアッカー有利に事が運んでしまい、クライアントであるメサ・ヴェルデに損害を出す事になってしまった。

 

シュワイカートへの激昂

トゥクムカリ案件に付随する出来事だが、本件から外れた方が良いと提案するシュワイカート相手に、事務所のメンバーたちに見えるところで激昂して怒鳴りつけてしまう。「恋人が偶然相手方の代理人になったのが信じられない」と言った事でキレたように見える。

 

ジミーとの結婚

Ep07。なんと「お互いに不利な証言をしなくて済む」という理由で結婚してしまう二人。ジミーとの出会いが無かった世界があったとして、こんな形でキムが結婚する事がどれくらいあり得るのか……。

 

メサ・ヴェルデへの謝罪の場での反論

Ep07。結果的にジミー(ソウル)に負け、損害が大きかった事をシュワイカートと一緒に謝罪に出向く。キム達の退出間際にケヴィンは「あいつ、マッギルだかグッドマンだかいったが、もっとましな相手を選べ」と捨て台詞を吐き、キムは露骨ではない程度に憮然とする。

退出後、「言いたい事は言う」と思い直してケヴィンのもとにもどり、キム達が提案したのにケヴィンが却下した事を列挙し、もう少し人の意見を聞くべきだと諫言する。

結果は木曜日、と言う事だが、その晩アパートに帰った2人は5度目の性行為をする。事後描写だったこれまでと違い、「おっぱじめる」ところのかなり露骨な描写。

 

代理人だと偽ってのラロとの接見

Ep08。こういう正規ではない手順を正当化するために結婚したわけだ。しかし、ラロには相手にされない。しぶとく生き残る奴だ、とジミーをゴキブリに例えるが、ここではあまり反応が無い。ジミーの生死の話でそれどころではないからだろうか。

 

S&Cを退職

Ep09。休みをキャンセルしてS&Cに出社したキムは、メサ・ヴェルデの仕事を始める。ボイスメモを取りながら、机の後ろに並んだメサ・ヴェルデの記念盾と、額装したプロボノ依頼人から貰った手紙・写真を見る。

ボイスメモが滞りはじめ、何かを決断したように中止して席を立って、シュワイカートに辞職を申し出るキム。勿論シュワイカートはじめ頭の上にクエスチョンマークが出ているかのようだ。

HHMを辞めて独立開業した時は、内部で干されたりいじめのような待遇を受けていたので理解できる部分はあるが、しかしこれもジミーをD&Mに推した事がきっかけだ。

一方でパートナートラックに乗っていたD&Mを辞めようとするのも、恐らくジミーとの交流がなければキムはしなかった事ではなかろうか。ジミーと出会わなかったキムなら、社会的弱者を弁護する事と大企業の顧問をする事を両立していたように思える。

 

ラロの追及への介入

Ep09。ジミーの乗車だったEsteemが、弾痕つきで溝に落とされていた件について、怪しいと思ったラロはジミーに何度も話を繰り返させる。ラロのしつこさに押され、「そんなに疑うなら報酬の金を持って帰れ」と言ってしまう。

報酬の金が入った鞄には、穴の開いたトラベルマグが入っている事を知っているキムは、ここで激昂し「信用できる部下もいない癖に、苦労して仕事をしたジミーを責めるな」と援護する。

ラロはこの後、一人で国境を超える予定だったが、このキムの「信用できる部下も居ない癖に」という言葉が気になったのか、予定を変更してナチョもメキシコへ連れ帰る事にする。そしてナチョは、ガスのラロ邸襲撃計画に足りなかった「内通者」として利用され、結果S6Ep03での死に至る。

ナチョの運命は元々厳しいものではあったが、ジミーとキムは、ナチョを死に導いた一因でもあるとも言えるだろう。

 

また、このラロの嘘追及のしつこさは、形は違うがトゥコのそれ(目を睨んでの「ウソ発見器」S2Ep04)と同根で、サラマンカの手口であり、コールバックなのかもしれない。

 

また、S6Ep09の感想エントリ*5でも触れたが、HHMでの告別式にてシェリルに詰められたジミーに助け舟を出すキムは、これへのコールバックだ。キムはジミーの窮地を見逃せない。ジミーがキムの窮地を見逃せない様に。

 

ハワードの忠告を一笑に付す

Ep10。裁判所でハワードと偶然出会い、S&Cを辞めた事を話すと、ハワードは個人的に話をしたいといい、空き法廷で話をする。ボウリングの球で愛車を破壊された事や、会食中に娼婦を送り込まれて体面を潰された事をハワードが伝えても、キムは笑って相手にしない。

後のジミーとの会話で、ハワードが言った事を嘘だと思ったわけではなく、ハワードはそれくらいやられて当然だと言っている。恐らくこれは本心なのだろう。しかし、いくらハワードからの嫌がらせに我慢がならなかったからといって、これを正当化するキムには違和感があるし、このあたりからキムの言動を不可解だとみなす声がネット上でも増えてきたように記憶している。

これもジミーとの関係のせいだと考えれば納得も行く。

 

ここでジミーの影響の指摘、ジミーをまともじゃない、理性的な行動が出来ないと評するハワードの言は客観的には正しいのだろうが、キムには届かない。これはS6Ep07でキムのアパートを訪れて、ジミーとキムを評したハワードの言とも一致する、コールバックだろう。

 

ホテル滞在を楽しむ事

朝はジミーが今日はホテルでゆっくりしよう、キムは用心しながら普段と同じ暮らしをするしかないといった。しかし、ラロの死をマイクが保証してからは逆に、ジミーが家に帰ろうと、キムがホテルでの滞在を楽しもうと提案する。立場の逆転が見られる。

ちなみに朝も夜もキムの案が通っている。

 

ハワードを嵌める妄想

キムの提案通り、ホテルのルームサービスで贅沢な夕食を取る二人。キムは「ハワードはやり込められて当然」と言い、ハワードを酷い目にあわせる妄想を、仮定の話としていくつも続ける。

ここで6度目の性行為。前回から少し後退して、二人が布団をかぶりながら先ほどの「仮定の話」の続きをしている。

ここでS6前半のキモとなる、ハワードを陥れてサンドパイパーの和解金をすぐに手に入れ、それを元手に無料弁護をするというアイデアが初めて出る。最初は「言ってみただけよ、忘れて」というが、その後もこの妄想が実現したらどうなるか、という仮定の話は続き、ジミーから「余程の悪事」というこのエピソードタイトルが回収される。ジミーですら「人生を破壊する、やりすぎだ」というのに、キムは「1人の弁護士のただのキャリア上のつまづき」とのめりこむ。

そして「ふざけてるだけなんだろ?」と不安げに確認するジミーに両手を銃に見立ててバキュンバキュンと撃つ仕草をするキム。S6Ep09放映まで、自分がS4Ep10の次、2番目に好きだったシーン・エピソードだ。

 

 

まとめ

こうしてキムの、ジミーとの関係についてのイベントを纏めて見ると、S6Ep09で語られた「別々ならいいけど、一緒に居ると毒になる」という発言の説得力が格段に増すのではなかろうか。

 

ジミーとの性行為についても、逸脱との関連が非常に強い事が見て取れる。順番にどのタイミングで起きたのか纏めると、

  1. ケンに高額飲み代を奢らせた事
  2. エンジニア、デイルから小切手をだまし取る
  3. ヒューエルの弁護
  4. 「トゥクムカリの立ち退き案件」での利益相反を回避した直後
  5. メサ・ヴェルデへの謝罪の場での反論。これはトゥクムカリ案件のキム目線での成功後でもある。
  6. 「ハワードを嵌める妄想」の最中
  7. (本記事の範囲外)S6Ep07 サンドパイパー案件の和解が成立した瞬間
  8. (added 20220909, 本当は3と4の間) ベランダからビール瓶を投げた後

となる。本当に楽しかったんだな。

 

法の番人としてのキムの逸脱は、S2の酒場での寸借詐欺から始まる。それは住所書換の証拠隠滅の唆し、S3のジミーの弁護、S4でのヒューエルの弁護や建築図面の差し替え、そしてS5のトゥクムカリの立ち退き案件、S&Cを退職、ハワードを嵌める妄想とどんどんエスカレートしていく。

そしてS5Ep10の二丁指拳銃や、S6Ep02最後、腕組みをしてジミーを待つキムに繋がる。「ジミー・モーガン・マッギル」のBreaking Badストーリーだと思っていたBetter Call Saulだったが、「キム・ウェクスラー」のBreaking Badストーリーとしての色の方が濃いとまで、S5完結時やS6前半では思わされた。

そして「そのBreaking Badがジミーと居る事による"化学反応"である事を自覚したキム」を失った事によって、「ジミー・モーガン・マッギル」のBreaking Badが完成する。

 

なんでこんなストーリーが作れるんだろう。

 

Better Call Saul S6Ep09 感想 (含: ネタバレ)

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep09まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

例によって、また馬鹿長くなってしまった。特に「纏まらないまとめ」以降は読む必要はないだろう。

以前、「Better Call Saul Season6前半における繰り返し演出・自己言及」というタイトルでエントリを書いたのだが、「繰り返し演出・自己言及」について「コールバック(演出)」という言葉を見かけたので、文字数的にも優しいこちらの言葉を使っていくことにする。

一部分書き掛けの所があって、もう一つ書き忘れていたところがあったので、(追加)(追加終わり)で括っておいた。もし21日中に見て追加部をみたければ「(追加)」で検索してみて。

 

Teaser

モンタージュシーンは「It's the perfect way to end a perfect day.」と歌う声だけ(では無いがほぼこれ)が響き、セリフはない。曲はHarry Nilsson「Perfect Day」のカバー。

 

スプリットモールのソウル・グッドマン事務所に看板が取り付けられるシーンから始まる、シーンのつなぎ方が本当に完璧だ。先のエピソードでマイクに指示されたように、ジミーとキムは昨夜起きた悲劇などなかったようにこれまでと変わらぬ日常を過ごし、マイクは部下たちとキムのアパートを「掃除」する様子が、10シーン描かれる。それぞれのシーンの終点と次のシーンの始点が10のモチーフによって接続され、最後にキムとジミーがアパートに帰ってくるところでモンタージュシーンと歌が終わる。

 

二人は「何も起きなかった」かのような部屋の様子を眺めるが、「なかった事にされた」事やその経緯が二人とって重大な意味を持つ事は表情から明らかだ。

 

このモンタージュシーンは脚本家のAnn Cherkisによって12~16ページにわたって書かれていたそうだ*1。この、本エピソードの監督であるMichael Morrisのインタビュー記事、どこからどこまでも面白いので是非読んでいただきたい。

 

コールバック演出

  • 画面分割こそないが、男声・女声のデュエットで、S4Ep07 Something Stupid、S5Ep09 Bad choice road(こちらはハミングだけだが)のTeaserで行われたモンタージュを思い出す。
  • ジミーが事務所で首の固定具を客につけさせるのはBrBaS3Ep04へのコールバック。常識的に考えて弁護士が用意しておくものではないので、むち打ち詐欺のための小道具なのだろうか。S2Ep10での入院直後のチャックもこの固定具を付けている。また、BrBaS1Ep06での、トゥコにやられた入院中のジェシーも。
  • 街の光を見下ろす高台で、処分すべきものを燃やすマイク。ヴェルナー・チーグラーと「おさらば」した場所を思わせる。
  • ホテルのベッドで、ジミーとキムが互いに背を向けてる時にジミーが語った「ある日ふと『忘れていた、記憶が薄まっていた』事に気づく」というエピソードは、S5Ep09でマイクがジミーに語った事である。そしてマイクはその話を義理の娘ステイシーから、愛する人を失った人達の自助グループで聞いた。
  • 上記エピソードのように、「ジミーが他者に言われた事を内面化して別の人に話す」事はこれまでも行われてきた。恐らく最初はS1でキムに言われた「高齢者法を専門にしたら?」という提案を、兄チャックに「高齢者法を専門にしようと思っている」と言ったところだ。S5Ep10では、サンドパイパー案件について「今和解すれば、お年寄りたちは生きている間にお金がもらえる」とキムが言った事についても、ジミーはS6Ep03でヒューエルに言っている。
  • ジミーがマイクから聞いた話を受け売りでキムに話すことは、S5Ep09でキムがS&Cを辞めた時にもやっている。「悪い選択の道」の下りで、これもコールバック。(added 20220724)
  • また、この話はキムに聞かせるためでありながら、自分にも言い聞かせている。人に語り掛けながら、実は自分にも語り掛けているという構図は、S4Ep10で万引き歴がある奨学金候補の少女にした演説もそうだ。

 

Act 1

ドン・エラディオ邸

ガスがネクタイをしていないのは何故なのだろう?

ガスが呼ばれたのは、ヘクターが「最後の足掻き」をするためだった。双子はヘクターから1字ずつ確認し、ガスを追及するための文章を完成させる。双子にはそれだけの知恵があったのかと、少しびっくりした。トゥコよりは頭が使えるのだろう。

 

ガスは様々な状況証拠が偽りの潔白を証明する事を確信していて、余計な言い訳をしない。事はガスの筋書き通り運び、Breaking Badでのカルテルとガスの関係が完成する。揺らめく照明のオレンジの炎に対応して、エラディオのシャツの模様が「青く」発光するようにすら見えるのが終始印象的だった。青は力の色か。

 

話が終わり、エラディオとガスがすれ違う時にガスの眼鏡に揺れる炎が反射し、復讐に燃えるガスが暗示される。エラディオもガスの復讐心は承知だが、少し「なら」許してやると釘を刺す。

 

ガス邸

帰宅し、雨戸を開け、光を入れるガス。ラロを始末し、カルテルを騙しきったのに笑顔は見せない。

地下の洗濯室に繋がる秘密の通路前で、本日の経緯報告するマイク。建設再開はいつになるのか尋ねるガスに一瞬眉をひそめるマイクが印象的だ。「金の事しか頭に無いのか?」とでも思っているのだろうか?

影武者も居ないのに、地下道を通って隣家にいくのか?とおもいきや、ドアをしめ、自宅にとどまるガス。その直前のマイクとのアイコンタクトと、電気を消すマイクの影が物語るものとは?

 

コールバック演出

  • 最後にプールの中から揺らめく水面越しにガスの姿が映る。これはS3Ep04 Teaser最後のコールバックだ。そこで映ったのはガスではなく、今回コケにされたヘクターだが。
  • また、この場所はBrBaS4Ep08のフラッシュバックで、ガスのパートナーだったマックスがヘクターに殺されたプールサイドであり、BrBaS4Ep10でドン・エラディオが殺されて浮かんだプールでもある。ガスとカルテル因縁の場所だ。
  • ヘクターがカズンズに運ばれて退席する時の「ベル乱打」。厳密には少し違うのだが、BrBaS2Ep02のエンディングシーンを皆一番強く思い出すのではないか。トゥコがハンクに殺された直後のことだ。もしくは、ヘクターとガスとの因縁に注目すれば、その最期の瞬間であるS4Ep13かもしれない。

 

 

Act 2

レストラン

ガスに蘊蓄語りまくるソムリエ、いくら何でも出しゃばりすぎじゃない?とは思ったが、それなりの縁・前歴がある模様。

完全にカウボーイの恰好をした野蛮な男が、一口だけで突き返した極上のワイン。それを味わって讃辞を送るガス。

ソムリエの「His loss is definitely your gain.」と言う言葉は、ガスとラロの事そのものだ。

 

ガスが「特別な時に開けたい」といった1978年のコート・ロティ。ソムリエを待たずして帰ったガスは、これを味わいにいったのだろう。サラマンカを根絶やしにした後(BrBaS4Ep13 Face Off)では飲めなかった事を考えると、このソムリエは良い事を思い出させたに違いない。

 

……と書いたが、上記段落は完全に自分の読み間違いで、ガスは寧ろ「浮かれている場合じゃない、まだ復讐の相手はたくさん残っている」という事に気づいたんだろう。他人の感想を読み、映像を見返して確かにそうだと確信した。最後の一口を飲んだ後の右眉の下がり方、グラスをスライドさせる強さ・速さ。表情もとても勝利の美酒を、という様子ではなかった。何故みのがしちゃうかな。

 

勘定のお札を十字に配置したのは何か意味があるのか、あちらでは一般的な慣習なのか?

 

 

Act 3

マイク宅

マイクの帰宅シーンから始まり、銃と一緒にナチョの父親マニュエルの偽造IDを隠す。リラックスしてビールを飲みながら野球を見はじめるが、S6Ep01でケイリーが遊んでいたMarble Runを見て偽造IDをまた引っ張りだす。

Marble Runで遊んでいた時にケイリーに言った言葉「高く作りすぎたからビー玉が飛び出てしまうんだ」を思い出したのだろう。悪さが過ぎて死に至ったナチョを、マイクが想起したのは想像に難くない。このケイリーの遊び道具が、タイトルの「Fun and Games」が指すものの一つだ。

 

Fandom Wikiによれば*2、「Fun and Games」が指すものとして候補は2つあり、片方は「つかの間の、取るに足らない、比較的価値のない活動」、もう一つは 「"It's all fun and games until someone loses an eye." という古いことわざ」だという。

「痛い目を見るまではなんでも楽しいものだ」という意味あいの後者は、まさにジミーとキムのFun and Gamesの果てに目どころか命を失ったハワードや、恐らくはそれほど辞める事の難しさを考えずにギャングの世界に足を踏み入れたナチョの事なのだと考える事ができる。

 

何も知らないナチョの父親を憐れんでか、マイクは彼に会いに行く。

 

A-Z Fine Upholstery (ナチョ父の工場)

ナチョの父親マニュエルの工場で、彼はミシンを回している。目を閉じず見開かずのマニュエルの半眼は仏像のようでもある。

マイクはナチョの父親と金網越しに向かいあい、ナチョがもう帰らない事、苦しまずに死んだ事を伝える。悪党の仲間にはなったが、善良な心を持ち、彼らと同じではなかったとも。

そしてサラマンカについても、正義の裁きが下るだろうと言うが、マニュエルは「それは正義ではなく、復讐だ」「ギャングに正義などない」「あんたらは皆同じだ」と返す。自らの立場を甘く見ていた、もしくは忘れていたマイクは、強烈な冷や水を掛けられ立ちすくむ。これは視聴者にも向けたメッセージかもしれない。

 

マイクとマニュエルの2人は共に息子を失った父親だ。

マイクは息子マットを失い、息子を殺した2人の警官を殺して復讐を果たした。そして同じく復讐を目的とするガスにその事を知られ、ガスの復讐に加担する事になった(S5Ep05)。

一方でマニュエルはギャングに正義などないと、きっぱりと復讐を否定する。

この2人を隔てた金網は、刑務所での面会のメタファーだ。塀の中に居るのは勿論……。また、マニュエルの指摘は、マイクの最期(BrBaS5Ep07)をも思い起こさせる。

 

コールバック演出

  • マイク宅物置の床下Stash
  • Marble Run

 

 

Act 4

HHMでの追悼式

駐車場エレベーター前の、ジミーが蹴ってへこませたゴミ箱は交換されている。

ジミーとキムはHHMで開かれたハワードの追悼式に顔を出す。満面の笑みを浮かべる在りし日のハワードの姿がいくつも飾られて、心が痛む。既視感のある写真だなぁ、と思ったらPatric Fabian個人のInstagramからの借用だったようで……

飲み物を入れながらハワードの写真を見つめるジミーは、最初は悲し気な表情。しかし、それは見せかけだけの演技だったのか、踵を返す際には「知った事か」とでもいいたげな口の歪ませ方をする。ハワードの死への責任と向き合う事を放棄しているように見える・思える。

 

ハワードの妻シェリルにお悔やみを伝えにいくと、シェリルからハワードの死について問い詰められる。ハワードは生前、ジミーの嫌がらせについての話をしていたからだ(S6Ep06 A1)。

ジミーは、嫌がらせについてはこれまでの筋書き通り誤魔化す。が、それでも「ドラッグを使っていたなんて信じられない」と、追及を止めようとしないシェリル。ジミーはことあるごとに立ち去ろうとするが、シェリルはそれを許さない。

そこでキムは1年半ほど前に、ハワードが机にむかって頭を下げ、何かを吸っていたのを目撃した事を告白する。勿論これは作り話だ。

 

そして、それでもまだ信じられないシェリルは、クリフに同意を求める。が、ゴルフクラブでの偽ドラッグや、ウェンディをNAMAST3ナンバーのジャガーから放り出すシーンを見ていた・見せつけられていたクリフは積極的にシェリルを支持できない。


そこで作り話とは逆に、シェリルに「寄り添うそぶり」を見せるキム。むろん、これは態度だけである種の誤認誘導、「ガスライティング」だ。ハワードの死で我に返ったキムの倫理観からすれば、本来行えないレベルの酷い所業である。それでもこれを徹底するのは、ジミーとキム二人の安全の為にしなければいけない事だからだ。

シェリルはいたたまれなくなり、その場を去ってしまう。

 

帰り道、HHMの地下駐車場で「これで本当に終わった」「回復を始めよう」というジミーに、何も言わず長いキスをするキム。S1Ep01ではじめての煙草をシェアする様子を見せた駐車場で。そしてキムは一人車に乗り込み走り去り、ジミーは立ち尽くしたままそれを見送る。

 

コールバック演出

  • エレベーターホールにあるゴミ箱は新しくなったが、これは以前(S1Ep01)ジミーがボコボコに蹴り飛ばしたものだ。ホール自体には、キムが一度失った顧客であるケトルマン夫妻を、ジミーの助力でまたキムのもとへ送り届けた(S1Ep07)場所でもある。
  • HHMエントランスホールに飾られる花とPicture。本エピソードではハワードの写真が、S4Ep02では、チャックのPicture(絵か写真か良く分からない)が。
  • シェリルにハワードへの嫌がらせを問い詰めらているジミーに助け舟を出すキムは、S5Ep09でラロに問い詰められたジミーに割って入った事を強く想起させる。
  • 二人が長いキスを交わしたHHM地下駐車場は、S1Ep01でジミーとキムが初めて煙草をシェアした場所。

 

 

Act 5

裁判所

キム自身による証拠排除申し立ての場で突然の辞任を告げるキム。当然判事も混乱し、問い詰める。なかなか答えないキムだが、最後には「弁護士を辞めた」と。唖然とする裁判官・検事。

キムが弁護士を辞めるのは、あり得べきシナリオの一つだと思っていたが、それは悪事の発露によるやむを得ないもので、本人の罪悪感からけじめをつけるものになるとは想像が及ばなかった。後任のペイジ(メサ・ヴェルデの法律顧問)との関係性の深さ・良好さもうかがえる。キムは結構傍目には理解しがたい行動を続けており、普通ここまではしてくれない。

 

キムのアパート

弁護士を辞めた事を知ったジミーがこれ以上ないほど動転して帰ってくる。
「何て事をしたんだ!取り消すんだ!そのために引っ越しもしよう」と言ったジミーは寝室に行くが、そこでキムが荷造りに並べた荷物を目にする。キムの別れの決意を見せつけられたジミーは呆然と立ち尽くす。

キムは、「君にとって害悪か?」(S5Ep10)というジミーの言葉を持ち出し、そしてそれを否定する。「お互いにとってお互い自身が害悪なのだ」と。

ここへきてはじめて交わされる「I love you.」「I love you, too.」の会話も切なすぎる。もうずっと明らかだったのに、別れる事を決めてからはじめて交わされるこの会話。

ここでのジミーの表情はとてもとても印象的だ。子供が大人を試す時のような、挑戦的な、これを言えばキムの決意も覆るのでは?という打算が滲み出た表情に自分には思える。

しかし、キムの「I love you too.」に続く言葉は「But so what?」。ここで初めて見せるキムの強い強い悲哀の表情。

 

ラロが生きていた事を黙っていた事も、キムはここで打ち明ける。黙っていた本当の理由は、ジミーを守るためではなく、それを言えばジミーが別れると言い出すことが分かっていたから。ジミーと離れたくなかったからだと。「Because I was having too much fun.」あまりにも楽しかったから。

 

おそらく、Teaserの何もなかったかのように元通りにされた部屋を見ていた時には、キムの別れの決意は固まっていたのだろう。HHM駐車場での無言のキスも納得がいく。

そして寝室でキムが荷造りする音を聞きながら呆然と立ち尽くすジミーの後ろ姿でシーンが終わる。

 

「Death Is Not the Only Tragic End」という、思わせぶりな表現があちこちの記事で語られていたが、これがそうなのか、と。

 

コールバック演出

  • キムの「楽しかったから」は、Breaking Bad最終回での、ウォルターからスカイラーへの電話での会話と似ている。「これまでした事全ては自分のためにやった。好きだったし、得意だった」というセリフだ。メス作りと(法律の裏側としての)詐欺という2つの悪事の違いは、そのままBreaking BadとBetter Call Saulの主題の差でもある。
  • カップルの女性が男性のもとを去っていく、というのはS6Ep01 Teaserで流れたBGMや、タイトルにもなった「Wine and Roses」、酒とバラの日々という映画のストーリーを思い出させる。この映画ではアルコール依存症を認められない女性が男性のもとを去るが、キムが去る理由は逆に、ジミーと居る事によって誘発される詐欺(Scum)への依存を認めたためだ。

 

 

ソウル・グッドマン邸

回転ベッドで回ってくる薄毛の頭。そして見知らぬ女性が隣に。

 

Breaking Bad時代だ。

 

S6Ep01Teaserでのフラッシュフォワードで見せられたド派手なソウル邸。紛れもないBreaking Bad時代のソウル・グッドマンが生きている。

あの、人を世の中を舐め切った態度を、フランチェスカ相手の電話や娼婦相手に存分に見せつけてくる。「キャデラック ドゥビル」に乗り、ソウル・グッドマンのラジオコマーシャルがモノラルな事に文句をつけながら事務所に到着。

 

屋上には勿論自由の女神の風船像。手に持つ本には「JULY IV MDCCLXXVI」(1776 7月4日)の文字が。本物もその手に持っている独立宣言書。

シャツは淡い黄色、ネクタイ・チーフはオレンジでレップタイ。机の中にはBreaking Badではおなじみの黄色のマッチブック。かつての愛車Suzuki Esteemのくすんだ黄色とは違い、はっきりした黄色。黄色が表すのは「楽観」「快楽」「臆病」「恐怖」「誤りの希望や不注意な快楽」「疑惑やパラノイアによる不幸」。

 

オフィスの待合室は、フランチェスカが苦労して作り上げた最初の居心地の良さなど欠片も無い。執務室前でフランチェスカから手渡される「WORLD'S GREATEST LAWYER」のマグカップ。かつてジミーが「WORLD'S GREATEST LAWYER」と認めたキムはもう弁護士ではないのだ。

 

ソウルは机の前で伸びをして気合をいれ、「Let justice be done, though the heavens fall.」。

 

コールバック演出

  • ソウル・グッドマン邸。S6Ep01 Teaserのフラッシュフォワードで見せつけられた、回転ベッドや浴室、クローゼットなどの過剰に派手な屋敷の様子が、LIVEで見せつけられている。
  • ジミーの、キム以外との性行為はS1Ep10で、マルコと遊びまわっていた時に「ケヴィン・コスナー」だと偽って寝た女性以来だ。キム以外の女性との交際が描かれるのは、この2つの性行為と、S1Ep02での、バーでのデートだけである。
  • 着替えながら電話するシーンで出てくる「Another public masturbator」は、BrBaS2Ep08でのバッジャーとのシーンを思い出させる。ソウルはバッジャーを「Public masturbation」で捕まったと勘違いしているのだ。
  • ソウル・グッドマン事務所。屋根上のバルーンの自由の女神、待合室、フランチェスカも完全にBreaking Bad時代だ。
  • 「WORLD'S GREATEST LAWYER」のマグカップ。BrBaS3Ep06ではじめて画面にチラ見えする。以降、ソウルのデスクにはつきものになったマグカップ。Better Call Saulでは、キムがジミーにプレゼントした「WORLD'S 2nd GREATEST LAWYER」「WORLD'S 2nd GREATEST LAWYER Again」のトラベルマグを思い出す。「2nd」と「Again」はキムが追加した文字だ。
  • ソウル・グッドマンの黄色いマッチブックは、ジミーマッギルの青いマッチブックとの対比。青はBetter Call Saulでは法律の色とされる。
  • 「Yankee Doodle Dandy」と自称するジミー。これは1942年のミュージカル映画で、戦意高揚映画の一つだ。このタイトルの元になった「Yankee Doodle」は独立戦争時代の愛国歌で、日本ではアルプス一万尺のメロディとしておなじみだ。同時代の愛国歌として、「The Battle Hymn of the Republic」という曲があるが、この曲のワールドミュージック風アレンジジャズが、ジミーがケトルマン夫妻からもらった賄賂の処理をするシーン(S1Ep04)で使われている。
  • 「Let justice be done, though the heavens fall.」これはS3Ep05でチャックがハワードに、ジミーを罰しようとして弁護士資格の剥奪を狙った証言の直前に言ったセリフと完全に同じものだ。勿論ジミーはこのセリフは聞いていない。チャックはジミーの前でこのセリフを使ったことがあったのか、偶然の一致なのか、それとも必然の一致か。しかし、英語ではIdenticallyに、一言一句同じセリフなのに、吹替や字幕では違いが出ている事が残念でならない。アルバカーキサーガに無駄なセリフなんて無いのだが、その中でも大見得を切って放った決め台詞くらいは……とは思うのだが、文脈上いたしかたないのか。以下に該当箇所の吹替・字幕のセリフを引用しておく。

吹替

チャック「天国が落ちても 正義を果たさねば」

ジミー「天が落ちようとも正義を貫こう」

字幕

チャック「何があろうと 正義を果たす」

ジミー「正義を行おう 天が落ちようとも」

 

 

エピソード演出

本エピソードでは、最初のセリフと最後のセリフは、共にジミーが発話するが、両方とも他人のセリフだ。冒頭のマイクの引用については場に合わせたアレンジがしてあるが。

 

また、本エピソードは「ソウル・グッドマン事務所」の看板が掛けられる所から始まり、すべてが「完成」した「ソウル・グッドマン事務所」で終わる。

 

 

全然まとまらないまとめ

ジミーとキムのすれ違い

キムはジミーとのおふざけが本当に楽しくて我を忘れていた。根本的には「Fight good fight, change the world」、弱きを助け正義を果たすアラバマ物語の主人公に憧れる人なのだ。

キムには弁護士を辞める以外の責任の取り方がなかった。そして、ジミーと別れない限り、「また」周りの人を傷つけてしまう事を確信していた。

 

 

ジミーはキムと居ると、汚い手を使ってでもキムを助けようとしてしまう。キムは本当はそれを許したくないのに、結局は頼ってしまう。

S5Ep01の最期、おとり警官にミニ冷蔵庫を売りつけようとして逮捕されたボビー。司法取引を拒み、長期囚役が目に見えた裁判を避けるために、キムは正攻法を選びたいのに、ジミーが検察官のふりをして、司法取引を決断させようとするが、キムは拒む。拒んだのだが、依頼人ボビーとのやり取りの流れの中で、結果上の依頼人の利益を考えて結局はジミーの汚い手に乗ってしまう。

メサ・ヴェルデコールセンター予定地で立ち退き拒否していたアッカーの件もそうだ。ケヴィンをハメようとするが思い直し、ブレーキを掛けるのだが、結局は暴走したジミーを許して、配偶者特権を言い訳に結婚までしてしまう。

 

 

チャックもハワードも、キムとジミーが一緒にいる事によって死に至った。ジミーとキムの、「一緒にいると毒になって周りを傷つけてしまう」因果なChemistryによるものだ。そしてチャックの元妻レベッカや、ハワードの妻シェリルまで不幸にしてしまう。他にもエルネストや縮小が決まったHHMの職員、メサ・ヴェルデやガトリン石油、D&Mにかかった迷惑も、「ジミーとキム」が発端だ。

 

思い起こせば、チャックの死の発端は、独立したキムにメサ・ヴェルデ案件を取り戻すため、ジミーが書類の住所を書き換えた事だ。

これはキムが居なければ起こり得なかったことであり、しかもキムはその事実を知りながら、ジミーに証拠隠滅を唆してすらいる。S2Ep09 39分頃だ。ジミーはこれを聞いてすぐコピー屋に走り、証拠隠滅を謀る。直後、チャックが店を訪れ、(S6Ep07のハワードのように)頭を打って入院する。

 

後にこの工作が原因となり、ジミーは弁護士資格を停止されてしまう。この事でチャックを恨み、弁護士保険会社にチャックの病気・失態を漏らし、ハワードとチャックの仲を裂く。ハワードは身銭まで切ってチャックの持ち分を払い、HMMからチャックを追い出してしまう。これがチャックを絶望させ、自殺に追い込むのだ。

 

まさに「ジミーとキムの化学反応」が毒をうみだし、チャックとハワードを死に追いやった。直接的な死因となったわけではないが、それでもだ。

ジミーはそれを見なかった事にしてキムとの生活を、幸せを望む。ジミーとキムは愛し合っている。お互いにそれは承知だ。しかし、キムは「But so what?」だから何?と。二人が一緒に居る事によって生み出される不幸にキムは耐えられない。

 

そしてそれを受け入れられないジミー。キムに勧められても精神科医にもかからず、チャックの死に対しても、ハワードのそれともまともに向き合おうとしなかった、向き合えなかったジミーは変わらない。

 

ここのすれ違いがジミーとキムの離別の原因だ。

 

キムがBrBaで姿を見せない理由について、「お互いへの愛情が無くなったから/無かった」「死んだ」「刑務所で服役している」「人消し屋で消えて、新しい人になりすましている」「カルテルのために働いている」「全てをジミーの責任にして、ジミーを裏切る」他、とんでもないものまでいくつもの仮説があった。

後出しで言うな、とはいわれそうだが、「死んだ」は個人的には一番遠いルートだと思っていた。「人消し屋で消える」というのも相当遠いのでは?とも。理不尽な死はキムには似つかわしくないし、ハワードで使ってしまってもいる。アルバカーキサーガが特に道徳的な業と報いを厳密に演出しているかと言えばそうでもないが、ジェシー・ピンクマンは生き残り、アラスカで第二の人生を送っている。ジェシーは5人の死に直接関与したにもかかわらずだ。エル・カミーノでは、いくらかの金さえ渡してくれれば死なずに済んだはずの悪党2人を殺し、その前には自分を地獄に追い込み、「飼って」いたトッドを。その前にはヘクター・サラマンカの甥、ホアキンを銃撃戦で殺している。最初の殺人はゲイル・ベティカーだ。ここまでの5人はみな、マイクが言う所の「in the game」

しかし、「一緒に居る事のシナジーで、他人を不幸に追いやってしまう」事が理由で別れることになるという予想は見た記憶が無い。こんなすれ違いが離別の原因になるなんて、自分には想像不可能だった。想像不可能だけど、提示されてみるとこれ以上ない、これしかないシナリオに思える。

 

ジミーとチャック

その一方で、変わらないジミーを作り上げたのはチャックでもあるのだ。チャックの2度の大きな裏切りと、その後の1度の大きな攻撃。

前者はHHMへの弁護士としてのジミーの参加を許さなかった事で、1度目は弁護士資格取得直後(S1Ep08 Teaser)、2度目はサンドパイパー案件をモノにした時(S1Ep09)。

後者はサンドパイパー案件でのジミーの逸脱を監視した事で、結局それが先に示したようにチャックの死にまで至ってしまう。

 

チャックはBetter Call Saul開始時点では、電磁波過敏症を患っていると思い込み、自宅に引きこもってジミーの助けによって暮らしている。チャックの孤独の要塞、外壁はベージュ色で窓枠は緑色だが、これはアルバカーキサーガのカラーコード*3による必然だ。ベージュが表すのは「イノセンスとは言えない」「少しだけ汚れた」、緑が表すのは「強欲」「嫉妬」だ。

 

チャックはいくつかのタイミングでこの緑の服を身につけもする。

S3Ep02最後とEp03 A1 ジミーを罠にはめ、ハワードと探偵を目撃者にし、警官を呼ぶまでのシーンがその1つだ。Ep02では屋内で暗いからあまり目立たないが、Ep02 A1では屋外に出てきて日光の下、セーターの緑を強く意識させる。

S3Ep09 HHMを訴え、払えない金額の持ち分を払うか、自分を引退させた事を撤回させるかの二択をハワードに迫る時には緑のエプロンを身につけて料理している。

 

チャックが弟への嫉妬をここまでこじらせた原因はなんなのか。

母の愛情を独り占めし(S2Ep10 Teaser) 、(元)妻からの好感も自分には得られないユーモア感覚により獲得する。一方で、チャックは寸借詐欺にふける弟とは違い、弁護士として社会的名声や地位を築いた。しかし、その高みから弟の更生を手助けしていたつもりが、その聖域にまで弟が登り追いつき侵食してきた。この事によるある種自己防衛的な反射運動でもあるのだろう。

 

ジミーの方からすれば、チャックは年がそれほど近くない、尊敬し愛する兄だった。少なくともS1Ep09で、兄の裏切りが発覚するまでは。

マルコと寸借詐欺で面白おかしく暮らしていたジミーは、「シカゴ・サンルーフ」により、意図せぬ性犯罪に問われ、更生を条件にチャックの助けを得る。

S1でのジミーは本当にチャックに献身的だった。S1Ep09で、ジミーが1年以上行ってきた毎日のチャックの世話リストをハワードに渡したシーンでも、ハワードが驚く程だ。

 

そして、2度の裏切りが発覚した後でも、「兄が俺をクズだと思っている。それは俺にはどうしようもない」(S1Ep10 A1)と、チャックを許す姿勢を見せている。その後チャックがジミーの粗探しをしなければ、弁護士資格の剥奪を目論まなければどうなっていたのだろうか?キムはHHMでメサ・ヴェルデを担当し、ジミーがD&Mで真っ当に働き、穏やかに暮らしていける道があったのか。それでもキムとの個人的な関係が続けば、結局は破滅の道を歩くことになったのか。無かったのが2度目の裏切りなら?1度目の裏切りなら?考え始めると止まらない。ずっと妄想している。

 

 

Better Call Saulでのジミーの「悪事」はS1Ep01のひき逃げ偽装計画から始まっている。これは経済的な困窮から、犯罪者であるケトルマン夫妻から金を巻き上げようとしたのが発端だ。ジミーがHHMで弁護士として働けていたなら恐らく経済的な困窮は無かったのではないか?そうすればトゥコとの邂逅も、ナチョとの関係も無かったはずだ。それでもキムとの関係が続いていれば破局に至ったのだろうか?

 

ケトルマン夫妻からは結局、実質的な口止め料として金を受け取ってしまったが、最終的には全て返してしまった。S1での悪事は、あとはハワードへの嫌がらせ看板の件と、あとはEp10でのマルコとの寸借詐欺だけだ。

 

チャックへの態度も、S3Ep02でチャックの罠にハマるまでは、兄弟としての忠誠心・思いやりは失っていない。S2Ep09ではコピー屋で電磁波過敏症の発作を起こして頭を強打したチャックを覗き見していて、自分に不利になる事もかえりみず駆け付けている。S3Ep10ではもう一度チャックに歩み寄ろうとまでしたが、拒絶され、その数日後チャックの自死に至る。

S3Ep01でチャックの家の「電磁波防護」のシート類をはがす時のテープの巻き取り方も、ジミーは無意識に取り入れ、S3Ep02で共同事務所の壁のマスキングテープをはがす時に同じやり方で巻き取っている。チャックとのこれからの裁判での戦いについて、キムが話している時だ。この後、すこしテープの巻き取りにつまづいて一瞬止まり、怒りがこみあげてきて一気にはがしてしまう。それまで綺麗にWMのラインが現れていたのに、一気にはがしたところでは線が歪んでしまっている。このシーン本当に印象的で大好きなシーンだ。ジミーのチャックへの愛情と恨みが入り混じり相反したシーンだから。

また、S1Ep04やS1Ep10でマルコとやる酔いつぶれた馬鹿の偽時計で金を巻き上げる詐欺。酔いつぶれたマルコへ送るサインになるのが「狼の遠吠え」だ。これは酔いつぶれたマルコが歌うDeep Purpleの「Smoke on the Water」にちなみ、おなじDeep Purpleの「Hush」からきているとされている。勿論これはそうなんだろう。しかし、これにはもう一つ、チャックへつながるリンクがある。直前に言及したS3Ep01でチャックの家の「電磁波防護」のシート類をはがす時にでた、「The Adventure of Mabel」だ。このシーズンの最終話S3Ep10のTeaser フラッシュバックで、子どもの頃に夜、テントで、「ランタン」の灯りの下で、この「The Adventure of Mabel」をチャックが読み聞かせるシーンで、「狼の遠吠え」をしているのだ。

更に、まとめの前に書いたが、本エピソード(S6Ep09)を締めくくる「Let justice be done, though the heavens fall.」という言葉は、S3Ep05でチャックが一言一句同じ言葉をジミーを罰しようとする場面で使っている。チャックの口癖の1つだったのかもしれないし、偶然の一致なのかもしれない。どちらにせよ、制作陣からのジミーとチャックとの繋がりを強調する演出であることは明らかだが。

 

 

ジミー・モーガン・マッギルをソウル・グッドマンに変貌させた最大の要因はキムなのだろうが、2番目に大きな要因がチャックなのは疑う余地が無いと思う。

 

 

ソウル・グッドマン

初めて「Saul Goodman」という言葉がでてくるのはS1Ep04 Teaserフラッシュバック、シセロでマルコと悪さをしているSlippin' Jimmy時代のエピソードだ。単なる偽名に過ぎなかったこの名前は、「Saul Goodman Productions」や使い捨て携帯売りとしての名前を経て、S4Ep10でついに弁護士としての屋号にまでなる。

 

しかし、S5でラロの弁護や、その保釈金の運び屋をする事によって、ジミーからソウル・グッドマンへの変身は加速しはじはしたが、まだまだBreaking Bad時代のソウル・グッドマンとはまだ大きな隔たりがあった。

S6に入り、ラロとの関係が事実上バレた事で検事や裁判所職員達からの軽蔑を得、また同じことがきっかけで「Salamanca's guy」としての名声とそれに引きつけられた新たな顧客たちを得た。スプリットモールの事務所もついに手に入れ、フランチェスカへの傲慢な態度も見られるようになった。キムとのScumを進める中で、ジミーの良心が描写されることは全く無くなり、キムとの別れで遂にソウル・グッドマンに至る最後の崖を飛び降りたのだ。

 

 

S6Ep01 Teaserでは、キムの持ち物だったものがソウルの屋敷にあった事が描写されている。豪華な棚から零れ落ちたサフィロ・アネホのボトルストッパーと、キムのアパートのソファの後ろにかかっていた風景画だ。

どうしてこの2つがソウルの屋敷にあったのか。それが本エピソードS6Ep09で明らかになったといえよう。「キムが手放した」のだ。

 

サフィロ・アネホのボトルストッパーは、S2Ep01で手に入れてから、ずっとジミーとの関係の思い出の品としてキムが大切にしてきたものだ。S5Ep09でS&Cを辞めた時も、オフィスの私物は送るように言っておいたが、これだけは自分の手で持って帰った。この思い出の品を、キムは持っている事ができなくなった。

自分がジミーとまき散らした毒のせいで、ハワードの死を招き、関係者の不幸をへと誘った象徴になってしまったからだ。ジミーとの関係を後悔する気持ちがあるかは分からないが、キムはもう思い出したくないという事なのだろう。

 

一方で、ソファの後ろにあった風景画。これはS6では、ハワードをハメるための作戦ボードとなり、裏にたくさんの付箋が張り付けられていた。こちらもキムにとっては忌まわしい思い出で、手放したくなるのは当然だ。しかも、S6Ep07ではハワードの頭から飛び散った血が掛かっている。実際にその血を拭きとったのはジミーやキムではなく、マイクの部下だから、その部分の心理的抵抗はすくないとはしても、これがソウル・グッドマン邸にあったのは何故か。

 

 

ジミーはキムとの思い出を捨てられないからだ。

 

 

Breaking Bad S3Ep02で、ソウルがウォルターに会ったあと、車で悩むシーンがある。
ウォルターはS2Ep13でスカイラーに、手術代を自分で工面したのにシュバルツ夫妻に出してもらったと嘘を付いた事、メスを作る間の言い訳として母親に会いにいったという嘘がバレ、別居・離婚を迫られる。

ウォルターが一人で住んでいる家にソウルが様子をみにきて、スカイラーは警察に垂れ込んだりはしないと励ますのだが、ウォルターは家族を失う事が絶えられないと弱音を吐く。その後もブラブラと軽口をたたき励ますのだが、アパートを出て自分のキャデラックの運転席に座り、深いため息を吐くのだ。これがキムを想っての嘆息であることは今となっては自明である。

Breaking BadではS2Ep08で初登場して、ソウルの登場は5エピソード目だが、こんなシーンを「置いて」おく制作陣に戦慄する。Breaking Bad内では回収されない場面なのだ。また、Better Call Saulのオンエア開始は2015年「2月8日」である。

Better Call Saulは、ただでさえ名作中の名作であるBreaking Badを更なる高みへと押し上げる圧力であり、それ自身もまた何に劣る事の無い傑作中の傑作でもある。

 

 

S6Ep01エル・カミーノダイナーでキムが語った「ソウル・グッドマン像」。Flair(洒落た)でShowy(派手)な国産車。Good Location(良い立地)にあるSomething eye-catchingな(目を引く)事務所。A cathedral of justice(正義の大聖堂)。

これらはソウルの愛車キャデラック ドゥビルや、事務所の上のバルーンの自由の女神、執務室の大仰な柱や壁に描かれた合衆国憲法前文として実現されている。

 

これらが示すのは、ソウル・グッドマンはキムとの思い出を糧として生きているという事だ。直接は語られなかったが、悪趣味なほどに派手なソウル・グッドマン邸も、ジミーが思う「キムの理想のソウル・グッドマン像」を実現したのではないか?

 

本エピソード(S6Ep09)最後の5分で描かれたBreaking Bad時代のソウル・グッドマンは、障碍者用スペースに駐車し、偽の障碍者マークを掲げる。それでいて自由の女神を屋上にかざり、自らを「アメリカ精神を体現する男だ」(I'm a Yankee Doodle Dandy.)とうそぶき、誰にも憚らず「WORLD'S GREATEST LAWYER」のマグカップでコーヒーを飲む。

 

S6Ep01 Teaserでは、ソウルの薬の一つにバイアグラがあった。ジミーはキムとの関係が始まって(S2Ep01)からは、他の女性とは一度もデートすらしていないし、色目を使う程度の事すらしていない。娼婦との性行為はキムを忘れるための代償行為なのか、それともこれまでもがキムの理想のソウル像なのか……?キムはソウルとの未来も思い描いていたはずだから、流石に後者では無さそうではあるか。

 

結局のところ、全てはゼロか1かではないのだな。自分は単純なので、「全てはキムの理想のソウル・グッドマン像を演じているだけなのだ」という説を唱えてきたが、S6Ep06ソウルの事務所の裏口に、「あのトイレはそのままにしておいて」と言われたトイレが捨てられていた時に薄々感付いていたことではあるが。

 

(追加)

このドラマが始まった時、ジミーは視聴者の共感を非常に強く呼び起こす存在だった。弁護士でこそあるが、ネイルサロンのボイラー室を事務所兼寝床とし、無料弁護で勝ち目のない犯罪者達の弁護をする。仕事以外にも、病気で家から出られない兄の面倒をみている。仕事の営業にも苦労し、詐欺師一家を探しに山にまで入る。ヒーローになる小細工で少し有名になれたと思っても、自分の国を作り自分の発行した通貨で支払いをしようとするイカレ野郎や、子どもに卑猥な喋る便器を売り込もうとするクライアントたちに苦労し、やっと見つけた高齢者相手の商売。そして偶然も味方して巨額報酬が確実な集団訴訟案件を見つけるも、兄の裏切りにあい外される。

こんなキャラクターに共感するなって言う方が無理というものだ。Breaking Badでのソウル・グッドマンも楽しい、面白いキャラクターではあるが、恐らく共感できるのはジミーだという人の方が相当多いだろう。そんな愛すべきキャラクターが、兄に認められる事を諦め、兄を殺す原因を作り、最愛の人を失ってソウル・グッドマンになってしまった。

少しズルはするけども、基本的には「良い人」でシンパシーを抱きやすいジミーから、世の中を舐め切った態度で、口八丁で立ち回る金回りのよい悪党が雇う弁護士ソウルへの変身を喜ぶ人がいるだろうか。ジミー役のボブ・オデンカークですら、ジミーは好きだけどソウルは好きじゃないとインタビューで答えてるのを見た記憶がある。

こんな苦痛を視聴者に与えちゃうの?なんで?と問わずにはいられない。

(追加終わり)

 

ソウル・グッドマンを最後に産み落としたのはキム・ウェクスラーだ。そこまで導いたのがチャック・マッギル、チャックへと導いたのがマルコという流れになるのだろうか。

「ソウル・グッドマン」は、キムが居なければ現れなかったし、逆にキムが居たままでも現れなかったのだろう。キムというSoulmate、Better Halfを失った空虚さが、バッジャーやジェシー、マイクらを殺す提案をした事まである、人の死すら弄んでしまう「ソウル・グッドマン」を生んだのだ。

 

 

残りの4話で描かれる事

これから回収されるべきネタ*4で、残っている重要なものは以下の4つ。

  1. タクシードライバーのジェフ
  2. S4Ep05Teaserで語られた11月12日の午後3時にフランチェスカに掛かってくる電話
  3. S6のシーズンアートの赤いジャケットを羽織るジー
  4. ジェシーとウォルターの再登場

2と3は繋がってる可能性が高く、1と4は独立してる可能性が高いように思える。

基本的には最終的なゴールに繋がるのは3で、付随して2も、ということになるのだろう。4についてはまだ想像がつかない。

 

これからのドラマのタイムラインがどうなるのかもまだ定かではない。本エピソード最後の5分は明らかにBreaking Bad時代だが、これがただのフラッシュフォワードでまた戻るのか、戻らずにまだソウル・グッドマンが人消し屋を使わない時代の話が続くのか、人消し屋以降つまりジーン・タカヴィクになってからの時代が描かれるのか。

 

ただ、これまでこのドラマにおいて、各エピソードのTeaser(Better Call Saulのタイトル画面よりも前の部分)以外での幅の大きなフラッシュバック/フォワードが使われたのはマイクの過去が描かれたS1Ep05 Five-Oだけで*5、それもフラッシュバックのみだった。これを考慮すれば、最後の5分がただのフラッシュフォワードでまた戻るという蓋然性は極めて低いのではなかろうか。

 

(追加)

一つだけ確かな事があるのを忘れていた。フランチェスカに頼んだ電話のネタは、あきらかにBreaking Badタイムラインで仕込まれなければならない。わざわざジーン時代に行ってフラッシュバックするのも不自然なので、最低限このネタの仕込みだけは本エピソードから近い時制で続けてやってしまうのではなかろうか。

(追加終わり)

 

 

11月12日午後3時の電話については、個人的にはS4Ep05放映直後から、これはもうキムからの電話しか無いだろう、と思っているのだがどうだろうか。同様に、ジーン・タカヴィクが赤いジャケットを羽織るのも、キムのため以外の選択肢が思い浮かばない。こういう予想を軽々と上回って別の方向性を出してくるのが、アルバカーキ・サーガの制作陣なので、この予想が外れても不思議は全く無い。

 

 

ここまで、何とか少しでも形になるように整形しながら吐き出した文章を纏めてきた(否、全くもって纏まっていない)が、いくら吐き出してもまだ足りない、まだ吐ける。書き忘れている事もきっといくつもあるだろう。しかし、ここで立ち止まりすぎないために、あえてここで区切りを付けよう。

 

 

これほどまでに完璧に、「ソウル・グッドマンの誕生」、そして「ジミー・モーガン・マッギルのブレイキング・バッド」を描いてくれた制作陣には本当に感謝しかない。

このドラマを(Season4からではあるが)リアルタイム視聴出来た事にも感謝しかない。

特にSeason5以降の、週1エピソードずつ進むリアルタイム視聴は至福の限りだった。一気見も嫌いでは無いのだが、ここまで考える事が多い作品だと、1エピソードにつき1週間考える時間が貰えるのが本当に嬉しかった。

「最高級の酒」をダイエットコークで割ったり、一気飲みしたりしないのと同じように、大切に味わえた事に感謝したい。

残りのトピックスを回収するのに4話というのは多いようで実は多くは無いのかもしれない。ここまでの完成度を見せつけてくれた制作陣がクロージングに出してくる4話にはこれまで最大の期待をしている。