ベターコールソウルSeason6のタイトルが暗喩するもの(ネタバレ有)
【注意】本エントリには、Breaking Badのネタバレが含まれる。Breaking Bad未視聴の方の閲覧は推奨しない。
Better Call SaulのSeason1とSeason2では、各エピソードのタイトルに一定のルールを設けたり、暗号を埋め込んでいた。
Season1
Season2
Season3~5ではこういう事をしていないようだが、Season6では復活したようだ。
現在公開されているEp07までのオリジナルタイトルは全て「and」で繋がれている。
- Wine and Roses (青き春は過ぎ)
- Carrot and Stick (アメとムチ)
- Rock and Hard Place (万事休す)
- Hit and Run (ピンチはチャンス)
- Black and Blue (アザだらけ)
- Axe and Grind (目には目を)
- Plan and Execution (計画と実行)
Season6の放映にあわせてBetter Call SaulやBreaking Badを見直していて気づいたのだが、これら(エピソードタイトル)はすべて両作品における出来事やセリフと繋がっている。
Better Call SaulとBreaking Badを繋ぐシーズンであるSeason6でこういう仕掛けを入れてくるのが「いかにも」だなぁと思うのはおそらく自分だけではないだろう。
1. Wine and Roses (青き春は過ぎ)
冒頭フラッシュフォワードで流れる映画Days of Wine and Rosesの曲が元になったタイトル。酒とバラの日々。幸せだった昔。
WineとRoses、この両者が連続して出てくるシーンは無いが、Wineではなく本作でおなじみのテキーラ「サフィロ・アネホ」であれば存在する。S3Ep09 「Fall(転落)」で、キムが車で事故る直前。オフィスでの会話、45分頃。ガトウッド石油の件で天手古舞状態のキムに、サンドパイパーとの和解が成立する見込みが立ち、サフィロ・アネホで乾杯しようというジミーのセリフだ。
英語
You gotta stop and smell the roses.
Hey, who's got two thumbs, a bottle of Zafiro...
...and 20 percent of the common fund? This guy.
字幕
少しは休まないと
最高の酒と 大きな報酬を手にした奴は?
吹替
ちょっと手を休めて楽しまなきゃ
なぁ、最高級のテキーラのボトルと、報酬の20%持ってんのは誰だ~?俺だ~!
残念ながら日本語では薔薇のバの字も出てこない。酒/テキーラのみだ。
ちなみに「who's got two thumbs」「This guy」のくだりは、Urban Dictionary: Who's go two thumbs? によると、ドラマ「Scrubs」で人気になったフレーズのようだ。
2. Carrot and Stick (アメとムチ)
このセリフが登場するのはS2Ep02 「Cobbler(クリームパイ)」25分頃。盗まれた野球カードの事で駄々をこねるプライスのために仕方なく、ナチョに返すように交渉しに行ったマイクのセリフだ。
3. Rock and Hard Place (万事休す)
こちらは変わってBreaking Bad S4Ep09「Bug(膨らむ疑惑)」39分頃。一般的な表現では「between a rock and a hard place」で、「板挟みになって」「どうしようもなくなって」という意味。目の前で人を殺されたジェシーが、ガスの状況(カルテルとDEAとの板挟み状態)を説明する時に使ったセリフだ。
4. Hit and Run (ピンチはチャンス)
野球で言えば打って走るの「ヒットエンドラン」。一般的には「ひき逃げ」「奇襲」という意味があるそうだ。ここでは前者。Better Call Saulの最初のエピソード、S1Ep01「Uno(駆け出し)」で、ジミー・マッギルがソウル・グッドマンへ滑り落ちる、きっかけというか最初の一歩になったとも言えそうな、ひき逃げ計画の事だ。このセリフは当たり屋スケボー兄弟のもの。
5. Black and Blue (アザだらけ)
こちらはまたまたBreaking Badに戻る。S2Ep07「Negro y Azul(噂の男、ジェシー)」、このタイトルと結びついている。「Negro y Azul」はスペイン語で黒と青、つまり「Black and Blue」だ。コールドオープンで流れるナルココリード*1が印象的なエピソード。黒と青は、ハイゼンベルクのシンボルカラーの「黒」と、ハイゼンベルクが扱うドラッグ、ブルーメスの「青」。もしくは、本エピソードでジェシーと親密になるジェーンと見ている選局設定中の「青」い画面の、「黒」が凄いプラズマテレビかもしれない。また、本作における色の使いかたについてはこちら(ベターコールソウルとブレイキングバッドのColor Code - toorisugari3のブログ )もご覧いただきたい。
なお邦題のとおり、「Black and Blue」にはアザを指す用例(S6Ep05はまさにこれ)もある事は補足しておく。
6. Axe and Grind (目には目を)
こちらもBreaking Badから。S3Ep07「One Minute(ハンクの苦しみ)」。本エピソードの最後で、ハンクはカズンズことサラマンカの双子に襲撃をうけ、撃退する。その際に片割れが持っている「斧(Axe)」と、別の片割れの下半身を車で「すり潰す(Grind)」事。
7. Plan and Execution (計画と実行)
Plan and Executionとまとめて書けば邦題通り、「計画と実行」と訳すのが普通だ。一方で、Executionには「処刑」という意味もある。本タイトルの物騒さは本エピソード放映前から散々危ぶまれていたが、「ご覧の有様」となってしまった。
Breaking BadにもBetter Call Saulにも、数多くの「計画」と「実行」「処刑」がある。その中でも本エピソードと一番マッチするのは、Breaking Bad S4Ep01「Box Cutter(ガスの怒り)」だろう。コールドオープンでスーパーラボの備品の開封(Plan)をするゲイル、そしてそのスーパーラボでのガスによるまさかのビクター処刑(Execution)。これを象徴するのがどちらにも使われるオリジナルタイトルの「Box Cutter」。
これら一連のタイトルは、Better Call SaulからBreaking Badへとつなぐシーズンのタイトルとしてはこの上ない「仕事」だと思う。後半のタイトルもきっと同じルールでつけられるのだろう。
しかし、こうしてみると邦訳で失われたニュアンスの大きさに気づかされる。そもそも全て「and」で繋がれているタイトルからして邦訳では全く考慮されてない。
言語の壁をまたぐ以上、ある程度のニュアンスの喪失が避けきれないのは当然ではあるが、翻訳されたセリフ等からは得られない「ネタ」を探すのも一興ではなかろうか。しゃぶればしゃぶるほど味が出てくるのが「アルバカーキ・サーガ」だから。
言うまでも無いが、邦訳がいいかげんになされているという趣旨ではないので悪しからず。
Better Call Saul S6Ep01 Wine and Roses(青き春は過ぎ) A1
ラロ邸~メキシコ
前シーズンで鍵を開けた直後のナチョ。人目を避けて逃亡中。
携帯が振動するが、近くに住民が居るので出れない。2回目出ると相手はタイラスだ。警察すらもサラマンカの味方だと警告される。
ラロは殺ったのか?と聞かれて肯定するタイラス。勿論視聴者にはこれは誤解だと分かっている。屋敷に居た何の罪もなさそうな高齢者の心配をするナチョ。自分の親と重ね合わせる部分もあるんだろう。あと、ナチョはケトルマン夫妻やプライス、トゥコ、ヘクター達を陥れてきたが、一般人には直接は危害を加えてはいない。
「1時間携帯の電池を外して進め、隠れ家を用意する」と言われて通話は終了。再び駆け出すナチョ。
メキシコの民家
料理中の女性が何かに気づく。少し足を引きずりながら歩くラロだ。会話から顔見知りであることが分かる。肩を貸して招き入れ、ラロは怪我の手当てをし、女性はコーヒーを淹れる。山男のようなもじゃもじゃの髭をはやした、女性の夫マテオが帰宅し、ラロに挨拶する。妻に髭をそって綺麗にして、と言われ、洗面所へ向かうマテオ。ラロは「俺みたいな髭はどうだ」と声をかける。女性は夫に歯医者を勧めてくれたことに感謝し、家事に戻るが、ラロは冷たい顔をして分解した鋏を逆手に握りしめる。
音もなく彼女を殺したラロは洗面所に向かい、ラロと同じ髭の形になったマテオと鏡越しに笑いあう。マテオがまた頭を下げると、ラロの顔から笑みが消える……。
アルバカーキのホテル
同じベッドで眠るキムと、浮かない顔のジミー。目覚ましが鳴り、キムも目覚める。プロボノを20件を引き受けたキムに、ジミーも今日は忙しい、と。クライアントと電話しながら、彼に貸すためのジャケットを選ぶジミー。現金が無く、タクシー代ある?と聞くキムに、ジミーはラロの保釈金運搬報酬の入ったカバンから100ドル札を出す。
キムはそちらには目を向けずに鞄をあさり、「World's 2nd Best Lowyer Again」のトラベルマグを取り出し、銃痕をしげしげと見つめ、そんなキムをジミーは不安げに眺めている。
家を出たジミーとキムは、それぞれ上着シャツネクタイと、先ほどのマグを手に持ってタクシーへ歩いていく。ジミーはキムのためにドアをあけ、キムは乗り込もうとするが思案し、タクシーの前へ出て、穴の開いたマグを投げ捨てる。それを無言で見ているジミー。ゴミ箱に入ったマグを手前に、タクシーが発車する。
この一連のカット、凄く印象的で好き。マグ投げたところはどうやって撮影したのか考えていたけど、redditにネタバレ動画が投稿されていて、ほぼ思ってた通りだった。
Kimmy throws the mug - Actual Episode vs Behind The Scenes : betterCallSaul
キムは青っぽいグレーのスーツに、黒字に水色と赤の模様。こういう色づかい、模様のキムは珍しい。ジミーは水色字に茶色と白のタッタソールチェックスーツに、紫に近いブルーのシャツと、同じブルー&明るめの紫のストライプネクタイ。紫もまた思わせぶりに使われる色だ。
Better Call Saul S6Ep01 Wine and Roses(青き春は過ぎ) Teaser
ソウル・グッドマン邸
これまでの5シーズン同様、白黒で始まる、と思わせておいてだんだんカラフルになる落ちていくネクタイ。
舞台はソウル・グッドマン邸、時間はBreaking Badの、少なくともS5Ep015(Granite State ニューハンプシャー、人消し屋でソウルとウォルターがはちあうエピソード)以降だろう。
ソウル・グッドマンの所有物は全て差し押さえられ、運び出されていく様子が描かれる。「Days of Wine and Roses」の曲にのせて。
ネクタイに始まり、寝室の毛皮や石像、絵画、スーツ、シャツ、靴など、途轍もない量の品々。鏡の裏の隠し部屋には防弾チョッキまで。
洗面所にはバイアグラはじめ、ソウルの常備薬。バスタブにかかったピンクの下着は男物か?そして目を引く金色のタイルに囲まれた同じく金色の便器……。趣味悪っw
そして意味ありげに字幕が出るH・G・ウェルズのTHE TIME MACHINE。プールに浮かぶソウルの等身大パネルに、「LWYRUP(弁護士を立てる)」ナンバーのキャデラックドゥビル。ジミーがこれまで使ってきた様々な品がこのCold Open映像に詰め込まれている。いくつかは、これからS6の中で初めて登場するものも含まれている。
最後に豪華なキャビネットから落ちた、「サフィロ・アネホ」のボトルキャップが道端、流れる水の上に転がり落ち、ズームアップされる所で終わる。
S2Ep01で、ジミーとキムがケンに奢らせた時の記念のボトルキャップだろう。これだけでも切なくて泣けてくる……。
タイムマシンは、こんなドラマで実際にタイムトラベルするわけがないので、社会的なメッセージの方を暗示しているんだろう。(違ったら土下座する所存)
こちらのYoutube動画で、この時点まででわかるネタが解説されている。字幕を出して自動翻訳で日本語にすれば大体わかるので、英語が苦手でも(自分もだ)見てみよう。
また、本ティーザーには、これからS6で登場する小物も含まれている。プレイースターエッグとでもいうのか。登場した箇所で言及する予定。
タイトルコールは自由の女神。
Better Call Saul S6Ep06 Axe and Grind(目には目を) A4
キムのアパート
ジミーはグレーのシャツ。キムは青黒ヒョウ柄のブラウス。青は法律、黒は悪、欺瞞、秘密の色。
ソファ後ろに掛けてある絵の裏、作戦図を見ながら「見落としなんてないさ We didn't miss anything」とジミー。ついに残すところはD-DAYのみに。
この作戦ボード、これまでの企みが網羅されてる模様。
左から偽ドラッグ、ケトルマン夫妻、ハイヒール、虫眼鏡、天秤、カメラ、瞳孔、T-1、D-DAYとなっている。
偽ドラッグの絵の下にはゴルフのグリーンの絵や(体験)TOUR。
ケトルマン夫妻の下には人参(アメとムチの英語はCarrot and Stick)の絵。
ハイヒールは=ウェンディ。ジャガーの絵がある。
虫眼鏡は後述するとして、天秤はサンドパイパー訴訟の調停員、ヴィオラの絵はその名前カシミーロを聞きだしたキムの元部下だ。
カメラの下には「DOUBLE?」「MAKEUP? FACE PUTTY?」「$」「口髭」。身代わり、変装・変装用パテ・現金。
瞳孔は、つい先ほど獣医カルデラの所で拡大させた。下には「RED BULL?」や「DRUG TRIAL」「25min」など、獣医の所で行った事を示唆している。
T-1は、何の略かは分からないが、オンライン会議の事だろう。フランチェスカにかけさせた携帯電話の絵、7をおしてから842159というPassCode、HHM……。
そしてD-DAYと爆発の絵。
ここでこれまでジミーとキムが露骨に関わってこなかった虫眼鏡、これは探偵の代名詞みたいなもの。そして探偵と言えばハワードが雇った探偵だ。虫眼鏡の絵の下には「CASTING」という文字。
一つのカギは、前のエピソード、S6Ep05、ハワードとロッキーごっこをした後にベッドでキムと交わした会話だ。何故ハワードの徴発に乗ってしまったんだろう?とつぶやくジミーにキムが言った言葉。「この先の展開を知っているからよ」これはハワードがジミーの企みに気づく事を指している可能性が高い。
もう一つのカギは、作戦ボードでの順番だ。ハワードがジミーの影に気づいたのは、ウェンディをクリフに見せてから、ヴィオラから調停員の名前を聞き出すまでの間だ。
計画通り、という事だろう。さきほど探偵がハワードに見せた、現金を引き出すジミーの写真も勿論仕込みだろう。
もう一点、瞳孔の下りは、ハワードに獣医に貰った薬を塗って瞳孔を開かせ、コカイン使用を疑わせるもの。効果を「DRUG TRIAL」したのはジミー。ジミーはSeason1からもうずっとことあるごとにコーヒーを飲んでる描写がつづけられてきた。
一方でハワードは意識高い系というか、A1で妻にラテアート作った際にも自分はコーヒーではなくてティーバッグでお茶を入れてた。彼がコーヒーを飲んでいたシーンの記憶がないし、そのお茶もカフェインレスのものかもしれない。
瞳孔を開かせる薬の効果が早く・強く出る位なら良いが、致命的な症状が出る可能性がかなり高いのではないかと心配している。獣医の診療所で、ハワードの体格がジミーと同じくらいだと言ったのもフラグになってる。
オマハ・ビーチ
そして、D-DAYに付き合えないキムを、「オマハ・ビーチ」へ誘う。HHMの会議室を眺める場所に座り、ワインで乾杯する2人。はじめて外から見る建物だけど、カッコイイね!キムがポストイット張りまくり電話かけまくりの階段も懐かしい。
しかし、どうして「オマハ・ビーチ」なんてコードを使ってしまったのか。D-DAYやらオマハ・ビーチと言えば、ノルマンディー上陸作戦由来の暗号だ。D-DAYはそのまま決行日だが、オマハ・ビーチは本作戦で一番被害の大きかった場所だ。上陸作戦で最も死亡率が高く、「ブラッディ・オマハ」と呼ばれることになった、とWikipediaにもある。
翌朝、キムのアパート前
キムの基金面接が上手くいくように声をかけるジミー。挨拶のキスをして別れる。
酒屋
ジミーは「サフィロ・アネホ」を求めてレジに並ぶが、そこで偶然にも調停員のカシミーロ本人が腕を骨折したようで、左腕にギプスをはめ、吊ってるのを目撃する。青ざめるジミーは慌てて車に戻り、ハンドルを叩いて悔しがり、一刻も早く、とキムに電話する。
キムも動揺が激しく、大声で「Shit!」と叫ぶくらいだ。ジミーは今日はサンタフェでの昼食会に集中して、ハワードの方は延期しようと提案するのだが、キムは「決行は今日よ」と車を引き返す。
話は戻るが、探偵仕込み説のもう一つの傍証が写真だ。この2つの写真は白黒であることも大きさも良く似ている。捏造写真を探偵経由でハワードに渡すのが、D-DAYの作戦のキモだったんだろう。
ジャクソン・マーサー基金のバックアップがあれば、ハワードを嵌めてサンドパイパー集団訴訟のジミーの取り分に頼る必要も無くなるだろう。なのに、昼食会を諦めてUターンしたのは何故なのか。キムは目の動きであれこれ内心で考えていた事は分かるが、昼食会に出なくても基金の方をなんとかできる算段が出来たというのか、ハワードを陥れるのを優先してしまったのか?
S6Ep04から3話まるまる使って、ゆっくりと次の中間フィナーレへ繋いできた。次に怒るのはジミーとキムがハワードを嵌める作戦と、ガスとラロの直接対決だ。期待がたかまる、なんてレベルでは無いよもはや。
今回、ジャンカルロ・エスポジート監督回との事だったが、いつもよりも「何か越し」のカットが多かったような気がする。
Better Call Saul S6Ep06 Axe and Grind(目には目を) A3
ソウルの事務所
仕事中のフランチェスカは待合室を見渡すが、小汚かったりタトゥーだらけでどう見ても「品」なんて言葉に縁の無い人ばかりで顔をしかめる。張り切って備えたソファの手摺に煙草押し付けられたりしたらたまらんよなぁ。
プリントアウトした書類をオフィスのジミーに持っていくが、「電話はもうかけた?」との問いに直接答えず、2人は外に出る。ジミーは紫のシャツで、フランチェスカは青基調だが、派手な模様入り。ジミーのネクタイも青白紫等のうるさいストライプだ。
ここでジミーはかなり尊大な態度を取る。法律家は俺なんだ、いちいち法律の講義をする気は無い、相場よりも高い給料払ってるんだから相応の事はやれなど。少しこれまでのジミーから乖離している気はするが、それだけハワード破滅作戦に必要な事なんだろう。紫のシャツは尊大さのColor Codeだ。
結局フランチェスカにアマリロのサンドパイパー住民の家族を騙らせ、HMMのサポートから、電話会議の参加方法とそのパスワードを入手する。
本筋ではないが、後ろのゴミ箱に、以前キムにあのままにしてといわれた便器が突っ込まれている。S6に入ってから、キムの言う事なら何でも聞くのかと思わされていたが、そうではないようだ。勿論、フランチェスカは置いておくなんて言えば相当強硬に反対しただろう。
執務室に戻ると、依頼人が水のオブジェに小便をしてる……。掃除しろ、と言うがフランチェスカは自分でやれ、と言う事をきかない。あっ、Breaking Badのフランチェスカになってきてる。
洗濯工場
籠から落ちそうなシーツを戻してあげるマイク。地下に行くのかと思いきや奥の部屋。監視基地のようだ。タイラスはガスの命令で来た、といい、ナチョ父の店やジミーとキムは見張らせてるのにどうしてマイクの自宅の監視を解いたのか問う。アラメダ通りの監視の方がいらないだろう?と。言いたい事があるならガスなりタイラスなりはっきり言え、と変更を拒否するマイク。
アラメダ通りの隠れ家
部下にコーヒーを差し入れるマイク。流石元警官。ブラインドから覗いた家から出てきたのはステイシーとケイリーだ。電話越しにケイリーと天体観測の話をするマイク。完全に孫馬鹿である。ステイシーとも少し会話をして終わる。
Better Call Saul S6Ep06 Axe and Grind(目には目を) A2
裁判所の法廷
黒のピンストライプスーツのキムが、黒人の少年を弁護をしている。
重罪レベルの量のマリファナが見つかった,そのきっかけとなった交通違反で止められた事。その原因となったアルバカーキ・アイソトープスの飾り、似たような飾りは裁判所の駐車場の1/3にあったと話し、「法執行の一貫性」の問題とした上で、証拠排除(前記のマリファナ)を求めるキム。逮捕した巡査と被疑者との過去も指摘する。
その後、一連の弁護を見学していたクリフと裁判所の廊下で話をするキム。クリフはキムの、最低賃金レベルの献身的な弁護に感銘を受けている。
ハワードやHHMへの遺恨が無いかの確認も、サンドパイパーを共同案件としている配慮からの質問だろう。ハワードやHHMには大きな恩があると語るキムだが、これは勿論今となっては大嘘だ。
クリフは東海岸で有名なジャクソン・マーサー基金という名前を持ち出す。近々西海岸でも活動をはじめるそうだ。
なお、ジーン・タカヴィクがオマハで乗ったニューメキシコ出身のタクシードライバーもアイソトープスの飾りをつけていた。
ソウルの新しいオフィス
キムがドアをノックする。フランチェスカがキムだと気づいたら、別人かと思う程愛想が良くなり招き入れる。オフィスの待合室はソウルから勝ち取った権限で、彼女がコーディネートしているという。お上品で居心地がよさそうなたたずまいで、Breaking Badでの待合室とは正反対だ。
フランチェスカには笑顔を見せるキムだが、顔を見せていない時はあまり浮かない顔をしている。キムの思う「ソウル像」からかけ離れているからか、単に「カルテルの友達」という餌に釣られてくる客層には合わないとおもっているのか。それでもフランチェスカにはいい顔をしてセンスを褒めるキム。帰る時には笑顔でハグをする。S4Ep05のTeaser部フラッシュフォワードでソウル・グッドマンが拒否されたのと対照的だ。
フランチェスカがBreaking Badで極端に不愛想なのは、ジミーのする事でキムが何か酷い目に合ったから、なのかなぁと妄想する。あの態度の差は少々の事では説明できない。
ソウルの執務室
UNM(ニューメキシコ大学)のカメラクルー(今回はビデオではなくスチルカメラ)と役者が居る。役者にサンドパイパーの調停員の変装をさせ、何かの写真を取るようだ。キムに付け髭を選んでもらい、二人の話をしに待合室へ。
ジャクソン・マーサーの件を報告され、ジミーは大喜び。だが、まだ確定はしてなくて、基金の委員や副知事との昼食会で、いくつかの前途有望な組織の代表が招かれると。クリフはキムを推薦してくれるようだ。ところが、この昼食会の日は「D-Day 決行日」と重なってしまった、とキム。「Was Eisenhower on Omaha Beach? No. 最高司令官が上陸地に立つか?」と返し、大いに喜ぶ二人は熱いキスを交わす。
ドイツの森の中
キスをぶった切るような勢いで斧が振り下ろされ、薪が真っ二つに。先行き不安な演出だ。茶色いブーツにブルージーンズ、深緑のシャツで薪を割る髭面長身の男。ヴェルナーの部下だったキャスパーだ。オリジナルタイトルのAxe回収。
そこへ車で乗り付けるラロ。警戒するキャスパーに「どこかであったか?」と聞かれ、「正式にはあってない」と答える。危険を察知して小屋へ逃げ出すキャスパー、拳銃を構えて小屋の中へ負うラロ。
暗い小屋の中、不意を突かれて斧の刃が無い側で腹を痛打され、倒れこむラロ。フリングの件で来た、ジーグラー夫人に送った記念品を辿ってきた、と記念品製造会社の名刺を差し出すラロ。
最初は剃刀の部分をボカす演出がニクい。この剃刀で不意をつき、斧を奪って片足首をぶった切るラロ。話があるから血を止めろと自分のベルトを投げ渡す。
Better Call Saul S6Ep06 Axe and Grind(目には目を) A1
ハワードの自宅
アイロン台兼プレスマシーン、カフリンクスやタイピン、キー等の小物入れ、並んだスーツ、靴、クレリックシャツ、カラフルなネクタイ(ニット多め)。
勿論ハワードの部屋だ。ジャケットを深い緑のジャギュア後部の持ち手に掛ける。丁寧過ぎるほど丁寧にマシンでコーヒーを入れる。タイトルのGrindはコーヒーを挽く事かな。それにしても邦題「目には目を」はどうなの……
そしてハワードの妻シェリル初登場。喧嘩は止めて話し合おう、と「ピースマーク」をあしらったハワードのラテアートを、無造作に持ち出し用マグに移しかえるシェリル。ハワードの表情が胃にくる……
資金集めのパーティーへの参加をどうするか相談し、その流れでハワードはジミーの嫌がらせがまだ続いている事を明かすが、シェリルはそっけない。
オフィス
自分のオフィスだろうか、ハワードは雇った私立探偵からの報告を受けながら、その写真を見ている。「三日前だけは行動が違った」、銀行で2万ドル程度の現金を引き出していたとの報告。ニヤつくハワード。
夜の動物病院
子犬を抱いた夫婦を招き入れる獣医カルデラ。直接本筋には関係無いが、リアリティを感じさせてくれるこういうシーンが好きだ。
開いたドア越しのカット、注射後のゴム手袋を外し、しばらく様子を見るように言い残して「他の患者」がいる奥へと向かうまでの長回し。奥に居たのはジミーとキムだ。
薬剤を皮膚に塗った後の反応を待っているようだ。反応はカフェインの感受性による(Depends on how used to caffeine you are.)と言ってる。
会話の中で、カルデラは
Anyway, a guy's gotta know when he's bagged his limit.
引き際を知るのは大事だ
と、フラグにしか思えないセリフを口にする。どうやら引退が近いらしい。
カルデラは本当に動物が大好きで、動物たちとの暮らしを始めるとのこと。その際に闇の人脈リストである「黒い手帳」を処分するときいたジミーとキムは頼んで見せてもらう。
あっさり見せてくれた手帳は暗号で書かれているが、”あの”人消し屋の「Best Quality Vacuum」の名刺はそのまま挟んであった。キムはこの手帳にあまり関心がなさそうだが、ジミーは「It's passive income, minimal risk」と、非常に興味をそそられた模様。Breaking Badにおける裏世界の人脈は、まず間違いなくこの手帳によるものだろう(S6Ep01のTeaserで、この手帳が映されている)。
こんな金のなる木を手放すなんて信じられない、というジミーに、キムは
Well, he knows what he wants. 彼には――もっと大事な物が
と。キムにも金よりも大事な物があるのだろう。ジミーはあまり金に執着してないような気がしていたのだが、ここで簡単に金を稼ぐ事に興味を示している。こちらが正解なのかな?
そしてジミーの目を覗き込んだキム、凄いわと鏡(カメラ)の前に連れていき、ジミーの広がった瞳孔を見せつける。
ハワード陥れプランの予備実験だ。