toorisugari3のブログ

ベターコールソウルの事について、ネタバレ込みでつらつらと

Better Call Saul S6Ep01 Wine and Roses(青き春は過ぎ) A2

ラロ邸

蟻のドアップから。カメラがだんだんズームアウトし、蟻の足元は指紋、指抜き手袋の手、衛星携帯電話、そして顔にやけど痕。昨シーズンラストでラロが最後に電話させた傭兵だ。

そしてフレームインしてくる2組影とワニ側の靴、先端にはドクロをあしらった飾り。ここ迄でも十分だれか分かってしまう彼ら。

逆光の双子

錠前破り用の金属片がついたままの南京錠、テキーラのボトル(デカンタ?)ルイ13世デカンタ(20220625修正)とグラス、と昨シーズンの思い出の小物。そして警察官と鑑識、彼らが地面に置いた整理文字黄色いプレート。双子が遠慮の欠片も無く現場に入っていくが、警官は目を伏せ、鑑識も何も言わない。ここはサラマンカの土地なのだ。中庭の遺体袋は12。

双子がキッチンに入ってくると、鑑識が慌てて立ち去る。しゃがみ込み、驚きの顔を隠せない双子。死体の顔にジャケットをかぶせ、その上にSanta Muerteの文字が入った死の聖母のカードが置かれる。顔を見合わせ、急いで立ち去る双子。

一応説明すると、これはラロの死体に偽装したマテオの死体だ。双子はラロの死体だと思い込んでいる。

 

 

ガスの養鶏場

プレハブのオフィスの中、テーブルの上の携帯が振動する。窓から外を眺めていた、黒ずくめのスーツのガスが携帯を取る。相手はボルサだ。昨夜ラロが襲撃され死んだことを伝えられる。ボルサの「サラマンカは……」にガスが「Sangre por sangre 血で血を洗う」と言葉を継ぐ。これがサラマンカの流儀だ。内通者がナチョであることはバレている。エラディオが賞金をかけ、全員で捜索中だ。「ナチョが捕まれば黒幕もわかる」とボルサ。ヘクターがこのことを知っている事も確認するガス。ボルサはガスにも用心しておけ、と言い残して電話を切る。

 

ガスは扉を開けてマイクとタイラスを招き入れ、再度襲撃の報告を求める。襲撃した傭兵たちが全滅したのに、ラロも死んだことにガスは疑念を抱くが、マイクによくある事だと返される。

マイクはナチョ救出に向かおう、と提案するがガスは乗り気ではない。それを悟ったマイクはタイラスを一瞥し、溜息をついて「既に手配済みなら別だが」と。そこでタイラスはガスの顔を見て退出する。この"手配"は救出とは逆の手配の事だろう。

「はっきり言え」とガス。マイクは忠誠心は双方向、ナチョは尊敬に見合う仕事をした、というが、取り合わないガス。マイクは諦めて出ていく。

 

 

裁判所

手荷物検査の装置に掛けられるジミーの茶色いスーツを追うカメラ。ジミーはプロボノの弁護に向かうキムと別れて検事(と刑事)と会い、話をする。「デグズマンの保釈取り消し要求をする」と言われるが、予定が詰まってるとかわすジミー。

住所や家族の偽装はバレ、免許や納税、学校などどの記録にも妻だとされるベス・マッキノンの名前が無いと指摘される。これが保釈取消要求の理由だ。6週間も逃げる時間を与えられないという検事だが、ジミーは7万ドルもの大金を保釈金に積んで逃げるわけない、と取り合わない。逆に検事たちを職権乱用で訴えるぞ、と脅すも、うっかりラロの名前を漏らしてしまう。検事は疑念を募らせる。

自分の失敗に動揺して、空き法廷に座りたたずむジミー。

 

Insider Podcastで語られたこと Season6

自分が良くは理解できない英語・会話の箇所については言及しないので、重要な事喋ってても取りこぼす事は大いにあり得るのでそこはご了承いただきたい。

 

 

S6Ep01

Teaserのフラッシュフォワードでのソウルの家は、以前ジミーとキムが見に行ったものではない。ピーターはそうできれば良かったと考えてはいたようだが

 

So there's no interestingly there's no visual effects in there of any kind. There's no editorial effects either. What we did was we got a bunch of black and white ties and so we set up this incredible camera, the Phantom camera.

とMorris(本Epの監督)は言っているが、完全に操作されていないとは正直思えない。以下のGIF画像での真ん中あたり、花の小紋の色は変わっているように見える。が、光の加減でこう見える可能性は排除しきれないのかもしれない。

色の操作疑惑

 

このシーンはPhantomCameraというハイスピードカメラで撮影、全部で約12秒間。映像ではこのシーンは約38秒間。

 

Chris

Different side of Lalo a little bit I mean, even though he's still the stone cold killer and he's going to do what he's gonna do he doesn't want to have to kill these Peter wanted to have to see his family take it down either.

ラロを血も涙も無いサイコパスだと決めつける人が割合多いように思うが、これは少なくとも制作チームはそうは思っていない。Vinceも認めてる。

 

ティーザー最後のサフィロアネホのボトルストッパーはCG。ボトルストッパー自体が貴重だし、あんなに上手い事狙った所に落として止められない。

 

プールの中からのソウルの姿の立て看板を撮影したのはGoPro。

 

ラロが密入国しに行く最後のシーン、最初はドローン飛ばして撮影してみたけど、ニューメキシコには物が多すぎてメキシコ感が出せないから、スタジオ(=ミニチュア)で撮った。(少し理解が怪しい)

 

 

S6Ep02

ヴィンスが「Dial nine to get out.  (外線は“9”から)」(クレイグがキムに掛け方を教える所)を最初削ろうと思ったことを馬鹿だったと反省。(貴重なコミックリリーフなのに!)

 

ナチョが監視人がいるか確かめるために向かいの建物を監視しながらドアを開けるシーン、あのちょろっとした動きを撮るために100回くらい続けて撮影したとヴィンス。200回くらい撮影したが、上手くいったか確信が持てないとも

 

エアコンの室外機の穴から飛び降りるナチョはスタント。マイケル・マンド本人でも出来ただろうが、万一があってはいけないから。1回目は猫のように、スーパーヒーローのようにカッコよく着地しすぎたので、2回目はぎこちなく、足を痛めたように演じるように頼んだ。

 

来いよ仕草したカズンズにナチョが車で向かう直前のシーン、車のフロントシールドをカメラが貫通してるんだが、なんかガラス屋さんとうまい事やってとったらしい。言われるまで気づかなかったけど、直前は弾痕がいくつかあるだけで全部ある。(自分は余りこういう撮影上の都合について敏感でないので、言われて初めて気が付いた。すぐわかる人ってどれくらいいるんだろうか?)

フロントシールドの細工

 

アクションシーン(モーテルの外での銃撃戦の事だと思う)を撮るのに2~3日かかった。夏の暑い時期は暑過ぎて撮影できない時間もあるそうだ。

 

Lady Libertyの風船人形は高さ30ft(9.144メートル)

大量生産されたものじゃないから、同じものは北米中さがしても見つからなかった。

撮影地(アルバカーキ北西)は風が強く、壊れるのが心配だった。風が強くなると空気を抜いて、また膨らませた。

 

ケトルマンのオフィスのトレイラーはお金の都合でレンタルで、切ったりできなかった。狭くて撮影は本当に大変だった。

 

 

S6Ep04

ティーザーの例の赤い家はビジュアルエフェクト(実際には塗っていない)。

 

キムのベッドの上の鳥の絵(10個ある)はRheaが描いたそうだ。

 

S2でキムの部屋のセットが作られた時に、Rheaは家族の写真を置かない様にたのんだ。

キムは親族の事を知ってもらおうとはしない人だと思った、と。そしてそれは採用された。このセットが作られた時に暫くは死なないんだ、とRheaは安心したらしい。S1のキムの部屋(Ep03で電話のシーンに出てくる)は、ネイルサロンの2軒となりだったとか。

 

エルカミーノの外の監視車に近寄るキムのショット、車のフロントシールドは外してあって、最初は車の中にカメラがあったと。最初は乗ってる二人がカメラをよけて斜めになってた、と。光の反射とかが厄介だそう。

 

 

S6Ep05

ルイス・モンカダ(カズンズの一人)がボクシングシーンのファイト・コーディネーターの1人だった。

 

既存のボクシングジムは天井が低くて使えないから作った。

 

マルガレーテの家は、アルバカーキにある実際の家で、その周りはトラムも含めて全てCGだそうだ。Rodeo FXという会社が担当しているようで、該当会社のWebページにも言及がある。何か月もかかったとのこと。(rodeoという単語が最初何を指すのか分からなくて、以前のエピソードでもスルーした……)

 

門を飛び越えるラロはCGじゃない。

 

ラロがその本質を変えたのではなく、彼がこの女性に魅了され、彼女の弱さと彼女に引き込まれ、彼女の家で彼女を殺さない配慮をしたように感じてほしかった(監督のメリッサ・バーンスタイン

 

S6Ep06

 

カシミーロの代役レニーと、エリン ブリル(D&Mの女性の弁護士)の役者はリアルで親子。

 

獣医のボードに、ピーターは3枚の猫の写真を、Arielは猫と2枚の犬の写真を載せている。

 

「人消し屋をマイクは知らないがソウルは知っている」事の説明として、獣医の手帳を用意したそうだ。

 

探偵がハワードに渡した写真、ヴィンスは1枚か2枚でよくない?と言ったそうだが、ピーターが抵抗したそうだ。あの量を撮るのに相当苦労した、とも。

 

 

S6Ep07

シリーズを分割した理由は、後半が完成してないから、連続で放送する事ができないため。間の6週間に完成させるための仕事をする。

 

Covidに感染しない事に気を付けている。さもないと放送日に間に合わないくらい厳しいスケジュール。

 

ジミーとキムは本当に卑劣な事をやっているが、その自覚が無い。その報いを受けさせるにはあの結果が必要だった。この恐ろしい結末は、あの楽しいお遊びが引き起こしたものだ(ライター・監督のトム・シュナウツ

 

ピーターやヴィンスはパトリックに事前にこのエピソードで死ぬ事を知らされていたが、ボブとレイは、ここまで全く知らなかったそうだ。

 

ラロが洗濯工場監視のために潜んでいた排水溝は、実際にはアルバカーキにはない。デジタル合成だそうだ。

 

下水道の一部には、ナチョが沈んだタンカーを再利用したそうだ。

 

パトリックのホームメイドピクルスはめっちゃ旨いらしい

 

UNMの眼鏡と建物を出てからの長回し(120秒程ある)、ステディカムで撮った。残りはドリーで回りながら。

 

ADR担当のキャサリンが凄いと褒められてる。ADRは、撮影が終わった後で、いろんな理由で、映像を見ながら会話やハミング等の音声をとり追加する作業の事。S5Finaleでは、ラロとナチョの会話がコオロギの鳴き声が入ったからとりなおしたそうだ。ジャンカルロがヤギの声で邪魔されたこともあるそうだ。Dedicato a Maxの時かな?

また、音声がはっきりしない時にそれをクリアにする事もしているが、外野からすれば魔法にしか見えないと。他のテイクの音声を引っ張ってきたりするらしい。

 

ナチョがヘクターに、「その椅子に座らせたのは俺だ」と宣言したみたいに、ジミーとキムはハワードに「お前をハメたのは俺達だ」と宣言したかったし、ハワードは実際そう受け取った。ジミーとキムはこのことをしったハワードに備えなければならなかったが、何もしなかった(トム・シュナウツ

 

炭酸飲料のトリックは、トム・シュナウツが父親に教わった物だそうだ。

実際reddit等でやってる動画がある。失敗したのもあれば成功したのも。わりと長く(2,30秒くらい?)回したペットボトルは成功してた。

 

ゴキブリ(等、生き物)の撮影には忍耐が必要。

 

1:10:40秒あたりから、パトリックがボブとレイの物真似をする。一聴の価値あり。

「2人はハワードを死ぬ事を知っていたの?」ときかれ、以下のセリフを物真似でいう(連続はしてない)

 

Rhea: Oh, no, I just read 607...

Bob: Oh, this is great. I mean, it makes total sense, total sense. It's really great.

Rhea: Oh, no, oh, I'm gonna miss you. I don't want to go

Bob: Oh, good choice. Good choice. You go out of luck.

 

一番最後のタイトルコールでも物真似してるんだが、マイクの物真似でいいのかな?

 

American Greed / The Kettlemans

Mid Season Finaleから、後半が始まるまでのボーナスPodcast #1。

「American Greed」という実在の、ホワイトカラー犯罪を題材にしたドキュメンタリー番組のフォーマットにのせて作られた、Better Call Saul Season6の宣伝番組。以下のリンクで見る事が出来る。

www.youtube.com

Youtubeに付いてる自動翻訳でもだいたいの雰囲気はわかるので、興味があれば見てみよう。検事のスザンヌやビル、ケトルマン夫妻やリッチ・シュワイカートらが「証人」として登場する。

 

ヴィンスがジュリー(ベッツィー役)にActor/Actressどちらで呼ぶのが良いか尋ねる。ジュリーはどちらでも構わない、と。レイ・シーホーンはActorを好むとも。

 

ジュリーとジェレミー(クレイグ役)は、本件の仕事以前には面識がなかった。

 

ボブ・オデンカークとジュリーはFARGOで共演していた。2人ともリハーサル好きだそう。

 

S1Ep07 22分あたりで、クレイグがコーヒーのおかわり欲しがってるのに、ベッツィーがウェイトレスに「結構です」のジェスチャーをして、結局クレイグはコーヒーを飲めない。このこと、ジュリーは全く覚えていないそうだ。S6Ep02 26分ごろ、デイビス&メインでクリフとケトルマン夫妻が話している時に、クレイグが結局コーヒーを飲めない描写はその繰り返し。

 

ジュリーがベッツィーのセリフで一番好きな物はアメリカングリードでの「私たちは生存者です(We're survivors)」で、それはキャラクターの核心を突いたセリフだからだそう。

 

アメリカングリードでは、Eric Khanという弁護士を取り上げた回があるそうだ。

 

余談:Youtubeでダイジェストが見られるが、これを見るとソウル・グッドマンとの類似点が数多くある事にびっくりする。

www.youtube.com

弁護士広告を飽和的に実行した最初の弁護士だそうで、町中に自分の写真入りの広告を大量に配置したり、テレビ・ラジオでも大量のCMを流し、大々的に売り出した。150万ドルの豪邸を現金で買い、ロールスロイスにのり、高級スーツを着て、派手で、自分の法律事務所の駐車場に50万ドル以上かけて19フィートのリンカーンの像を設置した、とある。

 

ヴィンスはこの男について我々は知らなかった、と言っている。

 

アメリカングリードの中で、ついにコーヒーを飲めたクレイグがネタにされている。

コーヒーを飲むMr. Kettleman

 

アメリカングリードの制作に通じているのはアメリカングリードの制作陣なんだから、聞かれたことにどうこたえるかと言う事は別にして、そのほかは全てアメリカングリードの制作陣に任せた(ヴィンス

 

アメリカングリードはCNBCの番組で、ベターコールソウルはAMCだが、放送局を超えたコラボレーションがあった。

 

Podcast内で、「No Picnic」というショートフィルムにも触れられている。

www.youtube.com

3分弱で殆どセリフも無い作品だが、ケトルマン一家を描いた印象深いものなので、見た事が無ければ見てみてほしい。

 

 

Mark Margolis

最初はトゥコがウォルターとジェシーを拉致したシーン以外の出演予定はなかった。

 

顔の演技は脳卒中を患った義理の母から盗んだようなものだ。

 

 

エピソードが追加されれば、その分更新する。

 

 

ベターコールソウルSeason6のタイトルが暗喩するもの(ネタバレ有)

【注意】本エントリには、Breaking Badのネタバレが含まれる。Breaking Bad未視聴の方の閲覧は推奨しない。

 

 

Better Call SaulのSeason1とSeason2では、各エピソードのタイトルに一定のルールを設けたり、暗号を埋め込んでいた。

 

Season1

saul.breakingbadfan.jp

 

Season2

saul.breakingbadfan.jp

 

Season3~5ではこういう事をしていないようだが、Season6では復活したようだ。

現在公開されているEp07までのオリジナルタイトルは全て「and」で繋がれている。

  1. Wine and Roses (青き春は過ぎ)
  2. Carrot and Stick (アメとムチ)
  3. Rock and Hard Place (万事休す)
  4. Hit and Run (ピンチはチャンス)
  5. Black and Blue (アザだらけ)
  6. Axe and Grind (目には目を)
  7. Plan and Execution (計画と実行)

Season6の放映にあわせてBetter Call SaulやBreaking Badを見直していて気づいたのだが、これら(エピソードタイトル)はすべて両作品における出来事やセリフと繋がっている。

 

Better Call SaulとBreaking Badを繋ぐシーズンであるSeason6でこういう仕掛けを入れてくるのが「いかにも」だなぁと思うのはおそらく自分だけではないだろう。

 

1. Wine and Roses (青き春は過ぎ)

冒頭フラッシュフォワードで流れる映画Days of Wine and Rosesの曲が元になったタイトル。酒とバラの日々。幸せだった昔。

WineとRoses、この両者が連続して出てくるシーンは無いが、Wineではなく本作でおなじみのテキーラ「サフィロ・アネホ」であれば存在する。S3Ep09 「Fall(転落)」で、キムが車で事故る直前。オフィスでの会話、45分頃。ガトウッド石油の件で天手古舞状態のキムに、サンドパイパーとの和解が成立する見込みが立ち、サフィロ・アネホで乾杯しようというジミーのセリフだ。

 

Wine(Tequila) and Roses

 

英語

You gotta stop and smell the roses.

Hey, who's got two thumbs, a bottle of Zafiro...

...and 20 percent of the common fund? This guy.

 

字幕

少しは休まないと

最高の酒と 大きな報酬を手にした奴は?

 

吹替

ちょっと手を休めて楽しまなきゃ

なぁ、最高級のテキーラのボトルと、報酬の20%持ってんのは誰だ~?俺だ~!

 

残念ながら日本語では薔薇のバの字も出てこない。酒/テキーラのみだ。

ちなみに「who's got two thumbs」「This guy」のくだりは、Urban Dictionary: Who's go two thumbs? によると、ドラマ「Scrubs」で人気になったフレーズのようだ。

 

www.youtube.com

 

 

2. Carrot and Stick (アメとムチ)

このセリフが登場するのはS2Ep02 「Cobbler(クリームパイ)」25分頃。盗まれた野球カードの事で駄々をこねるプライスのために仕方なく、ナチョに返すように交渉しに行ったマイクのセリフだ。

 

Carrot and Stick

 

3. Rock and Hard Place (万事休す)

こちらは変わってBreaking Bad S4Ep09「Bug(膨らむ疑惑)」39分頃。一般的な表現では「between a rock and a hard place」で、「板挟みになって」「どうしようもなくなって」という意味。目の前で人を殺されたジェシーが、ガスの状況(カルテルとDEAとの板挟み状態)を説明する時に使ったセリフだ。

Rock and Hard Place

 

4. Hit and Run (ピンチはチャンス)

野球で言えば打って走るの「ヒットエンドラン」。一般的には「ひき逃げ」「奇襲」という意味があるそうだ。ここでは前者。Better Call Saulの最初のエピソード、S1Ep01「Uno(駆け出し)」で、ジミー・マッギルがソウル・グッドマンへ滑り落ちる、きっかけというか最初の一歩になったとも言えそうな、ひき逃げ計画の事だ。このセリフは当たり屋スケボー兄弟のもの。

Hit and Run

 

5. Black and Blue (アザだらけ)

こちらはまたまたBreaking Badに戻る。S2Ep07「Negro y Azul(噂の男、ジェシー)」、このタイトルと結びついている。「Negro y Azul」はスペイン語で黒と青、つまり「Black and Blue」だ。コールドオープンで流れるナルココリード*1が印象的なエピソード。黒と青は、ハイゼンベルクのシンボルカラーの「黒」と、ハイゼンベルクが扱うドラッグ、ブルーメスの「青」。もしくは、本エピソードでジェシーと親密になるジェーンと見ている選局設定中の「青」い画面の、「黒」が凄いプラズマテレビかもしれない。また、本作における色の使いかたについてはこちら(ベターコールソウルとブレイキングバッドのColor Code - toorisugari3のブログ )もご覧いただきたい。

なお邦題のとおり、「Black and Blue」にはアザを指す用例(S6Ep05はまさにこれ)もある事は補足しておく。

 

Black and Blue

 

6. Axe and Grind (目には目を)

こちらもBreaking Badから。S3Ep07「One Minute(ハンクの苦しみ)」。本エピソードの最後で、ハンクはカズンズことサラマンカの双子に襲撃をうけ、撃退する。その際に片割れが持っている「斧(Axe)」と、別の片割れの下半身を車で「すり潰す(Grind)」事。

Axe and Grind

 

7. Plan and Execution (計画と実行)

Plan and Executionとまとめて書けば邦題通り、「計画と実行」と訳すのが普通だ。一方で、Executionには「処刑」という意味もある。本タイトルの物騒さは本エピソード放映前から散々危ぶまれていたが、「ご覧の有様」となってしまった。

 

Breaking BadにもBetter Call Saulにも、数多くの「計画」と「実行」「処刑」がある。その中でも本エピソードと一番マッチするのは、Breaking Bad S4Ep01「Box Cutter(ガスの怒り)」だろう。コールドオープンでスーパーラボの備品の開封(Plan)をするゲイル、そしてそのスーパーラボでのガスによるまさかのビクター処刑(Execution)。これを象徴するのがどちらにも使われるオリジナルタイトルの「Box Cutter」。

Plan and Execution

 

 

これら一連のタイトルは、Better Call SaulからBreaking Badへとつなぐシーズンのタイトルとしてはこの上ない「仕事」だと思う。後半のタイトルもきっと同じルールでつけられるのだろう。

 

しかし、こうしてみると邦訳で失われたニュアンスの大きさに気づかされる。そもそも全て「and」で繋がれているタイトルからして邦訳では全く考慮されてない。

言語の壁をまたぐ以上、ある程度のニュアンスの喪失が避けきれないのは当然ではあるが、翻訳されたセリフ等からは得られない「ネタ」を探すのも一興ではなかろうか。しゃぶればしゃぶるほど味が出てくるのが「アルバカーキ・サーガ」だから。

言うまでも無いが、邦訳がいいかげんになされているという趣旨ではないので悪しからず。

Better Call Saul S6Ep01 Wine and Roses(青き春は過ぎ) A1

ラロ邸~メキシコ

前シーズンで鍵を開けた直後のナチョ。人目を避けて逃亡中。

携帯が振動するが、近くに住民が居るので出れない。2回目出ると相手はタイラスだ。警察すらもサラマンカの味方だと警告される。

ラロは殺ったのか?と聞かれて肯定するタイラス。勿論視聴者にはこれは誤解だと分かっている。屋敷に居た何の罪もなさそうな高齢者の心配をするナチョ。自分の親と重ね合わせる部分もあるんだろう。あと、ナチョはケトルマン夫妻やプライス、トゥコ、ヘクター達を陥れてきたが、一般人には直接は危害を加えてはいない。

「1時間携帯の電池を外して進め、隠れ家を用意する」と言われて通話は終了。再び駆け出すナチョ。

 

 

メキシコの民家

料理中の女性が何かに気づく。少し足を引きずりながら歩くラロだ。会話から顔見知りであることが分かる。肩を貸して招き入れ、ラロは怪我の手当てをし、女性はコーヒーを淹れる。山男のようなもじゃもじゃの髭をはやした、女性の夫マテオが帰宅し、ラロに挨拶する。妻に髭をそって綺麗にして、と言われ、洗面所へ向かうマテオ。ラロは「俺みたいな髭はどうだ」と声をかける。女性は夫に歯医者を勧めてくれたことに感謝し、家事に戻るが、ラロは冷たい顔をして分解した鋏を逆手に握りしめる。

 

音もなく彼女を殺したラロは洗面所に向かい、ラロと同じ髭の形になったマテオと鏡越しに笑いあう。マテオがまた頭を下げると、ラロの顔から笑みが消える……。

 

 

アルバカーキのホテル

同じベッドで眠るキムと、浮かない顔のジミー。目覚ましが鳴り、キムも目覚める。プロボノを20件を引き受けたキムに、ジミーも今日は忙しい、と。クライアントと電話しながら、彼に貸すためのジャケットを選ぶジミー。現金が無く、タクシー代ある?と聞くキムに、ジミーはラロの保釈金運搬報酬の入ったカバンから100ドル札を出す。

キムはそちらには目を向けずに鞄をあさり、「World's 2nd Best Lowyer Again」のトラベルマグを取り出し、銃痕をしげしげと見つめ、そんなキムをジミーは不安げに眺めている。

 

家を出たジミーとキムは、それぞれ上着シャツネクタイと、先ほどのマグを手に持ってタクシーへ歩いていく。ジミーはキムのためにドアをあけ、キムは乗り込もうとするが思案し、タクシーの前へ出て、穴の開いたマグを投げ捨てる。それを無言で見ているジミー。ゴミ箱に入ったマグを手前に、タクシーが発車する。

 

この一連のカット、凄く印象的で好き。マグ投げたところはどうやって撮影したのか考えていたけど、redditにネタバレ動画が投稿されていて、ほぼ思ってた通りだった。

Kimmy throws the mug - Actual Episode vs Behind The Scenes : betterCallSaul

 

キムは青っぽいグレーのスーツに、黒字に水色と赤の模様。こういう色づかい、模様のキムは珍しい。ジミーは水色字に茶色と白のタッタソールチェックスーツに、紫に近いブルーのシャツと、同じブルー&明るめの紫のストライプネクタイ。紫もまた思わせぶりに使われる色だ。

 

Better Call Saul S6Ep01 Wine and Roses(青き春は過ぎ) Teaser

ソウル・グッドマン邸

これまでの5シーズン同様、白黒で始まる、と思わせておいてだんだんカラフルになる落ちていくネクタイ。

落ちるネクタイ

舞台はソウル・グッドマン邸、時間はBreaking Badの、少なくともS5Ep015(Granite State ニューハンプシャー、人消し屋でソウルとウォルターがはちあうエピソード)以降だろう。

ソウル・グッドマンの所有物は全て差し押さえられ、運び出されていく様子が描かれる。「Days of Wine and Roses」の曲にのせて。

 

ネクタイに始まり、寝室の毛皮や石像、絵画、スーツ、シャツ、靴など、途轍もない量の品々。鏡の裏の隠し部屋には防弾チョッキまで。

洗面所にはバイアグラはじめ、ソウルの常備薬。バスタブにかかったピンクの下着は男物か?そして目を引く金色のタイルに囲まれた同じく金色の便器……。趣味悪っw

そして意味ありげに字幕が出るH・G・ウェルズのTHE TIME MACHINE。プールに浮かぶソウルの等身大パネルに、「LWYRUP(弁護士を立てる)」ナンバーのキャデラックドゥビル。ジミーがこれまで使ってきた様々な品がこのCold Open映像に詰め込まれている。いくつかは、これからS6の中で初めて登場するものも含まれている。

 

最後に豪華なキャビネットから落ちた、「サフィロ・アネホ」のボトルキャップが道端、流れる水の上に転がり落ち、ズームアップされる所で終わる。

道端に転がるサフィロ・アネホのボトルキャップ

S2Ep01で、ジミーとキムがケンに奢らせた時の記念のボトルキャップだろう。これだけでも切なくて泣けてくる……。

タイムマシンは、こんなドラマで実際にタイムトラベルするわけがないので、社会的なメッセージの方を暗示しているんだろう。(違ったら土下座する所存)

 

こちらのYoutube動画で、この時点まででわかるネタが解説されている。字幕を出して自動翻訳で日本語にすれば大体わかるので、英語が苦手でも(自分もだ)見てみよう。

www.youtube.com

 

また、本ティーザーには、これからS6で登場する小物も含まれている。プレイースターエッグとでもいうのか。登場した箇所で言及する予定。

 

 

 

タイトルコールは自由の女神

 

Better Call Saul S6Ep06 Axe and Grind(目には目を) A4

キムのアパート

ジミーはグレーのシャツ。キムは青黒ヒョウ柄のブラウス。青は法律、黒は悪、欺瞞、秘密の色。

ソファ後ろに掛けてある絵の裏、作戦図を見ながら「見落としなんてないさ We didn't miss anything」とジミー。ついに残すところはD-DAYのみに。

作戦ボード

この作戦ボード、これまでの企みが網羅されてる模様。

左から偽ドラッグ、ケトルマン夫妻、ハイヒール、虫眼鏡、天秤、カメラ、瞳孔、T-1、D-DAYとなっている。

偽ドラッグの絵の下にはゴルフのグリーンの絵や(体験)TOUR。

ケトルマン夫妻の下には人参(アメとムチの英語はCarrot and Stick)の絵。

ハイヒールは=ウェンディ。ジャガーの絵がある。

虫眼鏡は後述するとして、天秤はサンドパイパー訴訟の調停員、ヴィオラの絵はその名前カシミーロを聞きだしたキムの元部下だ。

カメラの下には「DOUBLE?」「MAKEUP? FACE PUTTY?」「$」「口髭」。身代わり、変装・変装用パテ・現金。

瞳孔は、つい先ほど獣医カルデラの所で拡大させた。下には「RED BULL?」や「DRUG TRIAL」「25min」など、獣医の所で行った事を示唆している。

T-1は、何の略かは分からないが、オンライン会議の事だろう。フランチェスカにかけさせた携帯電話の絵、7をおしてから842159というPassCode、HHM……。

そしてD-DAYと爆発の絵。

 

ここでこれまでジミーとキムが露骨に関わってこなかった虫眼鏡、これは探偵の代名詞みたいなもの。そして探偵と言えばハワードが雇った探偵だ。虫眼鏡の絵の下には「CASTING」という文字。

一つのカギは、前のエピソード、S6Ep05、ハワードとロッキーごっこをした後にベッドでキムと交わした会話だ。何故ハワードの徴発に乗ってしまったんだろう?とつぶやくジミーにキムが言った言葉。「この先の展開を知っているからよ」これはハワードがジミーの企みに気づく事を指している可能性が高い。

もう一つのカギは、作戦ボードでの順番だ。ハワードがジミーの影に気づいたのは、ウェンディをクリフに見せてから、ヴィオラから調停員の名前を聞き出すまでの間だ。

計画通り、という事だろう。さきほど探偵がハワードに見せた、現金を引き出すジミーの写真も勿論仕込みだろう。

 

もう一点、瞳孔の下りは、ハワードに獣医に貰った薬を塗って瞳孔を開かせ、コカイン使用を疑わせるもの。効果を「DRUG TRIAL」したのはジミー。ジミーはSeason1からもうずっとことあるごとにコーヒーを飲んでる描写がつづけられてきた。

一方でハワードは意識高い系というか、A1で妻にラテアート作った際にも自分はコーヒーではなくてティーバッグでお茶を入れてた。彼がコーヒーを飲んでいたシーンの記憶がないし、そのお茶もカフェインレスのものかもしれない。

瞳孔を開かせる薬の効果が早く・強く出る位なら良いが、致命的な症状が出る可能性がかなり高いのではないかと心配している。獣医の診療所で、ハワードの体格がジミーと同じくらいだと言ったのもフラグになってる。

 

オマハ・ビーチ

そして、D-DAYに付き合えないキムを、「オマハ・ビーチ」へ誘う。HHMの会議室を眺める場所に座り、ワインで乾杯する2人。はじめて外から見る建物だけど、カッコイイね!キムがポストイット張りまくり電話かけまくりの階段も懐かしい。

オマハ・ビーチ、ことHHM会議室の前で乾杯する2人

しかし、どうして「オマハ・ビーチ」なんてコードを使ってしまったのか。D-DAYやらオマハ・ビーチと言えば、ノルマンディー上陸作戦由来の暗号だ。D-DAYはそのまま決行日だが、オマハ・ビーチは本作戦で一番被害の大きかった場所だ。上陸作戦で最も死亡率が高く、「ブラッディ・オマハ」と呼ばれることになった、とWikipediaにもある。

 

 

翌朝、キムのアパート前

キムの基金面接が上手くいくように声をかけるジミー。挨拶のキスをして別れる。

 

 

酒屋

ジミーは「サフィロ・アネホ」を求めてレジに並ぶが、そこで偶然にも調停員のカシミーロ本人が腕を骨折したようで、左腕にギプスをはめ、吊ってるのを目撃する。青ざめるジミーは慌てて車に戻り、ハンドルを叩いて悔しがり、一刻も早く、とキムに電話する。

キムも動揺が激しく、大声で「Shit!」と叫ぶくらいだ。ジミーは今日はサンタフェでの昼食会に集中して、ハワードの方は延期しようと提案するのだが、キムは「決行は今日よ」と車を引き返す。

 

 

 

話は戻るが、探偵仕込み説のもう一つの傍証が写真だ。この2つの写真は白黒であることも大きさも良く似ている。捏造写真を探偵経由でハワードに渡すのが、D-DAYの作戦のキモだったんだろう。

ジミー達が捏造した写真(左)とハワードが探偵から得た写真(右)

ジャクソン・マーサー基金のバックアップがあれば、ハワードを嵌めてサンドパイパー集団訴訟のジミーの取り分に頼る必要も無くなるだろう。なのに、昼食会を諦めてUターンしたのは何故なのか。キムは目の動きであれこれ内心で考えていた事は分かるが、昼食会に出なくても基金の方をなんとかできる算段が出来たというのか、ハワードを陥れるのを優先してしまったのか?

 

S6Ep04から3話まるまる使って、ゆっくりと次の中間フィナーレへ繋いできた。次に怒るのはジミーとキムがハワードを嵌める作戦と、ガスとラロの直接対決だ。期待がたかまる、なんてレベルでは無いよもはや。

 

 

今回、ジャンカルロ・エスポジート監督回との事だったが、いつもよりも「何か越し」のカットが多かったような気がする。

Better Call Saul S6Ep06 Axe and Grind(目には目を) A3

ソウルの事務所

仕事中のフランチェスカは待合室を見渡すが、小汚かったりタトゥーだらけでどう見ても「品」なんて言葉に縁の無い人ばかりで顔をしかめる。張り切って備えたソファの手摺に煙草押し付けられたりしたらたまらんよなぁ。

ソウル事務所の待合室

プリントアウトした書類をオフィスのジミーに持っていくが、「電話はもうかけた?」との問いに直接答えず、2人は外に出る。ジミーは紫のシャツで、フランチェスカは青基調だが、派手な模様入り。ジミーのネクタイも青白紫等のうるさいストライプだ。

事務所の外のジミーとフランチェスカ

ここでジミーはかなり尊大な態度を取る。法律家は俺なんだ、いちいち法律の講義をする気は無い、相場よりも高い給料払ってるんだから相応の事はやれなど。少しこれまでのジミーから乖離している気はするが、それだけハワード破滅作戦に必要な事なんだろう。紫のシャツは尊大さのColor Codeだ。

結局フランチェスカにアマリロのサンドパイパー住民の家族を騙らせ、HMMのサポートから、電話会議の参加方法とそのパスワードを入手する。

 

本筋ではないが、後ろのゴミ箱に、以前キムにあのままにしてといわれた便器が突っ込まれている。S6に入ってから、キムの言う事なら何でも聞くのかと思わされていたが、そうではないようだ。勿論、フランチェスカは置いておくなんて言えば相当強硬に反対しただろう。

 

執務室に戻ると、依頼人が水のオブジェに小便をしてる……。掃除しろ、と言うがフランチェスカは自分でやれ、と言う事をきかない。あっ、Breaking Badのフランチェスカになってきてる。

 

 

洗濯工場

籠から落ちそうなシーツを戻してあげるマイク。地下に行くのかと思いきや奥の部屋。監視基地のようだ。タイラスはガスの命令で来た、といい、ナチョ父の店やジミーとキムは見張らせてるのにどうしてマイクの自宅の監視を解いたのか問う。アラメダ通りの監視の方がいらないだろう?と。言いたい事があるならガスなりタイラスなりはっきり言え、と変更を拒否するマイク。

 

アラメダ通りの隠れ家

部下にコーヒーを差し入れるマイク。流石元警官。ブラインドから覗いた家から出てきたのはステイシーとケイリーだ。電話越しにケイリーと天体観測の話をするマイク。完全に孫馬鹿である。ステイシーとも少し会話をして終わる。