toorisugari3のブログ

ベターコールソウルの事について、ネタバレ込みでつらつらと

Better Call Saul関連ふせったーまとめ

ネタバレを含みます。ネタバレ回避のためのふせったーなので当然ですが。

サービス存続できない可能性がでてきたのでしょうがなく。

水平ラインの上がTwitterでもみえる部分、下がリンク辿らないと見えない部分。上でもオレンジ色の部分はTwitter上では伏字(1文字ずつ「〇」になる)。

 

 

 

午前2:38 · 2022年4月28日 / 603でのナチョの中の人インタビュー

ベターコールソウル603を受けてのナチョの中の人インタビューが良すぎたので、機械翻訳ででも見てほしい。
URLもネタバレだから短縮URL使うけどtvinsiderの記事です
#ネタバレ
https://bit.ly/3rVYRgK

Breaking Goodて……

ジミーもマイクもキムも、みんながBreaking Badしてる中、一人だけBreaking Goodして死んでいったナチョ、マジでほんま……

 

午後10:32 · 2022年5月23日 / ベターコールソウルS6Ep07展開の予想

ベターコールソウルS6Ep07展開の予想

ネタバレになる部分は絶対あるのでふせったーで

ハワードが雇った探偵はジミーとキムの仕込み。これは99%間違いない。作戦ボードや、写真からわかる。ハワードはカフェイン耐性がなく、ジミーは逆にありまくりなので、瞳孔を開く薬でハワードがヤバい事になる。失明とかかな?ガスとラロが地下ラボで対決。ラロはまだ死なない。あとは分からない。
 

午後9:24 · 2022年5月24日 / ベターコールソウル S6Ep07感想

ベターコールソウル S6Ep07 ミッドシーズンフィナーレ
感想 勿論完全にネタバレ

後半は7/12開始(USでは7/11)

まず予想(https://twitter.com/TorysGirly/status/1528730644871667712
)の答え合わせから。
探偵は仕込み○ ハワードが瞳孔開く薬で重大事故× ラロは生き残る○

ハワードに薬を盛る事に関しては完全にミスリードにのせられてしまった。ただ、ラロが死なない事と、本エピソードのタイトル「Plan & Execution」から、ハワードが死ぬ事は予想できてよかったなぁと見てから思った。Executionには処刑の意味もあるからだ。日本語タイトルは訳さないでほしかった。プラン&エクスキューションでいいじゃんね……



まず意表を突かれたのがカメラクルーメイク担当のコスプレw眼鏡のレクチャー中断と対になるやつ。めっちゃ笑かしてくれたwあと、内向きにぐるぐる回るカメラのシーンも印象的。


ハワードのアークが本当にすごかった。会議室で車椅子のアイリーンのために椅子をどかすところ、ケイリーにチャックの話をするところ、常に不測の事態に備えていたというところ、そして偉大な法律家と呼ばれたいというケイリーに「もっと大事な事もある」と遠い目をするところ。
写真のすり替えも意表を突かれた。マイク担当が変な恰好してるなぁとは思ったがw その後のアイリーンのセリフ「いつもこうなの?」がニクい。
薬の件で、ハワードが車椅子を用意したところで、アイリーンに害が及びませんように!と祈ったのは俺だけじゃないはず。本当に良かった。

作戦ボードにあった25minの付箋、瞳孔が開くまでの時間なんだろうが、ジャストタイミングだった。薬に触れてから25分は経ってないと思うが、ハワードとジムの日頃のカフェイン摂取量の違いはきちんとジミーとキムの考えに入っていたわけだ。



ラロパート
カーサトランキーラにスペイン語で電話したのは、取り次いだ職員がスペイン語話せない事を確認するため。前回と同じ慎重さ。盗聴に気づいた後の立ち直りの早さも流石のラロ。
ヘクターへの電話を切った後、クカラチャ(訳したくない)を見たのは秀逸すぎた……S5Ep08で、ラロはキムに夫(ジミー)の事をラ・クカラチャだと言っている。

マイクがガスに言った「優先順位の低い標的の護衛を回している」もそうだ。これでジミーとキムへの監視が解かれた。マイクS6では裏目ばっかり。



そして最後のシーン。キムが珍しくピンクの服を着ていてびっくりした。ピンクと言えば若さやナイーブさを表す色。ただ、キム=若い・ナイーブ??と疑問だったが、もう一つ、「悲劇」の色でもある。cf. ピンクベアー

ドアが開いたときに大きく揺れるろうそくの炎。入ってくるハワード。キムに「こんな道を選ぶなんて」。そしてキムの「You are done, Howard.」。「You did it for fun」。
FYI、ハワードがいう「Leopard and Loeb」は、自分達の頭の良さを示すためだけに14歳の少年を殺した2人の犯罪者の事。



ハワードの演説の最中に再び揺れるろうそくの炎。
そしてまた聞く事になる「Let's talk


個人的には、ハワードが自分を通して逝ったのが最悪の中での良かった所かな。不測の事態にもなんとか耐えて立て直していこうという気力を持っていたところに、最凶最悪のラロにExecutionされてしまったが。

Breaking Bad S5Ep15 オジマンディアスでは、悪事とは無関係なハンクが殺されてしまう。本エピソードのハワードはハンクと等しい。ハワードも殺されるような罪は何も犯していない。悪を描くドラマにおいて、因果応報は強調されるべき事だが、ハワードもハンクもその理の外側に居る。だからこそ彼らの死が辛い。ナチョは最終的にBreaking Goodしたとはいえ、因果応報ではあった。
ハンクに負うものがあるのはウォルター一人だが、ハワードはジミーとキム二人が負うべき十字架になった。
ジミーはチャックの死にも負うべきものがある。

Breaking Badで、ソウルがあれだけラロを怖がっていた理由が明らかになってしまった。未だナチョをどう絡めるかは不明だが……



それにしても、本作における2本の柱、弁護士パートとカルテルパート。この2つをここで交錯させ、ラロにハワードを殺させるの、本当にもうなんというか。
冒頭にも書いたとおり、予想はできてもおかしくなかったとも思うんだけど、煙幕の方に気を取られてたなぁ。

S6Ep05 Black and Blue後のインタビューで、ハワードの中の人が「シーズンフィナーレまで見たら、ハワードがBreaking Badの時代に何をしているのかわかりますか?」と聞かれ、「Yeah, absolutely. I think so. You’ll definitely know where Howard is.」と答えてた。まさかこんなに早く分かってしまうなんて。
https://variety.com/2022/tv/features/better-call-saul-boxing-patrick-fabian-1235262029/


Breaking Badはグスタボ・フリングっていう斬新な悪役造形をしたが、Better Call Saulはエドゥアルド・サラマンカとかいう悪魔を創造してしまった……どこが新しいとかそういうんじゃなくて、怖さが半端ない。
 

午前0:33 · 2022年5月26日 / 607 チャックとハワード

ベターコールソウル S6Ep07、Insider Podcast聞くまで思い出せなかったがジミー達がハワードにした事って、ジミーがチャックにした事と殆ど一緒なんだな。なんで思い至らないのか。理由は違うけど死に至る所も同じ……
 

午後0:54 · 2022年5月29日 / キムのキャラ設定

ベターコールソウル インサイダー ポッドキャストきいてて知ったんだが、キムは母親の写真を1枚も飾ってない一方で、イヤリング・ネックレスはS1からずっと付けてる。一面的で単純なキャラじゃないから深みが出るのかね
 

午後9:50 · 2022年7月26日 / 610 感想

ベター・コール・ソウル S6Ep10 とりあえず簡単な感想

スローな回になると思ってたが予想通り。勿論それにもかかわらず、退屈とは無縁。むしろ終始ゾクゾクしっぱなし。

NippyでS5Ep01フラッシュフォワードの続きを想像したがビンゴ。

タイトルコール演出のルーチンワーク崩し。ルーチン崩しの威力は絶大だ。
知ってる人は知ってるだろうけど、オープニング映像は何話はこれ、というのが決まっている。シーズンを重ねるごとに映像が白黒になったりノイズが増えたりしていくのも非公式ファンサイトの人が指摘していた。
01自由の女神
02キャデラック
03天秤を灰皿に
04引出の使い捨て携帯
05ベンチの広告
06荒野の公衆電話
07金魚運動器
08ネクタイとタランチュラ
09小便器のマッチブック
10落ちるマグカップ
今回Ep10なので落ちるマグカップなのだが、最後を変えてきた。これだけで30秒くらい過呼吸になった。自由の女神が映り込むのはS5からで、S4まではなかった。
残り3エピソードのタイトル画面がどうなるか非常に楽しみ。また1から、とはならないのでは?今回の特殊演出で「終わって」しまったので。


ジェフと2人になり、今エピソードでやる事を持ちかけるシーンで、ハッピーエンドもキムの再登場が無い気がした。理由がはっきり言語化できないんだけど、自分がやってしまった事と向き合う気が無いと、そちらの方向には進まない気がした。

S1Ep01ではレモン果汁入りのラスティーネイルだったのに、ドランブイのボトルが見えない。何故?
Stashからピンキーリングを取り出してはめる。サイズ調整用の赤い糸が見えなかったきがするが、白黒なので確かではない。

何をしているのか分からないが、何かをしている事が延々と示される。ジミーやソウルよりもマイクやナチョの仕事に近い。初回はBGM無しで、2回目からはBGMを入れるのが好き。この辺で全編モノクロで行く気だな、と気づく。この辺りまでずっとどこから色がつくのかと身構えてた。

キャシーへの電話を切ったあとの無音のpoof。無音である必要性も見当たらないし、記憶に無いので印象に残る。

計画中の予定外アクシデントは、ゴルフクラブでのケヴィンや、カシミーロ元判事の骨折ギプスへのコールバック。カシミーロの時と違い、今回は助けてくれるキムは居ない。有音のPoof。久しぶり。

What's the point、比較的使われるイディオムだが、S3Ep10でチャックがジミーに1シーンで3回も使うのが強烈に印象に残っている。ジーンはここでは2回言って、その間に1回、Wha...で止まったのがある。(不正確な描写を微修正)

Say it. はS5Ep01でのジェフのセリフのコールバック。立場の逆転も。

ジェフに知らないふりをしろと言ったのに、マリオンには口止めできない。仕込まれたネタ。
ニッピーを忘れていたのも油断の暗示。


モノクロのままで通したのは、恐らくこれがフラッシュフォワードシーン(エピソード)だからだろう。
次のエピソードでは時代が戻る可能性が高いのではないか?
 

午前11:33 · 2022年7月30日 / S6のエピソードタイトルについて

ベター・コール・ソウル、エピソードタイトルが出そろったみたいだけど……「Saul Gone」て。
シーズンアートのあの赤いジャケット羽織ろうとしてるジーン、実は逆で脱いでる途中だったりするの……?
 

午後11:51 · 2022年8月2日 / 611 感想

ベター・コール・ソウルS6Ep11 簡単な感想。とにかく予想の逆ばかりをつかれたエピソード。
オマケ https://www.oakley4defenselaw.com

(予想)ジェフィー、マリオンはもう出てこない→(現実)出てきた。次も出そう
BrBaS2Ep08のソウル視点みたいな安直な感じにはしてこないだろう→してきた
ジミーは自分をここまで追い込んだものと向き合う気になった→なってないどころかまさかのBreaking Bad Again
11/12午後3時の電話はキムから?キムについて?→まさかのソウル本人
エンディングの方向性はGood/Badどっちも匂わせられるように→一気にBad方向へ
わろてしまいますwww

タイトルコールはジーンの椅子のひじ掛けに置かれたラスティネイルか?

キムの勤務先への電話、キム自身が断るように会社に言ってあったのか、それともキムが出て会話した上でのあの逆上なのか。

BrBaS2Ep08以外のコールバック
フランチェスカのdude→スカイラーのyo
ジェフ「So, we're back in business」→ウォルターとジェシーで何度もやったやつ。特に最初の奴かな?S1Ep05ラスト。
カラオケ→S4Ep10
寸借詐欺→S1Ep04, S1Ep10
Viktor→S2Ep01
娼婦→S6Ep09
Swing Machine→ソウルのお気に入り


これまで、フラッシュバック・フラッシュフォワードの使用は相当小さい物を限定的に使うだけだった(S1Ep05 Five-Oは例外)のが、一気に解禁してBreaking Badとジーンタイムラインを強く撚り合わせてきた。ジミーの「Breaking Bad Again」を強く暗示する。
ウォルターとジェシーがソウルを脅すために掘った穴に、ジーンが埋葬されるかのようにみせかけ、ジーン宅ベッドで寝てるシーンへの場面転換、これもBcSでは今まで記憶に無い演出。とにかくBad End方向に一気に加速してしまった……

なにより、ジミー/ジーンがジェフ友を追い出すシーンは、ほとんどウォルターと言っていい態度だった。
エンディングがBad方向でも、BrBaのような派手なアクションは望めず、Good方向ならそれはそれで大工事が必要になるこの話、あと2話でどう転がすのか。
 

午後11:04 · 2022年8月9日 / 612辛い

ベター・コール・ソウル S6Ep12 あまりに辛すぎる。フロリダのキムは明らかに自分をさらけ出せていない。辛うじて暴力は避けられてはいるがジミーは粗暴さが加速。ヴィンスは俺達の心を殺しに来てる
 

午後11:15 · 2022年8月9日 / BrBaとBcSの終わり方

Breaking Badはウォルター自身も視聴者もカタルシスを得られる形で終われたが、Better Call Saulはそんな道筋が微塵も見えない。ひたすらキャラを叩きのめすだけで終わるとも思えないが、そんな道残ってるの??
 

午後10:31 · 2022年8月13日 / 612が辛い理由

ベター・コール・ソウル S6Ep12 なんでここまで辛いんだろうと思ったらコミカルシーンが他と比べて異様に少ない。柱が倒れるところ、ジェフィーの事故、ジェシーの話すコンボの話の3つくらいで、柱は純粋コミカルでもない。
 

午後5:48 · 2022年8月16日 / フィナーレ 最初の感想

#ベターコールソウル 最終話
チャックとのシーン本当に嬉しかった。チャックの「お前の事なんてずっとどうでもよかった」が捨て台詞だったと俺は取った。
 

午後7:07 · 2022年8月16日 / フィナーレ 一番うれしかった事

ベターコールソウル最終話 何よりうれしかったのがジミー/ソウル/ジーンが、最終的に自分のアイデンティティをジミーだと結論付けて、罪と向き合う決断をした事。キムの事は恐らく副次的な事で、メインではないはず。
 

午後9:47 · 2022年8月17日 / フィナーレ 法廷シーン

ベター・コール・ソウル最終話、法廷のシーン冒頭、流れる曲はThe Harmonizing Fourの「All Things Are Possible」。

まとめ的な感想はもう焦る必要が無いのでゆっくりやろう……

チャックの「People don't change. 」「He'll never change.」に対しての解答。この法廷シーンを象徴する、というよりはこのBetter Call Saulシリーズのメインテーマと言ってもいいシーン。そして自分が一番欲しかったこたえでもある。「人は変われない」では救いが無さすぎる。All things are possible. If you'll only believe.
7年半の刑期を蹴って、86年を勝ち取るための衣装。光沢スーツに派手なカラーシャツ、けばけばしい模様のネクタイ。ソウル・グッドマンは最後の陳述を終え、ジミー・モーガン・マッギルに戻る。

このシーンで「ジミーが保険会社にタレこんだ事がチャックの自殺の原因であった」事をキムも初めて知る。天を仰ぎ見るキム。

S1や今回のフラッシュバックで、献身的に兄チャックの世話をしていたジミーは間違いなく、シセロのSlippin' Jimmyではなかった。金銭的な困窮に陥らなければ、スケボー兄弟に当たり屋させる事も、トゥコとの出会いも、ナチョやラロとの出会いも無かったかもしれない。現実はジミーの痩せ我慢からそうは行かなかった。ソウルへと変貌し、そしてさらにジーンもウォルター化しはしたが、最後はJimmy's Back。みんなの愛したジミーが帰ってきた。
 

午後10:32 · 2022年8月17日 / フィナーレ ブルーベル

ベター・コール・ソウル最終話 たいした事ではないのだが予想と大きく違った事の一つ。ソウル・グッドマンはチョコミントアイスが好きだった事。ラロの象徴でもあるあのアイスは、ソウルにとっては勝利の味になってたのな……きつい
 

午前1:12 · 2022年8月18日 / 611タイトルがBreaking Badな理由

ベター・コール・ソウル 今頃S6Ep11の話だが2010/11/12が誕生日なのは勿論覚えてたんだが、50歳の誕生日なんじゃん…… https://i.imgur.com/BHg92DO.jpg そりゃぁタイトルBreaking Badだわ
 

午前2:14 · 2022年8月18日 / アルバカーキアイソトープについて

ベター・コール・ソウル最終話タイトルコールアルバカーキアイソトープ。癌の象徴かと思ってたが、ジミーがキムというショックによってソウル、ジーンという不安定な同位体を経て、最終的にジミーという安定同位体になったという事?

うーん、もうちょっと考えよう。ここまで頻繁にあのAirfreshenerを映した明確な理由が絶対にあるはず。

仮にこれが正しければ、だけど、最後に刑務所で会った時のジミーとキムは、最早一緒に居ても毒にはならない組合せになっていたようにしかみえないな。キム自身も半減期の短い放射性同位体になってたのかなぁ。
 

午後8:55 · 2022年8月18日 / フィナーレ 人格変遷

ベター・コール・ソウル最終話 ジーンがソウル・グッドマンに戻ったのは留置所の「MY LAWYER WILL REAM YOUR ASS」を見て。そしてソウルがジミーに戻ったのは飛行機でビルからキムの事を聞いた瞬間。

その手があったか、と。シーズンポスターの赤いジャケット、やはりあれはソウル・グッドマンの証なんだ。それを着て弁護士になる。
「キムのためにジーンからソウルになる」なんてヒロイックで単純な子供じみた予想をしていたけど、そもそも弁護士資格を失ったソウルに戻って何ができるんだ?とシーズンポスター見てからずっと考えてた。

弁護士資格を失っても弁護できるケースが1つだけある。対象が自分自身の場合だ。
なんで思い至らなかったんだろう……。キムを助けるためという想像があまりに魅力的に思えたためにそこから出られなかったのかな。

飛行機の中でキムの事を聞いたソウルは、マリオンの「信じていたのに」を聞いたときと同じく正気を取り戻した。そしてキムを法廷におびき寄せ、「ソウル・グッドマン」を最後の舞台にあげて、赤いジャケットを脱ぎ、ジェームズ・モーガン・マッギルとして86年の刑期を勝ち取った。
 

午後9:35 · 2022年8月18日 / フィナーレ タイムマシンについて

ベター・コール・ソウル最終話 タイムマシンについて

最終話のフルカラーパートは3回で、これらは全てタイムマシン関係のフラッシュバック。


1回目はTeaserのマイク。風車くみ上げの井戸にたどり着いたのは、S5Ep09冒頭で、携帯がつながった後、人里に出るまでの間。ボトルの尿でそこしかない。マイクは初めて賄賂を受け取った日に戻りたいと、自らをさらけ出す。

一方ジミーは金の話でとぼける。チャックの事に向き合えていないから、というよりはS5Ep08ラストでチャックの象徴であるSpace Blancketを捨て去り、頭の中から追いやってしまった後だから。


2回目はウォルター。Breaking Bad S5Ep15 The Granite State TeaserとA1の、Best Quality Vacuumの地下室に居た時。エゴの塊ウォルターはグレイマターに残っていたら、というもの。
ウォルターはそこまで優秀な化学者でもなかったなんて説もあるし、そもそも2人に追いやられたってのが嘘で、自分がグレッチェンの家の裕福さに気後れして逃げた事をここでも誤魔化してる。

ここでジミー/ソウルが挙げたのは若い頃の詐欺で実際に膝を痛めてしまった事。BrBaS2Ep08やS1Ep03で膝が悪いと訴えている。この時点ではキムとの別れの反動でソウル・グッドマンになっていた時期。
ウォルターに「So you are always like this.」などと言われてしまうが、ミスタホワイ、あんたもそうでっせ。


3回目は法廷シーン直後、チャック。Better Call Saul第1話よりも前の時点。1話ではフィナンシャルタイムスを届けている。1回目2回目と同じく、このフラッシュバックはタイムマシン、いや後悔についてのシーンなのは明白だ。

チャックはいつも本心ではない建前を発話するのだが、このシーンではすべてのセリフが一応は本心から出てるように見える。
「配達は事務所に頼める。なんでお前がやるんだ?」は実はあまり顔をあわせたくないのだろう。
それでも、事務所を構えようとしている時にまで「自分がやる」というジミー。何故か?「Because you're my brother, duh.」。これはS2Ep08のチャックのセリフ「But if things were reversed......I hope you know that I would do the same for you.」と対になる。
個人的な解釈では、ジミーのセリフは義務感ではなく、家族・兄弟としての忠誠心から、チャックのは恐らく義務感・社会的な体裁を気にして、と微妙に動機は異なっている。

それでも。「Well, you could stay for a while. We could talk.」少し話をしていくか?とチャックは譲歩してる。結局ジミーは忙しくてまともに付き合おうとしなかった。

ジミーの「後悔」はこれなんだろう。ここで腹を割って、もうすこし話をする事が出来ていたら分かり合う道がひらけていたかもしれない。そこまでいかなくても、少しは今が変わっていたかもしれない。

「今の道(弁護士)が嫌なら、道をもどってやり直してもいいんだぞ」。このチャックのセリフも、同じ弁護士という職業についていてほしくないというチャックの本音・願望が漏れたものだろう。
それに対してジミーは「兄さんは道を変えた事があるかい?」。チャックを尊敬し、ロールモデルとして近づきたい一心のジミー。

もし今チャックが「86年の刑期を勝ち取った裁判でのジミー」を見れば、ジミーが司法試験に合格した時に、ハワードにHHMでは雇うなと言った事が「後悔」になるのだろう。
 

午後10:04 · 2022年8月21日 / フィナーレ タイムマシンについてPart2

ベター・コール・ソウル 最終話 タイムマシンについてPart2

ブログの方にまとめて載せようと思ってたんだけど、遅くなりそうだから……
#ベターコールソウル

ジミーは後悔できない人だとの意見を見かけたが、これは作中描写によりほぼ明確に否定できると思ってる。タイムマシンはウォルターが看破した通り、「後悔(regret)」のメタファーだ。HG.ウェルズのタイムマシンが登場するのは、時系列的順番ではS6Ep03と、S6Ep01 Teaser。ハワード死亡前から、ソウル・グッドマンとして逃亡するまで、ジミーはこの間ずっとタイムマシン=後悔を持っていた事になる。

そして、マイク・ウォルターとの会話ではとぼけたが、チャックとのフラッシュバックはジミーが本当に後悔していた所だ、とうけとるのが自然だ。明確に一つのセリフを挙げると「You know, I'm gonna take a pass on the heart-to-heart, Chuck.(腹を割って話し合うのはまたにするよ)」ではなかろうか。
このシーンでは、チャックは色んな本音や建前もありながら、表に出した言葉自体は全てうその無い言葉だ。ここで腹を割って話していれば、違った未来があったのかもしれない。



また、フラッシュバックシーンの終わり際、チャックはペーパーバックのタイムマシンとランタンを手に取り、家の奥へと消えていく。

これはジミーがずっと後悔を抱えていたというのと同じで、チャックも後悔を抱えていたという事だ。

ところで、チャックとのフラッシュバックシーンには明確な矛盾が1つある。それはジミーがしているピンキーリングだ。細かく見られる場面はないものの、ジミーがつけるピンキーリングといえばマルコの遺品としてもらったものだ。S2Ep01ではこのピンキーリングを見咎められて「そんな変なピンキーリングまでしちゃって、マフィアにでもなったつもり?」と言われている事から、これ以前にピンキーリングはしていなかっただろうことは強く推測される。

一方で、この場面はBetter Call Saulの第一話よりも前の時系列となる。基本的には前へ進んでいくだけの話で、マルコの形見分けでピンキーリングをジミーが得たのはS1Ep10での事。これは明確な矛盾だ。


もう一つ、カウンターにおいてあったウェルズの「タイムマシン」のペーパーバック、チャックが動かした素振りは無いのに、最後にチャックが手に取る場面とその直前では起き場所が変わっている。

これは普通なら明確なミスとするのだろうが、この場合一つのヒントになるのではないか?と考える。ウェルズのタイムマシンは本当は無かったのではないか。チャックにタイムマシンを持たせたのは、チャックにも後悔があったという事を示すため、という事だ。


明確な証拠のある話ではないが、このチャックとの会話自体は実際にあったものなんだと思う。そこに、マルコのピンキーリングと、後悔のメタファーとしてのタイムマシンを置いたのは、制作陣からのファンタジー・幻想であるという事の示唆だ。

チャックが「ペーパーバック」の、古典的SFの中編である「タイムマシン」を読むようなタイプの人間か、という疑問もある。チャックがまだ若い頃なら違和感はない。しかし、あの年のチャックが読むにはあまりにふさわしくない。S1Ep01時点ではチャックは58歳だ。

実は愛読書でした、という可能性よりも、幻想であると取る方が、少なくとも自分には説得力のある、納得できる話である。


本件が、ベター・コール・ソウル最終話で、自分が最も注目したい事2つのうちの1つだ。
 

午後11:34 · 2022年8月21日 / フィナーレ ソウルの顔

ベター・コール・ソウル最終話、法廷のシーンでのジミーが他のシーンと顔が結構違ってて、多分なんか処理してるんだとおもうんだけど、個人的にはボードウォークエンパイアのナッキーことイーノック・トンプソンみたいな目だなぁと思った。

設定的には2人ともIrishAmericanではあるなぁ。役者もルーツ的にはIrishなのか。ブシェミはIrish&Italian、ボブはIrish&German。
 

午前0:08 · 2022年9月6日 / BrBa/BcSの始まり方終わり方

Rollingstoneの最終話Reviewでも触れられてたけど、BB/BCS最終話の共通点と相違点。逃亡中の主人公がAlbuquerqueに戻ってきてex-wifeと邂逅して、やりたかった事をやる。贖罪の存否が相違点。

そもそも始まりも「金に困って」なのが共通で、しかも頼ろうと思えば頼れる相手が居たのも同じ。ウォルターはグレッチェン夫妻、ジミーはHHM。そもそもBreaking "Bad"と"Better" Call Saul、Walter "White"& Jesse "Pink"man 、"Kim" Wexler&"Saul" Goodman。対にするのが好きよねぇ。

まぁなんでBcSの主人公sの名前がKorea繋がりなのかはよくわからんが(韓国系のmobは何人か思い当たるけど)……
 

午前2:35 · 2022年9月23日 / 410 Winnerでの演説に対応するBrBaのイベント

BcS 410 Winnerのジミーの演説に対応するのって、BrBa 301の体育館のアレなのかね共通点多いわけではないが。追悼リボン付けてないの大人はウォルターだけで(WikiみたらJr.とWaltだけってあった)、

ウォルターは、自分がジェーンを殺してそれで167人の乗客を殺して、ジェーンの父親まで殺したようなもんだっていうのは分かってるはず。分かってるからこそ追悼リボンもつけられないし、
I guess what I would wanna say is to look on the bright side.
とか
We will move on, and we will get past this. Because that is what human beings do, we survive, and....
We survive and we overcome. Yeah. We survive. We survive and--
なんて会場全体を唖然とさせるような事を言ってしまう。

Winner演説がしょってるのはチャックの命で、こっちは169人の命。
両方ある種の自己正当化でもある。

BrBa S2見返してて思ったけど、BrBaはイベント密度が濃い。そんでそのイベントの組み合わさり方が酷い。理不尽とか繋がらないって意味じゃなくて、あまりに不幸すぎるって方向で。
最後の方だけみても、コンボの死でジェシーが薬に逃げてジェーンにも。バッジャー問題で仲間入りしたソウルがガスへと繋げて、ガスから得た金がジェーン暴走のきっかけになる。ウォルターは偶然パブでジェーンの父親に出会って家族を諦めるな、と言われてジェシーのもとにむかった挙句、ジェーンを殺してしまう。

ウォルターがジェシーを揺すらなければジェーンも側臥してたから吐いても死んでなかったのに、間接的にジェーンを仰向けにして、吐いたのを見ても放置したのが飛行機事故と、ジェーン父の自殺に……ってどんだけ酷い不幸の連鎖の仕方なんだって。


イベント密度が高い分、BrBaはキャラクターの心情は分かりやすくて、理解に苦労するところがBcSよりも相当少ない。
 

午後6:19 · 2022年9月24日 / ブルーベル 花の名前

ファンダムWikiの各エピソードのTrivia、S6後半見てなかったから纏めて見たけど、ブルーベルって603Teaserで映される花の名前でもあったのか。ナチョとソウルの行く末が対比されてたのは気づかなかったな……
 

午後3:24 · 2022年9月25日 / モラルセンター

ベターコールソウルは、このモラルセンターであるキムのモラルがどんどん侵食されて、最終的にソウル爆誕起爆剤になるのが好き。侵食速度がSeason重ねるごとに加速してるのが縦で追うとよくわかるのも
 
 

午後4:48 · 2022年9月25日 / ウォルターとガスの類似性

先日ジミーとナチョの類似性を指摘されてうわああってなってたけど、BrBaでもウォルターとガスの類似性がhttps://breakingbad.fandom.com/wiki/Felina#Trivia の最後から2番目で指摘されててうわああってなった
 

午後8:11 · 2022年10月2日 / Breaking Bad時のインタビュー記事を読んで

Breaking Badの時のインタビュー記事とかあんまり読んでないのでぼちぼち手を出してるけど、当時のネット記事残ってるの有り難いね……

このTheHollywoodReporterのBrBa直後のPeter Gould

へのインタビュー、https://www.hollywoodreporter.com/tv/tv-news/breaking-bad-producer-walts-finale-639168/

「Is it redemption for Walt in a way?」て問いに
「In the end, does it redeem him? How can you redeem yourself after all this death? I don’t think it is redemption. But I think it is a tiny bit of insight.」て答えてて少し安心した。

直後「He had the chance over and over again to be a good guy.」とも。これはどっちもだよな。ジェシーはどうなんだろうか。


https://www.newyorker.com/culture/the-new-yorker-interview/vince-gilligan-wants-to-write-a-good-guy
こっちのNewyorkerのVinceへのインタビュー、こっちはBcS後の最近のだけど、ほんと良い記事。

Q
I rewatched the entirety of “Breaking Bad” recently. My love for Walter White has dissipated. And my love for Skyler White has only grown.
A
After a certain number of years, the spell wears off. Like, wait a minute, why was this guy so great? He was really sanctimonious, and he was really full of himself. He had an ego the size of California. And he always saw himself as a victim. He was constantly griping about how the world shortchanged him, how his brilliance was never given its due. When you take all of that into consideration, you wind up saying, “Why was I rooting for this guy?”

Breaking Bad、見直すとウォルター最初から傲慢で嫌な奴だなぁってなるんだけど、初見時はさほど思わなかったんだよな、たしかに。やっぱ癌宣告ってそれくらいのインパクトがあるのかな。最終話で死ぬまで死なないという事が分かってしまうと癌の恐ろしさよりもWaltの行動そのものに目が向いて……ってことなのかね。
それがthe spell wears offってことなのかな。

Skylerやその役者へのバッシングについてもVinceは心痛めてるよう。
Skyler叩きのミームは未だにBetter Call SaulのRedditサブレでも頻繁に見られるし、こっちの呪いは解けないのかねぇ。

あんま大っぴらには言いにくいけど、Better Call Saulで「弁護士パートおもんない、マイク・カルテルパートだけやってほしい」とか公言しちゃう人の大多数はBreaking BadでSkyler叩きやってるイメージがある。何の証拠もないけど。

そうじゃなくて、単純に弁護士パートに興味がない人なら、多分10年後とかにみれば全然印象変わって見えるんじゃないかなぁ、Better Call Saulの弁護士パート。自分も若い頃だとここまでハマれたかは割と怪しいし。
 

午前0:25 · 2022年10月19日 / 410 Insider Podcastの感想

ベター・コール・ソウル 今更だけどS4Ep10 WinnerのInsider Podcastを聞いた(読んだ)ので感想を。
1時間52分もあって非常に疲れたがとても面白かった。
#ベターコールソウル

1時間近くは集中して聴けるけど、それ越えると色々パンクして休憩一杯挟みながらじゃないと聴けなくなる……聞いていても単語を聞き取るだけで文章の意味が頭に入ってこない。もっと英語上手くなりたい。


■ソウル・グッドマンの哲学
Peter Gouldは、奨学金候補生の1人である万引き少女への演説をソウル・グッドマンの哲学と評する。そして、Esteemの中で泣いたジミーについてこう言っている。

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I think, you know, he's crying over Chuck and something that Bob said to me once he's crying over Chuck, he's also crying over what he's become.
He's crying over the fact that what he said to that girl, is what he really believes. And he knows that he knows that's wrong.
彼はチャックのことを思い出して泣いているんだと思う。ボブが僕に言ったんだけど、チャックのことを思い出して泣いている一方で、自分がどうなってしまったかについても泣いている。
自分があの子に言ったことが、本当に信じていることなのかっていうことに涙してるんだ。そして、それが間違っていることも知っている。
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自分はS6開始以前にこのシーンについて
https://twitter.com/TorysGirly/status/1508043205694324744
あたりのツイートでこう書いた。
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Winners Take It All。一度LoosersになってしまうとWinnersには返り咲けない。
でも、本当にそうか?Davis & Mainは拾ってくれたのに。あのままで居ればWinners扱いされる人生もあったのに。世界は本当は優しかった。それを自分で壊してしまった。

ジミーはこれ、忘れてるようにみえる。
<<<

ジミーは忘れてるって思ってたんだけど、Peterの言う通り、わかってるんだね。はっきりとかぼんやりとか無意識にか、わかってるからこそあの慟哭に至る。一歩手前まで行っておきながらなんで最後間違えるんだろう(自嘲)。

Peterの後にエグゼクティブプロデューサーのMelissa Burnsteinはこう言っている
>>>
Or what about always being outsider? I mean, I read it different, but it's like he is that's his lot in life and and it's going to turn him into someone he doesn't want to be. But like he just keeps getting forced up against that reality. And I think it's really, really painful.
あるいは、いつもアウトサイダーであることについてはどうですか?つまり、私は違う読み方をしたんですが、彼はそれ(※ソウル・グッドマンの哲学)が自分の人生の運命で、それが彼をなりたくない人間に変えてしまうような気がするんです。でも、彼はその現実を突きつけられ続けている。それは本当に辛いことだと思います。
<<<

Peterはこの意見も全部大好きだと言っている。よくよく考えると実は違う事を言ってなくて、同じことを言っているような気もする。
チャックやハワードのような、過去の過ちを認めない(とジミーが一部誤解している)相手から距離を取ったのはジミー自身だし、その哲学が間違っている事を(明確にかはともかく)承知でその方向に進んでいってしまう、進まざるを得ないジミー。悲劇的。

ソウル・グッドマンの哲学とは、詰まる所チャックが否定したジミーの悪い所そのものだ。
近道を好み、「Slippin' Jimmy with a law degree is like a chimp with a machine gun.」(109)を実践する。ゲームのように法を悪用する。人を傷つけても反省せず、暗い顔で悔やみもせず、謝るのを止めてそういう自分を受け入れる事だ。

念のために言っておくと、この哲学の強度もゼロイチではなく、グラデーションがある。Breaking Bad時代のそれが100%だとすると、410最後でのそれは50%程度だろうか?S5でハワードにしたようないたずらは大してためらいもしないが、この時点では他人の人生をぶち壊すような事は望んではやらない。勿論、Breaking Badで初登場時、バッジャーを殺すことを提案したような、人の命を軽んじるような事もしない。


■チャック(の病状)とジミーの関係
Podcastの流れで言えば前後してしまうが、最初の方、Teaserでのマッギル兄弟の過去のシーンについてVinceがこう言っている。
>>>
Chuck's Okay, when Jimmy needs help when Jimmy is a stumble balm and a loser and then chuck can feel superior
ジミーが助けを求めているとき、つまりジミーがつまずき、敗者であって、チャックが優越感に浸ることができるときは、チャックは大丈夫なんだ。
<<<

ジミーとチャックの関係について、いつか縦軸で纏めようと思ってたんだけど、そこで言おうと思ってた事。少し簡単に纏めてみる。609の感想( https://toorisugari3.hatenablog.com/entry/2022/07/21/213625 )であらかた書いていたかもしれないが今回はそれは見ないで。

そんなに読み取るのが難しい事ではないとは思うけど、チャックの具合が悪くなるのはジミーが司法試験に受かってから。410Teaser司法試験合格直後はまだ元気。
フラッシュバックで描かれるレベッカとの食事シーンも、1回目(205 1992年)はアルバカーキに来てすぐで郵便室勤めだからチャックはまだ電磁波過敏症ではない。2回目(305 2001年、101は2002年6月)はジミーは開業済みで、チャックは電磁波過敏症レベッカの携帯を飛ばしてしまう。

ドラマを遡ると、108ラストで久々の案件(サンドパイパー)に集中してジミーの事を意識していない時に、何の苦痛も無く外に出てジミーの車から必要な書類を見つける。
そこで一度症状は緩和するが、S2ではサンドパイパー案件でのジミーの粗探しや、メサ・ヴェルデ案件の住所改竄で自尊心を傷つけられまた悪化していく。そして行き着く305ラストのBreak down。
306でジミーの1年間資格停止が決まり、ハワードから「ジミーはどうせ自滅するからもう忘れて先に進もう」と言われ、自らDr. Cruzと連絡を取り、電磁波過敏症と向き合っていく。
ところがジミーが保険会社に法廷での失態をチクる。それをうけてハワードが自腹を切ってまでHHMから自分を追い出すという屈辱、そして310でのジミーの和解提案が決定的にチャックを壊し、自死に至る。


さらにその直前、Co-Executive Producer Diane Mercerの発言。
>>>
I mean, even the flashback we saw when they were kids. Chuck had this really kind of chilly edge to him Jimmy. Even though he was reading to him, you know, he was there was an edge there that is not present in this scene.
彼らが子供だった頃フラッシュバック(310 Teaser)でも、チャックは本当にジミーに冷淡なところがありました。たとえ本を読んであげていても、このシーン(410 Teaser)にはない冷たさがありました。
<<<
後で310のPodcast(2時間6分もある!通常1時間程度)もきかなきゃな、と。
この310Teaserでチャックがジミーにメイゼルの冒険を読み聞かせている時の冷淡さを、以前自分はあまり感じてなかった。というよりは、感じたけどより軽く考えてしまった。「the truth is you've never mattered all that much to me.(お前のことは昔からどうでもよかった)」というセリフが嘘であってほしかった。
410TeaserではDianeの言う通り確かに「冷たさ」は感じない。パーティーで先に帰ろうとして引き留められるあたりで多少の「気まずさ」は感じるが。

具体的にはこの最後のセリフがchilly edgeなんだろう。
>>>
Is she gonna be okay?
She'll be fine, Jimmy.
How do you know?
Just listen. You'll see.
メイベルは大丈夫?
大丈夫だよジミー
なんで分かるの?
いいから続きを聞いてろ
<<<
言葉も語調もそこまで冷たいわけじゃなくて、ちょっと冷たいかなぁ?というレベルだけど、410ではTeaserにこれを配置した上で、「you've never mattered all that much to me.」と言わせてるんだから、やはり「昔からどうでもよかった」というのはある程度の強度で真実なんだなぁ、と。
ジミーへ残した手紙(403)での「I can honestly say I never saw her happier than she was on that day.」もそれを踏まえると裏に嫉妬があるのだ。たとえ「You brought a shine to her life nothing else ever did, and I'm glad of that.」とジミーへの愛情を示す文章を続けたとしても。

この同時に存在する相反する感情を描くのがアルバカーキ・サーガの真骨頂の一つだと自分は考えていて、チャックはジミーに嫉妬し憎んでいる一方で、それなりに家族・弟として愛してもいる。後者は先に述べた「チャックが優越感に浸ることができるとき」に強く現れる。
その例がS1でチャックの家で寝てしまったジミーに枕を入れてあげたり毛布を掛けてやったり(102 108)する事や、シカゴ・サンルーフで捕まったジミーを助けてHHMで働かせた事、そしてこの410Teaserで宣誓式での保証人になったりジミーをベッドに運んだり翌日の朝食は何が良いか聞いた事などだ。

Better Call Saulではなくアルバカーキ・サーガとしたのは、Breaking Badでも同様の事が描かれているからだ。
ウォルターは、悪事を働く動機は家族のためから自己承認へと移っていくが、最後にスカイラーに「好きでやった」と言った時点でも、家族のためで「も」あった事は認識していたと思う。ゼロか1かではなく、グラデーションなのだ。
ジェシーへの愛憎も同様。ハンクとも最終的に敵対はするがそれでも殺してほしくない。それがガスを殺す動機となり、最終的にはジャック一党にハンクを殺されてしまう。

余談だけど、Vinceがチャックの墓でジミーが呟いていた「watermelon and pickles(群衆が何か話しているザワザワを演出したいときのセリフだそうだ)」を「peas and carrots」ととり違えた時にChris(番組ホストのEditor)がツッコミ入れる速度が半端なくてビビった。編集マンならではの読み込みのなせる業なのか。



■410Winnerが最終シーズン開始までで一番好きなエピソードだった理由
Podcastで語られていた事を絡めて改めて文字にしておきたい。

Teaserでチャックとジミーの関係が一番良かった時をみせる。弁護士登録宣誓式の保証人になり、お祝いのパーティーに出て、酔いつぶれたジミーを部屋に連れて戻り甲斐甲斐しく靴を脱がせたりしてベッドに寝かせ、明日の朝食は何がいいか聞き、一つベッドに並んで横になり、ABAのWinner Takes It Allを歌う。
こんな幸せの記憶の中にも、パーティーでマイクを取り上げて主役になってしまうというチャックの欲の深さ(サンドパイパーやメサ・ヴェルデ案件を我が物とした過去のエピソードの予兆でもある)まできっちりと見せているのが恐ろしい。

カラオケシーンでは、エルネストとジミーの下手ではあるが堂々としてかつ楽しそうな、見てる方まで楽しくなるような歌唱と、チャックの玄人はだしの歌唱を対比させ、チャックの(当時の)Winnerっぷりをも強調している。この後への布石だ。


そして時制は現在に戻り、チャックの墓の前で悲しむ演技をするジミー。何かを呟いているようにみせるために「Watermelon and pickles」などと呟く。語感やセリフの意味の無さは滑稽だが、やっている事はTeaserでの仲の良さ・幸福さとは真逆の、チャックの死すら利用しようとするジミーの姿だ。
そしてチャックの名を冠したニューメキシコ大学(UNM)法律図書室の式典を開き、UNMのカメラクルー達を使ってそれがジミーの寄付によるものだという噂を流す。
ここでパパドゥミアン判事を火事から救い出す妄想をジミーが垂れ流すのも、焼死したチャックを本当は助けたかったという仄めかしなのがニクい。相反する感情の描写だ。

そして聴聞会。ジミーは切り札として考えていたチャックからの手紙を途中で読むのを止め、「(Chuck )Could be a real son of a bitch.(糞野郎でもありました)」と、少し露悪的でもある本心を吐露する。チャックに認められたかったが、完璧主義で馬鹿には厳しい彼に認められるのは並大抵ではない。

少し(ドラマ上の)昔話を挟む。
この聴聞会で「even for a moment, if you made him proud... wow, what a feeling.(一瞬でもチャックに誇りに思ってもらえたら、それ以上嬉しい瞬間なんて無い)」というセリフがある。
ジミーにとってのこの瞬間は108の「Wait. "Us"?」のシーン(https://twitter.com/TorysGirly/status/1576540765517647873
)だ。チャックがサンドパイパー案件で役立ちそうな判例法を集めるように言い、さらに「it's a good opening salvo for us.(我々の闘いの火ぶたを切るのにはちょうどいい)」と続けた直後の事だ。「Wait. "Us"?」の後、ジミーは感激のあまり強くチャックを抱きしめる。一方のチャックは少しぎこちない感じだ。その理由はこの次のエピソード109で明らかになる。
ジミーにとっては兄弟関係が最高の瞬間なのだが、チャックにとっては違うという皮肉。チャックにとってのその瞬間は、Teaserでの時間か、もしかしたらシカゴで捕まったジミーを助けに行った時かなぁ、と想像している。


話を戻そう。ジミーの偽らざる本音を交えた演説は、資格復帰を決める委員たちだけではなく、キムの心も強く揺さぶり、涙を誘う。このエピソードの最後までは、キムは(殆どの)視聴者の分身でもある。
(聴聞会についてはblogの方でも1つのエントリにしてるのでそちらも未読ならみてほしい。「目標達成のための嘘としか本音を語れない」ジミーについて(も)たらたらと書いている。 https://toorisugari3.hatenablog.com/entry/2022/10/01/133710 )

聴聞会を終えたジミーとキムは資格復帰を確信してはしゃぐ。
ところがジミーが驚くべき事を語りだす。
「That one asshole was crying. He had actual tears. Jesus, Kim.(バカめ 1人は涙まで流してた)」
ここでキムが、そして視聴者も唖然とする。ジミーは委員だけではなく、キムも視聴者もみんなasshole呼ばわりしたのだ。なんて事だ!
委員の顔をみて、手紙じゃダメだと分かったソウルは流れを変え、ジャズの即興演奏の様にノリノリになったという。そして次のセリフ。
>>>
God, I could see The Matrix, you know? I was invincible. I could dodge bullets, baby.
(字幕)超人的なパワーが湧いた きっと弾もよけられたよ
<<<
ここまでの他映像作品への言及の中で一番新しいんじゃなかろうか、このマトリックスへの言及。
日本語では(確か吹替も)マトリックスという名前は出さなかったが、「弾もよけられた」で連想した人も多かったんじゃなかろうか。調子に乗りまくったジミーがよくでている個人的に大好きなセリフ。

キムも視聴者も置いてけぼりにして、ジミーことソウルの独演会は続く。聴聞会で「I'll do everything in my power to be worthy of the name McGill.(マッギルの名に値するよう 最善を尽くします)」と言った直後なのに、「朗報ですよ」と話しかけてきた職員に、マッギルという名はもう使わない、と屋号変更の申請書を要求するジミー。

キムも視聴者ももう何が何だかわからない。待って、どういうこと?というキムにジミーは指で二丁拳銃を作り「It's all good, man.(“ソウル・グッド(すべてよし)マン”だ)」と決め台詞。

※ちなみに一応解説しておくと、上の字幕での表記だと、最後の「マン」がウルトラマンとかスーパーマンみたいな男を表すような語に見えるが、実際は間投詞としてのmanだ。Weblio辞書では以下のように書かれてる。
>>>
《口語》 [呼び掛けに用いて] 君,おい,こら 《★【用法】 状況に応じて怒り・いらだちなどを示すこともある;
<<<
君、おい、こらはこの場合あまりしっくりこなくて、「なぁ」位の感じ?自分が初めて聞いたのはL4DでのLouis(面白黒人のステロタイプみたいなキャラ)のセリフだった気がする。あの頃は吹替派だったので。

別のドラマ(アトランタ)でそのまま「It's all good, man.(大丈夫だよ)」と発音されてる部分を張っておく。
https://twitter.com/TorysGirly/status/1562799035999993858




初見時は「今のなに?え?何を見せられたの?」と混乱の極致に陥れられ、ソウル・グッドマンの屋号を持つ弁護士が誕生したという事を認識する事も困難だった。Teaserでマッギル兄弟の最高の時を見せておいて、今のチャックを馬鹿にするジミーを聴聞会工作の場面で見せる。そして聴聞会では改悛したと思わせられてからのコレだ。高低差がハンパではない。
「考え得る限りベストのさらに上を行く」「見えない角度から殴られた」そういう感じだった。
再視聴時でも、弁護士資格復帰という目的達成のためにチャックの死に向き合わず、寧ろその本音を逆に利用までするジミーの哀れさが胸を突く。

これが自分が410Winnerが一番好きなエピソードだった理由である。
※最後まで終わった時点では、613>609>410>510


あまり自分が言及しないもう一方の裏社会サイドも少し触れておこう。
マイクには責任がある。
スーパーラボ建設を請け負ったこと。ヴェルナーを信じると言ってしまったこと。
にもかかわらずヴェルナーはその信頼を裏切り、知らずにではあるがラロとの接触までしてしまう。それは大ボスであるガスの逆鱗に触れ、ヴェルナーの命運は尽きてしまう。
ヴェルナーの妻の安全を保障するマイクは、603でのナチョの父の時と重なる。マイクが自分でヴェルナーを殺すのは余計な被害を出さないためでもある。
このにっちもさっちもいかなくなる感じは、トゥコやヘクターを隠れて攻撃し、結果ガスの言いなりにならざるを得なくなったナチョと共通するものだ。

ジミーとキムをのぞけば、Better Call Saulで一番好きなキャラクター、ラロ。
Breaking Badでは208で1度名前が出ただけのキャラクター。Peter Gouldはこれを書いたときに名前以外の設定は皆無だったと言っている。
Better Call Saulでは408最後で唐突に登場し、409では大胆さこそあれ、暴力性は見せなかったラロ。
トラベルワイヤーでの天井裏に上って防弾ガラスを突破しての店員殺害で一気にそのサラマンカらしさを見せつける。丁寧な監視・追跡。今回はマイクに一歩先を行かれてしまうが、ヘクターにトゥコ、カズンズとはまた違ったスタイルのサラマンカ。魅力的な(面もある)ソシオパス。



このエピソードでは、主人公であるジミーと、もう一人の主人公であるマイクが共に、Breaking Badでのそれぞれに近づく大きな段差を登る。このシンクロニシティも410 Winnerの大きなポイントかもしれない。
彼らのBreaking Badでの人格が完成するのは、ジミーは609ラストキムの部屋のシーンが終わった後、マイクは505ラストと506の間だと個人的には思っている。


■余談
◇余談その1。ジミーのカラオケの下手さは少し誇張もあったようだ。編集のChrisがこう言っている。
>>>
I picked you know, some of the worst performing the most perfectly out of tune sometimes we stuffed a little different word here and there just to make it as just perfectly bad as we could.
ただ可能な限り完璧に下手に聞こえるように、最悪のパフォーマンスや完璧に音を外したもの、時にはちょっと違う言葉(?)をあちこちに詰め込んだんだ。
<<<
「a little different word here and there」の辺りがよく理解できない。編集で違うテイクからつなぎ合わせたという事なのだろうか?分かる人がいたら教えてほしい(前後が無いとわからないかな……?)。


◇余談その2。このエピソードでは法曹界と裏社会のシーンでは実は時系列的な乖離がある。fandom wikiによれば、このエピソードの日付はMarch 22 to April 1 (Jimmy)(nine days)March 31 (Mike)(one day)となっている(Teaserは除く)。この2つをどう見せるかは結構苦労したようだ。
そもそもこのエピソードはこれまで最長の60分で、要素が多く、通常Act4までの所Act6まである。Podcastでは監督のAdam Burnsteinの手際の良さをとても褒めている。

だから、厳密にはタイトルコール以降の、以下に挙げるシーンの間では実際はせわしない時系列の移動が行われている。
「スーパーラボ建設労働者たちの宿泊施設」
「チャックの墓」
「鶏舎を監視していたラロがガスの後を追い、マイクとトラベルワイヤーで落ち合う(ラロはここで尾行対象をマイクに切り替える)」
「法律図書室の記念式典」
「マイクがラロの尾行を駐車場の機械を詰まらせて撒く」
「HMMでの奨学生選定会議」
「ラロはトラベルワイヤーに引き返し、マイクはヴェルナーを見つける」
「キムのアパートで控訴聴聞会(appeal hearing)での作戦を練る」
「郊外の丘でヴェルナーを殺す」
「ガスが初めてゲイル・ベティカーにスーパーラボ予定地を見せる」
「控訴聴聞会」

しかし、この段階では法曹界と裏社会には話の繋がりは全く無いため、その2つに分けて考えるとどちらも時系列順に見る事になるので、視聴者的には普通混乱なく観られるはずだ。
全てを再検証するのは大変で今はできないが、ここまで大幅な差はなくても、法曹界と裏社会との間での細かい時制の行き戻りはあったのかもしれない。
 

午後11:42 · 2022年10月20日 / 310 Insider Podcastの感想

ベターコールソウル S3Ep10のInsider Podcastを聞いた(読んだ)ので自分が気になる所を抜粋しての翻訳(精度は期待しないで……)と感想を。最長?の126.5分。+S3Finaleインタビュー記事についても。

注意: Breaking Bad/Better Call Saul全編のネタバレをします。
あとまたあまり纏める気もなくてダラダラ垂れ流してるので適当に興味ある所を拾い読みお勧め。


Insider Podcast、最初の1時間はほぼ裏方の話。ライターが現場に居る意味(撮影現場で何かを変えたい、となった時にそれが可能か否かを判断できるのはライターズルームでの作業でその辺がわかってるライターだけ)を語ったり、ボブがスケッチコメディの脚本とドラマの脚本の違いを話したり、Mr. ShowにErin Brill役のJesse Ennisが4歳の頃に出てたとか(彼女の父親はS6で仲裁人の元判事の影武者役としてBcSに出演してる)、あと音声担当の有能さとか。Peterがこの仕事を始めた時は「野球の映画・ドラマと法律関係のコンテンツは世界的には通用しない」と言われていたらしいとか、それでも305は大丈夫でよかったとか。マイケルマッキーンの有能さ(ボブやレイよりもリハーサルが少なくて済む。恐らく自身だけでやっている)とか。チャックが家を壊すシーン、あれはセットだから壁の裏には何もなくて、壊すにあたって中身を入れるのが大変だったとか。



ここから自分が知りたかったことについての発言をそれぞれ抜粋(基本的には連続した発言ではない)していく。
あらかじめ断っておくが、自分は英語のスキルが極めて低いので、誤読・誤訳は絶対してると思う。Otterで文字起こししたものをDeepLに訳させた(普通の記事と違って滅茶苦茶になりがち)のを手直ししてるが、ちゃんと訳せないので省略してるところもある。語尾も面倒だから統一させてない。
可能ならPodcastを聞いてほしいし、もし間違いがあれば指摘してもらえると物凄く嬉しい。

引用部は>>>と<<<で囲う。カッコ内は基本自分が入れた注釈


>>>
Gennifer( Hutchison、310のライター):
このキャラクター(※チャック)は......とても嫌い。なぜそこまで真面目一辺倒なの?それを伝えられるのはすごいし、このエピソードでの彼は素晴らしい。そしてそのカットを見て、最後に予想外に激しい感情移入をしてしまいました。というのも、私はこのエピソードの内容をずっと考えて生きてきたのですが、それには本当に強い衝撃を受けました。 私は今までで最もあのキャラクターに共感し、後悔しました。 そしてその多くは、マイケルと彼の演技によるものなのです。


Vince:
自分にとってとても重要な質問をするのですが、多くの人が(俳優ではなく、マイケルでもなく)チャックというキャラクターを嫌っているとききます。
多くの人が、父・母、手紙をくれた人、私が話した人が、道で私を止めた人が、みんながチャックを嫌ってる。私もチャックなんて大嫌い。

Bob:
私はチャックが嫌いだ。(I hate Chuck.)
私たちは皆、問題を抱えている。でも、それを多少なりとも克服したり、前進させたりしようとするのが私たちの挑戦なんですが、彼は挑戦していない人のように見える。

Gennifer:
私は、つまり、それがチャックの鍵であり、なぜ彼が悲劇的なのかだと思うのです。そして、このエピソードと、それに至るエピソードもそうだと思います。それが私たちが話していたことなんです。

クリスが言ったように(※ここではは取り上げてない)、もしあなたが精神疾患を扱ったことがあるなら、あるいはあなたの人生に精神疾患を持つ人がいるなら、それは信じられないほど複雑なことで、誰かの人生には必ず、これだ、これはこういうものなんだ、変えられないんだ、というような時期があるものです。もちろん、それは真実ではありません。
でも、その中にいると、そんなことはわからないし、あるキャラクターと向き合いながら、どうすればその経験を尊重するような形で彼の物語を語れるのか、答えはないんです。

そして今、チャックは、前のエピソードでいくつかの前進を遂げました。
でも、彼の中には完全に変わることを許さないブロックがあるみたいで、彼とジミーが何かあってもそれを押し通すことはできないし、このエピソードで彼が悪化していくのを見ることになるんです。
このエピソードでは、彼が少なくとも正しい方向に向かう動きを見せているのに、そのプロセスに完全にコミットしていないことが、このエピソードとそれを見たときに動揺した理由だと思います。
この事態に対処する方法があるのに、彼は何らかの理由でそれができなかったり、その気がなかったり、自分の中に深く入り込んでいて、その一歩を踏み出すことができなかったりするんです。

そして、ジミーと比較すると、前のエピソードではソウルに近づいていき、このエピソードではジミーに戻ろうとしている。
ブレイキング・バッドを見ていれば、ジミーが戦いに敗れ、ソウルになり、そのプロセスがどう機能するのか、そしてそれらをできるだけ複雑でリアルなものにしたいと思うのは当然です。
これは本当に難しいことですが、だからこそこのエピソードが悲劇的に描かれているのだと思います。これほど感情的に響くことはないと思います。

Vince:
何が私を悲しませるか 。というのも、私はいつもこの作品では殆どの視聴者よりもこの悪魔に少し同情しているのです。彼はとても良い前進をしていて、彼はそれらを望んでいました。
彼は、最も主なものは弟だと言っています。そして、あなたが最後に兄を訪ねに行くところは、とても美しく演じられていますが 視聴者はそのようには見ていないと思う。最後に兄を訪ねに行くんですね。まあ、何が最後になるのか、それは誰にもわかりませんが。つまりバッドエンドはきれいに見えるということです。そのままにしておいてもいいかもしれませんが。

そして、あのシーンでのマイケルとボブの演技はとても素晴らしいものでした。

しかし、チャックはあれを何の強い感情もなく言っているのです。
彼は「ジミー、君は僕にとってそれほど重要な存在じゃなかったんだ。君は決してそうではなかったんだ」と言った時、どんな感情もそこには無いんです。ネガティブな感情も良い感情も。

でも彼は、あまりにあっけらかんと言うので、冷たささえ感じないんだ。信じられないほど冷たいんだけど、その根底にある冷たさや怒り、苦味といった余計なものが感じられないんだ。
それは完全にありのまま。でも、僕が読んだ限りでは、彼は十分に賢い男だから、もしThe Revenge is a dish best served cold(復讐は冷めてから食べるのが一番おいしい料理)とか、そういう表現があって、何の味付けも必要ないということをわかっている、ということだったんだ。

ただ単に、できるだけ平然とそれを言うことが、世界で最も悲しい話になるのだ。そして、私自身は、他人にどうこう言うつもりはない。でも、一ファンとして、一視聴者として、この男は病気になったのだと私は思うし、私たちのドラマでの表現は、現実の精神疾患を正確に表現していると思ってほしくない。これは、私たちのバージョンでは、例え話であり、メタファーであり、とても芸術的で熟練したものです。(※ドラマ表現を現実に軽々しく当てはめてほしくないという事だと思う)

でも、この男は病気なんです。彼の魂が病気なんです。それは彼の脳ではありません。それは彼のものです。彼の中の最も善なるものは、彼がより良い人間になり、弟を愛し、弟に対してより寛大になり、より親切になり、より理解することを望んでいますが、彼はそれができないのです。
でも、それができないとき、彼はとても意地悪で酷くなり、病気が悪化していき、そしてただただ悲しい結末になってしまうのです。

まだ考えています。観たのは1週間前でした。本当に悲しいです。でも、私が読んだ限りでは、彼は今よりも良くなりたいと思っているように思えたのですが、人々はこの男にもう少し共感するようになるのでしょうか。チャックはただ、できないだけなんだ。プライドやエゴ、そして嫉妬心、弟に対する生々しい嫉妬心を抑えることができないだけなんだ。


Peter:
このエピソードはいろんな意味で怖いエピソードでした。普段私たちのキャラクターは自分自身と距離を置いていましたが、特にジミーとキムはとても生々しい。

このエピソードでは ただ生々しいだけのシーンがいくつかあるんだ。むき出しの神経の様な。

ジミーはとてもオープンなんだ。少なくとも私が見たところ、彼がチャックの家に入ってきたとき、ジミーは本当にチャックとやり直したいと思っているようにみえます。関係を修復したいんだろう、私にはわかる。
そして、そう、彼はとても傷ついているんだ。ジミーはチャックと居たいんだ。もしチャックがあんなに傷つくことを言わなければ、ね。ジミーがどれだけ傷ついたか見るのは本当につらい。


Kelly( Dixon S3までの編集者 S4からは本作の編集役から離脱するが、Podcastには視聴者ポジとして登場してる時も):
ジミーとキムのことで まだ話してないことがある。
交通事故が起きてから ジミーが直面する変化と現実 。合同事務所を閉め、法律業務から離れたこと、キムのアパートでの仮住まい、2人が犠牲したこと。
私の解釈では ジミーは彼女に何が起こっているか理解していなかった。そして彼女は彼を助けるために余分な仕事を引き受けた。
そうなんだ、そんな風には(※これまで)思ってなかった。
ボブが見てないのは知ってるけど、凄いシーンだというのはしってるでしょ?

Bob:
Ep05以降はまだみてないんです。だから、ちょっと、ストーリーが分からなくなるんです。だって、今自分がいるまさにその瞬間を演じているのだから、先週何をしたかなんて考えていない。そして、それが終わると、これまでのことを全部忘れてしまう。そして、それが上手くいっているのを見るのが楽しいんだ。このショーを本当に楽しんでるよ。

ジミーとキムについて思うことは、このシーズンが大好きで、彼らがお互いに楽しみ、キムからサポートし合っていることが大好きです。前シーズンでは(209)、2人になった車の中では怒ったが、チャックの前ではジミーに味方した。
彼女は自分の目の前で彼を非難し、何が起こったかを説明する。
彼女はジミーの味方をする。その瞬間から、この二人はチームであり、どちらかが悪いことをしても、お互いをサポートするんだ、という特別なレベルになる。
そして、彼女は彼と離れないし、(※付き合う事で)私が弱くなったとも言わない。このクソ野郎って言ってるけど、キムは彼の味方をする。私たちは同じチームなんだ、と。

そして、そこにはとてもポジティブな一面もあって、ジミーは彼女を(非道徳的な事に)あまりに付き合わせることを悪いと思っていて、2人が上手くいくよりも、彼女が上手くいく事を望んでいると思う。

私の目から見ると、彼らはまだしないといけない事がある。まだまだ努力しなければならない。まだ、いくつかのことを乗り越えなければならない。でも、彼らには多くの共通点があり、十分な共通点がある。人間関係や、浮き沈みを乗り越えていくことの難しさを考えると、不思議なことに、彼らは本当にかなり素晴らしい関係を築いているように思えるんだ。


お互いが困難と喜びを認識し、それをうまくやり遂げようとする、本当に素晴らしい関係なのです。この2人を正しく表現するように演じる事はとても素晴らしいことです。


そして、その様子を見ると、ワシントン流のやり方で、(※Breaking Badの時代では)ソウルとキムが結婚して、彼女は別の場所にいて、今はサンタフェにいる、という可能性もあるね。そして彼らは......つまり、マーリー・マトリン達なんだ。メアリー・マトリン(共和党リバタリアン党の政治コンサルタント)の&ジェームズ・カーヴィル(民主党の政治コンサルタント)夫婦。(※家庭では政治の話はしないらしい)
結婚して、2人の素晴らしい子供がいて、お父さんはアルバカーキに行って、ゲス野郎で。お母さんはサンタフェに行って、絵の具とか油絵とか、でも州でもトップクラスの事務所を運営してるとか想像する。


Peter:
これは、聞いたことがあるなかで最も陽気なバージョンです。私はこのアイデアが好きです。

<<<

そしてフランチェスカ役の人を褒めたり。

また(自分が注目したい所を)引用
>>>
Gennifer:
ええ、ティーザーは私たちが考えたものなんです。エピソードを分割するとき、ティーザーから始めることもあるし、結局、エピソードの内容がもっとよく分かってから、最終的に、テーマ的にエピソードとうまく関連するものがあるかどうか、確認することもあるんだ。さらにさかのぼるというアイデアも気に入っています。
この2人がある種の感情的なレベルで関係する瞬間があり、チャックがジミーの面倒を見るというアイデアはとても魅力的だったけど、お涙頂戴や感傷的になるのは避けたかったんだ。だから、ジミーが質問したときに、チャックがちょっとだけイラッとするような要素もあったんだ。ジミーが「彼女は大丈夫なのか」と言うときも、「もちろん大丈夫だ」ではなく、「ちょっと聞いてくれ」という感じなんだ。

Peter:
このエピソードはとても感情的なので、Genniferがいろいろと相談にのってくれたのを覚えています。このエピソードは、私にとって、その点では厄介なエピソードでした。
しかし、最初のピッチ(提案)は、それがどのように生まれたかは覚えていませんが、テントから後ろに下がって、裏庭全体を見せることでした。
そして、ずっと考えていたのですが、これは悪いことではないと思うのです。ある意味、スピルバーグのような感じです。ある意味、変な形でロマンチックにしているような気がするんだ。

そして、おそらく誰かがジェニーに、あのランタンで閉じるというアイデアを思いついたのですが、それはあそこに置かれたとても重要なものになったのです。

Gennifer:
ええ、私はちょうどそれを逆にしようと提案したと思います。


Chris(McCaleb 当時Co-Editor、S4以降のEditor):
あのね、ねえ、本当に、あのTeaserはエピソード全体に、振り返ってみればシリーズ全体に影響を与えているんだ。
そして、チャックが「君は僕にとってそれほど重要な存在ではなかった」と言ったとき。私たちは知っています。それは、嘘じゃない。そして真実でもないのです。
しかし、たとえ彼がそれを信じたとしても結局のところ、彼のすべての行動において、チャックは自分自身と自分の目標、そして自分のニーズに集中してきたと思うからです。
そして彼は、彼をケアしようとした人生のすべての人を遠ざけた。

このエピソードを始めるにあたって、本当に感動的な方法だと思いました。
このエピソードは、どう見ても究極の権威、すでにひどく壊れているこの関係の究極の解明に関わるものです。そして、それが粉々に砕け散る前に何かを見ることができるのは嬉しいことです。

どうみてもこのエピソードは、既に散々に壊れていたチャックとジミーの関係の究極の解明であり根拠なんです。
そして、それが粉々に砕け散る前に、何かを見ることができてよかった。
<<<


(301での)メイベルの冒険はVinceの母親が弟のPatrickに読んでいた事へのエールで、ただのお遊びだった。
310でチャックが使う野球バットはフラッシュバックのテントの中にもあった。

Patrick Fabianを褒める

ブロックバスター(レンタルビデオ店)のシーンについてあれこれ。全部作り上げた。長いレンズで平面的にした。



>>>
Gennifer:
彼女が動揺しているのは、文字通り、私が無責任で、誰かを殺していたかもしれないからです。それが、私たちをスローダウンさせるきっかけになったのだと思います。

Peter:
このポッドキャストの昔のエピソードででボブが言っていたことが面白くて好きですね。それは、ジミーが人を傷つける時は、傷つけてしまうという事が頭になく、ソウルが人を傷つける時は彼は人が傷つくのを分かってやってる。かまうものか、と。
だから、私はあなたのやり方が大好きです。キムは良い人です。ただ、寝不足で運転するのは飲酒運転と同じで危険です。だから、やめましょう。
<<<


あとカルテルサイドの話。
暗いシーンをどうとったかとか。

個人的にはカルテルサイドの話はあまり深読みしたくなるところが無くて……殆どが自明な論理や動機で進んでいくので。
撮影のしかたとかはこの半年で随分知識が増えたけど、まぁそこまで詳しいわけでもないし語れる事も無い。



※ここまでは一応1回だけ推敲もしたが、ここ以下はそれも無し。
■ここでPodcastの内容の紹介は終わって、自分の理解との一致点や差を探っていきたい。


◇チャックを嫌う事
みんなチャックを嫌ってる。制作チームのみならず視聴者も。当然だとは思うけど、それでもやはり自分はチャックへの共感・シンパシーはある。初見時は余りなかった気もするけど、周回するにつれてそれは大きくなった気がする。

Gennifer「私は今までで最もあのキャラクター(※チャックの事)に共感し、後悔しました」
Vince「殆どの視聴者よりもこの悪魔(※チャックの事)に少し同情している」
等、制作陣もチャックへの共感・同情をみせている。(そもそも共感ゼロのキャラ殆ど居ない)

勿論チャックは嫌な奴だし、ジミーへの仕打ちは酷い。それでもそんなチャックと、自分を照らし合わせてみて、自分の中にチャックは居ないと断言できる人もまた少ないと思う。
嫉妬や妬み、自分が主人公で居たいという感情は持ち合わせている人の方が多数派だろう。
だからとてもチャックは人間的なキャラクターに思えるのだ。
チャックが嫌いなだけの人にも、同情・シンパシーは無理でも、チャックを「哀れな人」だと思って考えてみてほしい。


◇チャックの問題
306以降、チャックの電磁波過敏症は改善の兆しを見せていた。
だが、保険料値上げを許せなかったがゆえにHHM・ハワードから切られる事になり、また悪化の道をたどる。

Gennifer「彼の中には完全に変わることを許さないブロックがある」「このエピソードでは、彼が少なくとも正しい方向に向かう動きを見せているのに、そのプロセスに完全にコミットしていないことが、このエピソードとそれを見たときに動揺した理由だと思います。」「この事態に対処する方法があるのに、彼は何らかの理由でそれができなかったり、その気がなかったり、自分の中に深く入り込んでいて、その一歩を踏み出すことができなかったりする」
Vince「彼の中の最も善なるものは、彼がより良い人間になり、弟を愛し、弟に対してより寛大になり、より親切になり、より理解することを望んでいますが、彼はそれができないのです。」「プライドやエゴ、そして嫉妬心、弟に対する生々しい嫉妬心を抑えることができないだけなんだ」


ここでGenniferがいってる、「変わる事を許さないブロック」や「何らかの理由」はジミーへの(本来の意味での)コンプレックスだ。
305の証人席で言った「He'll never change. Ever since he was 9, always the same.(ジミーは絶対変わらない。9歳の時のままだ)」というセリフは、この時点では正しいが、同時にチャック自身にも当てはまる。ジミーへのコンプレックスを克服できないがゆえに、チャックは自分を追い込み、死に至ってしまった。

「本来やった方がいいのにどうしてもできない」という事も人間ならいくつか思い当たる事があるんじゃないだろうか。そういう事に自覚的だとチャックへの同情・共感のハードルは下がる。Vinceが言うように、チャックへの同情が視聴者の間でももっと広がってほしいなぁと思ってる。結構ボロカスに言うのを見る事が多いので。


Peter「ジミーはとてもオープンなんだ。少なくとも私が見たところ、彼がチャックの家に入ってきたとき、ジミーは本当にチャックとやり直したいと思っているようにみえます。」

310でジミーがチャックを尋ねるところ、ジミーは本当に兄弟関係を改善したいと思ってて、まさにそれがチャックの自死のトリガーとなってしまったという事を別の機会に書いたのだが、Peterとも解釈一致だ(そう表現してるから当たり前?)。
ここでは取り上げなかったけど、Peter自身もMr. Showやw/ Bob & Davidのファンだそうだ。610以降のタイトルコールは影響されたのかとか聞いてみたいなぁ。


おでんさんのBreaking Bad時代にソウルはキムと結婚して、ソウルはアルバカーキ、キムはサンタフェで上手くやってるって説、310時点ではまだやろうと思えばあり得た筋。そういう想像もするんだ、とびっくり(?)した。



Gennifer「この2人がある種の感情的なレベルで関係する瞬間があり、チャックがジミーの面倒を見るというアイデアはとても魅力的だったけど、お涙頂戴や感傷的になるのは避けたかったんだ。だから、ジミーが質問したときに、チャックがちょっとだけイラッとするような要素もあったんだ。ジミーが「彼女は大丈夫なのか」と言うときも、「もちろん大丈夫だ」ではなく、「ちょっと聞いてくれ」という感じなんだ。」
Chris「本当に、あのTeaserはエピソード全体に、振り返ってみればシリーズ全体に影響を与えているんだ。
そして、チャックが「君は僕にとってそれほど重要な存在ではなかった」と言ったとき。私たちは知っています。それは、嘘じゃない。そして真実でもないのです。」

これはまさに自分が310のPodcastを聞こうと思った動機の1つ。先日410Podcastの感想では、この時点でもやはりJimmyへの嫉妬心はあるんだなぁと解釈してたんだけど、少なくともGennifer(やライターズルーム)のなかではそこまで重い物ではなかったのかな。でも、「年の離れた兄が弟に本を読んであげるハートフルなエピソード」ってわけでもない、絶妙な匙加減というか。

ただ、Chrisが言うように、チャックにジミーへの愛情が無かったというのは嘘だし、愛情があったとだけ言うのも嘘。これも410Podcast感想での自分の解釈と一致してて嬉しい。相反する感情が同時に存在すること。普遍的な事だと思う。



S3は305Chicaneryが一番の山場みたいに扱われて、実際それは否定はできない。
でも、想像や考えないといけない余地が多いのは310の方が上だし、なんなら302,303あたりも305よりも上かもしれない。

次は110,201あたりをきこうかな、と思ったが611以降を読んでないのを思い出した……


■S3フィナーレのインタビュー記事より
ここでの引用は訳さないのでDeepLなり自力なりで読んで欲しい。

◇VultureのGenniferへのインタビュー
https://www.vulture.com/2017/06/better-call-saul-season-3-finale-interview-gennifer-hutchison.html

▽チャックの死について
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I don’t think a lack of dignity does that. To me, it’s being so rigid in your life and unable to get past that. I always look at that from a place of empathy. It’s that thing of, “It could be me.”
<<<
上でもかいたが、“It could be me.”というのが大きなポイントで、そこを受け取れたのは嬉しい。


▽「お前の事など昔からどうでもよかった」について
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Is it also fair to read Chuck’s “You never mattered to me” admonishment of Jimmy as a way of placing him at a protective distance?
What I love about those scenes, and that one in particular, is that there are so many different perspectives. Everybody is more than one thing, and we say things for multiple reasons. In that moment, part of it could be pushing Jimmy away in a protective way. Another part could be, “I just want to hurt my brother more than anything.” I think it’s all those things. Whatever speaks to the viewer most is completely valid.
<<<

いろんな受け取り方・解釈の仕方が出来るのは良い事だと思っているが、ジミーを守るために突き放したという説は初めて聞いたし、全く頭に無かった。
あのシーンは実際に自死する日の数日前の話で、個人的にはあの時点でチャックは、自分に自死に至る可能性があるとは全く思っていなかったと思うからだ。

Genniferはもう一つの理由を、“I just want to hurt my brother more than anything.”と語っているが、これにも自分はあまり納得できない。
自分の解釈だと、あの時点でのチャックはジミーにしてやられた事とHMMから追い出された事が原因で、虚無というか、世界には自分一人のような孤独感に苛まれ、過去にいくらかはあったはずのジミーへの愛情すら否定してしまったのだと考えている。
そこにはジミーを傷つけようという気も守ろうという気もなく、ただ自分の黒い感情と反射的な自己防衛反応だけがあるのだ。


こちらは質問の方
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Q:
The finale’s theme might be powerful men obsessing over what they’ve built.
<<<
Genniferはチャックの事にしか言及しないのだが、よくよく考えると裏社会サイドの話ではナチョの謀略でヘクターが事実上権力の座から退場する。一命はとりとめ、権威としては存続しはするのだが、法曹界サイドのチャックの退場とシンクロしていたんだなぁと、これまで自覚してなかった事に気づいた。


◇VinceとPeterへのインタビュー
https://www.hollywoodreporter.com/tv/tv-news/better-call-saul-season-3-finale-explained-1015384/

▽視聴者心理の把握について
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Peter:
And frankly, I know the audience doesn’t particularly care for Chuck McGill, but I really enjoy writing Chuck McGill and thinking about Chuck McGill. I find him fascinating. So the idea that we were heading to this inexorable conclusion to this character was really something that took me quite a while to get my head around.
<<<

「I know the audience doesn’t particularly care for Chuck McGill」。制作チームはインタビュー記事とか読んでると視聴者の感情や感想をかなり正確に把握してると思う。だからこそ、説得力を持ちながら意外性の強いストーリー展開をする針の穴の様な小さな可能性を見つけられるんだと思う。


▽全然関係無いけど、昔ファミコンであったSpy vs Spyの元ネタへの言及が
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We have a reference that we sometimes make in the writers room, which is Spy vs Spy. If you remember those old Mad Magazine cartoons and there are the two spies with crow faces and they’re always playing tricks on each other and one is always getting the better of the other.
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元ネタがCartoonsだったとは知らなかった……ゲームもファミコンがオリジナルじゃなくて、移植だったのか。ン十年越しの真実。関係無くてすみません。


▽7分間あるチャックの家解体シーンについて
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Believe it or not, the version you see is considerably shorter from the first version we had.
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特に見ててなにか気づきがあるシーンではないんだけど、初回はともかく、チャックへのシンパシーを得てからは見るたびに心を抉られるきつい7分間になってしまってる。本当にサディスティックな制作チームだこと。
チャックへのシンパシーが無い層には退屈なだけだったり、逆にチャックが壊れるのを楽しめたりするのだろうか?

チャック役のMichael McKeanはあのシーンを演じるのが楽しかったと言っている、とこの引用の直前でPeterが言っている。あんな表情しながら楽しんでるの、役者ってすごいですね。(下で本人の言も取り上げる)


◇Michael McKeanへのインタビュー
https://www.nytimes.com/2017/06/19/arts/television/better-call-saul-finale-michael-mckean-chuck.html

▽回りの人間を傷つけるのはチャックも
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Q: In their final conversation he tells Jimmy that all he ever does is hurt people around him. Couldn’t you say the same about Chuck?
A: Absolutely. Chuck’s not a very self-aware person. He’s in his own driver’s seat, and everybody else on the road is [a jerk].
<<<

これは前から思っていた。チャックがジミーとキム以外の周りを傷つけた事は大きく3つある。
メサ・ヴェルデ案件で住所が改竄された時に、自分の正しさに固執し、クライアントの都合を考えなかった。
・ジミーを追い詰めるためにアーニーを利用し、結果HHMから追い出した。
・305での、法廷での失態を保険会社に知られ、保険料の値上げを渋って実務からの引退を提案したハワードに訴えを起こし、取り分を要求した。支払えないはずだから引退提案が取り下げられるとの観測だったが、ハワードは借金してまでチャックを排除。

▽どうでもよかった発言について
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Q: It revealed his character in that moment but it also revealed the brothers’ closeness and similarities, in an odd way. They’re both abusive people.
A: But also Chuck tells a great big lie when he says, ”The truth is, Jimmy, you never really mattered to me much.” We’ve been watching for 30 hours how central Jimmy has become in his life, or at least part of his life. And how he has associated it with his own troubles, in a way he never has to nail down. So Jimmy mattered a lot in lots of negative ways, and in fact preoccupied Chuck to a certain extent.
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「Jimmy mattered a lot in lots of negative ways」。ポジティブな意味でのJimmy matteredがあった事は上でも言及したが、たしかにネガティブな意味でのJimmy matteredは、寧ろそれがメインというか、それしかないレベルだった。自分的には盲点だったな……そこは別に考えていたので

▽家を壊すシーンについて
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Was it fun? Yes, it really was. [Laughs.] I remember being a kid watching people tear down a house and thinking, man that would be a great job. So I did enjoy the activity of it.
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まぁ確かにものを壊す事にはある種の喜びがつきものではある。あの痛々しいシーンを内心では楽しみながらやっていたのかと思うとなかなか……


◇評論家Matt Zoller Seitzの批評
https://www.vulture.com/2017/06/better-call-saul-season-three-finale-review.html
▽どうでもよかった発言について
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I wonder if the final confrontation between Chuck and Jimmy also represents a transference of resentment from a figurative Judas-brother (Howard) to a biological Judas-brother (Jimmy). Chuck was a mentor to both men. Maybe when Chuck verbally erases Jimmy, he’s working out his hatred of Howard moreso than his hatred of Jimmy. “You never really mattered all that much” rings much more true when you picture Chuck saying it to Howard.
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あの発言はジミーよりもハワードに対して言いたかったことではないかと。
チャックはジミー・ハワード両方のメンターでもあり、直近でチャックに一番ダメージを与えたのはハワードだ(その原因がジミーにある事をチャックは知らない)。これは突拍子もない意見でもない。面白い。


◇PeterとMichael McKeanへのインタビュー。インタビュアーはS5,6ではRollingStoneでRecapを書いているAlan Sepinwall。この人、なかなか鋭いし、Recapの最初に(時にはインタビューでも)劇内セリフのパロディを入れてくるのが好き。このインタビューには無いけども。
https://uproxx.com/sepinwall/better-call-saul-michael-mckean-peter-gould-chuck-mcgill-interview-recap/
このインタビュー、かなりの長さで内容もなかなか面白いので一読をお勧めする。

▽チャックの電磁波過敏症について
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Gould:
The dream is that you have a breakthrough moment, and then suddenly that changes everything. The truth is that you can have all the insights in the world, but living them out day-to-day, moment-to-moment, is really tough. It’s a lot of work. I love the fact that Chuck arguably has, to my eye, a breakthrough moment there. A moment where he’s willing to admit the thing that he hasn’t been willing to consider before, as Michael says, and now the question after that is, is he going to be able to follow up on that?
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305でジミーにバッテリーを胸ポケットに忍び込まされた件で、やはり自分の思い込みなのかもしれないと思い始めたチャック。Dr. Cruzに自ら連絡を取り、回復への道を歩き始める。しかし結果は……人が変わるというのは並大抵ではないのだ。
Breaking BadでもBetter Call Saulでも、ある問題が良い方向に向かったり悪い方向に向かったり、揺れながら最終的にどこかに着地させる、展開の揺れは特徴的なシナリオ構成だと思う。

ウォルターは最初の「調理」後、これっきりだというが、すぐにまたやるか?とジェシーを誘う。癌の化学療法もやらないと言っておいてやる。ガスとの仕事もやらないと言っておきながらスーパーラボを見せられて心変わりする。
ジミーもD&Mに入らないと言っておきながら入り、そして辞める。アイリーンを騙してサンドパイパー案件を和解にこぎつけるがそれも自分でぶち壊す。カウンセリングにも行かないと言っておいてやっぱり行こうかとなるが最終的にハワードが行ってる事を知って行くのを止める。ジーンになってからも、ジェフィーとの仕事をこれっきりだと言っておきながらキムに拒絶され、繰り返す。



>>>
Gould:
Then I think to myself, “Well, human beings usually surprise me in real life.” And you hope you take some of it from real life. Human beings usually don’t act purely in their self-interest. They don’t act logically. We try to honor that and to really understand these folks as best we can.
<<<
「Human beings usually don’t act purely in their self-interest. They don’t act logically.」これこれ。
思わぬところを見落としてたり、時に理不尽にも見える行動を取ったり、論理的ではない行動をとるのが人間で、そういう不条理さを自然に、「理不尽だけど分かるわ~」って見せるところが上手いと思う、アルバカーキ・サーガは。


▽M. McKeanへのファンの反応
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McKean:
You can buy her(※ジミー&チャックの場合母親) pride by working hard, but if someone seems to be loved more than you are and you can’t explain it and it doesn’t make sense, then the world’s a little bit crazy and you might have to go a little crazy to keep up with it.
<<<
「役者自身は好きだがチャックは嫌い」が殆どだそうだが、中には彼への理解を示す人もいる、とも言っている。

そして上の引用部分になるんだが、どうしても得られないものって人生の中にはあって、例えば意中の人が自分に恋愛感情を抱く事とか、どれだけ欲しても無理な場合がある事がある。それが両親からの愛情だったりすると、ジミーだけが偏愛されている(ようにチャックには見える)状況で、チャックがああなるのもしょうがないのかもね、と。
流石ベテラン役者やなぁ。


▽第一印象が継続してしまう事
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Gould:
we learned on Breaking Bad, once a viewer is in somebody’s corner, you really tend to stay in their corner. So if anybody opposed Walter White, the audience hated that person. Especially, and I think most egregiously, in the case of Skyler. There was a lot going on, there. There was a lot going on with Skyler. But the truth is it’s very hard to break out of. First impressions matter, I guess is the way to put it. It takes a lot to pull yourself away from the first impression of the character, even though we who work on the show may see things very differently. I have a lot more sympathy for Chuck than I think most of our viewers do.
<<<

自分はBreaking Bad1回目の時でもSkylerの行動は十分理解出来て、理不尽な嫌われ方してるなぁと思ってた。スカイラー叩きを延々としてるの、1回しか見ないような層ならまだしょうがないか、とも思えるんだけど、Redditに住み着いてるような人らでも未だにSkylerヘイト拗らせてるの本当に謎だ。
チャックの場合は初見時はあまり同情もできなかったのだけど。

「I have a lot more sympathy for Chuck than I think most of our viewers do.」はよくわかる。
ヘクター・サラマンカのだって心情を理解する事は出来るしね。行動は全く肯定したくならないが。
キャラクターへの愛情やその筋の通し方は好きな所の一つ。たとえモブでさえもみんな筋が通ってる。

▽ジミーの性質について。
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Gould:
He’s also someone who loves pleasing other people, so he’s been changing his identity especially to try to please Chuck, to try to please Kim, to try to get ahead. So I think of him as a searcher and someone who’s trying to find his place in the world and trying to matter to the people who matter to him.
<<<
ジミーを自分にとって大切な人たちのために役に立とうとする探究者だと評するGould。
その大切な人の上から2人がチャック&キムだったわけで、Better Call Saul開始時の汚い事はするが基本的には人の好いジミーと、人の死さえ弄ぶソシオパシックなBreaking Badでのソウル。相当なギャップを埋めるために、一人を自分にも責任がある形で殺して、もう一人は自分にはどうしようもない事で別れさせる。
まぁよくもこんな(ジミーにとって)酷いシナリオがかけたもんだ(褒め言葉)。


▽ソウル・グッドマンという名前は脱税の為ではない。
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Gould:
And we had talked about this: does he just pretend to be Saul Goodman and then become a lawyer in order to evade the year? Our legal consultants tell us that that’s not a reality.
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▽ジョナサン・バンクスについてのMcKeanの評
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McKean: Banks is amazing and fun. He’s a horrible human being, but… No, I adore him.
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このhorribleはどういう意味なんだろう?悪い意味の形容詞にtheを付けると意味が逆転するとかいうのは聞いた事があるが、aだしなぁ……??ただの冗談?



◇先ほどのAlanが310ライターのGenniferにインタビュー
https://uproxx.com/sepinwall/better-call-saul-finale-recap-interview-gennifer-hutchison-chuck-mcgill-dead/

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Q: To me, the look on Chuck’s face says he knows what he’s doing and he just wants this all to end. Some other people have argued that he’s no longer in control of anything that’s happening. When you were writing it, what was your thought: is this an intentional act?
A: I think that he knows what he’s doing. I think there’s a feeling of inevitability for him, maybe. It’s not a decisive action. It’s a depressed action of, “Okay, I guess I’m just going to do this. This is it. This is the inevitable.”
<<<
インタビュアーのAlanもGenniferも、チャックは自分の言っている事が分かってるという意見だそう。
自分は違うんだけど、何度考えなおしても今は変わりそうにない。




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それにしても、やはり会話は記事になってる文章とは違って理解するのが難しい場所が多い。接続詞でだらだらつづけたりもするし。また、S6のPodcastと違って対面なので、発言かぶりも多い。知ってることについて話してるのに、どういう事を言おうとしてるのか解釈するのに物凄く時間がかかる時がある。
もっと英語上手くなりたいなぁ。もしくはDeepLもっと精度上がれ。
 

午後4:50 · 2022年10月22日 / フィナーレ直後のEW.COMの記事について

ベターコールソウル フィナーレ直後の記事、自分の感想が固まった後で読もうと思って読んでなかったのをあれこれ見てるけど、なかなか面白い。またとりとめもなく。引用部多め感想少なめ。

https://ew.com/tv/better-call-saul-bob-odenkirk-on-series-finale/

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They're at peace, and they're finally able to exhale — hence, the cigarettes. I mean, cigarettes are a great way of showing that, characters exhaling. [Laughs] They are finally able to exhale all the tension and maintenance that they've had to do, of their personas and their lies and their presentation to the world — and to each other.
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フィナーレ最後の指鉄砲について
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Yeah, I think it was a smile. I think it was a, "And the scams were fun, too." [Laughs] "And come on, we had fun, too. I mean, we shouldn't have, and our emphasis was wrong, and we've just owned up to our failings really in important ways. We've accepted them and told the world, but we also had fun and I won't forget it."
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フィナーレ後の2人について
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And then I think they see each other and I think he thinks she should stay married to that guy and have a life.
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Bob的にはキムはグレンと結婚してる認識なのかな?この上でも1度結婚してるって言ってる。ライターズルーム的にはどっちなんだろ?脚本家が結婚してると明言してる所は見た記憶が無いんだけども。


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but how I perceive it is, everybody doesn't always learn the worst lesson from what goes wrong. It might be true that it happens most of the time, but sometimes people learn the right thing from getting their ass kicked by life.
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チャックとウォルターの類似点
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That [scene] is so great because know this, as Jimmy, I'm just picturing talking to Chuck. He's talking to Walter White and I think that emotionally he's realizing, "Oh my God, what attracted me to this f---ing guy?" He was like Chuck. He was a smarter guy than me in a lot of ways. He castigated me. Walter White would say, "You f---ing idiot." He was like, "You're just a scumbag lawyer who's just after money." He didn't respect me just like Chuck. He needed me. I just put myself in this f---ing paradigm again! And I've got this guy who everything I say he scoffs at and treats me like shit, why do I need this person in my life again? It's that great thing of people unbeknownst to themselves find themselves rebuilding the paradigm with all the bad parts that they had as a kid. And that Walter White scenario is the same thing again. Walter is just a different version of Chuck.
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あんまりその発想は無かったなぁ。ウォルターにチャックの影を見ているようなところがあったのか(少なくともBobの中では)。


フィナーレの法廷シーンをチャックが見たら
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That makes Chuck's move that kept Jimmy out of respectable legal community a shitty, selfish move, because Chuck had appraised Jimmy as being irredeemable, and this would prove him wrong. So Chuck would probably be saying, "Wait, what's your game here?" And realizing there's no f---ing game. "How could he do that? How could he just prove everything I live for wrong? And I'm an asshole. I'm a huge asshole — in the
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Bobがチャックに対してボロクソなのが面白い。この「フィナーレの法廷シーンをチャックが見たら」てのは自分も考えたことで、多分フィナーレの感想で書いた気がする。


法廷シーンをBobの提案で撮り直した事
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Yeah. And people were like, "What? You're going to do it again? No, no! You did it so great! People were crying! No, no, you don't need to do it again!" And I said, "No, I think I do. I think I was too emotional." Over the years doing this show, I've become so suspicious of feelings on screen, especially tears. I really have gotten to feel like they have to be really earned. And I think Rhea's bus scene is a great example of earned tears. And I said, "I think I went too quickly, too easily to the well here. I'd like to do a more restrained version." And it was great because we came back a week later, we got the set back. It was not an easy set to get. That's a federal courtroom, so they don't just give those out. And you know what was great about it? It was better. It made more sense. We found different blocking things that I stumbled across in the course of doing it again for the 30th time. It's just better in every way, and everyone agreed when we were done. It was like, "Yeah, you were right. I'm glad we shot it again."
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これはなかなかのびっくりエピソード。役者の提案で、みんな十分いいものが撮れたと思っててもさらに撮影するとか。
個人的にはフィナーレのあのシーン本当に最高of最高だから感謝しかないんだけど、あそこまで抑えた演技にしたのはBobの、役者の提案だった、そしてそれを制作陣が受け入れたのって本当にすごい事だと思う。



Bobは以前から、自分はJimmyの事は好きだけどSaulの事は好きじゃないと言っていたが、あの結末を迎えてJimmyが全ての重荷から目を背けずに向き合った事に対して、そしてキムとのコネクションが戻ったことについて物凄く喜んでいるのが本当に印象深い。



https://variety.com/2022/tv/awards/bob-odenkirk-rhea-seehorn-better-call-saul-podcast-1235343339/
でのpodcast


法廷シーンにキムが居なかったら
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Bob: And it's just a beautiful thing that they wrote and I think for the right reason is I mean, it's if Kim wasn't in that room, he would have run his little game and gotten his seven years.
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自分はこれ、たとえいなくてもって思ってたんだけどBobは違った模様。



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Q: So would you what the two of us call this a happy ending?
Bob: It's weird. I think it is. Yes, it's crazy because he's going to jail for the rest of his life. Absolutely consider it the best and he could have because he's at peace with himself and he's got he's got her. He's earned her love. And he knows that even though they can't be together. No, he proved himself to the one person he cared about how about you?
Rhea: Yeah, I mean, happy is hard to wrap your head around. But I find it find it helpful and I do find it to be some positive I do think it's, there is light, there is light there and and I agree with Bob, it's about living, living without the burden that they both have had hanging over them their whole lives trying to outrun what people think of them and you know, certainly Jimmy more than can but we know Kim didn't come from a safe positive upbringing either. And I think it's, I found it to be a positive ending. And the happiest that you could be for those people.
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あの時点までは確定していたとすれば、これ以上ないほどのHappyEndだとしか(苦い部分はあれど)思ってなかったので、ハッピーエンドと断言出来ない人がちらほら見られたのが良く分からなかった。

キムとジェシーのシーンについて
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Rhea: I thought they used that scene so well showing to people on the opposite ends of realizing there their past went wrong. You know Kim is on the other side of realizing that she that her life right now is a product of many wrong turns. He he's at the beginning about to experience that and still thinks everything is smooth sailing. And also the juxtaposition of Aaron's energy as just a in that is so great and it's upbeat and it's ridiculous and inane and all over the place and hers we know was yet another scene. Where the audience actually Kim's confident in the moment and know what she's thinking and feeling as she stands there and he has he has no idea because I love the scene that's in the office as well that precedes it with Jimmy and him. You know, doing this huge false front to pretend that he doesn't care about them anymore and and Kim knows it but it still hurts. And that was a really fun scene to play. You. We audibly heard the krugel when he's, you know when he's like Have a nice life they were like oh my god
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あのシーン、プロットが進展することはないシーンなんだけど、それでも好きな理由が言語化されてる。
BrBaの主人公のモラルセンターだったJesseと、BcSの主人公のモラルセンターだったKimの、使用前・使用後みたいな。
プロットは進まなくても、この対比があるのが凄く印象深くて好きだった。


タイムマシンでやり直したい事。Rheaは無いと。
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Yes, I was raised Catholic I would like to go back and fix things.
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具体的に何があったのか、昔チラっと見た気もするが今探しても見つからない
https://www.rollingstone.com/tv-movies/tv-movie-features/the-last-word-bob-odenkirk-on-catholic-guilt-the-replacements-and-late-breaking-fame-124033/ とかでも少し触れられているけども、英語が良く分からない……
あれこれみても、ただカソリックに対して否定的というわけでもなさそうで。

https://www.esquire.com/uk/culture/film/a36587604/bob-odenkirk-better-call-saul-interview/
でこんなやり取りが。
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Q: Both Hutch Mansell and Saul Goodman get themselves into a world of trouble. What’s the most trouble you’ve ever been in?

Bob: Huh. [Thinks] I’m a pretty good Catholic boy.

Q: Your first joke as a stand-up was about being Catholic…

Bob: Yes. ‘I was raised Catholic, which means I’m atheist’. I think I got lucky by never going too far. I’ve never been arrested. Gee… I’m trying to think of something that qualifies. I never cheated on my wife. I don’t have anything good for you.
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肯定的というわけでもない。前提となる知識が無いからかよくわからない。< ‘I was raised Catholic, which means I’m atheist’.


元のPodcastにもどって。
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Rhea: I think I do think her dad was a con man. I don't think he was in and out of their lives and any gifts that He gave like you always knew they were probably stolen. And, and then I think she I think she called some cons and I think she shoplifted again. You saw her do it. Once. I think she did it again. And I think she started to realize that the only way she was going to have a better life than those around her in the small town she was in would be if she went about it in a very slippery way and made a decision that she wanted to see what she could do on the straight and narrow and I think by the time she gets to the mailroom and meets Jimmy it is she has made a decision where she wants to prove to herself that she could that she could make something out of herself on the up and up. But there's a part of her that always gets drawn back to the more the coloring outside of the lines and the more colorful way to do it. And I think that her upbringing is also part of why she really I think she was she and her family were very much treated like crap for being I think they lived in a trailer park and I think there was a lot of class issues for how she and her family were treated that later makes her have such disdain for the Howard Hamlins of the world.
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このRheaのKim観はなかなか面白い。自分はキムが子供の頃にやった万引きはあの1回だけだと思い込んでいた。
父親にも言及してるけど、母子家庭じゃなくて父親が出てこなかっただけ(もしくは離婚?)認識なのも可能性に思い至らなかった。
「But there's a part of her that always gets drawn back to the more the coloring outside of the lines and the more colorful way to do it.」104 Heroで、HMMのテレビでジミーのニュースをみてほほ笑んでいた時から、Rheaや制作チームにはキムにはそういう性向があるというのをしって自分は少しびっくりした。

びっくりしたけど筋は通るんだよなぁ。


最後にMaking of 'Better Call Saul': Special roundtable panel with 3 executive producers
GOLD DERBY
https://www.youtube.com/watch?v=7b6qTgI1hGA

でのMelissa Burnsteinの発言
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I think breaking bad it was all like it was all much more in a show I love so much well, but it was a little bit more straightforward. In terms of, you know, like taking Mr. Chips and turning them into Scarface, and then, you know, and then like all the layers of that journey and like and how was put on it. This is just so much messier. Like Jimmy is such a messy person, and like and and then I think the relationships on the show matters so much like it's it's really not just about the singular arc of, you know, this devolution of Jimmy to Saul. It's really it's about like how these very flawed very damaged characters interrelate. And like what comes out of those relationships and it's, it's, it's, it's murky that tells us about our humanity, hopefully.
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これが自分がBreaking BadよりもBetter Call Saulが好きな理由。
Breaking Badも物凄く丁寧に作り込まれた文句なしに面白い番組なんだけど、Better Call Saulに比べると簡単。
色々と解釈が難しいところもあるんだけど、基本的には心理的なものではなくて状況的な物が多い。
一方でBetter Call Saulではキャラクターの心理的・感情的を推測する余地がBrBaに比べると物凄く大きい。

ネットで、「Breaking BadやBetter Call Saulは24-TWENTY FOUR-と違ってジェットコースター的展開じゃない」という意見を見た事があるんだけど、自分的にはBrBaはまさに24的なジェットコースター展開としか思えない。(日本のジェットコースタードラマというわけではなくて。) 24もBrBaも、次々襲い掛かってくる困難なシチュエーションにその時点時点での状況に応じた最適解をつっきっていくという展開の仕方が共通してると思っていたから。展開の速度的にもBrBaと24は割と似てる気がする。
 

午前1:42 · 2022年10月27日 / エリン・ブロコビッチとBcS S1の類似点

エリン・ブロコビッチみたんだけどこれもうほぼベター・コール・ソウル S1じゃん

破産寸前の弁護士とは縁遠そうな人ドアの色が違う車に乗っていかめしい弁護士と一緒に仕事して正攻法とは言えないやり方

理解のあるパートナーと
大企業相手の集団訴訟
クライアントからの好感度が高くて
他の事務所と共同弁護になって
早期解決か本訴訟かで揺れて(これはS2以降だけど)
ケトルマン

カリフォルニアで景色もニューメキシコと結構近いし、チャックポジの人も微妙に似てる。
他にもいくつも共通モチーフあった気がするけど忘れた。

映画殆ど見ない人だから見てなかったし、見てても多分忘れてたやろなこれ。特にケトルマン
単体でも面白かったけど、BcSのオマージュ元探すために見るのも楽しい。
 
 
 
 

アルバカーキ・サーガ再視聴のススメ Better Call Saul S4終盤を振り返りながら

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。両作最終エピソードまで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

自分が何度も何度も繰り返し熱心に見れる映像作品にはこれまでなかった。繰り返し適当に流し見るシットコムはいくつかあったが。

こうしてブログを作ってまで作品の感想を集中的にあげるような事もこれまでしてこなかった。

何故自分がここまでアルバカーキ・サーガにハマったのか。一言で言うと「再視聴性の高さ」が原因だと思っている。初見の驚きを越える、緻密に紡がれた物語の、ポイントポイントを繋ぐセリフや行動・状況。そういったものを見つけるのが楽しいのだ。

 

一例を挙げると、Better Call Saulでは重要な人物がさりげなく画面に入ってくる演出が使われる事がある。一番印象的なのはS3Ep02で、マイクの依頼でポヨス・エルマノスへ行き、とある男のバッグを監視しに行ったジミーの様子を映す場面。

暫くするとピントの合わないジミーの奥で、トレードマークの薄い黄色のシャツに黒いネクタイのガス・フリングが映り込んでいるのに気が付く。Breaking Bad視聴済みであれば初見でも気づける、寧ろ気づかせる演出ともいえる。

そしてBetter Call Saul視聴後にまたBreaking Badに戻ると、同じような演出がある事に気づくのだ。

例えばS1Ep05のTeaser。ジェシーが就職の面接中、背景左側のブラインドの隙間から、赤い矢印を回して客引きをしているバッジャーを映り込ませている。

BrBaS1Ep05 背景左側、赤い矢印を持ったバッジャーが外で客引きしている

自分は初見時にはこんな事に気づかなかったし、直後バッジャーと会ったのを見ても、それに先んじて面接中に映り込んでいた事は思い出せなかった。

こうしてさりげなく画面にフレームインさせる演出が共通してるシーンを見つけると嬉しくなる。

 

アルバカーキ・サーガではこうしたシーンとシーンを繋ぐ露骨ではない糸が無数に張り巡らされている。その全てを解説する事はそうそうできるものでもないし*1、果たしてやるべきか?という話でもある。

というわけで、一部を取り上げて掘り下げようと思う。本稿では最終シーズン開始まで自分が一番好きなエピソードだったS4Ep10 Winner(勝者)と、その直前のS4Ep09 Widersehen(おさらば)に注目したい。

 

 

 

弁護士資格復帰の聴聞会 S4Ep09

聴聞会の経緯・内容

この聴聞会は、S3Ep02でチャックの家に押し入って重罪の自白が録音されたテープを壊した事に起因する、ジミーの停止された弁護士資格を復活させるかどうかの聴聞会だ。

冒頭でネタバレ警告はしているので遠慮なくネタバレをしていくが、ジミーの弁護士資格復帰に問われている重要なポイントの一つとしてチャックの事があり、これは観た人なら誰でもわかるように(この後のキムとの口論シーンで)描かれている。

そのチャックがこの聴聞会でどう扱われているかをみていきたい。

 

この全部で5分半ほどのシーンでの委員からの質問は以下の8つ。

  1. 起訴前ダイバージョン終了の確認
  2. 資格停止中の雇用先
  3. シルバーサークル(賞)について
  4. その職を選んだ理由
  5. 法知識の更新
  6. 処分を受けたそもそもの原因への所感
  7. あなたにとって法とは?(追加1)
  8. 考え方に特に影響を与えたのは?(追加2)

追加質問前、6番目の処分の「そもそもの(in the first place)」原因について聞かれて、チャックの事を挙げなかったジミーに、さらに2回のチャンスを与えている委員。それでもジミーは頑なにチャックに触れようとしない。

免許停止の原因となった問題行動の対象であるチャックへの言及が、資格復帰に絶対に必要な要件の1つだった。

 

ジミーはS3Ep10でのチャックの死亡と向き合う事が出来なかった。向き合う事から逃げた。

向き合うかわりに、S4Ep01でアパートを訪ねてきて、自分のHMMからの追放という態度が招いた自殺かもしれないと告白したハワードへの態度や、コピー機屋の面接を台無しにした事、チャックからの手紙を読んでもあっさりした態度だった事、しなくてもいいフンメル人形の盗みをした事、精神科医にかかる事を避け携帯屋に就職した事、路上で使い捨て携帯を売る事等で誤魔化す。

キムがS&Cへの参加を決めた事がジミーの非行にさらに輪をかける。

これは一種の逃避・代償行動で、同様の事はキムとの別れという巨大なショックを経てソウル・グッドマンと化してからの行動や、S6Ep11の電話で(後から分かる事だが)キムからの拒絶をうけてのジェフ達との行動とも符合する。

逸脱行為・違法行為等はジミーにとっての本当の心痛を誤魔化すための鎮痛剤となっているのだ。

 

そんなジミーが資格復帰の聴聞会でチャックの事を口にできるわけがない。そして、その事が原因でジミーの弁護士資格の復帰は認められなかった。誠実さに疑問がある(a question of sincerity)という理由で。

 

聴聞会のカメラアングル

ジミーがチャックの存在をここまで無かった事にした聴聞会がどのように描かれていたのか。

聴聞会で使われるカメラアングルを、登場順に示す。12番目最後のものだけは最初と同じアングルだが、その意図については後に示す。

 

ヒアリングでのカメラアングル 11+1

 

微妙にズームしたりはするのだが、この聴聞シーン5分半ほどの間はこの合計11アングルで撮影されている。

大雑把にまとめると下図のようになる。灰色は机、青は委員、水色は速記係、オレンジがジミーで、丸つきの数字と黄緑色の矢印で先に示したカメラアングルの順番を示してある。

S4Ep09 聴聞会のカメラアングル

この11アングルで、上図の右上ドアの上にある赤い「EXIT」が映り込むのは4アングルあって、1番、3番、7番、11番がそうだ。

 

部屋へ入って一番最初のカット、委員3人の頭上からジミーを見下ろす1番のアングル。中央の机の右側に赤いEXITが映り込んでいるのが見える。

3番目のカットはジミーと速記係を映すカット。後ろの窓ガラスに赤いEXITが映り込んでいる。

7番目のカットは、ジミーの右に見える壁のスイッチの上のアールに赤い光が映っている。

11番目のカットは、ジミー側の頭上から委員3人を見下ろす、1番目のカットの逆になっている。ここでは赤いEXITは一見見えないのだが、壁にかかった絵の左上がうっすらと赤くなっている。ジオメトリ的にも反射する位置としておかしくない。おそらく画像ではほとんど分からないと思うので、実映像を見て確認してみてほしい。

 

チャックの亡霊

ここで注目した「赤いEXITの映り込み」が意味するところは何か。熱心な視聴者には言うまでもない話だろうが、これはチャックのメタファーである。

最終話では、法廷でソウルがチャックの事を口にした瞬間、「EXIT」(裏返しだし、モノクロだが)を含めた引きのショットになった事は記憶に新しいと思う。

これは勿論、S3Ep05のラストシーンと繋がる描写だ。ジミーの誘導に乗せられて信用を失うような取り乱し方をした後、チャックの持病(本人視点)の電磁波過敏症と関連づけるように、このEXITサインがジーっと鳴るシーンで締めくくられる。

S3Ep05のラストシーン

まず、この聴聞会が始まった時に1番のアングルでチャックがこの場に居る事が示される。3番のアングルでの話の内容はCCモバイルでの賞の話で、ここはあまり関係が無い。7番の1回目と11番のアングルは、法知識の更新について話している時であり、ここでチャックの影がかすかに差すのは意味深だ。

そして「処分を受けたそもそもの原因への所感」を問われるともう一度7番のアングルになり、チャックの影がうっすらとよぎる。ここでのカットのセリフは「この一年ずっとその事ばかり考えていました。自分の行動の愚かさを深く反省しています。」だ。

しかし、チャックについては一切言及しないジミーに、委員の一人メグが追加質問をする。「あなたにとって法とは?」という「難題(big one)」だ。

 

そして次の瞬間、1番のアングルになり、チャックの亡霊が再度机の上に姿を見せる。このカットは13秒程も続くが、この間ジミーは「法ですか?(The law?)」「そうですね(Yeah.  Okay.)」しか言葉を発しない。次のアングルに移って、実質的な回答を始めるまで、合計18秒も言葉に詰まっている。

やっとのことで「子供の頃は弁護士になるなんて夢にも思っていなかった」と語り始め、「同じ事務所で働く弁護士たちと働くうちに私の中の何かがやる気を起こさせた」と続ける。そして出てきたのがアメリカ領サモア大学。

 

更にもう一度、先ほどと同じ委員が追加質問をする。

「あなたの考え方に特に影響を与えたのは?」

この直後のアングルが3番だ。ジミーと速記係の間、上の窓からチャックが覗いてるような形で、反射した赤いEXITが映っている。

この質問にもジミーは5秒程言葉に詰まっている。そしてやっと出た言葉が先ほどと同じ「アメリカ領サモア大学」。この回答を聞いたメグ(質問者)の表情が一瞬こわばったあと、愛想笑いを浮かべる。露骨ではない控えめな演技が光る。

 

そして聴聞会が終わり、部屋を出ていくジミーの姿が1番アングルで描かれる(本セクション最初12枚目の画像の最後)が、その際、ジミーの体にさえぎられて机に映っていた赤いEXITが一瞬消え去る。

これはジミーがチャックの存在を必死に否定している事のメタファーだと考える事も出来るだろう。

 

このシーンで、非常口上の赤いEXITが直接映される事は無く、全ては机の表面や窓ガラス、絵画に反射させたものをフレームに収めている(直後、速記係から復帰が認められなかった事を聞いて、委員を追いかけるために部屋を通った時には直接映されている)。

そして、全てのシーンでチャックの亡霊をフレームに収める事の意味を見出せる*2

 

 

D&M屋上駐車場での口論

口論の流れ

不誠実という理由で却下されたら反論もできないというジミー。キムはそう判断された理由を探そうとし、チャックについて話した時は?と聞くとジミーはチャックは関係無いだろ、何故いう必要が?と壊れる。

 

これはある意味当然で、S3Ep10では「もし同じ状況になったなら、次は別の方法を選ぶと思う」と和解しに行った兄が、自分の憂さ晴らし(保険会社へのチクり)が原因で死んだ事からずっと逃げているからだ。

精神科医にかかる事から就職する事を理由に逃げ、路上で襲われた時にやっぱり行こうか、となったのに、裁判所で偶然出会ったハワードが既にかかっている事を聞いて、連絡先を破り捨ててしまう間の悪さもあった。

 

チャックの事を言わなかったと知ってキムはびっくりするが、それでも何とかしようと抗議(appeal)する道を模索し始める。

なのにジミーはキムが自分を見下しているとくってかかる。「犯罪人が雇う弁護士」「滑りのジミーを見る目だ」だと。前者はケトルマン夫人から言われた言葉で、後者はチャックの事。

「チャックに触れないから不誠実にみえた」というネタばらし・答え合わせをする*3キムに、ジミーは「だから共同事務所が無いんだ」とさらにくってかかる。

 

「出会った時から味方だった」「呼ばれた時は飛んできたでしょ?」「誰がしりぬぐいしたと?」とキムが反論している時は遠景のカットになり、視聴者を落ち着かせ、これまでの事実を冷静に思い起こさせる。

 

しかし口論はエスカレート。「同居して寝てはいても、神は共同事務所を持つ事を禁じてるんだろ」「きみは人生に退屈すると滑りのジミーと楽しむ」。ジミーはキムを自分と同類ではなく、チャックやハワードの同類と見ている。それが如実に表れているのが次の2つのセリフだ。

You get bored with your life, so you come roll around in the dirt, have some fun with Slippin' Jimmy then back up.

字: 君は人生に退屈すると“滑りのジミー”と楽しむ

吹: 君は自分の人生に退屈すると ちょっと下界に降りてきて滑りのジミーと楽しみ それが済むと帰っていく。

 

Oh, what a mistake it was to take me up to your office in the sky.,

字: 俺を立派なオフィスに 連れていったのが失敗さ

吹: ああ 失敗だったな。君の天を衝くオフィスに俺を連れていったりして

 

一つ目はS2Ep04でチャックとの口論の際に言ったセリフとの類似性がある。

Come on down, Chuck. Roll around in the dirt with me.  All your dreams will come true.

字: さあ 俺と泥にまみれてみろ そうすれば望みが叶う

吹: さぁこいよ!俺と一緒に泥と塗れてみろ!そうすればあんたの夢がかなうんだぞ。

D&M在籍時に、自作CMを無許可で放映した事を咎められ、それがジミーを推したキムにまで累が及び、Doc Review/Corn Field/窓際へ追いやられていた。それを取り消させるために、チャックに重罪である強要(extortion)に該当する発言をさせようとしたときのセリフ。

 

二つ目は、次のエピソードS4Ep10でのWinner演説(万引き歴のある少女へ、路上でする話)と関連する。

They're on the 35th floor.  You're gonna be on the 50th floor. You're gonna belooking down on them.

字: 彼らが35階なら 君は50階から見下ろせ
吹: 彼らが35階なら 君は50階に行け そして奴らを見下ろしてやれ

 

「ぶつかるのも、話をするのも悪い事ではない」ということは、制作陣がこのころのインタビューでよく言っている。しかし、この屋上での口論は、「There you go. Kick a man when he's down.」「Jimmy, you are always down.」というかなりきついやり取りの後、キムが立ち去る事で終わっている。

 

口論の理由

ジミーはキムにも劣等感や負い目を感じていて、それはS3Ep03で一度キムの弁護を断った事や、再度弁護担当すると言われた時の「Are you sure?」「Come on. This guy? Seriously?」、未来の話だがS5Ep07での結婚に際しての「this might not be what you dreamed of when you were 12.」、S5Ep10での「I'm, uh...  Am I bad for you?」なんかにも表れている。

それでもなんとか「キムにふさわしい相手でありたい」という気持ちはあった。だからこそ、S4Ep06でキムがS&Cに参加すると決めた時も「やるべきだ。凄い機会じゃないか」と後押しをした。直前にトイレと偽って席を離れて思い悩んではいるが。

Season3では共同事務所費用を何とか自分で捻出しようとしているし、Season2ではいったん弁護士を辞めようとしたが、思い直してD&Mに入っている。これも全て「キムにふさわしい相手でありたい」という気持ちからだと思う。

 

この「キムにふさわしい相手でありたい」という気持ちが弁護士資格復帰を否定され、ジミーの急所を抉り、ジミーの劣等感である「上」の人間との対立にキムまでも巻き込んでしまったんだと思う。

 

 

最後の「あなたはずっと下にいる」というキムのセリフがなかなか腹落ちしなかったのだが、最近やっと落ちかけている。

 

ジミーが「下」に居た時

ここまで書いたとおり、ジミーがチャックとキムを「上」に居る人種だと考えているのは明白だ。そして当然ハワードやD&M、S&Cの弁護士たちもそうだろう。いわゆるEstablishment。キムもチャックも、生まれは決して豊かではなく、努力して手に入れた地位であり、そこへ馴染んだ。

一方でジミーは、Slippin' Jimmyという過去があり、シカゴ・サンルーフをした時の不幸な偶然で性犯罪者になりかけた。そこから救い出してくれたチャックをロールモデルに、通信制ではあるがアメリカ領サモア大のロースクールを出て*4、司法試験に通った。

 

しかし、チャックの裏工作によってHHMで弁護士として働くことは拒絶された。巨額の成功報酬が見込めるサンドパイパー案件を発掘して来た時も同じくチャックによって参加を阻害された。この事がジミーの「上」に居る人間への反感の一番大きな元だろう。

 

HHMの郵便室で働きはじめ、キムと出会った頃からBetter Call Saulが始まる前までは「下」ではないだろう。真面目に働き、チャックに憧れるキムを見て自分も弁護士への道を歩み始めた。

キムは3度目の司法試験の合否通知の封筒を開けているが、ジミーのそこまでの挑戦を知っていたかどうかは明確に描写はされていない。その事を知っているか否かに関わらず、当時のジミーを蔑む要素はないはずだ。

 

キムは「ずっと(always)」と言ったが、ジミーはいつどれだけ「下」に居たのか。

  1. 最初は、疑惑に過ぎないがケトルマン失踪事件への関与だろう。キムは全貌を知る事は無かったが、ジミーが表に出せない何らかの形で関与していた事は察している。
  2. Daniel Wormald、a.k.a. Pryceの間抜けな警察への窃盗被害報告を誤魔化すために行った証拠の捏造だ。余談。本編では描かれなかったが、脚本家・監督のThomas Schnauzによれば*5、この男はBrBaでWaltにマネーロンダリングの為に勧めたレーザータグの管理者として提案されていた男を想定していたそうだ。
  3. D&Mで無断CMを流したこと。
  4. HHMからキムにメサ・ヴェルデ案件を取り戻すためにチャックを陥れたこと。
  5. 録音テープ奪取のためにチャックの家に押し入り、警察沙汰になったこと。
  6. これは境界事例だろうが、S3終盤でサンドパイパー案件の和解を仕組んだこと。
  7. 資格停止中、まっとうに働くだけではなく、使い捨て携帯を夜中路上で売っていたこと。精神科医にかからなかった事も入るかもしれない。

列挙するとこんなところだろう。文字通りの「ずっと(always)」ではないが、それなりの数・時期はある。初見時は相当踏み込んだ酷い発言だなぁと軽く考えていたのだが、纏めて見るとそれなりに納得がいく発言だった。

 

 

キムのアパートでの出直し

口論のシーンの直後、キムはアパートで一人ビールを飲んでいて、そこにジミーが憔悴しきった顔で帰ってくる。そしてわざと音をたてたりして、あてつけるように荷造りを始めてしまう。

 

鏡の前で荷造りするジミーに近寄り、にらみつけるキム。

ジミーを睨むキム

昔はそうは思わなかったが、今はここでジミーが「俺がぶち壊した」と非を認めなければ、キムには別れる覚悟もあったのではないかと思っている。

関係継続の必要条件をクリアしたジミーにキムがかけた言葉は「You still want to be a lawyer?(まだ弁護士で居たい?)」。「Yhea.」と肯定したジミーに「Well, we can start with that.」とキム。

 

逆転

キムが「まだ弁護士で居たい?」と聞くのはなかなかアツい展開だ。

S2Ep01では真逆の事態が起きていたからだ。チャックにはまともな弁護士として見てもらえず、マルコとの再会と死別、そしてキムとの仲の進展の無さに、ジミーは弁護士を辞めると宣言し、キムは必死に引き留めていた。

この時はケンをカタにハメて、はじめて肉体的にも結ばれた翌日に、弁護士を辞めた所でキムとの仲が進展するわけでもないと気づいたのか、ジミーは自ら思い直してD&Mへの参加を決めた。

 

S6Ep09では、キムが弁護士資格を返上した(S4Ep09で弁護士資格を取り戻せなかったジミーとの対比でもある)と聞いたジミーが帰ってきて寝室を開けると、そこにはかなりの程度出ていくための荷造りが進んだ状態がある。

同じ出来事を立場を逆転させて描くのは、アルバカーキ・サーガで良く行われる演出だ。S4Ep09ではジミーが、S6Ep09ではキムが荷造りをする。

同じことを繰り返す時には、その中での相違点を強調する効果がある。ここでの違いは、荷造りの本気度だ。ジミーのそれには当てつけやキムを試す要素があるが、キムのそれは決断の上ただ粛々と実行するだけだ。

ジミーの「試す態度」はキムに初めて言った「I love you.」の時の表情にも表れている。

はじめてのI love you

屋上での口論と一続きのシーンではあるが、このアパートでの2分40秒ほどでセリフが4つしかない

 

余談: このドラマを観ていて楽しいポイント(の1つ)

脱線する。少し上で触れた、レーザータグのダニーがPryceであるという話をしている記事で、脚本家のThomas Shcnauzはこう言っている。

Something we talked about is that when he’s really, really, full Saul Goodman is the point when he decides it’s OK to kill somebody.

「ソウル・グッドマンが本当に本当に完成形になるのは、誰かを殺してもいいと思った時だ、と我々(脚本家チーム)は話していた」

 

これはBetter Call Saulという番組内で自分が一番気にかけていた事だった。

Saul Goodmanという名前自体はS1Ep04のフラッシュバックでSlippin' Jimmyの偽名として出て以来、CMプロダクションや使い捨て携帯屋としての名前、そしてS4Ep10ではついに弁護士の屋号として使われる。

ただ、Breaking Badでのソウル・グッドマンは初登場回S2Ep08で既に、警察に拘束されているバッジャーを殺す提案をしている。ジミーはBcS S1から徐々にモラル・真っ当さを失ってきてはいるが、S6開始時点でもまだ暴力行為への忌避感を隠せないジミーとこれには埋めがたい差がある。

だからこそ、S6Ep09でキムと別れ、時間軸がBreaking Bad直前まで移ったあのラストシーンが衝撃的だった。この埋めがたい差を埋めたのはキムとの離別だったのか!

 

この「最大の疑問点への満足度200%の答え」も勿論嬉しいのだが、こういう制作陣へのインタビュー記事を読んでいて嬉しいポイントがもう一つある。

「制作陣の意図と自分の考えていた事との一致」だ。制作陣が思い描いた事を映像にしてるんだから、その意図と視聴者の考える事が一致するのはある意味当然ではある。当然ではあるのだが、ここまで視聴者を信用して過剰な説明をしない映像作品においては、この程度の事に喜びを感じても、さして大袈裟ではない気がするがどうだろうか。

 

また、話は少し戻るが、ジミー・マッギルの、アンチモラルな弁護士ソウル・グッドマンへの完全な移行が、ジミーの弁護士仲間かつ私生活でのパートナーでもあり、モラルサイドに引き留める役割だったキムが、キム自身が我を忘れてアンチモラルに堕してハワードを陥れる事によって引き起こされるのがとても面白い。

キムが我を忘れる過程も、意識して再視聴すれば丁寧に描かれているのが良く分かるだろう。こちらのエントリで纏めている。目次だけでもS5での揺れっぷりが分かると思う。

toorisugari3.hatenablog.com

 

 

S4Ep09 Wiedersehen(おさらば) タイトル

Widersehenはドイツ語で、英語で言えばWiderがagain、sehenがsee。漢字に直せば再見となるのかな?再会するという意味で、前に「auf」を付けると「さようなら」という別れの挨拶になる。

 

これを前提に、本タイトルがどのように本エピソードと関連しているかを見ていこう。

  • 直接的に出てくるのは、スーパーラボ建設で爆破すべき岩に黄色いペンキで直接書かれたものだ。昔はこれで作業がほぼ終わってドイツへ帰る事が出来るという意味で、別れの挨拶の方だと思っていた。しかし、この後も相当工程は残っている(S5Ep01で、マイクの「The job may only be half done, but you're being paid in full.」というセリフがある)。バラバラになった岩と再会しようという意味か。
  • ジミーは自分の弁護士資格と再会するつもりだった。(少し厳しいか)
  • 弁護士業務の顧客として、使い捨て携帯の顧客との再会を期待している。
  • この前のエピソードで初登場したラロは、ほぼ動けなくなり喋る事もできなくなったヘクター・サラマンカと再会する。ヘクターは思い出の品で、その後トレードマークになるベルとも再会する。
  • ナチョは、いつもガスがいるあのポヨス・エルマノス店舗の副店長(Assistant Manager)であるライルと再会する。
  • ヴェルナーは妻との電話で20分も別れの挨拶をしている。
  • ヴェルナーは妻との再会を望んでいる。
  • ヴェルナーが隔離施設から(帰ってくる事を前提に)逃げ出す。

エピソードタイトルがダブルミーニングである事位なら非常にありふれているが、自分が挙げられただけでも8つの意味が見つけられる。全てのエピソードでここまで見つけられるわけでもないが、S4Ep09が特別多いというわけでもない。

 

また、以上とは別に、BrBaS4Ep13では「ブロックの症状がリシンという毒によるものだ」と主張したジェシーが警察に任意で事情聴取に呼ばれるシーンがある。

ソウルはそこに現れ、権利としてクライアントと二人になるために刑事を追い出す時のセリフとして、「Au revoir, auf Wiedersehen, hasta luego, get the hell out.  Bye-bye. That's it, pick it up. Follow your partner.」というお得意の軽口を叩いている。ちなみにこれは日本語吹替・字幕では単に「ご退室を、出ていってもらおう」等としか訳されていない。

こういう緩い繋がりを見つけるのも楽しみの一つである。

 

余談 ヴェルナーとその妻との電話での会話

ヴェルナーと妻との会話の内容がマイク達によって監視されているが、その内容が後で回収されている。

  1. 飼い始めた仔犬がどこでもおしっこする
  2. 家の話
  3. 妻の腰痛・温泉に行きたい
  4. 読書会に行くので電話を切る

直後に回収されるのは3番。次のエピソードであるS4Ep10で、ヴェルナーは米国にやってくる妻と温泉施設で落ち合うつもりだった。

 

そして視聴者の大半が予想していなかったのではないかという、ヴェルナーの妻マルガレーテの本編登場が、S6Ep05で実現する。

  • 落ち着いたパブのような場所でラロと出会うシーンがあり、そこではマルガレーテは本を読んでいる(4番)。
  • ラロとの会話のなかで、直前にキャンセルされてしまったヘメスにある温泉施設の話が出てくる(再度3番)。
  • ラロはマルガレーテを家まで送り、門の前で飼っている仔犬Barchen(小さな熊という意味)の話をする(1番)。翌朝、ラロは彼女の家に侵入した際に実際に仔犬を目撃する。

2番の「家の話」についてはthe houseとしか言及されていない。一応、自宅もラロが忍び込む舞台とはなる。

 

S4Ep10 Winner(勝者)

S6Ep09 Fun and Gamesが放映されるまで、Better Call Saulで一番好きだったエピソード。

冒頭のジミー弁護士資格取得記念パーティーでのカラオケシーンから始まって、ジミーの弁護士資格が戻り、屋号を「ソウル・グッドマン」に変更する所で終わる。

「Winner Takes It All」の歌詞がエピソード全体にオーバーラップする巧みな脚本。

マッギル兄弟が表面上一番関係の良かった頃(それでもジミーの曲を横取りするチャックは、サンドパイパーやメサ・ヴェルデ案件を横取りしようとする未来を示唆している)のFlashback Teaserからはじまり、弁護士資格復帰のための工作、万引き犯少女への演説、そして抗議の聴聞会(appeal hearing)、ここからシーズンフィナーレの定番となった2丁指拳銃での締め。

 

日本語非公式ファンサイトの人が本エピソードの詳細な記事をあげているので、基本的にはそちらにまかせ、最後まで見たからこそ気づいたことについて触れていきたい。

saul.breakingbadfan.jp

 

本音を嘘に利用する

先に挙げた記事内で取り上げられているEW.com記事の、ファンサイトの人の訳を借りる。

優れた嘘は真実を含んでいる”と言えるかもしれないけれど、かつてジミー・マッギルだった男に限って言えば逆かもしれない。彼が真実を表に出すことができるのは、それを口にする理由について自分自身に嘘をついている時だけだ。

これはS4Ep10のappeal hearingでのジミーの陳述への言及だが、今見ると思い当たる事がある。

S6Ep10 Nippyでジェフが転んだ時のフランクへの演説や、S6Ep13 Saul Goneでのマリーを交えた検察チームとの交渉の場での演説だ。

Nippyでは、両親も兄も妻も子供も居ないと、フランクの同情を引き、Saul GoneではBrBa S5Ep08でウォルターがジャックにやらせた「3分間での3刑務所内10人の同時殺害」を挙げて、自分がウォルターの手助けをしたのは身の危険を感じてやむなくだったと減刑のために嘘を付く。

 

最終話との対比

最終話の法廷では、名前はソウル・グッドマンだが、喋っている人格はジミー・マッギルだった。

 

一方このappeal hearingでのジミーは、名前はジミー・マッギルだが、喋っている人格は(未完成ではあるが)ソウル・グッドマンの方だ。チャックのお堅い所や自分の未熟な所を前振りに、それでも兄から認められたかった自分をさらけ出す。この演説で聴聞会の委員だけでなく、キムまで騙しおおせて、直後のネタばらし会話でキムをドン引きさせてしまうソウル。

これはS5Ep06 Wexler v. Goodmanで、キムに黙ってメサ・ヴェルデのケヴィンを陥れる作戦を実行する事を予感させる展開だ。下の画像はその事を怒っている時のもの。

S5Ep06 私をまたカモにした

ここでの「again」に直後、ジミーは何のことかと引っかかっているのだが、S4Ep10で資格復帰のための反省の振りに涙した委員を馬鹿にしたジミーは、同時に涙ぐんでいたキムをも馬鹿にした事を知らない。

 

appeal hearingでの演説の最後でジミーは「I'll do everything in my power to be worthy of the name McGill.(マッギルの名に値するよう 最善を尽くします)」と締めくくって偽りの後悔をみせる。しかし、直後資格復帰決定の知らせを聞いた途端に屋号をSaul Goodmanに変更してしまう。

これも、最終回ではソウル・グッドマンの名前で出廷し、最後に「私の名前はマッギルだ。ジェームズ・マッギル」と締めくくった事の対比になっている。最終回感想のエントリでは思い出せなくて言及できなかったが。

また、appeal hearingではキムを(無意識にではあるが)裏切ったが、最終回では逆に期待に応えた。appeal hearingではチャックから目を背けたが、最終回では向き合った。

 

 

カラーコードやストライプの向き

Breaking BadやBetter Call Saulでは、映像中で使われる色に法則性を持たせている*6事は、ファンの間ではよく知られている。本エントリで言及したS4最後の2話でもこの原則が取り入れられている。

たとえばこうだ。

  • キムが用意していたプレゼントの「JMM」イニシャル入り鞄、箱の中で鞄を包む紙が水色・ブルー。青は法律の色。
  • ガスの養鶏場を見張るラロの双眼鏡のグラスはオレンジ色に光り、メモを取る鉛筆もオレンジ色。オレンジ色は暴力の色。
  • 奨学金の候補になった学生のうち、万引き歴のある少女だけが赤の入った服を着ている。赤い帽子をかぶった小人がたくさん散りばめられたシャツ。赤は犯罪の色。

 

また、最初の聴聞会で追加質問をした委員メグ。

他の2人の委員はネイビーや黒などの「安全」な色を身にまとっているが、メグの白いブラウスにはいろんな色の蝶が飛んでおり、赤や黄色も含まれている。黄色は「警戒」、赤は「攻撃性」を示す色で、ジミーにとって決定的な攻撃となった追加質問をする予告になっている。緑や青の蝶もいるが、これはその質問がジミーにとっての助け船になり得た事を示しているともとれる。

 

もう一つはジミーのネクタイのストライプ。全体的にグレー系のコーディネイトだが、ネクタイの極細ストライプだけが青い。灰色が表すのは「気落ち・罪・後悔」などで、青は勿論Better Call Saulでは法律の色だ。この青の細さがか細い。

 

右肩上がり・右肩下がり

そしてこのネクタイは、右下がりのストライプになっている。Better Call Saulではこの右下がりのストライプは特徴的な使われ方をしているように思える。

グラフでも「右肩上がり」といえば景気が良く、「右肩下がり」というと勢いがなくなる。そういうイメージをタイのストライプの向きで表しているのだろう。

 

これはS3Ep02で、ジミーとキムの2 in 1事務所の壁の模様や、第一話と最終話のタバコシェアシーンの光でも使われている。

S3Ep02 株の暴落に見えないか心配するジミー

S1Ep01 S6Ep13 光の向きの対比

S3Ep02で、「WM」をモチーフにした壁の模様が株の暴落に見えないか心配している。このシーンは、住所を書き換えたという自白をテープに取られていた事に腹を立てて、チャックの家に押し入る直前のシーン。その直後押し入ってテープを破壊した事を探偵とハワードに目撃されしまい、起訴前ダイバージョンを余儀なくされ、弁護士資格も1年間停止されてしまう。

 

タバコシェアのシーンは、第一話ではBreaking Badのソウル・グッドマンへの約束された破滅を表す右下がりのあかり。

最終話では、全てと向き合って贖罪を始めたという(少なくとも道義的には)明るい未来を示す右上がりのあかり。

 

 

最初の聴聞会でのジミーのネクタイに話を戻すが、この聴聞会は失敗に終わる事をほのめかす右下がりストライプだった。

 

逆に、次のエピソードでの2度目の聴聞会では、グレー系だった1回目の服装とは違い、青で纏めている。ネイビーのスーツに、ブルーシャツ、ネクタイもネイビーの右上がりストライプだ。

S4Ep10 2度目の聴聞会のジミー

椅子や壁に落ちる日光までブラインドを使って右上がりを強調している。自分には説明できないが壁の絵にも何か意味を持たせているんだと思う。

 

Breaking Bad S2Ep08 Better Call Saulでのストライプ 

Breaking Badでのソウル初出演エピソード S2Ep08 Better Call Saul(ソウルに電話しよう)では、オープニング直後のTV CM以外では、拉致の前後でストライプが逆転している。

バッジャーへの接見、ウォルターの来所、ウォルター達による拉致までが右下がり。

その後のDEAとの取引交渉の場でバッジャーに付き添っている時、事務所でウォルターとジェシーに出戻りジミーの説明をしている時、それと、オープニング直後のCMでは右上がりストライプ。

なお、本エピソード最後でウォルターの職場へ押しかけた時は斜めのチェック柄だ。

 

こうしてみると、BrBaS2Ep08と、BcS S4Ep09,10でのストライプの向きは、綺麗に対になっている事がわかる。

 

 

 

また別エントリで纏めるかもしれないが、現時点でメモってあるジミーのネクタイのストライプの向きを列挙だけしておく。右下がりのエピソードナンバーで勘の良い人なら色々思い当たるのではなかろうか。

右上がりストライプ

S1Ep01,02,03,04,09 / S4Ep05,10 / S5Ep01,02,06 / S6Ep01,06,07

右下がりストライプ

S1Ep01,06,07,08,09 / S3Ep06 / S4Ep09 / S5Ep08,09 / S6Ep09 / 各S Ep08のオープニング

 

上で、S6Ep09で初めてキムに「I love you」と言った時のジミーの画像を載せているが、ネクタイは右下がりストライプだ。

 

 

記憶をすべて保持したままアルバカーキ・サーガを再視聴したい

初見の感動を再び味わいたいがために「ある作品に関するすべての記憶を消して再視聴したい」というのはよく言われる言い回しだ。本やゲーム等でも言われる事がある。

 

初見ならではの面白さは勿論否定のしようがないし、自分も好きではある。しかし、Breaking Bad/Better Call Saul/El Caminoの3作ことアルバカーキ・サーガにおいては初見では完全な記憶力を持っていない限り、一通り観ただけでは気づけない面白さが全編に散りばめられている。本稿ではその例を挙げてみたつもりだ。

 

例えば、S4Ep09弁護士資格復帰の聴聞会にチャックの亡霊としての赤いEXITサインが映り込んでいた事に初見で気づけるだろうか。2回目の聴聞会の構成が、作品フィナーレであるS6Ep13での求刑についての審問のそれと対比されている事に気づけるだろうか。

気づける人が居たとしても少数派だろうし、そういう人は周回視聴の必要は無いんだろう。

だが逆に、凡人は周回視聴でより深い喜びを得られるのだ。

 

 

ヴェルナーと妻のマルガレーテの電話の会話のような、それが後に使われるかどうか確定していない時点で、ネタを撒いておくことは細かく頻繁に行われている。

Breaking BadではS2Ep08だけで名前が登場するイグナシオやラロもそうだった。この名前を入れたピーター・グールは、この時点でイグナシオとラロについての詳細な設定は皆無だったとインタビューで答えている*7

Q: When you wrote the original Saul Goodman episode for Breaking Bad where he mentions Ignacio and Lalo, how much, if any, thought did you give to who those guys were?
A: [Laughs] The answer I want to give is “zero.”

Better Call Saulを最後まで見てからまたBreaking Badを見ると、ソウルというキャラクターの伸びしろとなる「余白」のようなシーンがいくつもある事に気づけるだろう。本稿ではそれをいちいち指摘するような無粋な事はしない。是非再視聴の際に自分で見つけてほしい。

 

制作の進め方

制作陣のインタビューを見ていれば頻出する話題なのだが、彼らは制作する際に「目の前3インチだけ見えている」状態でドラマを作っている*8。これは普通に考えるととても恐ろしい事で、こんなやり方で上手くドラマを作れてしまうのは奇跡なんじゃないかとも思う。

 

例えば、Breaking BadではKrazy-8は1話限りの出演のはずだったが、スタッフに愛され過ぎて次のエピソードまで生きていた*9なんて話もあるし、ジェシーやハンクがSeason1の時点で退場する筋書きもあったとかいう話まである。

 

こういう話を聞いてすら、自分はあまり本当の事のようには思えず、ほんとは大体筋書き決まってたんだろ?と最初の頃は思っていた。ただ、深く知れば知る程制作陣は本当にそういう作り方でアルバカーキ・サーガを作ってるんだという確信が深まっていった。

 

その一例となるのがBetter Call Saul Season2 Ep01 Switchだ。

自分もそうだったが、多くの視聴者に制作陣までもが、ジミー・マッギルがソウル・グッドマンへと変貌するのはSeason1の終わりでなんだ、と思い込んでいた。ただ、制作陣は途中で思い直し、ジミーがソウルに変化する速度を緩めようとしたそうだ。

Season1フィナーレでは、裁判所の駐車場に入ったジミーが、ピンキーリングを気に掛ける様子で思い悩み、裁判所へ入る事無く車で出ていくシーンで終わっていた。ところが、S2プレミアでは、ピンキーリングを気にかけて思い悩んだ後、裁判所でハワードやキム、そしてD&Mの面々と話をする場面が描かれている。

 

Better Call SaulはBreaking Badよりも構成がシビアで、各エピソードのTeaser以外でFlashback/Flashforwardが使われる事は稀だ(細かいそれが無いわけではない)。なのに、S2Ep01で追加のプロット(D&Mへの参加を辞退した事)をねじ込んだ形になったのが特殊事例で、ペースを落とした証拠のように思える。実際この通りなのかは分からないが。

 

更に、こちらのインタビューでは、Better Call Saulの制作を始めた時はハワードとチャックの役割が逆だと思っていた、なんて話もしている。

www.newyorker.com

 

脚本家チームはこれまで描いてきたことと矛盾しないような選択肢を常に検討し続け、そして最良の道を選び続けてきたと思う。

これは脚本家チームだけに限らず、制作にかかわるすべてのスタッフが相互に敬意を払い、ベストを尽くし続けてきている。俳優や監督は勿論、美術や衣装・メイク、ロケーション、ケータリングや医療スタッフまでだ。

そういう姿勢が、Insider Podcast含めて、どの脚本家や監督・俳優の話にも「Team Effort」という言葉がよく使われている事に表れている。ちなみにこの言葉、Better Call Saul本編でも1度使われている。どこだったか即答できる人はかなりのフリークだろう*10

自分はエンタメ制作畑の人間ではないが、もしそうだったらPodcastやインタビューを観ると「こういう制作チームに加わりたかった」と心の底から妬んだだろう。

最終シーズンのS6、Ep04でキム役のRheaが監督デビューを果たしたのも、こういう制作チームの空気の賜物だろう。

 

何かと崇め奉られる事が多いVince Gilliganだが、彼が築き上げた制作チームの体制や空気が、その本質ではないかと自分は考えている。勿論彼の脚本家や監督、共同クリエイター(実際何をするのかはよくわからないが)といった分野での実務力も含めてだが。

 

まとめ

アルバカーキ・サーガは一周観るだけでも十二分に面白いが、二周・三周してもそのたびに(その間に忘れてしまった事も含めて)新たな発見がある。「そんなの大体の作品がそうだろう」と思うかもしれないが、アルバカーキ・サーガはその濃度が半端ではないのだ。

また、見つけにくい発見であればあるほどその喜びも大きい。

 

Breaking Bad 62話 Better Call Saul 63話 El Camino 合計で120時間を超える圧倒的な量を誇るアルバカーキ・サーガだが、長いだけではなくその濃密さも半端ではない。 

「もっと」と観る人が求めれば、求めただけ返してくれるのがアルバカーキ・サーガの3作品なのだ、と個人的には思っている。

 

記憶が薄れないうちにこの深い喜びを求めて二周目やそれ以降に突入する人が、この纏まりきらない(努力はした)散漫な文章を読んだ人の中から現れてくれると嬉しい。

 

*1:Better Call Saul Season6前半における繰り返し演出・自己言及 (LastUpdated 20220714) - toorisugari3のブログ

こちらのエントリで、BcS S6前半でのそれを纏めてはいる

*2:最初の3番アングルだけは少し薄いが、最初のアングルに引き続き、チャックの存在を匂わせる意図があるとも考えられる

*3:フィクションでよくある答え合わせの方法。S6前半でのキム達の不可解な脱線も、S6Ep07で、キム達のアパートを訪ねたハワードが答え合わせをしている。

*4:個人的にはロースクール通信制であろうがなかろうが、大学のランクも含めて、そこで卑下する必要はないと思う。

*5:‘Better Call Saul’ Writer on Finally Entering the World of ‘Breaking Bad’ – Rolling Stone

*6:ベターコールソウルとブレイキングバッドのColor Code - toorisugari3のブログ

*7:‘Better Call Saul’: Showrunner Peter Gould Breaks Down Season 4 – Rolling Stone

*8:例えば5 Burning Questions About the ‘Better Call Saul’ Season 5 Finale — Answered – Rolling Stone5 Burning Questions About the ‘Better Call Saul’ Season 5 Finale — Answered – Rolling Stone

*9:クレイジーエイトはスタッフに愛されすぎて生き延びた【ある意味エミリオも】 | トリビア | 海外ドラマ「ブレイキング・バッド」ファンサイト Breaking Bad Fan JP

*10:答えはS5Ep06

Better Call Saul S6Ep13 感想 (ネタバレ)

【注意】本エントリには、Better Call Saul/Breaking Badのネタバレが含まれる。両作最後まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

 

 

Better Call Saul 全63話を締めくくる最後のエピソード。個人的に注目したいのは、法廷でのシーンと、タイムマシン絡みのフラッシュバック、そして最終話を通しての人格の変遷だ。

 

クライマックスまでのあらすじ

マリオンに通報されたジーンは慌てて逃げ出す。車の色やナンバーをきっちりと報告するマリオン。自宅に戻り、Stashから持ち出し用の箱と使い捨て携帯を1つを準備する。既に警察が表にやってきていて、裏の窓から逃げ出すも簡単に追い詰められ、ゴミ箱に逃げ込んだ所を発見される。

 

ジーンは「This is how they get you?」と繰り返し、留置房を歩き回る。そして壁に掘られた「MY LAWYER WILL REAM UR ASS」の文字を見て、かつての仕事相手で、今はアルバカーキで検事を辞め、独立開業を果たしたビル・オークリーに電話し、「advisory counsel」に指名する。

 

検察との交渉の場。ジーンは髭をそっている。「終身刑プラス190年」の刑期。RICO法違反、薬物製造販売の共謀、資金洗浄、複数の殺人の事後共犯。これが検察が算出した「ソウル・グッドマン」の刑期だ。それを前提に、1回限りのオファー、30年。30年真面目に勤め上げ、まだ健康であれば出してやろう、と。

 

話を聞き流しているようなソウルは、余所見をしている。マジックミラーの後ろに、部屋に入る前にみかけたマリー・シュレイダーが居る事を確信していて、ここへ呼べと提案し、マリーも同席する。ハンクやゴメス、そしてその家族の悲しみを訴えるマリーに、ソウルは「私もあなた達と同じ被害者だ」と言ってのける。金の為ではなく、命の危険があったからウォルター・ホワイトのために働かざるを得なかったのだ、と。

その傍証として、3つの拘置所で、2分間の間に関係者10人が殺された事件の事を挙げる。これをネタに検察を揺さぶり、7年半*1の刑期を勝ち取るソウル。

しかし、彼の傲慢はここで終わらず、ハワードの事件の詳細をネタに、週1回のチョコミントアイスの差入れまで要求する。

 

勿論これは一笑に付される。既にキムがその件の詳細な供述書を提出し、当局の知る所となっているからだ。ここではじめてソウルの表情に変化が訪れる。

 

 

ネブラスカからニューメキシコへの移送中。飛行機からは曲がりくねった川が見える。トイレに行こうとしたビルを引き留め、キムの自白が訴追に繋がるかどうかを確認するソウル。裁判で使える証人・物的証拠共に何もない以上、検察も動けないだろう、というビルに安堵するソウル。

しかし、ビルは続ける。「しかし、キムにとって検察は問題じゃない」。キムがシェリルに宣誓供述書を手渡し、民事訴訟への道を自ら開いた事、シェリルが弁護士を探している事を聞いて溜息をつくソウル。

 

「一体何故そんなことをしたんだ、キム?」とでも言いたげな表情で暫く悩むが、ハッと何かに気づいたかのような表情を見せ、トイレ帰りのビルをもう一度呼び止める。

ハワードに関する「皆が不愉快になる出来事」を検察に教えるというのだ。ビルはキムを追い込む事になるぞ、と警告するがソウルは「It's really good ice cream.」と不敵に笑う。

 

フロリダのキムは、無料法律相談の事務所でのボランティアをはじめ、再起をはかろうとする。そこに検事のスザンヌから、ソウルが捕まったこと、そして自分に関する供述をすると言っている事を知らされる。

 

法廷シーン

The Harmonizing Fourの「All Things Are Possible」をBGMに、手錠を掛けられたソウル・グッドマンが法廷へと連行される。ソウルは光沢生地のスーツに、色の濃いカラーシャツ、けばけばしい模様のネクタイで、完全な「ソウルモード」だ。飛行機事故追悼のリボンまで付けている。

法廷のドアから入ってきたソウルは、まず一番後ろに座るキムに挑発的な視線を送り、次に険しい顔でマリーの方を見る。となりにはスティーブ・ゴメスの妻と子供(そっくり!)も。

手錠を外され、ソウルは被告人席に座る。そしてBGMの歌も「If you only believe」と締めくくられる。

 

ここまでのシーンが0.5倍速程度のスロー演出で映される。Better Call Saulにおいて、スロー演出は貴重だ。機会があればカウントしたいが、恐らくFワードよりも相当使われる頻度が少ないはず。とくにここまで尺が長いのは記憶に無い(訂: S2Ep01 D&M初出社のシーンが1:18。このシーンが1:10無いので、これは誤りだった)。6シーズン63話のシリーズクライマックス。

 

最後にキムを先ほどとは違い、気弱げに振り替えり、「It's showtime.」と独り言ちる。S1Ep02 トイレの鏡に向かって言ったセリフ(folks付き)*2

 

7年という量刑(半年はどこいった?)を検討するこの場で、ソウルは先日マリーの前でしたウォルターとの最初の出会いの話をする。バッジャーを取引無しで釈放させろという無理を断った結果、頭から袋を被せられ、荒野に掘られた墓穴の前にひざまづかされるというものだ。

結果命の危険を感じ、ウォルターに従ったのだ、という嘘をまたつくのか、この馬鹿野郎は!と思わせた瞬間、「But not for long.」と続ける。金儲けのチャンスを逃さず掴み、16か月間にわたりウォルターが麻薬帝国を築く手助けをしたと。

事前の宣誓供述と真逆の事を言い始めたソウルに、それでいいのかと判事は確認をするが、「I believe the court deserves the whole truth.(法廷は真実を知るべきです)」と、宣誓をする。

 

判事は「宣誓下での偽証は偽証罪司法妨害に問われる事になる」と警告するが、ソウルは確信に満ち、そんなことは百も承知だという顔だ。

 

ウォルターとともに何百万ドルを稼いだ。殺人やメス製造の事も知っていたし、資金洗浄もした。自分が居なければウォルターは1か月以内に死ぬか逮捕されるかしていただろう、とまくし立てる。自分が居なければハンクやゴメスをはじめ、多くの人が生きていただろう、とも。

 

ここまで話すと、負け知らずの検察官に「聞いたか?」と挑発し、ビルはソウルの発言の削除を求めて検察と言いあう。

その間にソウルは法廷の一番うしろにポツンと座っているキムを見やる。「どうだ、やってやったぞ!」とでも言いたげな顔のソウルに対して、キムは表情を変えない。それを見たソウルは表情を曇らせて少し悩み、「もう一つだけ話させてください」と話を始める。

 

まずはキムの事。ハワードの死に直接の関係があるわけではないが、キムは少なくともそれを二度と起こさない様にという事でアルバカーキを離れた。逃げたのは私の方だ、と。

そして兄、チャックの事。S3Ep05 チャックが証人席でBreakdownするラストと同じく、非常口のEXITサインとそれが発する「ジー」というノイズを見聞かせる。

 

頭の固い兄だったが、それでもその眼鏡にかなうようにもっと頑張るべきだった。「I tried.  I could have tried harder.  I should have.」。S4Ep10とはちがう、本気の告白にキムも息をのむ。小さくうなずいているようにも見える。

そして、弁護士賠償保険を解除させるようにしむけ、唯一の生きがいである法を奪ったと、それが原因でチャックが自殺した事を初めて告白する。この事を知らなかったキムは思わず天井を仰ぎ見る。

 

「And I'll live with that.(それを背負って生きる)」。

 

被告席に戻ったソウル。ビルは「兄さんの件は犯罪ですらないだろ」というが、ソウルは「Yeah, it was(いや、そうだ)」。

判事は私語を咎め、「黙って席につきなさい」というが、「The name's McGill.  I'm James McGill.」と、誇りに満ちた顔つきで自分の本名を名乗る。

 

再び後ろのキムを振り返り、無言のやりとりをする二人。どこが違うのか言葉にできないほどの変化だが、キムは満足げで、一度うなづくようなそぶりもみせる。

 

感想

チャックの「People don't change. 」(S1Ep09、ジミーへ)「He'll never change.」(S3Ep05、ハワードへ)に対しての解答で、このBetter Call Saulシリーズ全体のテーマでもある。

「All things are possible. If you'll only believe.」という歌詞で勘のいい人なら何が起こるか気づいたのだろうが、自分は全くダメだった。

ヒントはもう一つある。「It's showtime.」だ。S6にあたってS1から見返した人なら覚えているだろうが、これはS1Ep02でジミーが鏡に向かって言うセリフだ。由来は「オール・ザット・ジャズ*3。ジミーが公選弁護人として真面目に働く様子を描くモンタージュシーンにおいてのみ、合計4回この「It's showtime(, folks).」が使われている。このセリフは真っ当な事をする時のセリフなのだ。こちらは後でまたS1から見直している時に気が付いた。

 

自分は、「ソウル・グッドマン」としてベラベラと喋りまくる間に交わしたキムとの目線だけでのやり取りにもしばらく気づけなかった。数度目の視聴で自分で気づけたのが不幸中の幸いではあった。「自ら獲得した短い刑期を捨てて長い刑期を勝ち取り、ジミー・マッギルに戻る」という大きなプロットのショックがあまりに大きすぎて、2,3度の視聴では冷静に見られなかったんだと思う。

 

いざ気づいてみると、キムの反応はほとんど表に出ていないのに、何故かこれ以上無いほど明確でもある。宣誓直後、「証言を聞かせるためにウソをついて呼び出した」と言った時の少し怪訝そうな顔。一通り証言が終わった後の「それだけ?それで終わりなの?」と少し挑発気味な顔。「私はジェームズ・マッギルだ」と宣言した後は、軽くうなづくような動作も見える。

プライベート以外では感情をほとんど表にださないキムだが、ここでの演技も最小限だ。それなのに完全に伝わってくるキムの気持ち。どこまで視聴者を信用して、どこまで計算した上での演技なのか。もはや想像など及びもつかない次元に達している。

 

キムはS1で、ジミーをHHMで雇う事を止めた真犯人がチャックである事を黙っていた。

S4Ep10 弁護士資格復帰の公聴会で、ジミーがチャックについて語った事にも涙した。ジミー自身が直後、「委員の一人が涙まで流してやがったぜ」というやつだ。

キムはジミーとチャックにいがみ合ってほしくなかったし、その死後もチャックの死をジミーに悲しんで欲しかった。公聴会では委員と同じくジミーのチャックへの想いを聞いて涙したが、これは弁護士資格を取り戻すための方便でしかなかった。

 

この証言で、「ジミーがチャックを自殺に追いやった」というこれまで知らなかった新たな十字架についてもキムは知る事になったが、その重さを加えてさえも、ジミーがチャックとの事に逃げずに向き合う事を決意したことが、キムにとってどれだけ嬉しかっただろうか。

 

 

Better Call Saul 全63話は全てこの法廷シーンを描くためにあったようなものだ。「All Things Are Possible」をBGMに、スローモーションで法廷入りするシーンから、「私はジェームズ・マッギルだ」と宣言し、キムと視線のやりとりを交わすまで。一分の隙もない。

ビルの動揺もシリアスなコミックリリーフとしてアクセントになっている。

 

S6Ep11 "Breaking Bad"で、ウォルターとジェシーにRVで砂漠に連れていかれ、そして帰ろうとするシーン、個人的には事前に言われていたような「必須さ」が感じられなくて、あまり重要ではないカメオ的な要素じゃないか?と思っていた。しかし、この法廷シーンでその「必須さ」を見せつけられる。

ソウルの「I was terrified. But not for long.(怖かった。しかし、一瞬です。)」の根拠として絶対に外せなかったのだ。

 

 

タイムマシン

最終話のフルカラーパートは3回で、これらは全てタイムマシン関係のフラッシュバック。ジミーが問う「タイムマシンがあったらやり直したい事」は、ウォルターが看破した通り、「後悔」の事だ。

タイムマシン1ーマイク

1回目はTeaserのマイク。風車くみ上げの井戸にたどり着いたのは、S5Ep09冒頭で携帯がつながった後から人里に出るまでの間。「ボトルの尿」が鍵となり、そこ以外はありえない。マイクは初めて賄賂を受け取った日に戻りたいと、自らをさらけ出す。

一方ジミーは金の話でとぼける。チャックの事に向き合えていないから。S5Ep08ラストでチャックの象徴であるSpace Blancketを捨て去り、頭の中から追いやってしまった後だから。

 

タイムマシン2ーウォルター

2回目はウォルター。時間的にはBreaking Bad S5Ep15 "Granite State" TeaserとA1の間、Best Quality Vacuumの地下室に居た時。エゴの塊ウォルターはグレイマターに残っていたら、というもの。

しかし、この話をする直前、ジェシーから誕生日プレゼントに貰ったタグ・ホイヤーの「モナコ」に目線をやり、ウォルターの顔から時計へとフォーカスがうつる。この表現から、「グレイマターに残っていたら」というウォルターの後悔は嘘だと強く推測できる。少なくとも、本当はジェシーを切り捨ててしまった後悔の方が、グレイマターの件よりも強い事は明らかだ。

さらに、ウォルターは2人に追いやられたというのも嘘で、自分がグレッチェンの家の裕福さに気後れして逃げた事を誤魔化してもいる。

 

ここでジミー/ソウルが挙げたのは、若い頃の詐欺で実際に膝を痛めてしまった事。BrBaS2Ep08やS1Ep03で膝が悪いと訴えている。

勿論こんなのが最大の後悔であるはずもないが、この時点ではキムとの別れの反動でソウル・グッドマンになっていた時期。キムの事もチャックの事も、まだ向き合う準備が出来ていないから、適当に誤魔化してしまうのだ。

ウォルターに「So you are always like this.」などと言われてしまうが、これは他人に言いながら、じつは自分にも向けられているセリフでもある。

 

タイムマシン3ーチャック

3回目は法廷シーン直後、チャック。Better Call Saul第1話よりも前の時点。第1話ではここで入荷するようになるかもと言ったフィナンシャルタイムスを届けている。1回目2回目のフラッシュバックと同じく、このシーンがタイムマシン、いや後悔についてのシーンなのは明白だ。

 

この「後悔」だが、ジミーはいつから持っていたのだろうか。個人的にはチャックのを死を知った瞬間からずっとだろうと思っている。責任をハワードになすりつけ、決して向き合いはしなかったが、ずっと後悔の気持ちはあったはずだ。

それが歪んだ形で表出した件として現れたのが、S4Ep02のコピー機メーカーの面接で即採用を勝ち取ったのに逆に正気か?と罵倒するあのシーン*4ではなかろうか。

そして、「後悔」のメタファーであるウェルズのタイムマシンが画面に映るのは2か所。S6Ep02 ケトルマンからの電話を受けた時のベッドサイド、そしてS6Ep01Teaserだ(時系列順)。つまり、ジミーはキムと別れる前から別れた後も、ソウル・グッドマンとして逃亡するその時まで「後悔」を所有し続けていた事になる。

 

チャックはいつも本心ではない建前を発話するのだが、このシーンではすべてのセリフが一応は本心から出てるように見える。
「配達は事務所に頼める。なんでお前がやるんだ?」は実はあまり顔をあわせたくないのだろう。
それでも、事務所を構えようとしている時にまで「自分がやる」というジミー。何故か?「Because you're my brother, duh.」。これはS2Ep08のチャックのセリフ「But if things were reversed......I hope you know that I would do the same for you.」と対になる。自分の解釈では、ジミーのセリフは義務感だけではなく、家族・兄弟としての愛情・忠誠心からもきており、チャックのは義務感や社会的な体裁を気にしてというのが最大の動機となっており、すれ違いが見られる。

それでも。「Well, you could stay for a while. We could talk.(少し話をしていくか?)」とチャックは譲歩してる。ジミーの愛情・忠誠心を感じたからだ。しかし、ジミーは忙しさにかまけてこれに付き合うことができなかった。「Talk.  What about?(話って、なんの?」との問いに、「Your cases, your clinets?」と返してしまう、法律・仕事のことしか返せないチャックも、その不器用さがよく表れていてとても良い。

 

ジミーの「後悔」はこれ、「You know, I'm gonna take a pass on the heart-to-heart, Chuck.(腹を割って話し合うのはまたにするよ)」なんだろう。ここで腹を割って、もうすこし話をする事が出来ていたら、分かり合う道がひらけていたかもしれない。そこまでいかなくても、少しは今が変わっていたかもしれない。

「今の道(弁護士)が嫌なら、道をもどってやり直してもいいんだぞ」。このチャックのセリフも、同じ弁護士という職業についていてほしくないというチャックの本音・願望が漏れたものだろう。

それに対してジミーは「兄さんは道を変えた事があるかい?」。あくまでチャックを尊敬し、ロールモデルとして近づきたい一心のジミー。

そして最期に、チャックはペーパーバックのタイムマシンとランタンを手に取り、家の奥へと消えていく。

これはジミーがずっと後悔を抱えていたというのと同じで、チャックも後悔を抱えていたという事だ。しかも、このシーンで「後悔」を手にさせたのだから、その対象は兄弟関係に限定されるとみるべきだろう。チャックはチャックなりに、弟を信用しきれなかった事に後悔があったのかもしれない。

 

それに、もし今チャックが「裁判で86年の刑期を勝ち取ったジミー」を見れば、ジミーが司法試験に合格した時に、ハワードにHHMでは雇うなと言った事も「後悔」になるのだろう。

 

3つ目のフラッシュバックシーンの矛盾とその解釈

ところで、このチャックとのフラッシュバックシーンには明確な矛盾が1つある。それはジミーがしているピンキーリングだ。細かく見られる場面はないものの、ジミーがつけるピンキーリングといえばマルコの遺品としてもらったものだ。

S1Ep10での「I'm not a big ring guy」や、S2Ep01でピンキーリングを見咎められて「そんな変なピンキーリングまでしちゃって、マフィアにでもなったつもり?」と言われている事から、これ以前にピンキーリングはしていなかっただろうことはほぼ明らかだ。

一方で、この場面はBetter Call Saulの第一話よりも前の時系列となる。基本的には前へ進んでいくだけの話で、マルコの形見分けでピンキーリングをジミーが得たのはS1Ep10での事。これは明確な矛盾だ。

 

もう一つ、カウンターにおいてあったウェルズの「タイムマシン」のペーパーバック、チャックが動かした素振りは無いのに、最後にチャックが手に取る場面とそれ以前では起き場所が変わっている。

これは普通なら明確なミスとするのだろうが、この場合一つのヒントになるのではないか?と考える。ウェルズのタイムマシンは本当は無かったのではないか。チャックにタイムマシンを持たせたのは、チャックにも後悔があったという事を示すためだという事だ。

 

明確な証拠のある話ではないが、このチャックとの会話自体は実際にあったものなんだと思う。そこに、マルコのピンキーリングと、後悔のメタファーとしてのタイムマシンを置いたのは、このシーンのファンタジー・幻想性の制作陣からの示唆だ、というのが持論だ。

 

チャックが「ペーパーバック」の、古典的SFの中編である「タイムマシン」を読むようなタイプの人間か、という疑問もある。チャックがまだ若い頃なら違和感はない。しかし、あの年のチャックが読むにはあまりにふさわしくない。S1Ep01時点ではチャックは58歳だ。

あまり似合わないが実は愛読書でした、という可能性よりも、幻想であると取る方が、少なくとも自分には説得力のある、納得できる話である。

もし今チャックが「裁判で86年の刑期を勝ち取ったジミー」を見れば、ジミーが司法試験に合格した時に、ハワードにHHMでは雇うなと言った事も「後悔」になる

上記のように前節で示した事を、制作陣は伝えようとしたのではないか、と考えている。

一方で、指輪については「Slippin' Jimmy」や「Saul Goodman」もまた間違いなく、「James Morgan "Jimmy" McGill」の一部であるとの制作陣からの主張だととらえている。

 

 

最終話での人格の変遷・シーズンポスターについて

この1エピソードの中で、ジミーはソウル・ジーンという別の名前を逆順に辿る。

マリオンに通報されて捕まるまでがジーン・タカヴィク

留置場の中の「MY LAWYER WILL REAM UR ASS」の落書きを見てソウル・グッドマンになる。髭もそり落とす。

ソウル・グッドマンとして7年半まで刑期を縮小する。しかし、アイス要求でキムがハワードの事を告白した事を知り、ソウル人格は揺らぎ始め、飛行機の中で、キムがすべてを奪われる民事訴訟シェリルからおこされそうになっている事を知った後、ソウル・グッドマンの人格は消え、ジェームズ・マッギルに戻る

しかし、ジェームズ・マッギルとして胸を張って生きていくために、キムにふさわしいジミーであるためには、やらなければいけない事がある。

そこで法廷シーンに登場するのが中身はジミーなソウル・グッドマンなのだ。

 

シーズンポスターは髭と眼鏡でジーン・タカヴィクだと判断できるジミーが、ソウル・グッドマンの証と取れる派手な赤いジャケットを着ようとしている/脱ごうとしている場面。

留置場の落書きをみて、赤いジャケットを羽織ったジーンは、ソウルの役割が終わり、自分を「ジミー・マッギル」だと宣言した瞬間にこれを脱いだわけだ。

 

シーズンポスターを見た時に、このポスターの意味を考えたのだが、「キムの窮地を救うためにもう一度ソウル・グッドマンに戻る」のだと、ヒロイックで単純な予想をしていた。

ただ、普通に考えて、Breaking Bad後の、(弁護士資格を失ったソウル・グッドマンが一体何ができるの?弁護はできないから口八丁の「魔法」で助けるのだろうか?と思っていた。

 

だが、ソウル・グッドマンが再び現れるのは法廷だった。弁護士資格を失ったソウルにできる唯一の法廷での弁護、それは自分自身の弁護だ。何故これに思い至らなかったのだ?と今となっては後悔しきりである。「キムを助けるため」という想像があまりに魅力的に思えたためにそこから出られなかったのだろうか。

アメリカのドラマでは、刑事ものや法廷もので「自己弁護」が取り上げられる事はそれなりにある。物語として意外性があり面白いからだろう。頭の回る小悪党だったり、IQだけはやたら高いソシオパスだったりするが、自分が見た中では本人弁護が功を奏して罪を免れる事の方が多かった気がする。

 

今回ソウルがしたのは弁護ではなく、罪の告白だ。事前の合意とは真逆の告白。贖罪の為に自罰的な行動をするのはアーキタイプの1つではあるが、ここまでの語り口でジミーがこの道を行くとはなかなか思えなかった。

 

Breaking Badは「化学という魔法」がブルー・メスを生み出し、話が転がる構造だったが、Better Call Saulは「法律という魔法」の物語だ。magicという単語が本シリーズで初めて出てくるのがS1Ep03Teaserフラッシュバック、ジミーがシカゴ・サンルーフで拘留されている時に、チャックに対して言った軽口。チャックの死後、ジミーはヒューエルに服役は回避できるといい、でも「弁護士じゃないんだろ?」と言い返され、「なぁ、俺は弁護士じゃなくてもやれる」「I'm a magic man」*5

魔法を法を越えたものとして再定義したのだ。これらはメサ・ヴェルデの書類の書換やメサ・ヴェルデの設計図差替え、酒場での寸借詐欺も含む。この魔法にのめり込んだジミーとキムは最終的に一線を越え、ハワードを陥れる計画を実行に移し、結果ハワードハムリンを死に至らしめてしまう。

キムとの別離を経て、「ソウル・グッドマン」としてウォルターの補佐をして逃亡後、キムが自分がした事に向き合った事を聞いて目が覚めるジミー。最終的にはチャックが神聖な物だとした法に則り、最も居心地の良い刑務所での7年にまで減らした刑期を、自ら最も厳しい刑務所での86年にまで延ばす。罪に向き合うためには、そう決意を決めたジミーには、これは勝利以外の何物でもないのだ。

 

疑問点

  • 大きな事件なのに、傍聴人が少ない。著名人が絡むのにこんなに少ないという事は、一般公開はされていないという事だろう。マリーとゴメスの家族は関係者だが、判事からみて左奥に座っていた2人は誰?キムは何故入れたのか?スザンヌのはからいか?
  • シェリルが来てもおかしくないはずだが来なかったのは何故だろうか?

 

Shared Smoke

自分がBetter Call Saulを見始めて、いきなり度肝を抜かれたシーンが、ジミーとキムがHHM駐車場でタバコをシェアするシーンだ。セリフは一切なく、エレベーターで降りてきたジミーが怒りに任せてゴミ箱を蹴りまくり、その横で煙草を吸っていたキムと煙草をシェアして、キムがゴミ箱を直す。

キムの顔が影に隠れていたのは、この時点では制作陣もキムというキャラクターがどういうキャラクターなのか分からなかったからだそうだ。

第一話と最終話の対比

最終話でもジミーとキムはタバコをシェアする。火をつけようと、ライターを差し出す手が震えているキム。そしてその震えを止めようとするかの如く包み込み、火をつけるジミー。この時から、キムの頭部とジミーの左胸には窓格子が十字の影を落とし続けている。2人共もう隠すものは何もなく、2人共ただ十字架を背負っている。

そして、ほの赤く光るタバコの灯り。「Eighty-six years.」「Eighty-six years.  But with good behavior, who knows?」

 

 

Better Call Saul 最終回を前に少しだけ

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep12まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

Starringのこと

S6Ep10から順に、「Bob Odenkirk」「Bob Odenkirk, Jonathan Banks」「Bob Odenkirk, Rhea Seehorn」ときた。Ep11時点で1人ずつ増えていくのかな、と思ったんだけどEp12でも2人だった。最後もRheaとの2人の可能性が一番高いとは思われるが、フラッシュバックで登場する他のキャラクターも居るのか?マイクが持っているトゥコのネックレスはまだサラマンカの手に戻っていないが、描かれずにおわるんだろうか?

 

Waltのこと

ジェシーとキムに新しいイベントがあったのだから、バランス的にはソウルとウォルターにも無いとおかしい。どういうシーンになるんだろうか。

Better Call Saul S6Ep09 感想 (含: ネタバレ) - toorisugari3のブログ で取り上げた、「Breaking Bad S3Ep02で、ソウルがウォルターに会ったあと、車で悩むシーン」に関連するような、家族・愛する人との関係についての会話だろうか。

 

テーマ曲の事

Breaking Badの最後から二番目のエピソードラストみたいに、テーマ曲を効果的につかって欲しかった。タイトルコールで流れるのは曲の頭だから、いつも通りに切らず、BGMとしてそのまま続けて最後まで流すような演出をするんじゃないか、と先月あたりは思っていたが、Ep11以降のシーケンスを見るとその方向はなさそうだ。

最後の最後でフルを流す可能性はまだ残っていそう。

 

Old People love him

公式Twitterのこれを見て思い出したのが、S3Ep10でジミーとキムの共同オフィスをたたむ時に、ジミーが一度捨てはしたが、キムがゴミ箱から取り出した高齢者顧客達の名刺入れだ。アイリーンの孤立を解消するために高齢者達間での評判を台無しにしてしまったから。

前々からこれが再び出てくる事があればいいなぁと思っていたのだが、ありえるのだろうか?

サフィロ・アネホのボトルストッパーまで置いていってしまったキムが名刺入れを持ってるはずがないし、ソウルもまさか非常用持ち出しスタッシュにあれを置いておいたなんて事は無い、と考えるのが自然だろう。

個人的にはこの公式のTweetで可能性は寧ろ下がってしまったかなぁと思っている。

 

ジーンはマリオンをどうする気だったのか。ジミーと高齢者たち

Better Call Saul's Vince Gilligan: What's Happened to Kim? | AMC Talk | AMC

Better Call Saul's Carol Burnett on Marion's Big Moment | AMC Talk | AMC

上記はEp12後に出たAMCのVinceとCarolへのインタビューだが、ジーンが電話線を手に巻いてマリオンに迫った時に、ジーンがマリオンをどうする気だったかについて意見が割れてるのが面白い。Vinceは殺すつもりだった(明言はしてないが、文脈上そう読むのが妥当だと思う)、Carolは殺すつもりは無かったと言っている。

感想の方でも書いたが、自分には「I trusted you」後のジーンの表情が、「俺は一体何をするところだったんだ?」と正気に返ったようにしか見えなかったので、Vince側の意見。

この「I trusted you」がジミーに効くのはやはりS3Ep10でのアイリーンじゃないかと思う。全てがバレた事を悟った(演技の)直後のアイリーンの仕草。セリフは無いのだが、その表情は「I trusted you」と言っているようにも見える。

S3Ep10 アイリーン

この時はジミー自身が仕組んだ事でもあり、覚悟も十分していただろうが、マリオンに対しては違う。先の公式Tweetの件もそうだが、名刺入れは出てこないにしても、なんらかのポイントになるのでは?という予感がある。

 

また、S3Ep10では、ジミーはこのシーンの直前にチャック宅を訪れて、和解の提案をする。キムの交通事故というアクシデントに遭ったのが理由だ。しかしチャックは受け入れず、「お前の事は昔からどうでもよかった」とまで言ってしまう。そしてこれが兄弟間の最後の会話となる。15歳年下の弟をどうでもよかった(you've never mattered all that much to me)、というのは本当なのだろうか。

母の愛を奪われた恨みがあったとしても、15の頃にできた弟をどうでもよかったと思ってしまうような人間だったんだろうか。個人的には違うと思う。

 

シェリルにソウルの生存を隠したキム

これの解釈が未だに出来なくて悩んでる。自己保身で言ったのではないとは思うのだが、どういう理由なのだろうか。甘えや迷いが残っていたのか?ジミーの身を案じてなのか?

自分の贖罪にまだその準備が出来ていないジミーを巻き込むことができなかったのか?ジミーが自首すれば、ただ捕まるよりは検察の心情は良くなるが、最後の電話ではそれは望めそうになかった。

「明らかな嘘」をついている事についてはどう考えればよいのか。シンプルに考えれば保身のための逃げだ。しかし、そもそも6年間逃避し続けてきた事への贖罪でもあるアルバカーキ再訪でもあるし、帰りのバス車内での慟哭は偽物ではないだろう。メタ的にも、ここに及んでそういう小細工を仕込んでくる制作陣だとはとても思えない。

シェリルに民事裁判をおこさせ、「全てを償いにささげる」ためにしむけるための嘘?サンドパイパー和解金の分与も受け取らなかったキムに、ハワードの死や汚名をかぶせ続けてきた事の償いに値するほどの資産があるとも思えない。そもそも金でも、民事裁判で償える類のものでもない。究極的には刑務所で償うしかないものではないのか。

 

Ep12のラストでソウル・グッドマンの生存は世に知られる事となるが、これとキムが生存を隠した事はどうつながっていくのか。

 

ハワードの名誉回復・弔い

クリフやシュワイカートにも、キムの供述書の内容は伝わるだろうし、なんならキム自身が郵送しているかもしれない。ハワードの名誉回復については、一応はこれでカタがつく。

ハワードの死体については、最終話で見つかる可能性があるのではないか、と思っている。メタ的なものだが、Breaking Badでもハンクの死体の行方についてはPenultimate(最後から2番目の) Episodeでは相当望みが薄く、Ultimate(最後の) Episodeではウォルターによってその情報がもたらされる。

しかし、ハワードの埋められた場所を知る者はもはや皆死亡し(ガスやマイクの手下には生き残りがいるかもしれないが、出てくる必然性はない)、ソウルはその場所を知らない。マイクとガスの繋がりについては警察・DEAは把握しているから、ガスのスーパーラボ跡地で強力な金属探知機でも使えば、ラロとハワードと一緒に埋められた銃によって見つかる可能性がある。ベルトのバックルくらいではみつからなさそうな深さなので。それとも見つからない事でBreaking Badとは逆だという事が強調されるのか。

 

シーズンポスター

Season6 Poster

モノクロの世界の「ジーン・タカヴィク」は、赤いジャケットを羽織ろうとしているのか、脱ごうとしているのか。判明するまで48時間を切ってしまった。

 

Better Call Saul S6Ep12 感想 (ネタバレ)

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep11まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

 

「心を折りに来る」なんて表現があるが、そんなもんじゃすまない。ダイレクトに殺しに来てるエピソード。S6Ep09はショッキングではあったが、それはどれだけ語っても語りつくせないショックだった。本エピソードは未だに消化が追い付かない。何度となく見返しても未だに消化しきれない。言葉が出せない。

時系列順につらつらと箇条書き、最後に簡単にまとめだけ。

 

時系列について

  • カラーシーンは全て2004年。時系列は本エピソード登場順。
  • 2004年である根拠は、ジーン/ジミーが電話で言った「It's been six years.」
  • モノクロシーンは2010年11月11日(Veteran's Dayという退役軍人の祝日、木曜日)からその翌日、電話を受ける日。そしてその少し後にキムがアルバカーキへ。さらに暫く後に前回ラストの続き。時系列も本エピソードでの登場順だと考えてよさそう。

 

タイトルコール

Lingk(最後のカモ、膵臓癌の男)の家の前に止まるジェフのタクシーが少し映るのみ。ブルースクリーンのタイトル後には一瞬、広々とした場所に立ちすくむ女性の後ろ姿。奥に見える屋根は、マイクがBrBaS5Ep07で、金を隠していた駐車場のだ。Google Street Viewで見ると、レンタカーバスがとまっているのまでみえる。

Google Street View 2008年のアルバカーキ国際空港

 

2004年

  • Teaserで合衆国憲法にボールを投げつけるソウル。法の精神とかWho cares?という感じなのだろう。ボールを壁に投げつけるのはS4で店長をやっていた「CCモバイル」でもやっていた。(updated 20220905)
  • ハリボテの柱を倒して、「正義の聖堂」もまたまやかしであると。
  • Teaser終わり間際の目の光、白い光源を一瞬付けたのかな?
  • 客もキムも1時間も待たせてるあたり、ソウルの深い葛藤がうかがえる。
  • しかし、キムと相対すると、精一杯の強がりを。好きな子に意地悪する小中学生レベルの素振り。キムがS&Cに入る事を決断した時とは大違いだ。キムの持ち物だった絵やサフィロ・アネホのボトルストッパーを捨てていない事からもキムへの気持ちが残っている事は間違いなさそう。
  • エミリオ・コヤマ!エミリオ・コヤマ!
  • 最後のフランチェスカとキムとの視線のやり取り。フランチェスカもHHMに偽電話をした以上、起きた事全ては知らずとも、その原因があの件だという事を感付いているのだろう。
  • 事務所の内装・外観はオープン直後のフランチェスカプロデュース「上品だけど居心地の良い」コンセプトは微塵もなく、Breaking Bad時代のそれに極めて近い。
  • 雨のシーンはS6Ep03Teaserとここ以外にあったか?要確認。
  • キムとジェシーとの会話は、「柱のに隠れていた男と会話する」のは、Breaking Bad最終話のスカイラーとウォルターとの対比*1
  • ジェシーは20歳になる年。前回、ラロの名前も知らないと言っていたので、Captain Cookしはじめるかはじめないか、というタイミングなのかも。
  • BrBaS2Ep08で、ジェシーがウォルターをソウルの事務所へ連れて行った最大要因のは、キムと話をしたから(そもそもキムの言葉は否定的な意味合いだ)ではなくて、エミリオを2回もscot-free(無罪放免)にしたからだろう。前回の話題だが同様に、ガスにブルーメスへの興味を抱かせた最大要因はソウルではなくゲイル。ソウルの影響度は低いはずだ。マイクは逆にガスを理解しきれていない。
  • コンボがコロンブス騎士団教会のキリスト降誕シーンの人形を盗んだのが、コンボらしくてほっこりする。バッジャーやスキニーピートも含めてジェシーとその友達連中はちょっとヤンチャしてはいるけど、「大悪」とはわりあい距離がある感じ。
  • 「When I knew him, he was.」これをどうとらえるかが非常に悩ましい……。今はどうか分からないという意味なのか、もう見限ってしまったのか。エミリオの「I don't do no paperworks」に「Who cares?」と答えるソウルの様子を見ていた事をおもえば後者要素が強いのだろうか。

 

2010年11月12日まで

  • キムがさえない男グレンと親密そうにしているだけで泣けてくる。髪も染めたのか濃い色で、スタイルも垢ぬけない印象。声もジミーと話してた時よりもピッチが全体的に高めに聞こえる。作り声、演技の日常。
  • 4組のカップルが集まってパーティーをしているが、キムは適当に話を合わせているだけで自分を全く出せていない。「色の無い」生活。
  • 自分史上最悪のセックスシーン。拷問に耐えてるかのようなキムの息遣いがときおり聞こえて死にたくなる。「Yep! Yep!」を繰り返すだけのつまらない男グレン。メサ・ヴェルデのケヴィンを個人攻撃するために作ったビデオで、彼の父親が繰り返すのもこの「Yup!」。字幕での綴りは違うが発音も意味も全く同じ、「くだけたYes」。
  • グレンが見るのは映画ではなく、バラエティー番組の類。一色ジグソーパズルをしながら、適当に相槌を打つだけのキム。顔だけは笑顔だが心からの笑顔には到底見えない。
  • Homepage Builder!
  • コピー取りはHHMの郵便室を思い出す。
  • バニラかストロベリーか、アイスの好みも出せない。アイスといえば、S5Ep10では、ジミーがホテルで「チョコミントは抜いて」と。ラロに会うために半ば拉致のような形でナチョの車に乗せられた時のアイス。
  • ヌルい職場の描写。ここでもキムはひっそりと息を殺してただ生きているという感じ。弁護士時代の職場とは大違いだ。

 

ジーンとの電話

  • 相変わらずベラベラと喋りまくるジーン。キムと別れてから精神的に子供になってしまった。
  • キムの「You shouldn't be calling me.」。関係がバレるといけない(どちらに?)からか、思い出したくないからか。全部な気がする。
  • 「Feds couldn't find their own ass with both hands and a proctologist.」はFBIは簡単な仕事もできない、という事を最大限の侮辱を込めて言っている。賢いのは自分で、後はバカだとでも言いたげな青さ。「can't find one's butt with both hands」に、肛門科医までオマケにつけた言い回し。
  • キムの「逃げ続ける生活は続かない」は、「いずれは捕まる」とヒューエルの時にソウル自身も言った(S4Ep07)。キムの「You should turn yourself in.」に対してBrBaS5Ep15で、ソウルは「Stay. Face the music.(逃げずに現実を受け入れろ)」とウォルターに言っている。癌による余命の事もあるので完全に同じ状況ではないが。
  • 「Said the pot to the kettle!(自分を棚に挙げてよく言えたもんだ!)」は「The pot calling the kettle black」、五十歩百歩とか目糞鼻糞を笑うといった意味の言い回しの応用。何故お前は自首しないんだ?罪の意識があるならやってみろ!と当てこするジーン。
  • 「I'm glad you're alive.」……。別れの際の「I love you. But, so what?」の延長線。ジミー/ソウル/ジーンとキムの距離は縮まらない。一方的にこれで電話を切るキム。憎んでいるわけではなく、gladも本心ではあるのだろう。
  • 受付職員へのHappy Birthdayを歌い終わっての拍手中、キムの(作り?)笑顔の口角がどんどん下がる。S1Ep04 Hero HHM会議室でジミーが高所作業員を助けたニュースを観た時の逆。
  • キムはこれまでのフロリダでの生活を「贖罪」だとおもっていたのかもしれない。しかし、実際はただ「逃げているだけ」に過ぎなかったことに、ジミーからの電話で気づかされたのではないか?

 

アルバカーキに戻るキム

  • 時系列的には恐らく11月12日の少し後で、前回ラストよりは前。
  • アルバカーキ空港に降り立つキム。タイトルコールラストに一瞬映るのはこのシーン。
  • 裁判所の駐車場受付は機械化・無人化されている。新しい機械や、ブースのガラスに残る「CASH ONLY」のレタリングが、失ったものへの悲しさを増幅させる。
  • 裁判所中庭の金網デスク&ベンチ。S5Ep07で、結婚前最後の話し合いをした場所だ。
  • エレベーター前で、老人にネクタイを付けてあげる若い女性の弁護士。ご丁寧に髪型は以前のキムと同じ、巻いたポニーテールだ。制作陣はどこまで心をえぐってくれば気が済むのか。この弁護士が、S4Ep10でジミーが演説した万引き歴のある少女だという言う噂があるようだが、演者は別だし(Abby QuinnとMichelle Campbell)、恐らくは別。制作陣の発言があれば教えてほしい。
  • 故ハワードの妻シェリルは、あの家に住み続けている。ハワードの写真も飾ってあり、当時不仲ではあったが相応の愛情もあった事が示されている。
  • 警察はハワードの遺体の捜索をするそうだが、キムは恐らく見つからないだろうと。BrBaS5Ep15(本エピソードと同じく、penultimate、最後から2番目のエピソード)A1冒頭で、マリーが(恐らく)DEAエージェントから、ハンクとゴメスの遺体は必ず見つけると約束している。
  • 「He was in the wrong place at the wrong time.」と、ラロと邂逅してしまったハワードについて言っているが、これはS4Ep05でチンピラに暴行されて使い捨て携帯の売上を奪われた時に言ったセリフ「you were just in the wrong place at the wrong time.」と対になる。(added 20220905)
  • キムはシェリルに「一瞬で苦しまずに死んだ」事を伝えるが、6年経っても汚名を雪げないハワードに、一体その言葉が何の意味を成すのだろう。S6Ep09で、ナチョの父と会話した際のマイクを思い出させる。キムは自分が貶めたハワードの名誉を回復したいという意思をも示す。
  • 検察にも同様の供述書を提出したが、キムが起訴されるかどうかは証拠不存在で怪しいと。「生きていれば元夫が証言できる」とも。
  • レンタカーを返し、アルバカーキ空港へ向かうバスで抑えきれずに感情をあらわにするキム。隣から差し出される手がただ腕を撫でる。シェリルの最後のセリフ「Why are you doing this?」。やってはいけない事をやってしまった、魔が差してしまった後悔。間接的にでも、それが引き起こしたハワードの死。保身のためにハワードの死を更に穢したこと。それによってシェリルやその他関係者を苦しめたこと。それを6年間も放置して逃げ続けてきたこと。ひとまず、自分がやるべき事はやったこと。これから自分の身に起きうることへの覚悟。そういうもの達が一気に押し寄せてきて耐えられなくなったのだろう。
  • それでもなんとか、キムは贖罪を始め、明るい道への歩みをはじめた。本エピソードで唯一喜べるところ。

 

前回ラスト以降

  • グランドピアノを1音ならして、床でいびきをかいている膵臓癌男Lingkが起きないか試すジーン。ピアノはチャックへのコールバック。
  • 前回、20分経ったら戻って来いと言ったジェフのタクシーが戻ってくるのを確認したのに、玄関の鍵まであけておいて、引き揚げずにさらに欲をかくジーン。ここで引き揚げていれば……。
  • (恐らく)自動巻きの機械式腕時計3つをポケットに入れるジーン。葉巻だけならジェフは捕まらなかったかもしれない。
  • よりにもよってペットの遺灰壺でLingkを殴るそぶりを見せるジーン。幸い彼は再び寝落ちして2人とも事なきを得る。ここまで落ちぶれるのか。
  • ドランブイもレモンも入れない、デュワーズロックを飲むジーン。はじめて。
  • 携帯に魔法をかけるそぶりは、S1ネイルサロンの奥の事務所で留守電にやっていた仕草。
  • ジェフから連絡をうけて、マリオンに電話するジーン。アルバカーキ時代のジェフを思い出して動揺するマリオン。ジーンは「ソウル・グッドマン」時代のようにマリオンを言いくるめるが、保釈手続き等の詳しさから疑念を抱き、PCをネットにつなぐ。
  • 電話線をPCに繋ぎ変えてるようにみえるが、2010年ではアメリカはまだダイヤルアップ時代だったのだろうか?56kbpsでは猫動画はおろか、普通のウェブページ閲覧すら辛そうだが、もっと速いモデムが出てたんだろうか?それとも自分の知らない別の方式なんだろうか?SD画質なら56kbpsでも見れる?
  • マリオン宅へ向かうジーンが一瞬歌を止めた理由が分からない。何故??
  • 裏口から入ってきたジーンにやっと気づいたマリオン。見ていた動画は丁度BrBaS2Ep08 タイトル直後でやっていたあのソウルのコマーシャルだ(S1Ep01 TeaserではこのCMは見ていない)。モノクロシーンなのに、眼鏡に映る在りし日の「ソウル・グッドマン」のCMがカラーなのはS1Ep01 Teaserラストも。1st to penultimateで、7年越し60エピソードを挟んでの超ロングパス。
  • ジーンの正体に気づいたマリオンに迫りながら、電話線を手に巻き付けたのはただの脅しだったのか、本当にやってしまうつもりだったのか。犬の骨壺は脅したり得ない以上、こちらもそうなのだろう。

  • 眼鏡に髭で、外見すらWalter Whiteと化してしまったジーン。ジーンにとってのマリオンはウォルターにとってのスカイラーとジュニアなのだ。ウォルターは自分を警察に通報するジュニアを見て我に返り包丁を手放し、ジーンは「I trusted you.(信じていたのに)」というマリオンの言葉を聞いて我に返り取り上げようとしていたコールスイッチを手放す。「信じていたのに」と直接リンクするイベントはこれまで無かったが、S3Ep10で孤立したアイリーンを元に戻すために、エリンと小芝居をする際、エリンが「These people trusted you, Jimmy.」と言っている。アイリーンとの出会いはまともな仕事のためだったが、マリオンとの出会いはそもそも利用するために近づいた事だ。ここで踏みとどまれたことが、ジーンにとって良い結末へと繋がればよいのだが……。

 

まとめ

贖罪の為にアルバカーキ空港に降り立ったキムと、良からぬ考えを加速させるジーン、それぞれの後ろ姿の対比。贖罪の道を歩み始めたキムと、既に落ちているのに、さらに転げ落ちてしまったジーン。バスの対比は気づいてたけど、後ろ姿の方はこのTweetをみてあっとなった。

 

Waterworksは2つの単語にもわけることができ、そうすると略語はWW。本エピソードの脚本・監督はシリーズの生みの親Vince Gilliganで、勿論Walter Whiteを連想させる。前エピソードでジーンがBreaking BadしてWalter Whiteに。最終エピソードの「Saul Gone」はSGで、勿論Saul Goodman。脚本・監督はPeter Gould。Vince Gilliganばかりが持ち上げられる事が多いけども、Better Call SaulはPeterの物だというイメージがある自分には(勿論Vinceを軽視するつもりなど無いが)、これまでと同じくPeterが締めてくれるのはうれしい差配。

 

頻発する需要/欲望・トラブル・ハプニングを、ウォルターが場当たり的に切り抜けていき、意図しないコラテラル・ダメージを周りに及ぼし続けていくという、有る意味分かりやすいドラマだったBreaking Bad。そこで無造作に散らされた破片に意味を与え、ただでさえこれ以上無いほど高かったBreaking Badの完成度を更に強化する前日譚としてのBetter Call Saul。

努力で弁護士資格を手に入れたジミーやキム、そしてエスタブリッシュメントとしてのハワードと、そこへ上り詰めたチャック。悪い世界に軽い気持ちで足を踏み入れたナチョに、フィラデルフィアで息子の敵討ちを果たして義理の娘と孫を追いかけてきたマイク、カルテルに大きな恨みを抱きながらもその一員として動きながらも、復讐を謀るガス。

弁護士サイドと裏社会サイド、ゆっくりと小さく、しかし丁寧に始まった2本の流れが勢いを増しながら、S5で接触してS6で大激突。そしてスピンオフ元の後の世界で、Better Call Saulの主人公ジミーとその相棒キムはどういう結末を迎えるのか。

 

ウォルターは最後にはSchwartz夫妻に家族への金を託し、ジェシーを助け、ジャック達ネオナチ一味を一掃して復讐を遂げ、自らも散った。実際に家族に金が渡るかどうかは分からないが、本懐を遂げた「つもり」で逝けた。視聴者的にもカタルシスがあった。

一方、今度こそ人消し屋に頼る以外無いほど追い詰められたジーンに待っているのはどういう未来・結末なのか。前エピソードの「墓穴に埋まるジーン」の暗示は現実となるのか。かつてウォルターに助言したように、そして今回キムに言われたように観念するのか。

キムの贖罪の行く末も気になる。

 

ここまで、Breaking Badのようなカタルシスを得られるエンディングへの道は全く見えない。そこをこじ開けてくるのか、開けないのか。

最終話、Fandom Wikiにはrun time 65分と出た。

前回のStarringはBob OdenkirkとJonathan Banks、今回はBob OdenkirkとRhea Seehorn。前々回はBob一人。最終回ははたして……?

 

2008年にBreaking Bad第一話が始まったアルバカーキ・サーガ。14年続いたシリーズのUltimate Episodeがもうすぐそこだ(自分はリアルタイム視聴はBCS S4からの途中参加組だけど)。

Better Call Saul S6Ep11 感想・予想 (ネタバレ) 追記アリ

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep11まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

「今後の予想」以降も、自分で予想したい人は読まない方が良いかもしれない。

 

 

【目次】

 

 

Teaser

色がある。縛られ、頭に袋をかぶせられた状態で床に転がされたソウル。間違いなく、BrBaS2Ep08「Better Call Saul」、ウォルターとジェシーに拉致され、荒野に連れていかれているシーンだ。

ECU*1される「Metylamine(メチルアミン)」の瓶や「(RE)D PHOSPHORUS(赤リン)」のボトル、フラスコにRVのキー。どれもがBreaking Badを象徴するモチーフ。

 

RVは止まり、車から降ろされるソウル。目隠しをされていても足元は見えるのか、ステップを降りるソウルの足取りに迷いはない。扉が閉められると、BrBaS1Ep02であけられた弾痕に張られた、5片のダクトテープ。

 

目隠し袋を取られ、「穴」を見せつけられたソウルの悲鳴と「It was Ignacio!」の叫びが記憶をBreaking Badに揺り戻す。続けて「He's the o(ne)...」でブツっときれてタイトルへ。

 

コールバック

  • 「アボガド(弁護士)」「ディネロ(金)」はS5Ep08 bagmanで、カズンズからラロの保釈金を受け取る際に話している。

 

 

タイトルコール

ビデオ再生直後特有の砂嵐類似から完全な青一色。そしてそこに早送りノイズ的なものが乗りだして左上に「PLAY」。2秒ほど椅子ひじ掛けの上で揺られるグラスの映像が、早送り中のビデオのような効果をかけられて映される。これはジーンの家にある椅子と、何時も飲んでるラスティネイルだろう。早送りのようにみえ、タイトルBGMもいつもより音程が若干上がっている。PLAYと表示されているので、これは早送りではなく機械の不具合で早く再生されているととるべきだろう。

 

くっきりとした青背景に戻り、「BETTER CALL SAUL」のタイトルと、Vince&Peterのクレジット。前回はここでテレビを切るエフェクトだったのが、今回はモノクロの十字路が一瞬映る。

 

 

Act1

画面はモノクロに戻り、フランチェスカ宅。ウォルターとジェシー、ソウルが居なくなったアルバカーキで、定職にもつかずに昼過ぎまで寝てるような若者2人に部屋を貸すような、肩身の狭い暮らしを余儀なくされている。

2:05と表示された時計を見て家を出るフランチェスカ。11月12日午後3時に取るべき電話に向かうのだ。尾行を警戒しながら車を走らせる。

廃業したか、それに近いレベルでさびれたガソリンスタンドの公衆電話。3:01になるのを見て立ち去ろうとするが、電話が鳴り、取りに行くフランチェスカ。あまり乗り気には見えない。

 

電話の相手はジミー/ソウル/ジーンだ。報酬前払いでないとと約束をたがえるフランチェスカに仕方なく隠し場所を教えるジーン。

状況は最悪で、フランチェスカが一応は自由の身である事、ジェシーが逃げおおせた事、ヒューエルも取り調べ後に「故郷に帰ったらしい」で済んでいる事くらいが明るいニュースで、ソウルが残してきたものは全て明るみに出て没収された。

そう報告を受けたジーンは「It's gone. It's all gone.(吹:消えた 全部無くなった 字:つまり 何もかも消えたのか)」。この、It's all gone.は最終エピソードタイトルの「Saul Gone」にもつながる。

 

切ろうとしたフランチェスカに、追加のコインを入れたんだからもっと話をしてくれとせがむジーン。検事から弁護士に立場を変えたビルや、自身の近況を皮肉るフランチェスカ。これで終わりか?と聞かれ、暫く間をあけてキムから電話があった事を告げる。生きているか?と聞かれても「何も答えなかった」とフランチェスカ、「でも聞かれた」と再確認するジーン。

 

ジーンが電話していたDiner横の公衆電話からの帰り道、タイトルコールの最後に一瞬映った十字路へ、車で差し掛かるジーン。見渡しのいい十字路の手前で停止し、暫く考え込む。

この十字路は非常に示唆的だ。

 

直後、シーンが変わり、また公衆電話。番号案内に聞くのはフロリダの「パームコースト・スプリンクラー」。これはキムの勤務先で、ジーンはどうにかしてこれを知っていたようだ。

番号案内が繋いだ後の会話は聞こえない。映像上で30秒弱話した後、激昂して受話器を滅茶苦茶に叩きつけるジーン。電話ボックスから出てくると、ボックス下部のガラスを蹴り割ってしまう。

誰と話したかすら定かではないが、余程悪い、もしくは気分を害する話をきかされたのだろう。

 

コールバック

  • フランチェスカが店子の「dude」を使ってやり返すのは、BrBaS1Ep02でスカイラーがジェシーに対してやった事。「But it's still clogged, dude.」「You do it, dude.」。なお、日本語翻訳では吹替・字幕共にこのニュアンスは抜け落ちている。
  • 「First things first.」*2S5Ep06と、S6Ep03でマイクがナチョに言うセリフ。
  • ジーンの「This is goodbye(これでお別れかな)」直後にガチャンと電話を切るフランチェスカフランチェスカはソウルと馴れ合う気がない。S4Ep05Teaserのフラッシュフォワードで、いざ逃げ出そうとするときにハグを求めるソウルに「Yup」とだけ言って立ち去るフランチェスカ
  • 「Tigerfish Corporation」は「Ice Station Zebra」に登場するの架空の原子力潜水艦「USS(US Navy Submarine) Tigerfish」から。Better Call Saulでは、S2Ep03で「Ice Station Zebra」そのものを観ていて、S2Ep06ではフォークダイニング&バーでキムに酒を奢ったエンジニアのデイルから受け取った小切手の宛先に「Ice Station Zebra Associates」が使われている。
  • 十字路を目の前に思案するジーンは、BrBaS4Ep06 フォーコーナーズ(4つの州の州境が交わるところ)でコイントスするスカイラーを思い出させる。
  • 怒りのあまり受話器を叩きつけるのは、S1Ep01 HHM駐車場エレベーターホールのゴミ箱を蹴りまくっていた事を思い出させる。また、BrBaS2Ep09最後、癌の寛解を知らされた後、トイレでペーパータオルディスペンサーをボコボコに殴るウォルターをも思い出させる。

 

 

Act2/Act3

シナボンで生地こね機のスイッチを入れた後、ずっと思案にふけるジーン。

すぐに場面が変わり、ジェフが帰宅するとジーンはまたマリオンと談笑している。強引にジェフとガレージで二人になろうとするジーンに、マリオンもなにかを感じ取ったようだ。

そして、「これっきりだ」との自らの言を翻して、ジェフ達との悪事を再開してしまう。

 

悪事は、酒場で仲良くなった相手に酒を飲ませ、帰りのタクシーでジェフに、睡眠薬入りの水を飲ませて玄関まで送らせて鍵がかからないようにテープで細工。ジェフ友が犬を連れて侵入し、家主の昏睡中に免許証やクレジットカード、小切手帳や銀行関係の書類、ネットのアカウント情報等をデジカメで撮影し、その内容を売るというもの。

 

コールバック

  • 「我々は別々の道をゆき二度と会わない」(BrBaS1Ep02)と言ったのに「Wanna cook?」(BrBaS1Ep04)とメス作りの継続を持ちかけたウォルターと、「俺を見かけたら道の反対側へ渡れ」と命令し「We're done.」と無理矢理言わせたジェフに、もう一度悪事を持ちかけるジーンは相似形だ。
  • ジミーのカラオケはS4Ep10 Winnerを思い出させる。チャックは居ないが。
  • ジーンの偽名「Viktor」は、S2Ep01で初登場した「Viktor with K」。S2Ep06でも。
  • 最初にジーン達の餌食になった男は、S1Ep04やS1Ep10でのマルコとジミーを思い出させる。立場の逆転。しかし、そこまであくどい奴ではなさそうでもある。
  • ジミーの悪事のパートナーは、最初にオマハでのマルコ。それからBetter Call Saulでキムやヒューエル、アイラ、Breaking Badではクービーも追加。そして最終的にはジェフとその友達となる。最後の落ちぶれっぷりはBreaking Badのウォルターを強く想起させる。BIGBOSSガス・フリングをヘクターの助けで殺した後、ネオナチのチンピラみたいなのと刺し違えて終わってしまうウォルターを。個人的にはこのプロット、最強ボスを倒してエンディング、というクリシェの破壊で、大好きなプロットだ。

 

 

Act4

再びカラー。BrBaS2Ep08の時間だ。RVに乗り込んだジミー達。ソウルは中の「調理」用具に驚く。エピソードポスターの、「丸底フラスコに入った金魚」も回収。

ジェシーイゴールと呼んでいるのは(日本語ではただ助手となっている)、ヴィクター・フランケンシュタインの助手の事か。

 バッジャーを助ける手段としての「Jimmy In-and-Out(出戻りジミー)」についての会話や、いつもの超自分勝手で高圧的なウォルターのジェシーへの態度等、Breaking Badの濃厚な匂いが立ち込める描写。

RVのエンジンがかかり、立ち去る様子をソウルへの脅しのために掘った「墓穴」の手前から映し、カメラは次第に上昇し、「墓穴」を上から映す。そしてそこに横たわるジミーが合成され、自宅のベッドで横になっているシーンへ移行する。

ジミーはChi Swing Master*3を受け取り、自宅で使い始める。余談だが、日本では「金魚運動器」という名前で売られていた記憶があるが、英語圏では「Chi machine」で検索するとたくさんヒットする。

そして、ジェフ達との2回目以降の個人情報を盗む「悪事」のモンタージュシーンへ。免許証の数は合計で21枚。

 

シナボンで、生地捏ね機のスイッチを切り、モンタージュシーンが終わる。スイッチを入れたのはAct2の最初だ。

 

そして最後のカモ。酒を飲んでる最中に癌の薬を飲み始めるのは死の覚悟が出来ている証拠か?ジーンは思わずウォルターを思い出してか少しだけ気遅れする。

 

 

コールバック

  • RVの助手席に座るぞ、というソウルの「I'm calling shotgun」。BrBaS4Ep05 「Shotgun(ハンクの推理)」で、自暴自棄になったジェシーを立ち直らせるために、マイクがガスの指示のもと助手席に乗せてデッドドロップ(ドラッグ売上金の、人と人との手渡しではない非直接の回収)につき合わせるエピソードを思い出させる。
  • ジェシーの「Who's Lalo?」に対する「It's nobody.」。S6Ep07での、ハワードの「Who are you?」、ラロの「Me? Nobody.」ジミーが「無かった事」にしたい男No.1ラロ。

  • ある一連のシーケンスを1度丁寧に描いておいて、2回目以降をBGMに乗せてモンタージュシーンとして描くのは前エピソードS6Ep10でも、フランクにシナボンを何度も食べさせる所で行った演出。
  • 娼婦を呼んでいる描写。S6Ep09で、Breaking Bad時代*4のソウルも呼んでいた。おそらくBreaking Badタイムラインでも呼んでいたのだろう。
  • ジェフ達に渡した使い捨て携帯。弁護士資格剥奪中のジミーが売っていたもので、屋号を「ソウル・グッドマン」へ変えてからの顧客獲得策にもなった。
  • 最後のカモでもある癌患者が飲むたくさんの薬は、ウォルターが服用していたたくさんの薬や、S6Ep01 Teaserのソウル・グッドマン邸に残されていたいくつもの薬瓶を思い出させる。

 

 

Act5

色が付き、Breaking Bad時代に戻る。本エピソードでの色付きシーンは全て時間的にはBrBaS2Ep08 「Better Call Saul(ソウルに電話しよう!)」と重なる。

ソウルは自分のオフィスの床に横になり、「Swing Master」に足をのせて動かしながらフランチェスカと会話する。約束の時間にマイクが訪れ、ソウルは報告を要求するが、「Swing Master」を止めなければ立ち去るだけだと、冷たいマイク。彼なりのプロ意識の表れか。

3件ほど、あまり関係無いと思われる調査について報告したのち、「ハイゼンベルグ」の件へ。勿論それは元教え子のジェシーと組む、高校の化学教師であるウォルター・ホワイト。ステージ3Aの肺癌であることまでマイクは把握している。

ブルー・メスの品質の良さを買おうとするソウルに、ベータマックスの件を持ち出して「そいつの事は忘れろ」というマイク。「ああいうひげの男は ろくな選択をしてきてないだろうな」と、ソウルはその助言を受け入れる。

しかし、Breaking Badでの3つ先のエピソード、BrBaS2Ep11で、ガス(とソウルは知らないが)にウォルターを紹介してしまうのだ。

 

コールバック

  • Act4でも飲んでいたんだと言っていた、大量のサプリをフランチェスカに確認させている。
  • Swing master使用中にマイクがオフィスに入ってくるのは、BrBaS3Ep13でマイクが逃亡中のジェシーを探しに来た時も。ジェシーがゲイル・ベティカーを殺す回だ。この時は「You are good right there.」「Now, let's both get comfortable.」と今回の逆でソウルを寝かせたままにする。しかし、フレンドリーなわけではなく、寝転んでるソウルを上から威圧し、暴力の示唆までしてジェシーの居場所を聞き出そうとしている。

  • ハイゼンベルグについて、「警察に捕まるか、頭を撃たれる」との評は「Is that your appraisal, or is that what "He Who Shall Not Be Named" says about him?(マイクの評価か、それとも"名前を言ってはいけないあの人"の評価か)」とソウルが聞く。BrBaS2Ep11で、ソウルはウォルター達に、ドラッグを大量にさばける人について、「I know a guy, who knows a guy... who knows another guy. Who knows another guy.(知り合いの知り合いなら知っている)」と言う。マイクはガス直属の部下なので、「知り合いの知り合い」を知っているという事なら1クッション余計になってしまう。ここの理解・つじつま合わせができない。タイラス・ヘクター達のラインとマイクは別系統に思えるので。

 

 

Act6

家でくつろぐジーンに電話が掛かってくる。恐らくジェフが「ジェフ友がやらないと言っている」と報告したのだろう。マリオン宅のガレージに集まる3人だが、ジェフ友の犬が吠えて、マリオンに何かやっているのを見られてしまう。そこそこ遅い時間にこそこそと集まっているのだから、怪しまれない方がおかしいだろう。

ジェフ友は「ポケットの癌の薬を見てしまった。病人をカモには出来ない」と拒否するのだが、ソウルは激昂し、クビを言い渡す。高圧的・独善的な態度がウォルターそっくりだ。

一応はジーンの肩を持つジェフの運転で、最後のカモの家へ向かう2人。「睡眠薬がきれてるかも」との危惧も怒鳴って黙らせる。車を降りて、ドアを開けるとシーンチェンジ。

BrBaS2Ep08で、高校の化学室にウォルターを訪ねていく直前。学校の駐車場でキャデラックの扉を閉めるところへの切り替わり。障害者用駐車スペースのポンティアックアズテック(勿論ウォルターの車)の横を通り、校舎のドアへ向かうところでシーンチェンジ。

カモの家の中からのカメラで、ドアに近づくジーンを映す。手袋をしたジーンは、肘で玄関ドアのガラスを割り、手を入れて鍵を開け、ドアを開く。

 

コールバック

  • ここでのジーンはほとんどウォルターと言っていい。高圧的・独善的な態度もそうだし、Act5でBreaking Bad時代のソウルがウォルターについて言った「ああいうひげの男は ろくな選択をしてきてないだろうな」にも当てはまってしまう。
  • ポケットの癌治療薬を見て、カモにはできなくなってしまうジェフ友。父親も癌を患っていたとのセリフもあり、叔母の癌闘病に付き添っていたジェシーを思い出させる。悪事ははたらけど、踏み越えられないラインがそこにあるのだ。
  • どうしてもできない、というジェフ友を説得するためのジーンの言葉、「気持ちはわかるが乗り越えられる。信じてくれ、知らぬ間に忘れられるから」というのは、S5Ep09で、ステイシーから聞いた話をマイクがジミーに言った事、それをアレンジしてS6Ep09でジミーがキムと自分自身に語った言葉の超簡略版だ。
  • アルバカーキアイソトープのエアフレッシュナー。なんて事のない小物のはずだが、ECU(本体はフレームに入ってるし、この程度ならEは要らない普通のクローズアップか?)される回数が余りに多い気がする。
  • BrBaS2Ep11 ガスとの取引が急に成立し、ウォルターがブツをジェシーが借りた家に取りに行く時。この時はガラスではなく、ドア板をぶち破って手を入れ、鍵を開けた。同Ep13では、破れドアを補修していた段ボールを開けて同じく鍵を開けた。ジェーンを見殺しにした回。

 

 

感想

Teaser

Breaking BadのS2Ep08と、穴の前で目隠し袋を取られたソウルの叫び声を比べてみると、今回の方が少し怖がり方が強い印象。ここまでラロへの恐怖を存分に刷り込まれてきた様子を見せつけられた身としては今回位の方が納得感が出る。

移動メスラボRVのドアに内側から貼られたダクトテープ、Breaking Badでは外から貼られているのは記憶にあるのだが、内から貼られていたシーンに全く記憶が無い。一番分かりやすいのがS3Ep06で、ハンクに追い詰められ、外からテープをはがされ、車の中に光が差し込むシーン。正直これ(内側のテープ)はミスか、それを承知での演出だと思う、珍しいことだが。

……と思っていたら、BrBaS2Ep09、つまりこのシーンのBreaking Badでの次のエピソードでは、内側からダクトテープが貼られている。大変失礼いたしました。制作チームに敵うわけないよな。

 

RVの中は少しBreaking Badの時とは様子が違う気がする。スッキリしすぎというか、でも確証もない。

ウォルターとジェシーが目出し帽を完全には脱がなかったのは髪型を隠すためなのだろうか?といぶかしむなど。

 

タイトルコール

やはりEp01用の「自由の女神」には戻らずに、新しいモチーフを使ってきた。5秒くらい息が止まった。「ジーンの椅子で揺れるラスティネイル」、しかも再生速度が速くなっている。ストーリー展開の加速の暗示でもしているのか?

 

Act1

ジミー・マッギルの誕生日(生年は1960年)でもある11月12日の午後3時の電話に、個人的にもの凄く期待を掛けていたので、逃亡半年後のアルバカーキの状況を聞くために、事前に約束をしておいたってだけだったのか!と肩すかしを食わされた気分。決定的なイベントをそんな前にチラつかせてくれるような制作陣ではないようだ。誕生日なのも自分が忘れにくいだけの理由なのか?

たかだか1分遅れただけで車を出そうとするフランチェスカ。暮らし向きも悪そうで、それなりの大金が入るのに、そこまでソウルを嫌っているのか。ソウルはフランチェスカに、フランチェスカはキムに、割と一方向の好意を持っている様に見えていたのだが、ついに後者については明らかにならなかった。キムがフランチェスカに電話したのは、繋がりがそこしかなかったからという可能性もあり、フランチェスカがソウルの生死を答えなかったのは、おそらくソウルとの事前の取り決めだろう。

事前に隠しておいた電話の報酬を探し出すところは、最近はじめて観た「ショーシャンクの空に」を思い出す。

 

キムの勤務先、パームコースト・スプリンクラーへの電話シーン。会話を聞かせない演出がなかなかニクい。

会話を聞かせない演出は「会話内容が明白だから聞かせない」場合と、「会話内容をヒキにし、後で明確にする」場合がある。

前者の一例は、S1Ep08 Teaserのフラッシュバックシーン。ジミーが司法試験に合格し、チャックにHHMで雇ってくれと頼みに行った後、郵便室でハワードがジミーと話す場面だ。視聴者は既にジミーがHHMで働いておらず、ハワードを憎んでいる事を知っている。ハワードが告げた内容は「HHMでは雇えない」という事なのは明らかだ。呆然とするジミーに胸が痛む。

後者の一例を挙げると、S5Ep09で、キムがS&Cを辞めると告げにシュワイカートの部屋へ行った時だ。ただし、この時はその直後で会話内容が察せるし、遅くても同エピソード内の少し後で明らかにされる。

今回の「聞けなかった会話内容」は、今エピソードでは明らかにならなかった。

 

Act2/Act3

おお、ジーンよ、汝はまた「Breaking Bad」してしまうのか……。

ジェフ友のお供の犬が賢くてかわいい。

 

Act4

Act2の冒頭で入れたシナボンの生地捏ね機のスイッチを切るのは、ジェフ達と再び悪事に手を染め、金を稼ぎ、娼婦を買ったりストリップを見に行ったりした事が示された後だ。間にフラッシュバックとしてウォルターとジェシーから手付金を受け取り、守秘義務が発生した所、つまり「この2人のGameにInした所」も含む。

 

モンタージュシーンで流れる、Nesmith Michaelによる「Tapioca Tundra」も非常に示唆的だ。はじめの方の「Lose themselves in other times」、2回繰り返される「And one more time the faded dream is saddened by the news.」、そしてリフレインの「It cannot be a part of me for now it's part of you.」

 

情報屋に売ったと思われる免許証は合計で21枚映される。1日1件だとしても、2010年12月になっているのは間違いないし、恐らくそこまでのハイペースでカモの準備はできないだろうから、年が明けている可能性も。

 

ジミーにとって、オマハ時代をカウントしなければ、ジェフ達との悪事は「Breaking Bad Again」である。1度目はS6Ep09ラストまでに描かれた。

そして、このフラッシュバックで描かれたのは、「ウォルターとジェシーのBreaking Bad」に関与し始めた瞬間だ。

 

ジェシーがラロという名前を聞いた事が無いというので、Fandom WikiのTimelineページ*5でタイムテーブルを確認してみた。

ラロがアルバカーキにやってきたのは2004年に入ってからで、退場するS6Ep09は同年6/24。1984年生まれのジェシーは、2004年時点では高校卒業して2年経ってる時期。

 

最後の癌を患ったカモ、どこかで見た事あるのに思い出せなくてもどかしかったが、「ビッグバンセオリー」のコミックブック店の店長、スチュワートだ。あちらではスーツを着たシーンは殆ど無いし、ヒゲも眼鏡も無いので気づけなかった。白黒なのもあるか?BGVがわりに流しまくっていたシリーズなのに。役者ってすごい。

彼の「巨悪に関わった奴らには特別な地獄が待っている」「人生一度きり」等のセリフがメタ的に思わせぶりだ。

 

Act5

Better Call Saulでの(より具体的にはS6Ep09で時間が飛ぶ前の)ジミーより、Breaking Badでのソウル・グッドマンはマイクへの態度が雑になったように思える。図太くなったからなのか、金銭的余裕が出来たからなのか。

Season6におけるマイクはラロに対して全て後手後手にまわらされた。フラッシュバックシーンでは、ブルーメスについては過小評価、ウォルターについての評価は「結果的に」正しい。その後、Breaking Badではマイクはウォルターの危険性を過小評価した挙句、BOSSであり信頼できるパートナーだったガスを殺され、最後には自分自身まで殺されてしまう。

規格外の化物には弱いのかな、マイクは。いや、誰だってそうか。ラロをかわせたガスが凄かったのか。

 

Act6

Teaserの椅子のひじ掛けの上にラスティネイルが置いてあって揺れていたのは、電話連絡を受けて立ち上がった直後なのかもしれない。

これまで全然吠える様子が無かったジェフ友の犬が吠えたのは、ジーンの不穏な変化を察知したからなのかも?

マリオンはジーンの不審さに気づいたようだが、また出番はありそう。しかし前回感想では「もう出番は無さそう」と書いて外したのでさほど自信はない。

 

全体

Season6において、Ep09まではエピソードタイトルにおいてBetter Call SaulとBreaking Badのタイムラインを撚り合わせてBreaking Badの「ソウル・グッドマン」の誕生を描いた。

一方、このEp11では、ジーンとBrBaソウル・グッドマンを強烈に撚り合わせている。特に後半だ。

  • 荒野に掘った穴と、自宅ベッドで寝ているジーンを利用したトランジション
  • 電話のワイヤレスヘッドセットは、ソウルの机の上でも、ジーンの机の上でも同じように光る。
  • Swing Masterも、ジーンの家、ソウルのオフィス双方で使われる。
  • ジェフの車から降りるとウォルターの高校なのも、校舎に近づくと、最後のカモの家に近づくのもそうだ。

 

 

これから描かれて欲しい事

  • マイクがトゥコにボクシンググローブのネックレスを返すところ。直接描写ではなくとも、トゥコの登場やマイクとサラマンカ関係の誰かとの接近描写が欲しい。
  • オープニングテーマ曲のフル版を流す事。Breaking Badでのpenultimate(最後から2番目)の最後のような、テーマ曲を使った印象的な演出をして欲しい。最終回でもいいし、その前でもいい。

 

 

今後の予想

次回タイトル「Waterworks」

一般的には上水道システムやその設備を指す言葉だそうだ。また、インフォーマルには尿排出に関わる器官。そして、「turn on the watermarks」となると、目的の(同情や注意を引く)ために涙を流すという意味になる。

所謂「嘘泣き」を示唆するタイトルなのかな、と。

S6Ep11で「Waterworks」に関連しそうな出来事はいくつかある

  1. フランチェスカの台所の詰まり
  2. フランチェスカへの報酬の隠し場所のパイプ(これはかなり薄い)
  3. キムの勤め先「Palm Coast Sprinklers」(これは割と有望なのでは?)
  4. ジーンが酒を飲んだふりをするための吸引システムと、その排出。

そして、本エピソード以外では、マルコの最後の職が「Lake Michigan Standpipe」だ。消火栓関係の仕事。ここでマルコの仕事を引っ張り出してきそうな気はしている。マルコ自体はなかなか難しそうなので、消火栓が。割と穴狙いの説ではあるが、そこまで大穴というわけでもない気がしている。

これらと「turn on the watermarks」とのダブルミーニングだろうか。当たればいいな。

 

それ以外の予想の材料

「It's gone. It's all gone.」

フランチェスカとの電話で。「Saul Gone」へのリンク。

十字路

分かれ道、決断の暗示。

キムの勤務先との電話の内容

電話の相手はキムかそれ以外か?キムは出なかったのか出られなかったのか?電話の内容は?キムは癌などの重病なのか、既に死亡とかいう最悪中の最悪なのか?それとも徹底的に拒絶されただけなのか?とにかくジミー/ソウル/ジーンにとって受け入れがたい話があった事だけは間違いない。

詐欺再開の理由

単なる金目当てか、切迫した理由によって金が必要なのか?

墓穴に入るジーンの意味は

Act4で強烈な印象を残したトランジション(シーンチェンジ)。ジーンの死の暗示なのか、煙幕なのか?

『Breaking Bad』というエピソードタイトルの意味

ただの「悪堕ち」という意味なのか、Breaking Badでのウォルターの癌についても暗示しているのか。もしそうならば、キムの勤務先との電話と繋がり、キムが癌になってしまったことを示唆している可能性。

ストリップ(ポールダンス?)や娼婦

ストリップにはジェフやジェフ友も席は別だが一緒に行っているので、カモ漁りではなく、楽しみに行っているのだろう。娼婦を呼んだ事は、キムへの想いが無い事を示唆するのか、ソウル・グッドマンからの惰性が止まらないだけなのか。

「巨悪に関わった奴らには特別な地獄が待っている」

最後の癌を患ったカモの言葉(拙訳)だが、これもエンディングの強烈な示唆だ。もしくは煙幕。

Alberqurque Isotopes

しつこいほど繰り返されるこのモチーフ。このチーム名は、元々アニメのシンプソンズのエピソードが由来だったそうだが、ニューメキシコには「ロスアラモス国立研究所」「サンディア国立研究所」「廃棄物隔離パイロットプロジェクト」等の、核兵器や核廃棄物に関する施設がある事も理由になっている。Isotopeは放射性同位体という意味だが、これは不安定なため放射線を出す物質の呼称である。これらは癌の原因にもなりうるし、その癌の放射線治療にも有効利用される。

あまりにしつこい繰り返しは癌の暗示なのでは?というのは分が悪い賭けでは無いように思える。

ウォルター化するジー

ここまでジーンが高圧的・独善的になり、ウォルターとのオーバーラップを意識させ、しかもMustacheまで。ウォルターの二の轍を踏む暗示である可能性は極めて高いと思われる。

ジーンとBrBaソウル・グッドマンの強烈な撚り合わせ

このBrBaソウル・グッドマンとの撚り合わせは、「Breaking Bad Again」の暗示か?ウォルター・ホワイトとの撚り合わせにも通じる気がする。

 

 

結論

最初に断っておくが、最終的な話の落としどころの予想は10000%当たらないと思っている。制作陣が終わり方の予想外さをアピールしてるからというのもある。それでもこんな文章を書いて予想するのは、予想する事自体が楽しいからであって、どう外れたかも後で楽しむことができるからだ。書き残しておかないと自分が考えた事をすぐ忘れてしまうからでもある。

 

で、現時点での結論としてはこうだ。

  • キムはやはり癌を患ってしまい、ジーンはその事を勤務先への電話で知る。
  • ジーンの心変わり(ジェフ達との再犯)は、キムの治療費のためでもあり、金を稼ぐという事で自分の力を再証明するためでもある。
  • やはりジーンは最終的には死ぬ。

 

再犯の理由について、「キムのため」だけでないのは、ストリップや娼婦の描写があったため。「ジミー・マッギル」だったら恐らくこんな遊びはしなかったのではないか。しかし、「ソウル・グッドマン」ならしてもおかしくない、というのが自分の印象。キムに一途だったジミーには戻れないのだ。

ストリップ・娼婦描写が無ければなぁ……。

 

ジーンは未だにキムの事も大切には思っているのだが、Shortcutをしての金儲けやスリルからも逃れられない。

ジェフ友をクビにしてまで金に拘った理由もまだよく見えない。

一方で、本エピソード最後では、ガラスを割って侵入するという、予定外で安易すぎる行動を取ってしまっているが、これが命とりになるのではなかろうか。

 

ジーン死亡ENDとするならば、ウォルターの最後のようなある種のカタルシスが無ければ不釣り合いになってしまうが、これについては全く想像がつかない。ここにシーズンアートの「赤いジャケット」がでてくるのだろうか。

 

 

キムは既に死亡、の方が筋を通しやすい気がするのだが、それだけは個人的に受け入れがたい、余りに辛すぎる、耐えられない……。ジミーについては、ここまで死の暗示をされてしまっては……もう諦めた。

ジェシーは無抵抗なゲイルを含めて最終的に5人も殺したが、最終的にはアラスカへ旅立てた。キムは間接的にだが、チャック・ハワードを殺し、その周辺の人を不幸にした。

アルバカーキ・サーガの創造主ヴィンス・ギリガンは「因果応報、行動には責任が伴う」と言ってはいるが、制作チームの別の人は、因果のつじつまを合わせる事が優先されるわけでもない、と言っていた(Thomas SchnauzかGordon Smithだった気がするが、該当Tweetを見つけられない。英語検索が下手過ぎる)。ジェシーが生き延びる事を許されたのなら、キムが許されてはいけない訳も無いと思う。

 

 

追記 今後の展開の確度が高そうな推測

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キムの運命

ここまでAlberqurque IsotopesのAirfreshnerの強調をかいておいて、投稿前に気づかなかったのが信じられないが、S6Ep06でこのAlberqurque IsotopesのAirfreshnerをキムに法廷で持たせている。ここまで紐解けば、もはやキムが癌になったのは99%間違いないのではなかろうか。

キムが提示するAlberqurque IsotopesのAirfreshner S6Ep06

 

ここが確定となれば、キムの職場への電話も見えてくる気がする。

ジーン/ジミーは、キムに癌罹患を知らされ、金銭的援助を申し入れるが、キムは断ってしまうのではなかろうか。そうすればその後のジミーの行動も自分的には納得できるものになる。

 

Better Call Saul S6Ep10 感想 (ネタバレ) 追記有

【注意】本エントリには、Breaking Bad/Better Call Saulのネタバレが含まれる。Breaking Badと、Better Call SaulのS6Ep10まで未視聴の方の閲覧は推奨しない。

20220729 追記章と目次を追加

 

 

前回までと少しスタイルを変えて。

 

TEASER

 

予想との一致・乖離

チェンジ・オブ・ペースでスローな回になると思っていたが予想通り。前回の続きが残り2話ならここまでのスロー展開は考えにくいとは思っただろうが、4話もあるんだから寧ろ必然だと(言っておけばよかった)。

破壊的なショックの無いスロー展開ではあるが、勿論退屈とは無縁でむしろ終始ゾクゾクしっぱなし。ここへきてSlow Burnerを貫く姿勢にしびれてしまう。

 

本エピソードのタイトルは「Nippy(迷子犬)」だが、「X and Y」スタイルをやめてきたことで、時系列の飛躍があるのではないか、とEp09放送前に予想していた。

 

タイトルそのものでいっても、nippyて単語が、気候・寒さが厳しい様子を指す形容詞なので、S5Ep01Teaserのネブラスカの冬を指すのでは

この予想がBINGO(まぁあまり予想難度が高いものではないだろうが)。犬の名前ではあるが、元にしたのは間違いなくこのことだろう。

Ep09放映後の感想では、「Ep09ラストから大きなジャンプはしないで、電話の理由やウォルター・ジェシーの出演を回収するのでは?」と言っていた事も一応書いておく。こちらは結果間違いだった。情報が増えて、かえって大きなタイムジャンプをしないのでは?という憶測が勝ってしまった。


一方で、まだ回収されていないS4Ep05のフレンチェスカに頼んだ電話の理由や、今はまだマイクが持っているはずのトゥコのグローブ型ネックレスの返却が描かれる蓋然性は相当高い。

Ep08の感想では、自由の女神や王国への鍵の受け渡しで、ケトルマン夫妻や獣医カルデラの再登場がありそう、と言ってしまった。しかしこれらは放映された通り、省略された方が寧ろ味わいがあった。一方で電話の件やネックレス返却は描かれねばならない種類のものだ。

 

本エピソードが全編モノクロだった事は、ジーンタイムラインにおけるこれまでの演出の踏襲であり、フラッシュフォワードの明示でもある。なので、次のエピソードでは時代が戻る(そして勿論カラーになる)蓋然性が高いのではないか?と予想している。このタイムラインのままではジェシーはともかく、ウォルターが出せなくもなってしまうので。

 

 

タイトルコール

ここで仕掛けてきたタイトルコール演出のルーチンワーク崩し。威力は絶大だ。

 

知ってた人は知ってただろうが、Better Call Saulのタイトルコール映像は1~6までのシーズンを通して第何話はこれ、というのが決まっている。シーズンを重ねるごとに映像が白黒になったりノイズが増えたりしていくのも非公式ファンサイトの人が指摘していた*1

  1. 自由の女神
  2. キャデラック
  3. 天秤を灰皿に
  4. 引出の使い捨て携帯
  5. ベンチの広告
  6. 荒野の公衆電話
  7. 金魚運動器
  8. ネクタイとタランチュラ
  9. 小便器のマッチブック
  10. 落ちるマグカップ

今回はEp10なので落ちるマグカップなのだが、最後を変えてきた。床に落ちてマグカップが割れる直前に映像が中断され、アナログ時代に映像を止める感じのなんていうんだろう?ゴニョニョニョという感じの音。カセットテープをゆっくり止めた時のような?

そして青いバックにドットの荒いフォントで「BETTER CALL SAUL」のタイトル。黎明期のコンピュータゲームを思わせる。少し小さなフォントで「CREATED BY VINCE GILLIGAN & PETER GOULD」。左上のSTOP(ルーチンオープニングのSTOP)と切り替わってのREC。そしてブラウン管を消すエフェクト。

青の背景が完全に一様な青で乱れがないのがあまりVHS等のアナログビデオ的ではないのだがこれは計算なのだろうか?

 

このタイトルコールだけで、30秒程過呼吸になってしまうレベルで興奮させてくれた。ほんとやってくれる。

 

「WORLD'S GREATEST LAWYER」のマグカップが割れるオープニング映像に、あの自由の女神が映り込むのはS5からで、S4まではなかった。単なるアナログテープの劣化だけで関係無い画像が映り込む事は考えにくいので、やはり何かバグというか不具合が起きている事を示唆する演出でもあるだろう。

残り3エピソードのタイトルコールがどうなるか非常に楽しみである。手続き的には今回の「TVを消す」演出で「終わって」しまったので、また1の自由の女神から、とはならずに、別のシークエンスが開始されると予想している。


関連した話で、個人的に愛してやまない演出の1つに、Breaking Bad最終話手前のクロージングで、タイトルコールで流れるBGMのロング版を合わせるというものがある。Better Call Saulでもそれをやってくれないかとずっと思っていたのだが、Breaking Badのテーマはタイトルコールで流れる部分が曲の最後。

 

一方でBetter Call Saulのテーマソング(!!!)は曲の頭なのだ。ロング版を知らない人も一聴の価値はあるので是非聴いてみてほしい。S1のInsider podcastのいずれかで、この曲を確かUKのなんとかいうバンドに頼んだ話もしていた。

www.youtube.com

 

歌詞も、最初から意味深ではあっただろうが、ここまで来てみるとうわあ、うわあという部分が余りに多い。

genius.com

 

自分は歌詞のように曖昧な文章を解釈するのが苦手なのでそこには踏み込めないが。

 

と言うような事もいってきたのだが、ここでプツンと切れる演出をされてしまっては、最終話でフルを流す位では済まないのはもはや明白だ。

ただ、残りの3話を使ってこのテーマソング(歌なのは自分もS6開始後知った)を、これ以上ない効果的な形で使ってくるのは間違いないと確信している。間違っていたらどうぞ嘲笑って頂きたい。

 

 

Act 1

ジェフが帰宅した直後、シニアカーの切れた(ジーンが切った)コードがダクトテープで応急処置されていたり、だんだん会話が聞こえてくるあたりはホラー物のノリだ。ジェフの不安さ・不穏さの予感が凄い。


Stashからピンキーリングを取り出してはめる。サイズ調整用の赤い糸が見えなかったきがするが、白黒なのでさだかではない。このシーンのジーンだけが、他のジーンよりもかなり痩せて見えるのは気のせいだろうか?下からアングルのせい?

 

マリオン

高齢者の懐に飛び込んで仲良くなるのはジミーの十八番。S1Ep05で最初の遺言依頼を受けたミセス・ストラウスや、サンドパイパーで集団訴訟のきっかけとなったアイリーン。

ミセス・ストラウスはこの依頼の後、D&MのTVCMに役者として出演したり、チャックとの裁判を傍聴しにきた後、S4Ep06心不全で亡くなった事をジミーはCCMobileで店長やっている時に知らされる。

一方、アイリーンは集団訴訟の代表となり、一時ジミーが和解を早めようとした工作のためで孤立して相当な孤独感・不幸を味わった。S6Ep07では再登場し、車椅子の必要がない位には壮健である事が示される。

 

アイリーンの不幸に、キムが間接的にではあるが関与している事が、今思うと味わい深い。ジミーが弁護士資格を停止され、金銭的困窮した事が直接の原因で、その直接原因の原因はキムにメサ・ヴェルデ案件を渡す事だったのだ。

 

その後、庭でジェフと2人きりになり、今エピソードでやる事を持ちかけるシーンで、ハッピーエンドもキムの再登場が無さそうだなぁと感じてしまった(初見時)。

 

 

ジェフ

今のジェフは気弱な感じだが、S5までのジェフが母親と暮らしていて、母親からあんな風に言われるような性格には思えなくて、そこの断絶が少し残念。

ジェフの演者が変わったのは調べて分かった。初見時も「こんな顔だったか?」という違和感は強かったが、タクシーにアルバカーキアイソトープAir Refreshnerで露骨にジェフだし、名前もそうだから自分の記憶の方を信じなかった。自分の記憶力の頼りなさには自信がある。

個人的な印象だと前置きはするが、前の演者の方が何をしでかすか分からないサイコパス味というか不気味さが強かった。今の人は少し気弱過ぎるように見えて、キャラが変わってしまった感覚が。個人的には前の役者の人が今回のエピソードやったほうが面白くなりそうだな、とは思った。

ここでいう「ゲーム」をオープニングの青画面タイトルを暗示しているのだろうか?

 

お酒の話 余談

帰宅後のジーン。冷蔵庫から氷をグラスに入れる。持ってきたグラスにはそれに加えて半分程液体が入っている。そこにデュワーズとレモン果汁。

S1Ep01では氷・スコッチ・ドランブイ・レモン果汁の順番で作った濃い目のラスティネイルだった。

あらかじめ入っていた液体はやはりドランブイなのだろう。ドランブイはスコッチをベースに作るリキュールで、蜂蜜が原料の一つである事もあり、非常に甘い。自分の記憶していたレシピではレモンジュースは使わなかったが、ドランブイの割合を増やして甘くした場合は使われることもあるそうだ。

 

今自分は節酒中で、今月分のボトル(月2本)は飲んでしまったので、8月最終話直前に、ドランブイデュワーズを買ってこようとおもう。

 

 

Act 2 / Act 3

何をしているのか分からないが、何かをしている事が延々と提示される、おなじみのやつ。ジミーやソウルよりも、マイクやナチョのシーンでよく使われた演出ではなかろうか。

大量のコールバックがあって嬉しい。纏まらないので、感想・気づいた点も含めて箇条書きで。

 

  • 時計が映り込むようにゴミ捨て場への通路を映すのはコールバック(S2Ep01)。また閉じ込められるの!?と思ったが改善されたのか、閉じ込めを気にする様子すらない。
  • 警備室へのノックが2回なのは意味があるのか?洋ドラで2回ノックは結構珍しい気がする*2
  • ニック(駐車場を見回る普通の体型の方)はS3Ep01 Teaser フラッシュバックで登場。この時の片割れはフランクではない。S4Ep01でジーンが倒れた時は、ニックは映り込んではいないようだ。ざっとしかみてないので見落としかもしれない。
  • コーヒーをいれながら様子をうかがうのは、S3Ep02マイクに頼まれてロスポヨスエルマノスを偵察に行った時へのコールバック。
  • 1回目はBGM無しで、2回目からはBGMを入れるのが好き。この辺りで全編モノクロで行く気だな、と気づく。
  • 最初は紙コップなのに次からはもうマグを使っている。
  • ジャジーなBGMが盛り上がるにつれ、画面も分割されたりと演出が派手になるのが最高にかっこいい。
  • ニックとの仲も、最初「弁護士を呼べ!」の件で白眼視されてたとは思えないほど打ち解けてるのが面白い。
  • ちゃんとフットボールの話題についていけるように勉強しているのも「いかにも」ジミー。S1Ep01で、死体の首を犯した少年たちの弁護をする際にも、トイレで練習をしていた。コールバック。
  • モールでジャケットを見てるシーン、シーズンアートの赤いジャケットはこれ?と思ったが、見返してみるとアルマーニのタグや値札を確認してたのかな。
  • 歩いて距離を測るのはS4Ep07へのコールバック。ヒューエルと見た事務所候補とS&Cのキムの個室。
  • 数のカウントと、その後の盗む商品のブランドや種類とその解説。英語では数字の語尾と、その後のセリフの語尾で脚韻を踏んでいる。翻訳家泣かせだろうが、吹替は頑張ったと思う。字幕はもうしょうがない。
  • 50歳の化学教師がフォルクスワーゲン並の札束の山を築いた話は勿論ウォルターへのコールバック。
  • 電話での成りすましはS4Ep08で、スザンヌ相手に牧師に成りすました事へのコールバック。
  • キャシー(モールのマネージャー)へのlifesaverはS1Ep08、HHMでの判例出力を頼んだキムにも言った言葉でコールバック。キムは図面差替えの時に役所の女の人に、ステイシーもマイクに1度使っている。
  • キャシーへの電話を切ったあとの無音のpoof。無音である必要性も見当たらないし、記憶に無いので印象に残る。
  • 記憶力良すぎる事を誤魔化すアドリブが凄い。
  • 計画中の予定外アクシデントは、カシミーロ元判事の骨折ギプスへのコールバック。今回の芝居はゴルフクラブでの演説が近いか。今回はトラブルが起きても助けてくれるキムやヒューエルらは居ない。
  • 有音のPoof。久しぶり。字幕に残っているのはS1で2回、S4で1回、S5で4回。早いシーズンではもう少し使っているイメージがあったが……。機会があれば確認したい。
  • 「What's the point」、比較的使われるイディオムだが、S3Ep10でチャックがジミーに1シーンで3回も使うのが強烈に印象に残っている。ジーンはここでは2回言って、その間に1回、Wha...で止まったのがある。コールバック。

 

ケチをつけるようでなんだが、フランクが「監視モニター群に背を向けて」シナボンを食べる必然性が無かったので、そこの誘導描写はして欲しかった気がする。

 

 

Act 4

計画成功に喜ぶジェフとその友達に、今回の犯罪が「相互確証破壊」となる事をバラすジミー。別件で何かあった時にも取引材料になりそうで、危うい感じはする。

「I am not a friend.」はなかなか沁みるセリフ。もはやジミーにはマルコも、キムも、ヒューエル・パトリックも居ないのだ。

「Say it.」 はS5Ep01でのジェフのセリフのコールバック。立場の逆転も。

マリオンがアルバカーキに居た頃のジェフについて言うセリフは、そのままジミー/ソウルにも当てはまる。

 

最後、モールで派手な柄のシャツとネクタイを合わせてみるのは「ソウル・グッドマン」への憧憬だろう。それをそのまま店にかけっぱなしで出てくるのは、「ソウル・グッドマン」への訣別なのか否か?初見時はただ面倒だっただけだろうと思っていたが、見返してみると訣別と取れる表情にしか見えない気もする。前回のレストランでのガスの件といい、表情から勘定を汲み取るのが下手だなぁと泣けてくる。

 

 

今後について

ジェフに知らないふりをしろ(Gene Takavic. You never heard of him.)と言ったのに、マリオンには口止めできない。ニッピーを忘れていたのも油断の暗示。この辺りが伏線になるのかならないのか。流石にもうジェフ出す尺は無いのでは?というメタな予想もできるがさて。

 

今後について重要な手がかりとなるタイムラインの整理をしておこう。
Breaking Badでソウル・グッドマンが人消し屋で消えたのがBrBaS5Ep15で、2010年3月下旬。

フランチェスカに頼んだ電話の件は「11月12日午後3時」。年指定をしていないので、これは2010年を指すのだろうというのが定説。そしてBreaking Badの最終回は2010年の9/4~7だ*3

一方、聞くところによれば本エピソードは2010年10月半ばの出来事だそうだ。

 

 

ジーン・タカヴィクが懐かしむのは「ソウル・グッドマン」で、それもBreakingBad時代のソウル・グッドマン色が強い。S1Ep01で見ているのはソウル・グッドマンのTVCMだし、今回のラストのシャツ・ネクタイもそちら側。

キムと過ごした時間ではっきりと自ら望んで「ソウル・グッドマン」になったのはS5以降。事務所の非常用持ち出し箱にサフィロ・アネホのボトルストッパーを入れておかなかった理由は?キムの持ち物だった風景画を持っていたのは惰性だったのかそれともキムへの未練か?

タイトルコールで流れる映像が全て「Breaking Bad」時代である*4事は何かを暗示するのか?暗示ではないのか?

 

そして、ジーン・タカヴィクの皮を被ったジミーの中にキムを想う気持ちは残っているのか?

 

個人的にはキムと再会して、背負うものはあれど二人でなんとか暮らしていくENDであってほしい。しかし、自分がやってしまった事と向き合う気が無いと、その方向には進まない気がする。マリオンのアルバカーキ時代のジェフへのセリフと、最後のシャツとネクタイがその方向の描写であれば、と願わざるを得ない。

 

 

書いてみて思ったが、やはり前回までのスタイルの方がまとまりが良い気がする。次からは戻そう。

 

 

追記

フランクがモニタから背を向けてシナボンを食べる誘導は後ろのテーブルにシナモンロールを置いた事でやっているのかな?

 

ジェフと友人は、S4Ep6 piñataで脅したチンピラを思い出させる。直接的な危害はないが、リスク対策。

 

フランクへの演説だが、「My parents are dead. My Brother...」の後の長い間、そして「My brother is dead. I have no wife... no kids... no friends.」これが単なるごまかしの為の時間稼ぎだけではなく、自分への語り掛けになっているのはS4Ep10の、奨学金の対象とならなかった万引き歴のある少女への演説へのコールバックである事は既に書いたが……書いたよな?と確認したら書いてない。何故?誤って消したのか?とにかく、このセリフと、その後のチャックを思わせる「What's the point」。これが部屋を出てから監視カメラの死角で安堵した後に、何か考えていた内容なのではないか?

そしてそれを強化するのがマリオンが語った、ジミーにも当てはまるアルバカーキ時代のジェフの話。

派手なシャツとネクタイを合わせてみて、「ソウル・グッドマン」への憧憬を募らせた後、それをラックに掛けて立ち去るまでの間に思い出した内容なのでは?

 

放送当日、ふせったーに書いた最初の感想*5では「自分がやってしまった事と向き合う気が無いと、ハッピーエンド方向に進むことはなさそうだ」とかき、「向き合う気はなさそうだ」と思っていたのだが、見返すうちに「向き合う気になったんだ」と真逆になってしまった。

多分、裏庭でジェフに窃盗持ちかけたところで決めつけてしまってたのが固定観念になってたんだなぁ。

 

それから迷子犬ニッピーについて聞かれて答えた「So, after all that, a happy ending.」。この、本シリーズBetter Call Saulの終わり方の示唆「かもしれない」セリフを何の気なしに聞き流してしまってた自分が本当に恥ずかしい……

 

エピソードをまたぐ繋がりに夢中になりすぎて、エピソード内の繋がりに気づけなかった気がする。ここまではっきり描かれてたんだなぁ、と。ジェフやマリオンの再登場も無い気がする。

 

さらに最後ランチに出かけた後のシーンを最後まで見てみると、盗みがバレなかった事への安堵、だからなだってんだ(What's the point)?、からシャツ・ネクタイを見てソウル・グッドマンを懐かしんで、鏡の前でキョロキョロと他人の目をうかがう「逃亡者」、そしてそれをラックに掛ける前の溜息と思案。一言のセリフも無いのに全てがつながった気がしてぞっとした。Bob Odenkirk凄いわ。

 

 

こういうみかえす事による解釈の変化は週一配信でじっくり味わえるからこそで、一挙配信・ビンジウォッチだと変化する暇もなく答えを知ってしまう。

ビンジウォッチも嫌いではないし、サブスクで配信されている過去作ならしない理由も無い。

でも、こんな得難い経験をさせてくれるBetter Call Saulを、本国からわずかの遅れで週一配信してくれる事に、本当にありがたさを感じてしまう。